まだ東郷さんがブラックホールじゃなくて国防仮面してた頃……だと思われる()
少し、肌寒いと感じるある朝の出来事だった。私はいつものように部室へ、今日もメモを分厚くさせるのだとスキップしながら向かった。
「いぇーい! ぐっどもーにんだぜぇ〜! 今日はいい天気だね〜サンチョ♪」
『スィ・ムーチョ』
サンチョの尻尾を引っ張って、ダンディーな声を部室に響かせる。
「あぁ乃木! いいところに!」
「ん〜? あれあれ〜? フーミン先輩、チアダンスの練習中です?」
「ちがわい! これが棚から落ちてきたのよ! 変な姿勢で受け止めちゃってこれ以上動くと危な……っとと! だから早くタスケテェ!」
「は〜い! うーんしょっと───」
……あれ、なんか足が重くなって──。
そう思った時には遅かった。私は体勢を崩し、受け取った荷物ごと床に倒れてしまった。
* * *
「あ、気が付いた! ソノちゃん大丈夫?!」
「……あれ〜、ゆーゆ? どうして膝枕……ん〜まぁいっか〜あったかいなぁ〜」
気を失っていたようで、周りにはみんなが心配そうに見守っていた。
「よかった……いつもの乃木ね。今回のは大体アタシが悪いけど……乃木も気を付けないとダメよ? とにかく怪我がなくてよかったわ」
「ごめんなさ〜い!」
……さて、どうしたものか。足が全く動けない。
心配させないよう振る舞うが、足はピクリとも動かない。重い感覚……痺れたような感覚……痛みはなかった。でもこれはそう思わざるを得ない。
(散華の症状……)
20回もの満開を繰り返したからだろうか、それとも単なる疲れ? 最近夜更かしして小説を書いていたから? それなら休めば治るはずだ。……治ると信じたい。
(休めば……っていっても、ゆーゆにずっと膝枕させるわけにもいかないよね……)
園子どうしたものかと考えていると、ふと友奈が手を挙げた。
「風先輩! ソノちゃんはお疲れのようであります!」
「ふむ、確かに最近依頼も多かったしね。私に原因はあるんだし、樹、夏凜! ちょっと買い物付き合いなさい!」
「ったく仕方ないわね。樹、行くわよ」
「はい! それじゃあ行ってきますね!」
「行ってらっしゃーい!」
風が樹と夏凜を連れて部室を出ていく。
「……東郷さん」
「友奈ちゃん、私はぼた餅を用意してくるわ。そのっちも食べたいでしょ?」
「う、うん」
「そのっちのことよろしくね、友奈ちゃん」
「うん! 任せて!」
何か察した東郷は、そう言うと静かに扉を開けて出ていった。
「…………」
「…………」
沈黙が流れる。2人の呼吸だけが聞こえる。
「……ソノちゃん、大丈夫?」
「あはは〜、すごいねゆーゆ」
その言葉を聞くと胸がチクチクとする。どうやら自分は大丈夫なフリをしているだけらしい。それに気付かされると、不意に涙が溢れる。
「あの……あのね、足……動かないの……」
酷い涙声で今の状態を話した。こんなこと言われても何をすることも出来ないのはわかっている。
医者でも神官でもない友奈にはどうすることも出来ない。それでも話した。
「フーミン先輩を、助けようと思って……落ちてきたやつ、受け取ったんだけど……」
「うん……」
「急……に、重くなって、震えて……気付いたらこうなってて……!」
「うん」
「また……ずっとベッドで寝なきゃいけないのかなぁって……!! 」
友奈は、園子を安心させるように髪をゆっくり撫でながら聞いていた。涙声でうまく聞き取れない言葉を、ひとつひとつ、しっかりと聞いた。
「怖いよね、私も……ソノちゃんより短い時間だったけど、怖かったよ。でも、大丈夫……! そんなの私がやっつけちゃうから!」
「ゆーゆぅ……!」
「暗いのが怖いなら、ずっと隣に居るよ!
動けないのが怖いなら、ずっと触れ合ってるよ!
ずっとずっと……ソノちゃんが落ち着くまで絶対に離れない!」
友奈はそう言うと、園子の足に手を触れ、ゆっくりさする。
「いたいのいたいの飛んでいけ〜! 飛んでどっかに消えちゃえ〜! ね? 大丈夫、ソノちゃんは強いからきっとすぐ治るよ!」
友奈は頭を下げて園子の顔に近付ける。互いの息が顔にかかるほど、唇と唇が触れ合いそうになるほど近い。
「ほらほら、泣いちゃってるとせっかくの美人さんが台無しだよ!」
「ち、近いよゆーゆ……!」
「離れないって言ったもーん! ほら、ぎゅ〜っ!」
友奈は手を回して園子の頭を覆い尽くす。暗い……でも、怖くない。友奈の匂いと存在が、心を落ち着かせてくれる。
「……ありがとう、ゆーゆ」
──そして私は、何を思ったのかそうお礼を言って……すぐ近くにある唇にキスをした。暖かく、やわらかい。
びっくりしたようで、慌てているのが目を瞑っていてもわかる。……いつものようにふざけたのだと思ってくれればいい。今は──。
「ぷはっ! び、びっくりしたぁ……あれ? ソノちゃん、寝ちゃってる……? もー、起きたら仕返ししちゃうからね〜」
友奈は園子の耳元でボソッと呟き、髪と足を撫で続けた。
不思議と、重かった足も次第に軽くなっていく。もう大丈夫だ。きっとここでならうまくやっていける、楽しくやっていける。
(もしゆーゆが大変な目にあった時は、次は私が助ける番だよ)
そう強く、固く誓い、私は夢の中へ落ちていった。今日は久しぶりにいい夢が見られそうだ。
ゆうそのいいぞd(^q^)
あとゆゆゆい四周年おめです\(^q^)/