乳を求めて三千里   作:イチゴ侍

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前回更新が半年以上前って⋯⋯。
お久しぶりでございます。

年超す前になんとか一話上げられた⋯⋯


第十八話 新たな年、雪国での新たな出会い!

前回のあらすじ!

 

──俺が責任とってやんよ!

余計なことを口走って変なフラグを立たせた双壁のトレーナー君。なんだか当初の目的からかなり離れてしまっているような気がするが、これから巻き返せるのか!

そして、いつになったらトレーナー君が求める山は見つかるのか……。

 

 

 

 

 

《第十八話 新たな年、雪国での新たな出会い!》

 

 

 

 

 

時が経つのは早いもんで、枯れ葉が地面いっぱいに敷き詰められ、肌寒さがより一層際立つ時期になった。

東京ではあまり縁はないが、日本の北の方はもう雪が振り積もっているらしい。

 

天皇賞秋が終わってからというもの、これといったレース出走は無かった。

 

11月に行われたマイルCSに、当初はスズカを出走させようと考えていたが、スズカの調整が間に合っていなかったため見送ることにした。

本人もエアグルーヴとの一戦から納得のいく走りを掴めていないのか、出走予定を取り消すことに不満は無いように見えた。

 

 

そして12月、早いもので今年も終わりを迎えつつあった。

行事ごとも目白押しだったが、担当二人ともあまり興味を持たないため、これといって話すことが無いのだ。強いて言うなら、クリスマスでマックイーンがケーキとチキンの食い過ぎで太っ⋯⋯くらいだろうか。

 

 

「はぁ、はぁ⋯⋯」

「これから年末で餅やらおせち食うんだからな!クリスマスで蓄えた栄養をここで消費していくんだぞー、マックイーン」

「勿論ですわっ!」

 

というわけで現在、マックイーンは俺の考えた「対マックイーン用トレーニングプラン」を実施しているところだ。

そのお腹に行く栄養が少しでも胸部に行ってくれないもんかな⋯⋯なんてな。

 

 

「このままじゃメジロの恥さらしだぞー」

「なっ!」

「だらしない恰好のウマ娘なんて俺は担当にした覚えはないからなー」

「トレーナーさんが言ったのではありませんか!自分が責任取ってやると!」

「軽率にその言葉を使うな!バカ野郎!」

 

マックイーンが太り気味で責任責任言うせいで俺がウマ娘に手を出したド畜生だと思われていたが、流石に膨らんだりへこんだりが早いため、誤解だと気づいてもらえたらしい。

今では一周回って温かい目を向けられるようになった。まぁ、それはそれで居心地が悪いんだよな。

 

 

「トレーナーさん、戻りました」

「おかえりスズカ。どうだ何か掴めたか?」

「いえ」

「まぁ、だろうな」

 

分かってはいるが、俺はスズカに走り込みをさせた後に聞くことにしている。走りの中で些細なことでも違ったことが無かったかどうかを聞いてはみるが、変わらず現状維持な状態だ。

 

 

「焦らず一歩一歩だな。スズカ」

「トレーナーさんが一生をかけて責任もってくれるので焦りはありませんよ」

「お前らわざとやってるな!?」

「ふふっ、もう一周走ってきますね」

 

颯爽と走り出すスズカだが、俺がストップウォッチを構える前に走り去ってしまった。

 

 

「スズカの奴、良い顔しているな」

「エアグルーヴッ!」

 

ほう、練習か。私も同行しよう。

とでも言っているかのような顔をしたエアグルーヴがやってきた。

 

 

「まぁ、おかげさまでな」

「ん?」

「そりゃあ、お前に先頭を取られたんだ。取り返す為に燃えるのは当然だろ。打倒エアグルーヴだ」

 

もちろんエアグルーヴだけじゃなく、神戸新聞杯で敗れたマチカネフクキタルや俺たちが回避したマイルCSで圧巻の走りを見せたタイキシャトルもだ。

 

それに来年からスズカ、マックイーンの戦う舞台はシニア級へと進む。次世代のウマ娘達も次々と頭角を現し始めている。

 

トレーナー目線で言えば、強いウマ娘の登場はワクワクする事だが、それと自分の担当ウマ娘が相対するってなると少々複雑な気持ちにはなる。

 

まぁ、俺の愛バが負けるわけないんだけどな!

 

 

「一度勝ち星を上げられたからと油断している訳ではなかったが、これはうかうかしてられないな」

「もっと余韻に浸っててもいいんだぜ?」

「ふっ、たわけ。」

 

より高みを目指そうとするスズカを目にして黙っていられる女帝では無いようで、メラメラとその瞳には、蒼炎が浮かんでいた。

 

 

「次に戦える時を楽しみにしてる。スズカに伝えといてくれ」

「おう」

「エアグルーヴ! 次は負けないわ!」

「スズカ!?」

「一周すんのはっや」

 

先に走り始めたはずのマックイーンと大差を付けて戻ってきたスズカだった。

 

 

 

トレーニング後、いつものように二人の脚のチェックを行っていた。

 

 

「よし、今日のマッサージ終わり。二人ともお疲れさん」

「いつもありがとうございます、トレーナーさん」

「よせやい、褒められても嬉しくねぇよ」

「顔が溶けきってますわよ……」

 

しょうがないだろ、褒められ慣れてないんだから。

 

 

「ところで、お二人は年末どうお過ごしになるのか決めていますの?」

「年末かぁ……年明けに初詣は行こうかなーとは思うが、それ以外は何もないな。スズカは?」

「私は……うーん、走ること以外は何も」

 

ごめん、スズカ。聞いた俺が馬鹿だった。

 

 

「マックイーンは何かあるのか?」

「私は毎年恒例のメジロ家でのパーティーやら、挨拶回りがありますわ」

「こりゃみんなバラバラかぁ」

「あら、ちょうど何も予定を入れていない方がいるではありませんの」

 

マックイーンの視線を追った先にいるのは、その場で左回りにグルグルしているスズカだった。

 

 

「走ること以外思いつかない」

「スズカさんじゃないんですから」

「つってもなぁ」

「でしたら丁度いい物がありますわよ」

 

そう言ってマックイーンが取り出したのは二枚のチケットだった。

 

 

「そ、それはッ!?……なんだ?」

「北海道行きの旅行券ですわ……ゴールドシップさんから今朝、突然渡されまして」

「その名前が出てきた瞬間に、それがただのチケットに見えなくなったんだが?」

 

しかしその旅行券はしっかり本物だった。だが、そんなものを何故渡してきたのか。

 

 

「あたしは巨大隕石から地球を守るので精一杯だから、お前にやる。万が一の時はそいつで逃げろ──そう言って渡されましたわ……」

「ゴルシ……あんのバッキャロー。お前が死んじまったら俺らだけ助かったって意味ねぇじゃねぇか!!」

「トレーナーさん!? うそでしょ……」

 

まぁ、それはそれとして。

経由はどうであれ、旅行券が手に入ったのはデカい。

 

 

「けどいいのか?マックイーンが貰ったものだろ」

「ええ、このまま私が持っていても無駄になってしまいます。それなら使える方が持つのが良いかと」

「そう言われたら貰わないわけにはいかないか」

「北海道……雪景色、まだ見ぬ景色……はぁ」

 

景色オタクのスズカもすっかり頭が一色に染まりつつあるし、年末は二人で旅行かな。

 

 

「それじゃ、ありがたく使わせてもらうよ。ありがとうな、マックイーン」

「トレーナーさん……」

 

“私も行きたいです”と目で訴えてくるスズカ。

 

 

「そんな顔しなくても、ちゃんと連れて行くってば」

「お土産は白い例のクッキーで構いませんわ!」

「……それが目的だったな?」

「な、なんのことやら?」

「素直に白状したら36枚入りを買ってきてやるぞ」

「計画通りですわ!」

「マックイーン……」

 

ふっ、ちょろいぜ。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

そんなこんなで、俺とスズカはマックイーンから頂いた旅行券で北海道へ向かった。

しかし、スズカとの移動はなかなかに大変だった。この子、気がついたらどっか行っちゃうし……って言ってもだいたい俺を追い越して前の方歩いてるのが大半なんだけどさ。年明けのシーズンだから空港内もかなりの人で賑わっていたし、はぐれたりなんなりするのは当然だった。

 

 

「トレーナーさん!見てください!真っ白です……」

「真っ白だなぁ……」

 

空港を出た俺達を出迎えたのは、一面の雪景色だった。駐車場に長く止められているのか、車が雪だるまと化してるし、道路沿いには子供をすっぽり隠してしまうほど大きな雪の壁ができてる。

 

そしてなによりも寒い……。流石は雪国だ。当たり前のように気温はマイナスだし、あっちで異常気象みたいな温度がこっちでは日常茶飯事なんて同じ日本とは思えないぜ。

 

スズカはというと、それはもうこの景色に目を輝かせている。寒さに関してはそれほど気にしてないようだ。ウマ娘だからか?羨ましい。

 

 

「あの、走ってきても……」

「ダメ」

「むぅ」

「そんな見たことない拗ねた顔してもダメだからな」

「……分かりました」

 

渋々だが了承してくれたが、この走りへの飢えを何とかして発散してあげないといつ爆発するか分かったもんじゃないからな。今日泊まる旅館の人に聞いてみるかな。

 

 

「さて、まずはバス、バス……」

「あの!もしかしてサイレンススズカさん……ですか!?」

「は、はい。そうですが」

 

バス停を探していると、スズカが声をかけられていた。

相手は若い女性だった。その隣には彼氏さん?っぽい男もいる。カップルか、爆ぜ……いや、俺も言える立場じゃねえか。付き合ってるわけじゃないけどさ。

 

 

「私、ファンなんですよ!スズカさんの走りほんとに素敵でいつも見惚れちゃってて……」

「そ、そうなんですか」

「握手してもいいですか!!」

「私でよければ……」

 

スズカがおずおずと手を差し出すと、女性はわぁーっと歓喜の声をあげて両手でスズカの手を包むように握手をしていた。

 

 

「わ、わぁ、手綺麗……指細い……すべすべだよぉぉ」

「えと……そ、そんなことないですよ……」

 

──限界オタクじゃん……。

なんて心の中で思っていると、彼女の彼氏さんと目が合った。思わずお互いに苦笑い。

そして数十秒ほど経って、ようやく握手が終わったようだ。

 

 

「はぁぁ、本当にありがとうございました!!この手、一生洗いませんから!」

「手は洗ってくださいね……」

「洗います!!」

 

うーん、この……。

 

「ところで、スズカさんはどうして北海道に?お一人で旅行ですか」

「いえ、その」

「あー、どうも」

 

そこでやっと俺の存在を認識してくれたっぽい女性。なぜか俺の姿を見て、口をパクパクとしだした。

 

 

「え!え!もしかして、かれ……」

「ん?」

 

何やら彼氏さんとコソコソ話し出した。

 

 

「……絶対に彼氏さんだよあれ!」

「そうなんじゃない?だって二人だけっぽいし」

「だよねだよね!だってすごいお似合いさんだもん!」

 

……何を話してるんだろう。俺、目は良くても耳は人並みだからなぁ。陰口とか勘弁な。最近減ってくれてるからか持ってた耐性無くなりつつあるんだからな。

 

 

「お二人はどういった関係なんでしょうか!?」

「ただの教え子とトレーナーですが?」

「えっ!という事はあなたがスズカさんの!?」

 

そうですと伝えると、これまた感激された。この人凄いテンション高いな。

 

 

「スズカさんがあんな綺麗な走りができるのはあなたのおかげです!」

「いえ、俺はトレーナーとしてスズカがやりたい走りを尊重しているだけですから。でも、ありがとうございます。そう言ってもらえるとトレーナー冥利に尽きます」

 

返しも素敵だよーって、彼氏さんに耳打ちしてるけどめっちゃ聞こえてますって……すっげぇ照れくさい。

それから少し話したところで、二人と別れた。女性は最後まで名残惜しんでいたが、彼氏さんがズズーっと引きずっていったのだ。

 

 

「……話し込んじゃったなーバス行っちゃったよなぁ」

「トレーナーさん」

 

スズカが俺の袖をきゅっと掴み、ポツリと呟いた。

 

「すごく、嬉しいです」

「そりゃあ、あんなに自分のこと褒められたらなぁ」

「そうじゃないんです」

「ん?」

「トレーナーさんが私を信じて、示してくれたこの走りを褒めてくれたことが、とっても嬉しかったんです。トレーナーさんが認めてもらえたようで……」

 

なんだよそれ。

 

「トレーナーさん?頬が赤いですよ」

「……寒いからかな。次のバスまで時間あるし、空港内で時間つぶそうか」

「ふふっ、はい」

「なんで笑ってんだよ」

「トレーナーさんが可愛いから?」

「……なんだよ、それ」

 

なんだってんだよ。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

何とか旅館にたどり着いた俺達だったが、ここで大問題が起こった。

まさかのスズカと相部屋だった。

──私は気にしませんよ?

なんて言ってくれたが、俺は大いに気にするって話だ。

 

しかし、今更うだうだ言って旅館の人を困らせるのも大人としてどうかとも思う。ここはひとつ、鋼の意志で乗り切るしか無かろう。

そもそも俺がスズカで理性が壊れることなど万に一つもあり得ないし、心配すること自体意味が無かったな。

壁が無ければ即死だった……。

 

 

それはそれとして、旅館に着いてひと段落したところで、仲居さんに『このへんで景色の良い原っぱというか、草原というか、雪原はないですか』と聞いてみた。すると、少し距離はあるが、ウマ娘が走るにはちょうどいい場所があると教えてくれた。

なんでもウマ娘が住んでるとかなんとか。

 

 

「……なんかすいません。車乗せて貰っちゃって」

「いえいえ!たまたま話を聞いたら、私の住んでる所の近くだったものですから」

 

 

そう、たまたまその場に居合わせていた、若い金髪女性のこの方が教えてもらったその近くに住んでいるらしく、

今から戻るところだったという事で、せっかくだからと乗せて貰ったのだ。流石、北海道……その懐もでっかいどうだ。

 

 

「それにしても……本物のトレーナーさんと現役のウマ娘さんに出会えるとは思いませんでした。サイレンススズカさん、ですよね?この間のレース見てましたよ」

「ありがとうございます。でも負けてしまいました」

「立派でしたよ。私もあの娘もテレビに釘付けになってましたから」

「お子さんがいらっしゃるんですね」

「実の娘ではないんですが、私の娘みたいな存在です」

 

どうも軽率に触れてはいけなさそうな気がしたので、それ以上は触れないようにした。

 

雪道を進んでいくと、助手席の後ろに座っていたスズカがわぁーっと小さく歓喜の声を出したのが聞こえてきた。それもそのはず、ガラス窓の向こうには見渡しても遮蔽物一個すら見当たらないどこまでも広がる雪原が見えていた。

 

しかし、その景色にどこか違和感を感じた。

 

 

「よしっ、着きましたよ」

「……なんかここ凄い綺麗に整えられてる」

「あの娘が除雪してくれてるからですよ」

「へっ?」

 

女の子が?こんな寒い中でこんな広い所を一人で!?

北海道育ちの女性ってそんなにパワフルなのか……?

 

 

「トレーナーさん……」

「すいません。どうやらスズカの限界が来ちゃったみたいで、走らせてもいいですか?」

「どうぞどうぞ!」

 

ガラッ、と俺が声をかける前に車のドアを開けて飛び出していったようだ。

俺も続いて外に出て足を地につける。やっぱり積もっているはずの雪はほとんどなく、元が草原だったんだと分かるくらい、草が顔を覗かせている。それほど除雪されているのだ。

 

 

「何だか懐かしい……」

 

ほんの少し残った雪を踏みしめるスズカ。そう言えば、前に降り積もった雪の上を走ると気持ちいいんですって懐かしんでたっけ。

スズカのやつ、ワクワクしてるのが傍から見ても分かるなぁ。

 

 

「軽くだからな?滑らないように気をつけろよー」

「はいっ!トレーナーさん、行ってきま──」

 

 

「ええええええええええええええええ──!?」

 

 

突如、それはもう大きな声が雪原いっぱいに響き渡った。

 

 

その声の主を見て俺の心は高ぶった。

 

 

あっ、野生のウマ娘(バスト81)だぁぁぁぁぁぁぁ!!




言わずもがな、日ノ本総大将になる女こと、スぺちゃんですね。
※おかーちゃんの軽トラは冬仕様で軽自動車へと変貌してます。

ウマ娘警察に連行されないように細心の注意を払って、可愛く、決してエッチな目で見ることなく、書いてます!だから安心してください!(?)
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