という毒電波を受信したので、バルファルクが究極害悪存在になるまでの進化の過程を、独自設定独自解釈のごった煮謎ドキュメンタリー風怪文章にアウトプットしてバゼルギウスしました

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バルファルク正真正銘文明滅亡系害悪古龍説

 MHKドキュメンタリー『古龍バルファルク~赫き彗星の軌跡を追って~』

 

 

 

 

 

 とある時代、とある地方。高山に囲まれたのどかな山村で、ムーファの放牧がおこなわれています。牧夫に撫でられ、無防備にくつろぐ姿は非常に愛らしいですね。そんなムーファが、何かに気付いたように空を見上げました。

 

 空には雲一つなく、文句なしの快晴です。ムーファにつられて、牧夫も空を見上げました。ですが彼の顔は、不安そうに曇っていきます。彼らの視線の先にあるのは、赫い光です。太陽とも月とも星とも違う、赫く輝く尾を引く星――彗星が空に浮かんでいました。

 

 古くから彗星は、物事の凶兆として恐れられてきました。空に浮べば国が乱れ、疫病や災害に見舞われる。そんな奇禍を運ぶ災厄の気配を、古の人々は彗星に見い出したのです。

 

 それもこの彗星は、赫。赤々と、赫く燃える彗星です。赫い彗星が現れた時は、文明が滅亡するという言い伝えがあります。確かにこうして見ているだけで、何もかもが燃え尽きてしまいそうな気分になってきます。そんな風に、彗星は不吉に輝いていました。

 

 ですがこの空に浮ぶ赫い光、これは彗星などではありません。試しに、光の元へと近付いてみましょう……あぁ、見えてきましたね。

 

 彗星に見えていたのは、赫い炎です。その炎を曳いて空を飛んでいるのは、銀色の肉体を持つ龍。翼からロケットの様に炎を噴射して飛ぶ、他に類を見ない異形の翼を持った龍です。

 

 その名は、古龍バルファルク。銀翼の凶星とも呼ばれる存在です。世界中で最悪の凶兆と畏怖された、赫い彗星の正体です。

 

 赫い彗星は、バルファルクの放つ炎を星と見間違えた事による誤伝です。ですが『文明を終わりに導く』というのは、単なる空想から生まれた伝承ではありません。事実バルファルクは、多くの文明を滅ぼしてきたと言われています。その理由を紐解くには、バルファルクがなぜこのような姿になったのかを知る必要があります。

 

 かの古龍が、なぜこうも奇妙な進化を遂げたのか。そうした現在のバルファルクに至るまでの、進化の道筋を本日は皆さんと一緒に見ていきたいと思います。なお祖先となった種族も、便宜上バルファルクと呼称します。ご了承ください。

 

 ではまず、最初のバルファルクが現れた時代へと移動しましょう。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 さて、私達がいる現代よりも遥か太古の時代に到着しました。ここは鬱葱とした森に包まれた、緑豊かな土地です。植生から古代林に見えますが、現代においては沼地となっている地域です。近くに巨大な湖があるのですが、遠い未来で巨大古龍の活動により湖が破壊され、この辺一体は水没。それからまた長い年月を経て、湿地帯となったのです。

 

 それまでは潤沢な腐葉土と、豊富な地下水脈がある植物の楽園でした。多種多様ないにしえの植物が根を張り、緑の柔らかい葉っぱがひしめき合っています。そんな葉っぱを草食動物達が頬張り、また彼らを狙う捕食者もいました。

 

 一匹の飛竜が、息絶えた草食動物を貪っています。ワイバーンレックス系統の、古い飛竜の一種ですね。飛竜は自分が捕まえた獲物を、一心不乱に貪っています。ですが急に、飛竜は食事をやめて周囲を見回し始めました。

 

 すると、茂みから一匹の古龍が現れました。四脚歩行に加えて、巨大な爪が生えた翼脚を持った古龍です。全身を覆う青紫色の鱗は、セルレギオスのように刺々しく逆立っています。

 

 飛竜は古龍を見つけると、激しく威嚇を行ないます。ですがその吼え姿は、どこか恐れるような雰囲気があります。古龍は恐ろしい咆哮を浴びるも、身を低くして攻撃を狙っています。

 

 飛竜が痺れを切らしたように、咥内から火球を吐き出しました。それを古龍は、左の翼を手の様に変形させて叩き落とします。更に古龍は右の翼を槍の様に伸ばして、飛竜の右肩を刺し貫きました。古龍の翼で関節を砕かれたのでしょう。飛竜は必死に立とうとしますが、右前脚に力が入っていません。

 

 さらにバランスを崩した飛竜へと、古龍は突進。反撃する飛竜の頭上へ跳躍して、前転するように宙返りします。突き出されていた翼脚の爪が、飛竜の首を切り落としてしまいました。そして新鮮な飛竜の死骸を、古龍は食べ始めました。

 

 古龍は器用に、飛竜の肉を切り取ります。巨大な翼爪で切り裂き、小分けにして転がすのです。それを次々と、古龍は飲み込んでいきます。そうして飲み込んでいる間にも、左右の翼脚は休みなく獲物から肉を千切り続けています。

 

 口自体はそれほど大きくないですが、食欲は非常に旺盛です。古龍の肉体は飛竜とそう大差ない大きさです。そんな自分と同じくらいのサイズである飛竜の死骸を、古龍は骨も残さず食い尽くしてしまいました。

 

 さぞ古龍は満足したかと思えば、その目でぎょろぎょろと周囲を見まわし始めました。そして遠くの木立から飛び立った、鳥の群れを視認。その瞬間、鳥がいた場所へと古龍は駆け出しました。鳥を騒がせた存在を狙い、次なる狩りを始めたのです。呆れるほど底無しの胃袋を持っており、まるでイビルジョーのようです。

 

 この古龍こそが、バルファルクです。正確には、その祖先と呼べる古龍です。自由に変形できる翼脚といい、既に現在のバルファルクに近い構造をしていますね? しかし、決定的に違う部分があります。この頃のバルファルクは非常に大食漢ですが、そこではありませんよ。

 

 皆さん、お気づきになられましたね? 実はこの時点のバルファルクは、まだ龍気噴射能力を持っていませんでした。あのそのままでは飛べないような構造の翼脚も、そもそも飛ぶことを目的としていなかったのです。

 

 初期のバルファルクが選んだ進化は、格闘能力への特化です。本来空を飛ぶための器官である翼脚を、格闘攻撃用に特化させたのです。この翼脚は非常に柔軟かつ、頑丈でした。前に向けて巨大な手のひらのように掴む事も、槍のように伸ばして貫く事も、刀のように切り裂く事も可能でした。

 

 格闘能力に特化したネルギガンテですら、飛行能力のある翼脚を持っています。ですがバルファルクは、完全に空を捨てた地上特化の古龍となったのです。老山龍等のように元々翼がなかった訳ではなく、翼があった古龍がわざわざ地上に適合したのです。現在の空の覇者たる姿とは、似ても似つかない姿ですね。

 

 この地上戦に特化した進化はデメリットも大きく、最たる問題は燃費の悪さです。俊敏で頑丈な肉体を維持するために、次から次へと捕食する必要がありました。当時バルファルクがいた地域は、植物以外は残らなかったと言われています。

 

 格闘戦に特化した、強力な翼を持った悪食古龍。それがかつてのバルファルクだったのです。ではその陸生古龍バルファルクが、大きく変わる切欠となった時期に移動しましょう。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 巨大な木々に囲まれた、巨大樹の森。ここにも古い植物が生えていますが、ここも現在古代林と呼ばれている土地とは違います。ここは現在では、密林となっている地域です。現代とは植生が違いますが、現代以上に多種多様な植物が群生しています。

 

 栄養価の高い実が山と生り、それを餌にした小型モンスター達が丸々と肥え。その小型モンスター達を、大型モンスター達が捕食してぐんぐん成長する。そんな生き物達の楽園が、密林には昔から存在していました。ですがその楽園のど真ん中に、物々しい雰囲気が漂っています。

 

 その張りつめた空気を作り出しているのは、二匹の古龍です。一方はバルファルク、もう一方は現在では絶滅した旧骨格古龍の一種です。旧骨格古龍とは、平たく言えば翼脚を持たない古龍の事です。翼は完全に飛ぶための物であり、構造的に翼を歩行や攻撃に用いない種です。例えばクシャルダオラや、テオ・テスカトルなどが該当します。

 

 二匹がにらみ合っている原因は、縄張り争いです。もっといえば、近くに転がっている飛竜の死体が発端です。この飛竜を追いかけたバルファルクが、古龍の縄張りに侵入して争いが始まったのです。

 

 どちらもたいした傷を負っていませんが、周囲には激しい戦闘の痕跡が見られます。一進一退の攻防が長時間続き膠着状態に陥った、そんな経緯が伺えます。ですが、状況は動きました。

 

 バルファルクの翼脚の一部が、焼けた鉄の様に赤熱化しました。そして力強く地面を踏み締め、槍翼を突き出します。一瞬にして伸びた翼は、古龍の頭部に突き刺さりました。古龍は傷だらけの角で受け止め――あぁ、砕けてしまいました。

 

 古龍は角を砕かれると、溜まらずといった様子で逃げ出してしまいました。バルファルクは角の欠片を啄ばむと、不満そうに古龍を見送ります。追いかけて攻撃するという事はしません。仕留められる確信がもてないため、追撃を諦めたのです。赤熱化していた翼脚の先端も、やる気をなくしたように元の青紫色に戻ってしまいました。

 

 そしてバルファルクは転がっていた飛竜の死体を千切って、飲み込みはじめました。バルファルクにとっての最優先事項は、食事です。エサにもならない古龍をいつまでも追い掛け回すほど、バルファルクのエネルギー事情は余裕がないのです。

 

 飛竜を平らげたバルファルクは、森の中へと入っていきました。古龍が縄張りにしていた土地から、大型生物を根こそぎ捕食するつもりなのです。早晩、この森から大型生物はいなくなるでしょう。そしてまたどこかの古龍の縄張りとぶつかり、その土地の主を追い出して大型生物を貪り食らうのです。

 

 さて。バルファルクの翼脚を赫く輝かせた力ですが、それは龍気です。古龍が持つ力の象徴であると同時に、バルファルクの代名詞といえる力。バルファルクは古龍の中で、最も龍気を上手く扱えるともいわれます。つまり龍気操作能力の獲得は、真の意味でバルファルクの始まりといえる変化なのです。

 

 ですが当時バルファルクが龍気を取り入れた目的は、龍気自体を利用する現代バルファルクとは異なります。バルファルクの狙いは、龍気による肉体の強化でした。

 

 ご存じのとおり、龍気には力を高める効果があります。龍気に冒された獰猛化モンスターが極端に力を高め、そのエキスを用いた飲薬がハンターの力になる事は周知の事実です。初期のバルファルクが目的としたのは、この龍気による肉体強化です。

 

 バルファルクは激しい肉弾戦の過程で、体内に渦巻く龍気の効果を本能的に認識したのです。その力をより利用するため、龍気を生成する気嚢を強化する形でバルファルクは進化しました。しかし現代のバルファルクと比べると、案外控えめな力に思えてしまいますよね? ですが龍気による強化は、バルファルクの大きな力となりました。

 

 口から吸入した空気から、気嚢で龍気を生成。体に龍気を行き渡らせて、筋肉や甲殻を強化して戦闘能力を上げる。単純ではありますが、実に効果的でした。当時の古龍には非常に龍属性が多く、龍気の力を武器にするのはそういった面でも合理的だったのです。

 

 戦闘能力が上がった結果、バルファルクは他の古龍の縄張りにも積極的に侵入。そこにいる飛竜等大型生物を襲って捕食するようになっていきました。もともとイビルジョーに匹敵する食欲だったバルファルクが、更に活動領域を広げたのです。バルファルクは、当時のあらゆる生物の脅威となりました。

 

 龍気を扱うようになるという、小さな変化。これが後々、バルファルクの大きな変化――ひいては、凶星誕生の第一歩へと繋がったのです。ではその更なる進化の時へと、時間を進めてみましょう。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 場所は、再び同じ密林です。しかし時代の変化で、多少植生が変化しました。そんな移り変わる環境の中でも、相変わらず生存競争は続いています。変わらないといえば、バルファルクもです。バルファルクはいつかと同じように、古代林のど真ん中で激しい戦闘を行なっていました。

 

 バルファルクの相手は、前回と同種の古龍です。前は互いに決定打がなく、引き分けにするのがやっとという状態でした。しかしその古龍は今、傷だらけです。全身に切り傷や、刺突の跡が見られます。対して、バルファルクはほぼ無傷です。

 

 バルファルクは後頭部に生えた角から、冠の様に赫い気体――龍気を噴出させています。翼脚等も赫く染まっており、明らかに強度が増しているのが見て取れます。

 

 バルファルクは肩を突き出し、槍翼を古龍へと伸ばしました。古龍は首を傾けて、その凄まじい刺突攻撃を回避します。ですがバルファルクは伸ばした槍翼を収めません。むしろ地面を掴んで、その場に踏ん張りました。

 

 慌てたように姿勢を変えようとする古龍ですが、遅すぎました。バルファルクはその場で360度旋回し、伸ばした翼で切り払ったのです。巨大な太刀のようなバルファルクの翼は、たちまち古龍の首を切断してしまいました。

 

 勝利したバルファルクは、すぐさま古龍の死骸に飛びつきました。そして翼脚でガシガシと古龍の肉体を切り分け、切り分けた肉を丸呑みし始めました。古龍であるが故に、肉を切り分ける作業は少々てこずっている様子です。しかしその捕食風景は、同じ古龍に対する物とは思えません。

 

 おや、突然バルファルクは食事をやめました。そして不快そうに首を動かすと、姿勢を正しました。まるでガルクが、お座りするような姿ですね。

 

 それから胸の穴から空気を吸引し始め、後頭部からも再び龍気を噴射しています。胸から大量の空気を吸い込みながら、後頭部から龍気を放出する。なにかの儀式めいた行為は数分続き、そして何事もなかったかのように食事を再開しました。

 

 バルファルクは龍気による肉体強化を覚えると、龍気を扱う強みを認識する事となりました。そしてより龍気を利用する構造へと、バルファルクは肉体を進化させたのです。

 

 まず目につくのは、胸部にある鮫のエラのような吸気口ですね。現在とは違い大きさは小さく、後方へと開口する構造になっています。この吸気口は第二の口と呼べるもので、重要な気嚢に繋がる急所ともいえる場所です。ですがバルファルクは、弱点を作ってでも吸気効率の増大を図りました。

 

 角の周りに、龍気の放出が確認できますね? この後頭部から濃い龍気が見えている通り、排気口は吸気口と別に用意されました。吸気と排気を同時に行い、常に身体強化し続けられるという構造を確立したのです。

 

 そのおかげで大幅に龍気生成効率は向上し、龍気圧縮も可能となりました。より強化効率の高い、活性龍気を生成するようになったのです。活性龍気の力で、バルファルクの近接戦闘能力は飛躍的に高まりました。ですが扱う龍気の濃度が高まった結果、龍気中毒――いわゆる獰猛化現象を起こしやすくなってしまったのです。

 

 龍気という物質は、濃度が高まると凶暴化を促す危険な物質です。例えばイビルジョーには、長く生きると激しく狂暴化する個体が存在します。これは獲物に含まれる龍気がイビルジョーの体内に蓄積し、許容量を超える事によって発症する龍気中毒なのです。

 

 バルファルクもイビルジョー並みに捕食しますが、狂暴化する事はありませんでした。古龍は龍気に対する許容量が大きく、滅多に龍気中毒を起こしません。龍気を肉体強化に使うようになっても、龍気の生成量と濃度が低かったために無事だったのです。

 

 ですがそれらが飛躍的に高まったために、比例して龍気中毒の危険性も増大しました。わざわざ排出する必要があるほど、中毒段階にまで龍気が濃縮されたのです。ですがまだこの段階では、狩りの後に排気動作を行なうだけでどうにかなっていました。

 

 なお作られた活性龍気は、体内に生やした龍気伝導管を通して全身に伝達されています。龍気伝導管は、生み出した活性龍気を高効率で伝導できる器官です。この龍気伝導管が太く密集しているのは、翼脚です。外部から赫い活性龍気が見えるほど密集しており、当時からバルファルクがいかに翼脚を重視した生活を送っていたかが窺い知れます。

 

 活性龍気の力を手にいれたバルファルクは、古龍をも餌として狩るようになり始めました。古龍といっても下位ではありますが、古龍を捕食する古龍は非常に脅威でした。しかしバルファルクは満足せず、更なる怪物へと自己進化していくのです。

 

 ではまた決定的に変化が起きた時代にまで、時間を進めてみましょう。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 とある孤島の奥地。現在では竜の墓場と呼ばれ、骸龍オストガロアが支配していた領域です。まだそこにオストガロアは棲息していませんが、既に多くの骨が転がっています。竜のものから、龍のものまで。至る所に、雑然と折り重なっています。

 

 当時この孤島には、多くの竜と龍がひしめき合っていました。後にとある古龍の活動で海流が荒れるまでは、海竜種の楽園でもありました。そして多くの竜と龍が集まれば、起こるのは生存競争です。特に現在竜の墓場と呼ばれているこの森では、激しい縄張り争いが日夜繰り広げられ、食って食われてが日常となっていました。その殺伐とした空間に、一匹のバルファルクがいます。

 

 このバルファルクは、竜の墓場の中心に縄張りを作りました。襲い掛かる敵を返り討ちにして、捕食していたのです。その数は、夥しいものでした。周囲に転がる骨の殆どに、バルファルクの噛み跡が確認できる程です。

 

 バルファルクは今日も狩りをしているのですが、問題は相手です。バルファルクが戦っているのは、山のように巨大な古龍です。見た目こそ獣脚竜に近いですが、体長は四百メートル級の巨大古龍です。普段の孤島では見かけない、超大物です。竜の墓場に集まる大型生物を餌にするため、海を渡ってきたのでしょう。

 

 巨大古龍からすれば、バルファルクはちっぽけな虫けらです。ですが巨大古龍は対等な敵を相手取るように、興奮して威嚇を繰り返しています。それが過剰反応でない事は、傷だらけの体を見れば一目瞭然です。巨大古龍は追い詰められている事実を拒むように、バルファルクへ咆哮します。

 

 ですが、バルファルクは一切動じません。巨大古龍を観察していたバルファルクが、軽く駆けだしました。すると翼脚の先端から赫い炎が噴き出し、バルファルクの肉体が急激に加速。巨大古龍の脇をかすめるように、通り過ぎました。

 

 体を掠めただけだというのに、巨大古龍の脇は深々と抉られています。巨大古龍は苦悶の声を上げるとともに、激昂してバルファルクにブレスを放とうとします。しかしバルファルクは既に折り返しており、加速準備も済ませていました。再び、巨大古龍の腹部を赫い光が削り取ります。

 

 いってしまえば、バルファルクの攻撃は『体当たり』です。ですが、その速度と威力は桁違いです。活性龍気で強度が上がった龍鱗の塊が、音よりも速く突っ込んでくるのです。その突進攻撃は一説によると、巨龍砲すら超える威力を持つと言われています。巨大古龍に対しても、効果覿面でした。

 

 傷だらけの巨大古龍が、業を煮やして天へと咆哮します。すると真っ昼間だというのに、晴天には星々が輝き始めました。ダラ・アマデュラのような、隕石攻撃です。小癪な攻撃を繰り返すバルファルクを、巨大古龍は面攻撃で制圧するつもりなのです。

 

 ですがバルファルクも、赫い龍気を爆発させて離陸しました。急激に上昇するバルファルクは、大きく放物線を描くように空を飛びます。そして放物線の頂点を越えた途端、一気に赫炎を噴射。速度が急激に上がり、まるで彗星の様に急降下していきます。

 

 巨大古龍が呼び寄せた隕石が、赫い彗星を追いかけるように降り注ぎます。ですが彗星はどの隕石よりも速く加速し、そのまま巨大古龍の喉元を直撃しました。太い首は赫い軌跡によって射抜かれ、巨大古龍は声なき声をあげて倒れこみます。

 

 古龍が降らせた流星群の下で、バルファルクは食事を始めます。さすがのバルファルクも、巨大古龍を平らげるのは容易ではありません。ですが着実に、古龍の巨大な肉体を胃に収めていきます。

 

 その途中で、お零れを狙おうとモンスター達が近付いてきます。そんな彼らすらも捕食しつつ、バルファルクは食事を続行します。そして数十日かけて、皮一枚残さず巨大古龍を食べつくしてしまいました。残されたのは、巨大な骨格だけです。

 

 ですが、バルファルクの飢えがおさまる事はありません。バルファルクは飛び立つと、上空から遠方の獲物を探します。そして見つけると同時に着陸し、次なる獲物の元へと走っていきました。

 

 こうしてバルファルクは龍気噴射も可能となり、ほぼ皆さんが知り得る姿へと進化しました。胸部の吸気口は大型化され、より多くの空気を取り込み、より濃度の高い活性龍気を生成する事が可能となりました。ですが増やした分は、減らさねばなりません。問題は、活性龍気の排出でした。

 

 活性龍気の排気管を通す部位には、強度が求められます。いままで通されていた頸部は、いわば翼脚を支える基礎ともいうべき場所です。格闘特化型古龍として、当然高い強度が備わっていました。それと同等以上に頑丈な部位といえば、一つしかありません。翼脚です。

 

 翼脚の頑丈な骨格に沿う形で、排気管は通されました。元々龍気伝導管を通していた為、それを拡張するような形で排気口は作られたのです。翼脚に空洞ができ、強度が弱くなるのではと危惧する方もおられるでしょう。ですが排気管を通るのは、活性龍気です。翼脚は内側から活性龍気に晒される事で、強度は一層高められていました。

 

 そうして噴射口の強度も増し、翼脚の排気はより強力な物となりました。その勢いは凄まじく、噴射反動で短時間ですが飛行も可能となった程です。しかしまだ、その動きは洗練されていません。あくまで偶発的に飛べただけであり、未だ持て余しているような様子です。

 

 実際バルファルクの活動領域は地上中心のままで、飛行したとしても低空のみです。そもそも飛ぶというより、『跳ぶ』と言い換えた方が適切な有様でした。元々生み出す活性龍気は肉体強化用途を想定したものであり、これで飛ぼうとするとすぐに龍気が枯渇してしまうのです。飛行中に龍気を補充する事もできはしましたが、かなり無理のある飛び方になってしまいました。

 

 そのため当時のバルファルクが、『飛行』する事は滅多にありませんでした。稀に古代林にいたバルファルクのように、獲物を追いかけた結果海を渡る個体がいた位です。基本的に龍気噴射は攻撃の時や、獲物となる古龍探査のために使われていました。まだ当時のバルファルクは陸上主体の古龍であり、余り空を飛びたがらなかったのです。

 

 地上に慣れ親しむバルファルクですが、次第に空にも慣れるようになっていきました。そして空の方が龍気生成に適した空気があると、バルファルクは次第に気付くようになります。そうした経験が、次の段階へとバルファルクを進ませました。

 

 なおこの頃のバルファルクが、最も古龍を捕食していました。より強力な古龍を捕食できるようになり、質の良いエサである古龍を標的にしたからです。ミラボレアス等一部を除き、殆どの古龍種がバルファルクに餌として狙われました。バルファルクが飛ぶ度に、古龍が一匹死に絶える。そういっても過言ではない状況が、当時は頻発していたと考えられています。

 

 龍属性は、古龍など力ある種族が持つ力です。飛竜などの中にも、強くなるにつれて龍属性を得る種族がいます。龍属性が強さの証ならば、その結晶たる龍気を扱う生物がもっといてもおかしくありません。ですが現代において、龍気を扱う生物――特に古龍は、バルファルクなど少数しか存在しません。その理由は、バルファルクにあるという説があります。

 

 龍属性の攻撃は、同じ龍属性に効くという特殊な性質を持っています。そして龍気を扱うとなると、相応に高い龍属性を身に宿します。バルファルクはそんな強い龍属性を持つ古龍を、好んで捕食していた傾向がありました。龍気の力を持つバルファルクが、好みで狩りやすい龍属性生物を古龍までも食べつくし。その結果現代には、龍気を扱う龍属性生物が殆ど残らなかったというのです。

 

 説の真偽はどうあれ間違いないのは、バルファルクが貪食の怪物であり、古龍すら捕食する強者である事です。このままバルファルクが進化を続ければ、未曾有の大惨事となっていたでしょう。史上最悪の古龍として、その名を歴史に残し――あるいは、歴史そのものを『食べて』いたかもしれません。ですが、そうは進化しなかったのです。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 

 

 青い空、白い雲。ほんのり曇った、気持ちいい晴天。そこに、不吉な赫い彗星が浮んでいます。地上の港町にいる漁師達は恐れ、凶兆だと騒いでいます。拝み、祈る者達もいます。ですがそれは、星ではありません。近付いてみれば、一匹の古龍――バルファルクであることがわかります。

 

 燦々と輝く太陽を、銀色の鱗が跳ね返し。赫い炎を噴射させ、まるでロケットの様に飛んでいます。その激しい噴炎に反し、姿勢は思ったよりも安定しています。その速度に目を瞑れば、鳥と見紛う飛びっぷりです。

 

 バルファルクは目をぎょろぎょろと忙しなく動かし、遥か下にある海面を睨んでいます。そして何かを見つけたのか、体を傾けました。飛行姿勢の均衡が崩れた途端、一気に急降下を始めます。まるで墜落するかのように、バルファルクは海へとまっさかさまに落ちていきます。

 

 その肉体が海面に到達すると、そのまま水面を突き破って海中に侵入しました。しかしすぐに、海面から飛び出して急激に上昇していきます。古龍の中でも類を見ない、凄まじい上昇速度です。

 

 バルファルクが海に飛び込んだのは、水浴びが目的ではありません。その手には、一匹のルドロスがいます。バルファルクは遥か上空から水面下にいるルドロスの影を見つけ、一瞬で海面まで急降下して捕獲したのです。

 

 急激な気圧差と加重力により絶命したルドロスを掴み、バルファルクは更に上へ上へと昇っていきます。人が到達するには余りにも高すぎる、雲よりも高い場所に位置する遺群嶺。世界最高峰の頂上すらもバルファルクは追い越し、その天辺へ獲物と共に降り立ちました。

 

 このバルファルクは飛竜を殺しているわけでも、巨大古龍を貪っている訳でもありません。ですがバルファルクの立ち姿は、これまでで最も勇猛かつ禍々しい力を感じさせます。何せ数多の古龍を食い滅ぼし、幾多の死骸より孵化した怪物の中の怪物。いかに肉体を小奇麗に洗練しようとも、その獰猛な龍気は隠せようもないのです。

 

 こうしてバルファルクは、ようやく現在我々が知る姿へと進化しました。

 

 バルファルクは龍気噴射を覚えると、空に活動領域を広げました。そして空の方が龍気生成が捗ると判り、バルファルクはより空に長時間滞空できるように進化したのです。かつて翼を捨てた古龍が、誰より優れた翼をもって古巣に戻ってきた。そう考えると、皮肉という他ありません。

 

 バルファルクの肉体は流線型を描くような、鳥じみた体型へと変化しました。逆立っていた鱗も滑らかに寝る形となり、遮光効果の高い銀色へと変わりました。その内部構造も、より飛行に最適化しています。胸部吸気口の向きも鮫のエラのような形から、前方へ開くように角度が変更されました。

 

 バルファルクはただ飛んでいるだけで、吸気口から大量に空気を取り込めるようになりました。その空気から生成した龍気を活性龍気より高い圧縮率で濃縮し、濃縮活性龍気を作り出す事が可能となったのです。

 

 濃縮活性龍気を獲得したバルファルクは、より龍気の扱いに長けるようになりました。高速飛行や放射攻撃など、強力な龍気を必要とする行動ができるようになった上、多量の龍気噴射をしても龍気が早々尽きなくなったのです。そうした濃縮活性龍気に曝された結果、体組織も大きく変質しました。龍気を循環させる事で、栄養の代わりとしたのです。

 

 その結果、バルファルクの食事量は激減しました。バルファルクはかつて底なしの食欲によって、地上から龍属性古龍を一掃しました。その食欲の怪物が、たまにルドロスなどを摘むだけで充分になったのです。

 

 バルファルクはより多くを捕食するために、肉体を進化させてきました。その果てに食事がほとんど要らない体を手に入れるという、これまた皮肉な顛末となりました。ですがそういう進化を遂げた事は、世界にとって幸運だったといえるでしょう。普段は龍脈が豊かで居心地の良い遺群嶺等超高地を縄張りとし、低地には滅多に降りてこなくなったのですから。

 

 濃縮活性龍気を扱えるようになったバルファルクですが、別の問題も発生しました。濃縮活性龍気は強力ですが、その分劣化が早く龍気中毒を起こしやすかったのです。龍気自体を栄養の代わりにした事も、濃縮活性龍気の劣化を早める結果となりました。

 

 この劣化濃縮活性龍気を排出するため、戦闘中でも体内の龍気を入れ替える吸排気作業が必要となったほどでした。従来はバルファルクの吸気行動は、消費した龍気を補充する為と考えられていました。ですが研究が進むにつれ、龍気中毒を避ける為の防護策だと判明したのです。

 

 バルファルクが体内の劣化濃縮活性龍気を効率よく入れ替えるには、飛行が一番適しています。そのためバルファルクは定期的に飛行し、体内の濃縮活性龍気を一新するようになりました。バルファルクが空を飛ぶ理由の大半は、狩りや人々を脅かす目的ではありません。劣化龍気を排出するための、いわば健康目的の『有酸素運動』なのです。

 

 とはいえ、それが地上生物にとって無害かどうかは別です。この濃縮活性龍気、かなりの危険物質なのです。高空から撒くだけでも、生物濃縮で獰猛化現象が引き起こされてしまうほどです。龍気である以上、人間にも効果があります。実際かつて多量の濃縮活性龍気に曝露したと考えられる国や地域では、急に原因不明の争乱が頻発して滅んだといいます。バルファルク――赫い彗星を人々が恐れるのは、理に叶った話だったのです。

 

 稀に劣化龍気の排出能力が低く、『環境に優しい』個体もいます。ですがそういうバルファルクは体内に溜まった劣化龍気により龍気中毒を起こし、かつてのバルファルクのように暴れ回ります。バルファルク自体が非常に強力な上に、時間を追うごとに濃縮活性龍気は濃度と毒性を増していきます。つまりより強く、より狂暴になり、より汚染するようになるのです。

 

 そうなれば、まさに災害です。バルファルクの活動範囲はあらゆる生物より桁違いに広く、全世界に及びます。そんな長足の古龍が、無差別に攻撃と環境汚染を繰り返すのです。どちらに転んでも、バルファルクは世界に災いをもたらすでしょう。

 

 確かにバルファルクが、生物を直接襲う事は減りました。しかしその危険性は、微塵も薄れてはいません。それどころか、深刻化してすらいます。生きている事自体が、世界への脅威とさえ言えるかもしれません。バルファルクは決して抗えぬ絶望の天命を運ぶ、銀翼の凶星というにふさわしい災厄の古龍なのです。

 

 飛行可能だった古龍が陸戦特化型の格闘戦種へと進化し、陸上での進化によって再び空に舞い戻る。進化の道筋はそれぞれであり、奇想天外な経緯をたどった種もいます。ですがバルファルクは、その中でも特に数奇な部類と言えるでしょう。

 

 現在のバルファルクとて、その進化の途中に過ぎないのかもしれません。更なる災厄の化身へと変異するのか、あるいは無害化の一途を辿るのか。その答えを得るには、また長い年月が必要となるでしょう。

 

 文明の終焉を告げる凶星。そこに変化が生まれた時、観測できる文明は残っているのでしょうか。文明があったとしても、それは我々の文明なのでしょうか。叶うならば我々が観測者となれる事を、私は切に願います。

 

 

 

 

 終

 製作・著作

 MHK 有限会社赤衣興行

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




元々バルファルクは、格闘特化型の陸戦古龍だった。翼脚の格闘能力が妙に高いのも、元々龍気噴射を前提としたジェットドラゴンではなく、翼による格闘戦主体のネルギガンテ系インファイタードラゴンだったため。

バルファルクの祖先は、龍気で自身の戦闘能力を高める方向へと進化した。しかし龍気には肉体を強化するだけでなく、狂暴化を誘発する効果もある。龍気を作るばかりだと自身の狂暴化が免れないため、バルファルクは龍気を排出して、正気を保つような身体構造にした。

その龍気のベント器官が、龍気生成器官等の能力が向上するにつれてロケットじみた推力に発展。バルファルクは龍気噴射を利用する、現在のジェットドラゴンへと進化していった。そして噴射器官の能力向上に伴って、排出する龍気の危険性も激増した。

つまりバルファルクの飛行は、バルファルクですらヤバい危険物のダイナミック不法投棄。当然バルファルクですら捨てる危険な龍気を浴びれば、モンスターはたちまち獰猛化して暴れ回る。ただ生命活動するだけで環境汚染する上、活動範囲は桁違いに広すぎる。そんなマガラ骨格らしい、生粋の災害野郎がバルファルクなのだ。




バルファルク獰猛化現象元凶説やら考察動画やらを見てたらそんな毒電波を受信したので、捏造設定てんこ盛りの謎視点ドキュメンタリー風怪文章に仕立てました。本文中で言ってる事は殆ど適当な無責任設定なので、ここ違うぞという指摘は大体あってます。

バルファルクくんは見た目もBGMもかっこいいし、地味に身体構造や生態設定が古龍一しっかりしてるし、メテオダイブでキーンしたり戦ってて楽しいので大好きです。


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