NARUTO知識ほぼ0の忍による勘違い忍法帖   作:ふくふくまる

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第二十六話 第七班として

 

 

 数日後、遅刻するカカシ先生を待つ最中、第七班の私達は橋の下を流れる川で水面歩行の修行を行っていた。

 ユウさんに水面歩行の術を教わって以来、カカシ先生の待ち時間を利用して、第七班の皆と修行していたのだ。

 

「どうしてこんなこと思い付いたのよ?木登りの応用で水の上を歩くだなんて………」

「ちょっと知り合いに教えてもらってね」

 

 川原に腰を下ろしながら尋ねてくるサクラちゃんにそう答えれば、彼女は「ふうん」と頷く。

 水面歩行の術を皆に教えて数日、サクラちゃんはすぐに覚えサスケ君もコツを掴んであっという間に歩けるようになった。しかし何故かナルト君だけいつまで経っても習得できない。

 

 川の水面にはすでに習得したサスケ君とぶくぶくと沈んでいくナルト君の姿があった。そんなナルト君を仕方がなさそうにサスケ君が救出している。

 

「木登りが出来るから水面歩行もいけると思うんだけど………」

「ナルトが不器用なだけなんじゃない?」

 

 それにサクラちゃんはくすくすと笑った。

 

「…………───」

「ん?どうしたのよ?」

「…………ううん、何でもない」

 

 水面に沈むナルト君に呆れた様子で手を貸すサスケ君。そしてどこか楽しげに笑うサクラちゃん。

 

 そんな彼らの様子を見て、たった今、カカシ先生やユウさんの気持ちが分かった気がした。

 

 皆はまだ、自分達が中忍試験に推薦されたことを知らない。中忍試験がどんなものかは決して教えられないが、この子達が少しでも強くなって怪我をしないでほしいと思う。

 

 カカシ先生が私達の修行を見たり、ユウさんが私を強くしようとするのには、そういった思いがあるのかもしれない。

 

 するとその時、上から視線を感じた。ん?と思い見上げてみると、すぐ近くに建てられた鳥居の上にカカシ先生が座っている。

 

 そして爽やかに「やあ、諸君おはよう!今日は人生という道に迷ってな」と言い放つ先生に苦笑するしかなかった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「いきなりだが、お前達を中忍選抜試験に推薦しちゃったから」

 

 カカシ先生の言葉に三者三様第七班の子達が目を丸くする。中忍試験がどういうものかすでに知っていたようで、ナルト君は嬉しそうに騒ぎ始めた。

 

「推薦は強制じゃない。受験するかしないかを決めるのはお前達の自由だ………といっても、受ける気はあるようだな」

 

 カカシ先生がくるりと私達の顔を見渡す。

 ナルト君やサスケ君は愚問とは言え、サクラちゃんもやる気に満ちた顔をしていた。波の国の任務で彼女が一番チャクラコントロールが上手くその応用技を提案していた辺り、それが自信に繋がっているのかもしれない。

 

「サクラちゃんも受験する?」

 

 念のためそう聞けば、サクラちゃんは頷く。

 

「…………受かるかどうかは分からないけど、私だって成長しているもの。どこまでやれるか試してみたいわ」

「───そっか」

 

 中忍試験がどんなものかすでに知っている身としては非常に止めたいが止められない。

 ふとカカシ先生を見れば、咎めるようにじとっと睨まれた。部下の覚悟に水を差すなってところだろう。

 

「お前らに受験する意思があるようだから先に言うが、この試験はスリーマンセルでしか受けられない」

「ん?ちょっと待つってばよ。俺達フォーマンセルだから………」

「お前らの内、一人は別班に移動してもらう」

 

 そんな先生の言葉に一瞬ナルト君達に緊張が走る。

 そりゃあそうだよね。見ず知らずのチームに入れだなんて初受験のこの子達には荷が重すぎる。

 そして茶番だと思いながらも手を挙げた。

 

「私が別班に移動するよ。良いですよね?カカシ先生」

「ああ、構わん。それと、ホタルが別の班に行ったとしても俺の部下であることは変わりない。しっかりとやれよ」

「はい。ご期待に添えるよう頑張ります」

 

 特に何の打ち合わせもしていないが、爽やかに言い返すカカシ先生に白々しく思う。この人、こういうところが本当に掴めないんだよなあ………。

 

「ちょっとタンマ!ホタルってばそれで良いのかよ!せっかく第七班で頑張ってきたのに……!」

「そ、そうよ!そんなこといきなり言われたって納得できないわ!その、試験の仕組み上、仕方のないことだと思うけど」

 

 そして「本当にホタルはそれで良いの!?」と焦ったようにナルト君達が詰め寄る。

 

 それに思わずぽかんとしてしまった。

 二人とも決して薄情ではないが、ナルト君はサクラちゃんが、サクラちゃんはサスケ君が班にいれば、まあ良いと思っていた。けれどこうやって引き止めてくれるのは嬉しいものがある。

 

 訝しげな目で見ているサスケ君はさておき、班分けされた当初あんなにもばらばらだった第七班がこうもまとまっていたことに感慨深くなってしまった。

 

「ありがとう。でも私は大丈夫。それに、もしかしたらチーム同士で協力し合えるかもしれないでしょ?本当は少し不安だけど、班は違っていても皆で中忍試験を受けられるから心強いんだ」

 

 何だか申し訳なさも感じながらそう言えば、二人はどこかしゅんとした様子でうつむく。

 

 私は決して中忍試験を受験するわけではない。

 

 けれど第七班のこの子達を、何か企みを持っている他里の忍や内部に潜むスパイから守れるかもしれないと思うと、任務への取り組み方も変わってくる。

 

 カカシ先生を見れば「そうだな」と頷いた。

 

「今後任務をこなす上で急造チームを作ることがある。ホタルが班を一時的に抜けることもあるし、この中忍試験で合格者が複数出た場合、スリーマンセルになるよう他の下忍達と受験することもある」

 

 その言葉にナルト君達が顔を上げる。

 

「後にも先にもこういったことには慣れておいた方が良い。中忍試験は危険だがその分得るものも大きいだろう。試験後ホタルに成長した姿を見せてやれ」

 

 「ホタルもな」と言う先生に、私も同意するように第七班の三人に笑みを見せた。

 

 カカシ先生はいざという時にこういうフォローを入れてくれるから有難い。

 まだきちんと納得はしていないものの、ナルト君やサクラちゃんの顔を見るに少しばかり気持ちが浮上したようだ。

 

 そしてちらりとサスケ君に視線を向ける。

 彼もナルト君達のように納得していない顔をしているけれど、どこか不信感のあるその表情が気になった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 カカシ先生からの連絡も終わり、各自解散後。サスケ君が一人になったところを見計らって、後ろから彼に近づいて行った。

 

「……………何の用だ」

 

 やっぱりばれていたのか、くるりと振り返って溜め息をつかれる。そんなサスケ君に苦笑しながら駆け足で隣に並んだ。

 

「いや、たまたま帰り道が同じでね。それにさっきのサスケ君の様子を見て何かあるのかなと思って」

 

 そういえばこうやってサスケ君と二人きりで話すのはあまりない。というか、サバイバル演習で4人で鈴を取りに行こうと持ち掛けた時以来かもしれなかった。

 

(そもそも私、サスケ君によく思われていないんだよね………)

 

 ナルト君やサクラちゃんには割と甘いと思うのだが、サスケ君は私に対して些か厳しい。

 今も「何だこいつ?」という表情をしているため、サスケ君の中の私の印象がどうなっているのか怖くて聞けなかった。

 

 すると彼はしばらく黙り込んだ後、ぼそりと言う。

 

「お前、カカシとグルなんだろ。あんな下手な芝居うちやがって」

 

 その言葉にぎくりとする。

 え、もしかして潜入任務のこと知ってる……?

 

「お前が中忍試験を別チームで受験するのは、あらかじめ決められてたんだろ。じゃなきゃ試験直前にこんなことを決めるのはおかしい」

「あ、ああ。なるほど………」

「大体、カカシをちらちら見過ぎなんだよ」

 

 やれやれといった様子で肩をすくめるサスケ君に安堵する。どうやら潜入任務のことはばれていないらしい。

 それと同時に以前カカシ先生に「顔に出やすいんだから気を付けなさい」と言われたことを思い出した。気を付けなきゃな………。

 

「ごめん。実はカカシ先生から事前に相談されてたんだ。中忍試験は別班で参加しないかって」

「それならわざわざあの場で芝居しなくても良かっただろ」

「あそこで相談されたら絶対にナルト君達に止められてたでしょ?それなら私から行くって言った方がまだ皆も納得するんじゃないかな」

 

 後者に関しては完全な推測であるけど、あの場でカカシ先生が名指しするよりも私が進んで「チームを移動する」と言った方がマシだろう。

 それに、私が他人の指示で班移動した場合、残された第七班の子達に罪悪感を与えてしまうかもしれない。

 

 適度に脚色を加えつつ返せばサスケ君はまたしても、ぐぐっと眉間に皺を寄せた。

 

「……………ナルトはともかくサクラはそこまでガキじゃないだろ。それに、お前は一体何なんだ?」

「何、とは………」

「チームをまとめようとしたかと思えば、そうやって勝手に俺らを決めつけて誤魔化し調子の良いことを言う」

 

 そう言われて、思わず立ち尽くしてしまった。

 

 サスケ君は裏で起こっているやり取りを知らない。

 中忍試験の潜入任務や内部にスパイが隠れているかもしれないのを知らないため、私とカカシ先生が独断で決めたことを不快に感じているのだ。

 

 けれど、それだけじゃない。私はサスケ君に『第七班の子達を子供扱いしている』と暗に見透かされてしまったような感覚がしていた。

 

「この狸野郎」

「た、たぬき野郎!?」

 

 するとサスケ君は立ち止まり、半目で睨んできた。

 そして不貞腐れたように吐かれた言葉に目を丸くする。狸野郎って。

 

 それから彼は大きく息を吐いた。

 

「…………お前があいつらのことを思ってるのは分かるがな」

「ごめんね、本当に。今度から皆にきちんと相談するよ」

 

 そう謝ればサスケ君はふいと顔をそらす。

 

 ナルト君やサクラちゃんに対しても思ったけれど、彼も不器用ながら第七班のことを大事にしているのだろう。

 

(良い班だな)

 

 明日から中忍試験が始まる。

 

 彼らが子供だからとかではなく、大切な仲間として何者にも邪魔されず、ただ試験に臨んでほしいと心から思った。

 

 

 




次回からようやく中忍試験に入ります。
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