飼殺の檻・九と一つの呪いの話   作:アークフィア

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五日目

「神父様っ!!」

「おおっ!?あ、ああ、君か……、早いというかなんというか」

 

 

 教会内の神父の居住区に、まさに扉を蹴破る勢いで飛び込んできた少年。

 その鬼気迫る表情に、しかし神父は苦笑を崩さない。

 

 

「どういうことですか!サラに罪の疑いがあるって!」

「……彼女が深夜徘徊をしていた、というのは知ってるかい?」

 

 

 問い詰める少年に対し、冷静に言葉を返す神父。

 少年は一瞬見廻りの事を思い出すが、それならば自身も早々に呼ばれているはずだと気付き、押し黙る。

 そうして落ち着いた少年を近くの椅子に座らせると、彼は用意したコップに水を注いで少年に差し出した。

 

 

「見廻りとは別。それが終わった深夜にね、彼女が町を抜ける姿を見たんだ。不審に思った私が彼女のあとをつけると、彼女が向かったのは共同墓地だった」

「共同墓地……?」

 

 

 深夜の森の中の、更に墓地などに一体何の用事があったというのか。

 少年が考え込もうとする前に、神父は答えを述べる。

 

 

「昨日の遺体を埋めた墓を、掘り起こしていたのさ」

「堀りっ……!!?」

 

 

 飛び出した答えに思わず息を飲む少年。

 一度埋めた遺体を掘り起こす?一体何を考えているんだ彼女は?!

 そんな少年の内心が表に出ていたのか、神父は小さく息を吐く。

 

 

「詳しいことはだんまりなんで分からないけど、外から来たサラ君の事だ。遺体を調べる技術とか、持っててもおかしくはない。たぶん、詳しい死因とか調べようと思ったんじゃないかな?」

「……死体から、そういうものが分かるんですか?」

 

 

 今度は別の意味で驚く少年。

 この辺りでは遺体の検分なんてものに縁はない。そもそもに医者がおらず、神父がその役目を兼任していたくらいなのだ。

 

 死体はあくまでも憐れな者の亡骸以上のものではなく、それを確かめようなどという思考そのものが存在していない。

 ゆえに、サラがそういう技術を持ち合わせているかもしれない、ということ自体が彼にとっては驚きの対象になっていた。

 

 

「まぁ、こっちではできる人の方が珍しいからね、私も人伝でそういう技術があるらしいと知っていただけだし。……ただまぁ、町民達にとっては違うだろう?」

「……あ」

 

 

 彼女がそういう技術を持ち合わせているかどうかは別として。

 墓を掘り起こしたということを知った町民達がどう思うかと言えば、間違いなくサラを非難・ないし侮蔑するだろう。

 遺体を調べるという知識が無いのだから、彼女の行為は死体を辱しめる行為にしか見えないはずだからだ。……知っていても争いは起こるが、知らない方がもっと争いが起こるものだ。

 

 

「だからまぁ。今回のはあくまでも、私から町民へのアピール以上のものは無いんだよ。今でこそ受け入れられているけれど、サラ君が余所者なのは一応の事実だからね」

 

 

 つまり、こう言うことらしい。

 サラが真相究明のために皆に黙って遺体を掘り起こしたので、それは決して遺体を冒涜するものではなく、あくまで彼女なりに考えて行ったことであり、町の人を故意に傷付けるために行ったことではないのだと知らせるため、敢えて伝言板に彼女が一晩牢に入れられるのだと記したのだと。

 無論、問題なんてあるはずもないので明日には無罪放免、彼女は外に出てきている──という寸法だ。

 

 

「とはいえ、彼女の意思の確認が取れていなくてね。悪いんだけど君、サラ君にその辺り確認して来て貰える?」

 

 

 そう言って、神父は地下への鍵を少年に渡すのだった。

 

 

 

†  †  †

 

 

 

 ──子供の頃、悪いことをしたら牢に入れられるんだぞってよく言われていたっけ。

 

 そんな事を思いながら、少年は地下へと繋がる石の階段を降りていく。

 

 教会地下にあるそれは、元々は地上で何かあった時に非難するための場所だったのだそうだ。

 それが【大厄災】を機に役目を失い、巡り巡って、罪を告解した者達が一晩反省するための場所になったのだという。……ある意味、今のサラにぴったりの場所だと言える。

 

 とはいえ、一つだけ少年には気になっている事があった。それを問いただすためにも、と少年は一つ気合いを入れる。

 

 やがて、分かれ道にたどり着いた。右に進めば保存庫で、左に進めば牢屋だ。今は保存庫に用はないので、素直に左に進む。

 

 石のアーチが続くトンネルを抜ければ、少し広い空間に申し訳程度の鉄格子が備え付けられた一画に出る。

 

 ここが地下牢。

 今見ると随分安っぽいというか、ちゃちな造りの場所に見える。……昔は怖かったんだけどなぁ、と少年が奥に進めば、一番奥の牢の中、そこに備え付けられたベッドの上で、膝を折って膝下から足の甲をベッドにつけ、その足の裏の上に臀部をのせている──という、なんとも珍妙な座り方をしたサラの姿がそこにあった。

 

 ……確か、正座というのだったか。

 気を落ち着かせたり、考え事をする時などにするもの、らしいのだが。昔サラに教わって試した時には足が酷いことになって、とてもではないが考え事をするような余裕はなかった。

 こうして微動だにしない彼女を見るに、サラにとっては問題ないようだが。

 

 

「サラ、元気そうで良かった」

 

 

 少年が声をかける。

 すると、集中するように閉じられたサラの目蓋が開いて、視線がこちらに向く。

 

 ……冷たい目だった。

 思わず一歩後ろに下がる少年は、しかし頭を振って鉄格子に近付く。

 

 

「サラ、どうしてあんなことをしたんだ」

「……あんなこと、とは?」

 

 

 神父に対しての態度のまま固定されてしまったかのような彼女の態度に困惑しつつ、少年は答えを返す。

 

 

「そりゃ、墓を掘り起こしたことだよ。……死体を確かめようとしたんだろう?サラにそんな技術があるとは知らなかったけれど……」

「……なるほど、そういう……」

 

 

 返ってきた答えにサラは何かを納得したようにため息を漏らすと、決心したようにこちらに視線を向けてきた。

 

 

「──生憎ですが、私にその様な技能はありません」

「……は?」

 

 

 返ってきた言葉が少年の表情を凍らせる。……だって、じゃあ、なんのために?

 

 

「……掘り返したことは事実です、それが必要だったことも。ですがそれでも、私に検死技術がないのもまた紛れもない事実です」

「……っ、なんなんだよっ、その理由ってのは!」

 

 

 頑なな言葉を紡ぐサラの事が急に分からなくなって、少年は鉄格子にすがり付くように近付いて、彼女へと疑問をぶつける。

 ──その激情に帰ってくるものは凪。彼女は答えられないと首を横に振った。

 

 

「……っ、なんで……っ」

 

 

 ──俺にまで、そんな目を向けるんだ。

 そんな言葉は口に出せなかった。出した途端にどうしようもない亀裂が入って、どうにもならなくなる予感がしたから。

 それでも、少年はすがるように、彼女へと視線を向ける。

 

 いつの間にか、彼女は泣き出しそうな表情を浮かべていて。

 

 

「─────」

 

 

 ただ一言だけ呟いて、彼女は視線を少年から切る。

 もはや話すことはない、ここでお前にできることはないのだと拒絶するかのような態度だった。

 

 しばらく少年は彼女を見続けていたが、彼女がこちらに視線を向ける気配はなく。少年はふらふらと踵を返し、牢の出口を目指す。

 

 

「───ジェームズ神父には、それで構わないとお伝え下さい」

 

 

 その背に掛けられた言葉に一度だけ立ち止まって。

 その言葉になんの感情も含まれていないことに気が付いた少年は、逃げるように牢を出ていった。

 

 

 

†  †  †

 

 

 

「……それで?情けなくもうちに逃げてきたってワケかい?」

「……ああ」

 

 

 町の中心部から少し外れた一軒のパン屋の店内。

 ──キキばあの店に逃げるように訪れた少年は、その憔悴した様子から心配したキキばあに促されるままに店内に導かれた。

 その中で一連の流れを説明していたのだが、聞いているキキばあは話が進むほどに「心配して損した」とでもいうような態度になっていく。

 

 

「……はぁ。なんというか、ほんっ……とうに、あのお転婆娘は何回言っても聞きゃあしないというか……」

「……あの、キキばあ?」

 

 

 ぶつぶつと文句を言うそんな姿が不思議に思えて、少年が声をかける。

 その様子は先ほどと比べれば天と地で、話を聞いてやった甲斐はあったかねぇ、とキキばあは内心で安堵のため息を吐く。

 

 

「その、心配じゃないのか?サラのこと」

「ああ?!心配?!んなもんいつも掛けられっぱなしさね!毎度毎度わたしゃ血圧上がりっぱなしだよ!」

「お、落ち着いてキキばあ……」

 

 

 血相を変えて捲し上げるキキばあの様子に、思わず聞くんじゃなかったと後悔する少年。

 しばらくして、キキばあは一つため息を吐いて話を始めた。

 

 

「いいかい、あのお転婆は何かをしでかす気だ。もしお前があの子を大切に思うのなら、もう少し信用しておやり」

「しん、よう?」

 

 

 呆けたように呟く少年に、そうさとキキばあが頷く。

 けれど、もはや何を信用すればいいのか、少年にはわからなくなってしまっていた。

 

 

「神父様は、サラを庇おうとしてた。なのに、サラはそれを違うって言って、理由があるなら言えばいいのに、それさえしなくて……。俺、サラの何を信じればいいんだよ……」

 

 

 実際、何か理由があるのなら話せばいい。

 なぜ彼女は理由を話さないのか、

 なぜ彼女は墓を掘り起こしたのか、

 なぜ彼女は──あの時、泣きそうな顔だったのか。

 分からないから、少年はこうして俯くことしかできない。だから、

 

 

「そうさねぇ、理由を言わないのは……。──知られたくない相手がいるから、かねぇ」

 

 

 ──外からもたらされる手がかりに、視線を上げた。

 知られたくない相手。

 サラが墓を掘り起こした理由を、知られたくない相手がいる?いや、でも。

 

 

「そんなの、話してもすぐ神父様の話で上書きされるんじゃ」

「もうちっと頭を使いな坊主。ほっとけば理由の方は神父のでっちあげで町には広まる。なら、わざわざ本当の理由は別にある、だなんてことを言う必要はないんだ。黙ってれば無罪放免、真相は露と消えるわけなんだからね」

「いや、でも」

 

 

 今度は、自分に『違う』と示す必要がない。

 理由を隠しておきたいのなら、そのまま神父の言葉通りだと頷いておけばいい。……敢えて自分に『違う』と伝える必要はない。

 

 

「……坊主、ところでの話なんだがね?『サラが違う』って言ったこと、その内容を詳しく伝えられたかい?」

「……あ」

 

 

 キキばあの言葉に、少年は唖然とする。

 ……そうだ。確かに自分は神父に対して、サラの返答を『違うらしいけどそれでいい』と言っていたとしか伝えていない。

 無論、それはあくまでもサラが子細を話さなかったから起きたことだ。

 

 

「だけど坊主は、その子細こそ知らずとも『理由が違うこと』は知っている。──なら答えはそういうことさね、『理由は伝えられないけど、違うということは伝えたかった』。……さて、ここまで解いて坊主はどこに行き着く?」

 

 

 神父が提示した理由とは違う、そして理由は話せない。

 だけど、違うという事実だけは伝えたかった。

 ……なら、導き出される答えは一つだ。

 

 

「……理由を聞いたなら、俺は神父様にそれを教えるはずだ。──だから言わなかった。何故ならば、サラが理由を知られたくない相手が……神父様だから」

「そして、その疑いをアンタにも持って欲しかったから違うと伝えた。……大筋はまぁ、そんなとこだろうさ」

 

 

 ふん、と不満げに息を吐くキキばあと、信じられないと視線を揺らす少年。

 なぜなら、それが事実なら。サラが神父に対して、何か疑いを持っているということになるからだ。

 けど、なぜそれが墓荒らしと結び付く?

 

 

「さてねぇ?雑に考えるならその死体に神父が何かしら関わってるとかだろうが。……腐乱死体だったんだろう?噂がどうあれ、神父に結び付くか……までは私にも分からないねぇ」

 

 

 ロッキングチェアに揺られながら放たれたキキばあの言葉。その一部に、少年は違和感を覚える。

 

 

「……?いや、なんで疑問系なんだ?キキばあも居たんだろ、祭儀。なら、神父様から聞いてるはず……」

 

 

 町民全員を集めて行われた祭儀。

 その始まりの時に、神父は遺体が腐っていたということを皆に伝えている。

 だから、おかしいのだ。───「腐乱死体だったんだろう?」という問いかけは。

 

 

「いいや、私は行ってないよ。そもそも私は神職が嫌いでね、金を貰っても行く気はないさ。……そもそもの話、私の足じゃ教会までの道なんざ、途中で諦めちまうよ」

 

 

 返ってきた言葉に、少年は衝撃を受けた。

 キキばあは、あの場にいなかった?

 ごくり、と唾を嚥下する。

 

 あの時、サラは何を呟いたのだったか。

 それを思い出した少年の中で、一つの推論が浮かび上がる。

 そしてそれに付随するように、仮説が次々と組み上がり──、

 

 

「……いや、まだ足りない」

「あん?」

 

 

 キキばあの疑問の声には答えず、少年は黙考する。

 ───これはあくまで推論でしかない。答えだと示すこと、それができるだけのものでしかない。

 疑いが積み上がった、単なる『噂』でしかない。

 だが、だからこそ。それは光明として、彼の目前に浮かび上がった唯一の道だといえた。

 

 

「……ふん、なんだか知らないが調子が戻ってきたみたいじゃないか。話を聞いた甲斐があったってものかねぇ?」

「……ありがとうキキばあ、色々楽になった」

 

 

 小さく礼を返せば「礼はいいさ、またうちで何か買っていくんならね」とキキばあは笑う。

 ……あの娘にしてこの母有り、とでもいうのか。そんな風に思って、小さく笑みが漏れる。

 

 そうして、しばしの間共通の話題に花を咲かせる二人なのであった──。

 

 

 

†  †  †

 

 

 

 そうして、話題に花が咲いたまま夜になった。

 

 知らない仲でもないのだから泊まっていけ、と半ば強引にサラの部屋の鍵を受け取った少年は、思わずちょっとどきりとしてしまったあと、気を取り直して部屋に入り、あるものを探した。

 そうして目的のものを見付けると、確認したのち元に戻す。

 

 そのあとは、しばらくして夕食ができたと言うキキばあの言葉に階下へ降りて、彼女の作った料理を楽しみ、そのまままた会話に花を咲かせ──、

 

 

「……寝てしまったか」

 

 

 ロッキングチェアに揺られながら寝息をたてるキキばあの姿に小さく笑み、起こさないように毛布を掛けて部屋の灯を消す。

 そのまま、二階のサラの部屋へと、音を立てないように戻っていった。

 

 

 

†  †  †

 

 

 

 ──そして、夜は更ける。

 

 人気のない店内は暗く、聞こえる音もキキばあの寝息だけ。

 遠く響くフクロウの声も、夜の静寂を破るほどのものではなく。……だから、その音は暗闇によく響いた。

 

 何かが地面を擦る音。

 ずる、ずるというその音は、最初は微かに。

 やがて近く、しかし微かなままに、夜の空気に響き渡る。

 何かを目指すように、ずるずると、微かに地面を擦る音だけを響かせて。

 

 やがて、店の前に一つの影が現れる。

 それは、黒いローブで姿を隠した何者か。

 それが、店外に繋がる戸を音を立てぬように通り、そのまま店中へと入ってくる。

 そして、まるで何かを探すように、一度頭らしき部分を左右に揺らしたあと、目的のものを見付けたのか移動を再開する黒い影。

 

 やがて、影はロッキングチェアで寝息を立てる、キキばあの前に立った。

 その影はしばし彼女を見つめるように佇んだあと、ゆっくりと彼女へと近付いていく。

 そして、その影の手らしきものが彼女の頬に触れようとした時──、

 

 

「ああぁあぁっ!!!」

「──っ!?」

 

 

 チェアの後ろに隠れていた少年が飛び出し、手に持った角材を影に振り下ろす!

 奇襲に成功した少年の攻撃は確かに黒い影に命中し、

 

 

(っ!?一発で折れた!?)

 

 

 驚愕する少年の目の前で真っ二つに折れてしまう。

 確かにいいところに当たった気はするが、幾らなんでも脆すぎやしないかと少年が気を散らした隙に、

 

 

「……っ、」

 

 

 黒い影は彼の脇を抜け、そのまま店外に飛び出してしまう。

 「待てっ!」と少年が叫ぶと同時、

 

 

「う、うおおぉ!神の敵めぇ!」

 

 

 という男の叫び声が外から聞こえた。

 同時、複数の人間が争うような音が外から聞こえてくる。

 ややあって、外の喧騒が収まると同時、店内に入ってくる人影があった。──そう、神父だ。

 

 

「すみません、逃げられてしまいました……」

「神父様、ご無事ですか!?それと何故ここに……?」

 

 

 面目ない、と頭を下げる神父を迎える少年。

 彼の問いに「君の見廻りの引き継ぎさ」と答えた神父は続けて言う。

 

 

「それより、ここの主人は?」

「……っ、そうだばあ様っ!」

 

 

 キキばあの安否を問われ、少年が弾かれたように店内のキキばあの元に走る。

 そして、驚愕した。

 あの一瞬で、キキばあの顔の右半分が爛れてしまっていたからだ。

 幸い見た目ほど酷い傷ではなさそうだが、それでもキキばあの意識は失われてしまっていた。

 

 

「──腐りかけている、のか?」

 

 

 後からやって来た神父が彼女の顔の傷を見てそう診断する。

 ……とにかく、彼女を休ませなければならない。

 そう判断した神父が彼女を抱え上げ、少年の方に視線を向ける。

 ある事実を、彼に伝えるためだ。

 

 

「それと、これはとても言い辛いことなのですが……」

 

 

 少年が続きを促す。

 ……次に彼が発する言葉を、ある程度予測しながら。

 

 

「サラ君が、地下牢からいなくなりました」

 

 

 ──返ってきた言葉は、おおよそ予想通りのものだった。

 

 

 

†  †  †

 

 

 

「明日の朝、山狩りを行おうと思います」

 

 

 教会のベッドにキキばあを寝かせた神父が、少年の方を振り返り告げる。

 告げられた少年は一度肩を震わせ、信じられないと神父に言葉を返した。

 

 

「神父様はサラを疑っているのですか!?」

「……サラ君が逃げたのは保存庫に隠されていた通路から。ゆえに、深夜の内に皆に知られず活動できたのは、現状彼女だけです。理由や手法は分かりませんが、彼女が犯人だという可能性が高いと言わざるをえません」

「そんな……」

 

 

 項垂れ、言葉を失くす少年。

 神父は彼に寄り添うように傍らに立ち、言葉を掛ける。

 

 

「安心なさい、神は全てを見ています。きっと、正しい裁決が下されることでしょう」

「神父様……」

 

 

 そして、一先ず落ち着くまでは一人にした方がいいだろうと判断した神父が部屋を離れる。

 一人取り残された少年は、しばし俯き続けていたが。

 

 

「……本当なのか?サラ、これが……」

 

 

 問いかけるように視線を上げる。

 先までの悲観はそこにはない。

 ただ、示されたある事実が、彼の意思を強く後押ししているのだった。

 

 

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