インフィニット・ストラトス~蛇を宿した者~ 作:*.❀Mikagura✿.*
mikaguraでございます〜
まぁこれからもチマチマチマチマ…
投稿頑張るのできなーがに待っててくださいな…
翌日。
IS学園、アリーナ。
「……眠い」
アリーナの格納庫で、ヨミ・ボーデヴィッヒは大きな欠伸をしていた。
「お前はいつも眠そうだな」
隣に立つラウラ・ボーデヴィッヒが呆れたように言う。
「だって朝だもん」
「もう昼だぞ」
「……そうだっけ?」
「そうだ」
「じゃあ、まだ朝みたいなものだね」
「どんな理屈だ」
ラウラが呆れる。
その少し離れた場所では、一夏たちも準備を進めていた。
一夏は白式。
シャルロットはラファール・リヴァイヴ・カスタムII。
箒は訓練機の打鉄。
そしてラウラはシュヴァルツェ・レーゲン。
それぞれが自分の機体を確認している。
「今日の訓練って何するんだ?」
一夏が尋ねる。
「実戦形式の模擬戦だ」
千冬が答えた。
「ただし、昨日までとは違う」
「違う?」
「今回は機体性能だけを見る訓練ではない。状況判断と連携を見る」
千冬が全員を見る。
「実戦では、自分の得意な状況だけで戦えるとは限らん。相手に合わせて戦い方を変えろ」
「なるほど……」
シャルロットが頷く。
ヨミはというと。
「……帰っていい?」
「駄目だ」
千冬が即答した。
「まだ何も言ってないけど」
「顔に書いてある」
「読心術?」
「教師としての経験だ」
ヨミは残念そうに肩を落とした。
「ちぇー」
「お前は本当に緊張感がないな……」
一夏が呆れる。
「そう?」
「そうだよ」
「でも」
ヨミは一夏を見る。
「訓練が始まったら、ちゃんとやるよ」
その声から眠気が消えた。
一夏は一瞬だけ目を瞬かせる。
「……」
普段のヨミとは、少し違う。
ラウラはそれに気づいていた。
「始まれば分かる」
「何が?」
「ヨミが訓練だけはしっかりやる理由だ」
「?」
そして
『訓練開始』
アリーナに機械音声が響いた。
「行くよ」
ヨミの指にある指輪が光る。
「ティアマト」
一瞬。
深い藍色の装甲がヨミの身体を包み込んだ。
二対四枚の翼。
巨大な尾。
重厚な装甲。
龍騎士を思わせる姿。
「やっぱりあれか」
一夏が白式を構える。
「今日は俺たちとやるんだよな?」
「うん」
ヨミが答える。
「ボク様とラウねぇさんで、一夏とシャルを相手にする」
「二対二か」
シャルロットが構える。
「手加減は?」
「しないよ」
「即答!?」
一夏が叫ぶ。
ヨミは笑った。
「だって訓練で手加減したら意味ないでしょ?」
「いや、普通はもう少しこう……」
「一夏」
シャルロットが制する。
「諦めた方がいいと思う」
「なんで!?」
「ヨミは本気で訓練するとき、かなり怖いから」
「シャルまで!?」
ラウラがシュヴァルツェ・レーゲンを展開する。
「ヨミ」
「ん?」
「やりすぎるな」
「努力する」
「努力ではなく、約束しろ」
「……善処します」
「信用できんな」
ラウラがため息を吐く。
『模擬戦開始』
次の瞬間。
ヨミの周囲に龍頭型ビットが展開した。
ティアマトの【壱之首】。
今回は全てを一斉に飛ばさない。
「……」
ヨミは一夏たちを見ている。
動かない。
「?」
一夏が訝しむ。
「どうした?」
「別に」
ヨミは笑った。
「ちょっと待ってるだけ」
「何を?」
「一夏が動くのを」
「……」
一夏が前へ出る。
「だったらこっちから!」
白式が加速する。
「今!」
ヨミの声と同時に。
龍頭型ビットが一斉に動いた。
「なっ!?」
真正面からではない。
左右。
上。
背後。
四方八方から包囲する。
「くっ!」
一夏が回避する。
「そこじゃないよ」
ヨミの声
次の瞬間
逃げた先へ、別のビットが待ち構えていた。
「しまっ……!」
シャルロットが援護射撃を行う。
「一夏!」
「分かってる!」
白式が急旋回する。
その瞬間。
「ラウねぇさん」
「任せろ」
シュヴァルツェ・レーゲンが前へ出る。
一気に距離を詰める。
シャルロットが迎撃する。
「ラウラ!」
「遅い」
ラウラが射線をかわす。
「ヨミ!」
「うん」
ティアマトの大型装甲が前へ出た。
攻撃を受けるが…
「微動だにしてない!?」
一夏が驚く。
「ティアマトは防御型だからね」
ヨミは平然としている。
「だから、こうする」
ティアマトの翼が開く。
大量のビットが一斉に展開。
「多すぎるだろ!」
一夏が叫ぶ。
「避けてみて?」
「簡単に言うな!」
アリーナ中を龍頭型ビットが飛び回る。
シャルロットが次々と撃ち落とす。
「……あれ?」
シャルロットが気づく。
ヨミ本人がいない。
「一夏!」
「え?」
「ヨミは!?」
「……!」
一夏が周囲を見るがどこにもいない。
「まさか……」
上空。
「見つけた?」
ヨミがいた。
ティアマトの巨体が、ビットによる撹乱の隙に上空へ移動している。
「じゃあ、次」
ヨミが指を鳴らす。
「ティアマト、待機」
深い藍色の装甲が光へ変わっていく。
「え?」
一夏が目を見開く。
ティアマトが消えた。
「ヨミ!?」
その直後に別のISが姿を現した。
深い緑。
龍人を思わせる装甲。
巨大な尾。
そして複数の龍を思わせる武装。
「ヤマタノオロチ」
ヨミが呟く。
「戦闘中に機体変更……!?」
シャルロットが驚く。
「ヨミ!」
ラウラが叫ぶ。
「分かってる」
ヨミは動かない。
機体変更直後。
ほんの一瞬だけ。
隙がある。
そこへ一夏が突っ込む。
「今だ!」
白式が迫る。
「取った!」
だが。
「……甘いよ」
ヨミが笑った。
「ラウねぇさん」
「了解」
シュヴァルツェ・レーゲンが一夏の前へ滑り込む。
「なっ!?」
一夏の斬撃が止められる。
その間にヤマタノオロチの翼が開く。
「ボク様が機体変更するときに隙があるのは、最初から分かってる」
「じゃあ、なんで……」
「その隙を狙う相手が来る場所も、考えておけばいいだけ」
ヨミが笑う。
「戦いって、そういうものでしょ?」
大量の武装が展開される。
シャルロットが叫ぶ。
「一夏、離れて!」
「くそっ!」
二人が散開する。
「逃げた先にもあるよ」
「多すぎるだろォ!?」
ヤマタノオロチの武装が追いすがる。
右へ逃げれば右。
左へ逃げれば左。
上へ逃げれば上。
まるで逃げ道そのものを消していくような攻撃。
「ヨミ!」
ラウラが呼ぶ。
「やりすぎだ!」
「まだ大丈夫」
「そういう問題ではない!」
ラウラが苦言を呈する。
その声を聞いたヨミが少しだけ笑った。
「じゃあ、終わりにする」
「やっとか……」
一夏が息を吐く。
その瞬間。
ヨミが姿を消した。
「え?」
一夏が目を見開く。
「どこだ!?」
次の瞬間。
「ここ」
背後。
ヨミの銃剣型武装が、一夏の白式の背後へ突きつけられていた。
『撃破判定』
機械音声。
『白式戦闘不能』
「……」
一夏が固まる。
「いつの間に……」
「ボク様が速いんじゃなくて」
ヨミが答える。
「一夏が周りを見る余裕をなくしてただけだよ」
「……」
何も言い返せない。
シャルロットも武装を下ろす。
「僕も完全に誘導されてた」
「うん」
「……怖いなぁ」
「失礼だなぁ」
ヨミは笑う。
「ちゃんと訓練してるだけだよ」
アリーナに模擬戦終了の音声が響く。
『訓練終了』
ヨミはヤマタノオロチを待機状態へ戻す。
そして格納庫へ戻ると。
「……疲れた」
いつものヨミに戻っていた。
一夏が呆然とする。
「お前……さっきまであんな戦い方してたのに」
「ん?」
「なんで今そんな眠そうなんだよ」
「疲れたから」
「いや、そうじゃなくて!」
「?」
ヨミは首を傾げる。
ラウラがその横で小さく笑った。
「これがヨミだ」
「説明になってない……」
「十分だ」
「ラウラまで……」
そこへ千冬が歩いてくる。
「ヨミ」
「はい」
「機体変更を使った判断自体は悪くない」
「ほんと?」
「ああ。ただし」
千冬はヨミを見る。
「機体変更には隙がある。相手がそこを理解していれば、今のようにはいかん」
「もちろん知ってるよ」
「ならいい」
千冬は続ける。
「その能力は便利だが、万能ではない。使うなら状況を選べ」
「はい」
ヨミは素直に返事をする。
その様子を見ていた一夏が口を開く。
「なあ、ヨミ」
「ん?」
「お前、三機あるなら……いつでも好きな機体に変えられるのか?」
「できるよ」
「じゃあ、かなり便利じゃないか」
「便利だよ」
ヨミは少し考える。
「でも、学園のトーナメントとかでは禁止されてる」
「なんで?」
「公平じゃないから」
「なるほど……」
「それに」
ヨミは指輪を見る。
「機体変更中は隙ができるから、失敗したら普通にやられるよ」
「……」
一夏は今日の戦闘を思い出す。
「お前、あの隙をわざと見せたのか?」
「うん」
「…………」
「一夏がそこを狙うって分かってたから」
「…………」
「どうしたの?」
「なんか、すげえ腹立つ」
「そう?」
「そうだよ!」
シャルロットが笑う。
「でも、ヨミらしいよ」
「それで済ませるなよ!」
格納庫に笑い声が響く。
その一方で、ラウラはヨミを見ていた。
「ヨミ」
「ん?」
「今日の戦い方は、以前よりも良くなっていた」
「ほんと?」
「ああ」
「じゃあ、もっと頑張ろうかな」
「……ほどほどにな」
「善処する」
「またそれか」
二人が並んで歩いていく。
少し後ろから一夏たちが続く。
「なあ、シャル」
「何?」
「俺、これからヨミと訓練する時、どうすればいいんだ?」
「まず、ヨミが笑ったら警戒する」
「それだけ!?」
「うん」
「対策になってねえ!」
そんな声が格納庫に響いた。
ヨミは振り返る。
「一夏」
「なんだよ?」
「次はもっと頑張ってね」
「……」
一夏は固まった。
「……やっぱり怖いわ、こいつ」
「聞こえてるよ?」
「聞こえてたのかよ!」
ヨミは楽しそうに笑った。
IS学園での訓練の日々は、少しずつ本格的なものへ変わっていく。
そしてヨミ・ボーデヴィッヒという少年が持つ三機のISは。
ただ三機の専用機を所有しているというだけではない。
それぞれ異なる戦い方を持つヨミにとって。
三機すべてが、戦場そのものを変えるための選択肢だった。
第5話・終
最近、眠れなくて困っちまいます( ˇωˇ )
では、次回もお楽しみにー