退屈な幽々子、ふと、散歩をすることにしました。
すると、やけに亡霊の数が多いことに気が付きました。


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今回、震災を思わせる描写があります。
苦手な方は、今作品を読むにあたって細心の注意を払ってください。



せめて最期は

 どうしようもなく退屈なのだった。

妖夢は人里へ買い出しに行ってるし、来客はないし。

何をしようにもすることはないし。

昼寝をするにももう十分寝たし……

……たまには歩いてみようかしら。

ということで、久しぶりの散歩をしてみることにした。

浮くこともできるけど、せっかく歩くのならこの砂利を踏む感覚すら、楽しみの一つとなりつつあった。

うっすらと晴れているかわからないほどの曇り空、枯山水を思わせる、頼りにしている愛しい従者によって手入れされた庭。

そして石造の階段とその脇にある灯籠。

こうして見てみると、普段は意識していなかったけれど白玉楼って結構風情のあるところよね。

ふよ……ふよ……

あれ?なんだろう、やたら亡霊の数が多いような……

もしかして、現世で何かあったのかしら?

ふよ……

ちょうど近くにいた亡霊の一つを手に取ってみる。

さあ、すこし最期の記憶を見せて頂戴?

 

……突如、轟音が鳴り響く。

周りの物質は揺れに耐えきれず崩れ落ち、自分はひたすら身を守ることしかできない。

命からがら逃げだす。

また大きな揺れが来る。

崩れ落ちる家屋、絶えない悲鳴。

足は負傷してしまい、満足に歩けそうもない。

大波が押し寄せる。

逃げ出すことはできない。

まだ花を咲かせていないつぼみ

満開の桜の下で、幸せそうにしている家族。

 

そこで記憶は途切れていた。

ああ、悲しいことね。

人間はどうしても、天災の前では為す術なく、ただ身をゆだねることしか許されないのかしら。

なんと、なんと救いのないことでしょう。

あのときのまま。

……桜、そう、あの記憶の最後には桜があった。

あれはいったい……あの満開の桜は……

『願はくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ』

どうしてこの歌を、どうして今、思い出したのだろう。

亡霊の記憶の桜、そしてこの歌……

ああ、もしかしてそういうこと?

ちょうど、ここは桜の似合う白玉楼。

その願い、叶えてあげましょう。

 

 あの木へ向かう。

亡霊を連れて。

あれだけ大きい木だもの、そして、あれだけ思い入れの深い木だもの。

きっと、亡霊たちも喜んでくれるはず。

行き着いた先は、私の西行妖。

やっぱり大きいわね……ってそういえばこれ満開にできないじゃない。

私としたことがうっかりしてたわ。

でも、だからと言ってこのまま桜を見せられないのも……

あ、そうだ。

私の能力を使えば、もしかしたらできるかもしれない。

『死を操る能力』、言い換えれば『死をすごく早める能力』。

桜は花を散らして枯れていく、つまり花を咲かせることは死に近づくとも言える。

それなら、私の能力で、できるかな……?

やってみよう、さて、一番早く咲きそうなのは……あの木ね

どうか成功しますように……

 

 「はぁ……はぁ……」

五本目でようやく成功した。

慣れないことはするものじゃないわね。

あぁ……疲れた。

せっかく咲かせた桜の下で、休むとしましょうか。

……こうしてもたれかかってみると、樹木ってこうも力強い、すごく安心する。

花びらは風に乗って散り始めていた。

「やっぱり桜は満開に限るわね〜」

ふよ……ふよ……

あら、お礼を言いにきたの……って、すごい数。

やっぱり、あの地震でこちらへきた人って、桜を楽しみにしたまま来てしまったのかしら。

それなら、こちらでは楽しんで欲しいわ。

『願はくは 花の下にて 春死なむ その如月の 望月のころ』

この歌を読んだ人って、結構好き者よね……でも、そういうのもいいわよね。

ここは、桜の下。

安らかに眠りなさい。

『その浮世 救いなかりし 厭世でも せめて冥土は 雪花の下』

 

 

 

 

 

 




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それでは、またいつか

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