呪術廻戦にP5のジョーカーぶち込んでみた 作:全てのイシを拾イシ者
世界が嫌いだ
呪いが嫌いだ
生まれが嫌いだ
光が嫌いだ
キミと共に歩めない
腐った己が大嫌いだ
17.
究極メカ丸には謂わゆる中の人がいるが、メカ丸の中には誰もいない。外部からの操作を受けて行動する汎用人型呪術兵器、それがメカ丸の全容。
遠隔地であれど、まるで自らの手足の如く操作する事が出来る、唯一無二の特別な人形だ。それはメカ丸の本体である
その術式効果範囲は、なんと日本全土にも渡る。これほど大規模な効果範囲を持つ術師は、日本の術師の結界術を補佐する天元をおいて他にない。
だが幸吉は、こんな力など一瞬たりとも望んではいなかった。
生まれながらにして課せられた枷……右腕の肘から下と膝から下の肉体が欠損しており、腰から下の感覚が無く、肌は月明かりに焼かれるほどに脆く、常に全身の毛穴を刺されるような痛みに襲われる。全身を包帯でぐるぐる巻きにされて尚、その隙間から外気が入り込み激痛が走る。自らの意思とは関係無く行われる排泄を浴槽に浸かって耐え、顎と喉を極力使わないために水のように薄味の医療食しか食べられない。
暗い部屋で、誰と会う事もない。
皆が見えているのは、メカ丸としての……人形としての自分自身。
与幸吉は、孤独だった。
メカ丸として他者と通じ合っていても、この侘しさを埋める事はできない。故に面と向かって話したいという欲を抑えられない。
だからこそ、幸吉はパンダの存在が気に入らなかった。
呪骸として与えられた偽物の命、針で小一時間ちくちく縫えば出来てしまう借り物の体。そして何より、戦闘前にパンダが口にした『同類』の言葉に、幸吉の堪忍袋はとうとうはち切れた。
たかだか呪骸の分際で、日の下を悠々自適に歩いていられるパンダの存在が。
どうしようもなく、我慢ならなかったのだ。
だが、最早自分の感情をぶつけていられるような状況ではなくなった。
──
「おいメカ丸よぅ、一時休戦と行こうや」
「奇遇だナ、俺も提案しようと思っていタ」
市街地での戦闘を想定した都立高専第一演習場の屋根上にて、そう言い合うのは究極メカ丸とパンダ先輩だった。──ただし、二人の姿は、当初のそれとはかけ離れていたが。
以下、パンダとの戦闘におけるメカ丸の被害状況。
右腕損傷、頭部破損の軽傷。右腕の変形機構に問題発生。《
それらを加味して尚、祓除行為に問題無し。
以下、メカ丸との戦闘におけるパンダの被害状況。
パンダが有する三つの呪核のうち、メインを担うバランス型のパンダ核及び恥ずかしがり屋のお姉ちゃん核を消耗。二つの呪核は休息状態へ移行しており、パンダ核を優先的に修理中。夜蛾正道の手によらねば完全回復は難儀。残すは短期決戦用攻撃特化型、お兄ちゃんのゴリラ核のみ。
それらを加味して尚、祓除行為に問題無し。
さて、脳みそと目玉をそのまま取り出したような風貌の呪霊は、未だこちらを見つめ漂う。だが──否、だからこそひしひしと感じる嫌な感覚。生理的嫌悪感だけではない。それよりももっと上の領域のそれ……威圧感。
心当たりは無い。無い
この呪霊は只者ではない……と。
──そして、その勘は正しかった。
どこからか呪霊が発した少年の声に似せた言葉は、二人の間に尋常でない緊張をもたらす。たかだか一言「あまてらす」という単語だけで。それだけでも、眼前の呪霊が格上であると理解させられた。むしろ、その言葉に聞き覚えの無い日本人の方が少ないだろう。
「おいおいおいおい!? アイツ多分
「だろうナ! とはいえ、日本には八百万の神がいるんダ。自然発生した仮想怨霊ならまだしモ……あるいは
「アマテラスって言葉が出てる時点でもう一級案件だろこれ! つーかそんな貴重な術式持ってて、何で呪詛師やってんだよぉ!?」
天照大神、あるいは天照大御神。
日本の皇室の祖であり、日本神話の主神。高天原を統べる、国内において最も知名度のある神の一柱。その御名を、何の意味も無く呪霊が発するとは思えない。パンダはこの目の前の呪霊が、天照大神に所縁有る類だと確信していた。そしてそれはメカ丸も同様で、パンダに激しい口調で問う。
「おイ、お前のとこの特級はどこで油売ってんダ!」
「お宅の学長が前半は参加しちゃダメって言ったんだよ! 今教員と一緒にいる!」
「クソッ、余計な真似ヲ!!」
今だけはこの悪態に誰も文句は言えまい。
いくらメカ丸が
「おいパンダ、一分時間稼ゲ」
「はぁああ!?」
「外部と連絡を取るにはこれしかなイ。その間、俺はこの体を動かせなくなル」
「くそ……
そう言ってパンダは残り少ない呪力を回し、メカ丸はポケットでとある物を取り出した。
その物体は掌サイズに収まる程度の円盤で、表面にはメカ丸の顔面が彫られており、その薄い円弧には超極小ジェット機構が取り付けられていた。
しかしこのままでは作動はおろか起動すら不可能だ。メカ丸の術式効果範囲内だが、この傀儡だけは別だった。この傀儡は、とある保険のために作られたものであり、そしてその保険が適用されるのは今ではない。だから動かせない。
だがそれを、即席の縛り──飛翔追尾式通信機器型究極メカ丸・通称
操作権がメカ丸から小UFO型メカ丸に移り変わり、そして人型メカ丸の意識はブラックアウトした。
向かうは、一番近くの一番信頼出来る同級生へ。
刀を握っているくせに
人を殺める意思は無い
刀を握っているくせに
人を救える実力は無い
刀を握っているくせに
何も斬れず
何一つ、護れない
18.
かーたな、取ーられちゃったーよー……。
燃え尽きながら呆然と歌うのは三輪霞。普段の彼女と異なるのは、真っ白な事と本来刀があるべき鞘にそれが無い事くらいか。後者に限っては彼女にとって死活問題なのだが。
禪院真希との戦闘は、終始真希に圧倒されて終わった。呪具使いとして……何より真依曰く真希よりも階級が高い者として、霞にはそれなりの自信があった。
だがいざ真希と対面し、鍔迫り合い、本領を発揮せんとし──いつの間にか刀を奪われ投げ飛ばされ、そしていつの間にか真希は目の前から立ち去っていた。
霞は思った。
四級とか絶対嘘じゃん、と。
「はぁ……タピオカってなんであんなに流行ってるんだろ。言うほど美味しいかなぁ」
役立たずの烙印を押された事に、霞は奇妙な現実逃避をしていると、ふと自分の耳元に何かが飛来して来たのが分かった。
虫か何かの類か、と一瞬思い振り払おうとしたが、即座にその物体から発せられた音声に、霞は安堵の溜め息を吐いた。どうやらメカ丸の通信用飛行式呪骸のようだ。メカ丸はこんなものまで作れるのか、凄いなあ、と率直に感心した。
さて、飛来したミニメカ丸からの報告は、およそ芳しいとは言えないものだった。出来るだけ優しい声で落ち着かせようと自分なりに気遣いながらも、しかし僅かながらに漏れてしまっている焦りの声に、霞にもその焦りを伝染させてしまう。
『三輪、今大丈夫カ!?』
「はい、役立たず三輪ですけど」
『何の話ダ? まあ良イ、落ち着いて聞け三輪、今俺たちハ──未確認の呪霊に襲撃を受けていル!』
「え……えぇ!? 大丈夫なの!?」
『正直かなりヤバイ。だから三輪──』
「じゃあっ、私も戦うよっ!」
『──ハア!?』
そう口にした時、霞の体は一直線に走り始めていた。今までこれほどにも力強く駆けた事は無いと思えるほどに、微かな焦りを含みながら、浅瀬川のために一張羅である制服の裾が濡れてしまうのも構わず、全力で風を振り切る。
しかし耳元のメカ丸は、霞の思いとは裏腹に叱咤の声を上げるのだった。
『だッ──ダメに決まってるだロ! 相手は最低でも準一級だゾ!? 危険すぎル、三級に務まる相手じゃなイ!』
「でも、メカ丸も戦ってるんでしょ!? だったら頼って! メカ丸からしたら私は弱いかもしれないけど、それでも仲間だもん!」
『三輪……』
草木が邪魔で、無理矢理に押し入って一直線に突き進む。途中細枝が額や二の腕に当たり擦れてしまったが、霞は減速することなく、禪院真希が走って行った道なき道を進み続ける。
メカ丸が霞を一番信頼出来る人間だと考える理由は、何もメカ丸が霞に好意を抱いているためでは……否、一割くらいはそれかもしれないとメカ丸は思ったが、すぐさまその思考を振り切り、それが主だった理由ではない事を言い訳する。
メカ丸は外部からの情報を得る為に、その広大な術式効果範囲を用いて、秘密裏に日本全土に自作の監視カメラを設置している。無論これは呪術規定に違反するのだが、自らが契約した者との縛りのために致し方無く行なっている。
その隠しカメラに映る三輪霞という人は、いつ何時も誠実だった。収入のほぼ全て弟の生活費や学費のために工面し、質素倹約を胸に抱いて、それに文句を言う事は無い。聞けば中学一年の頃から年齢や経歴を詐称してまでアルバイトをしていたと言うではないか。初めてその事を聞いた時、幸吉は開いた口が塞がらなかった。
愛しい人のため、自らの鎬を削ることが出来る人間──三輪霞。好印象はやがて羨望へと進化し、そうして幸吉の心の内に、一つの『欲』を生み出させた。
皆に──霞に、面と向かって向き合って話がしたい、と。
その欲を認識した時、幸吉は──三輪霞という人に好意を抱いているのだと悟った。
一緒に居たくて、会えない現実が痛くて。
もどかしくなって、戻れなくて。
……そうしてメカ丸は──否、与幸吉は、五人の京都校の生徒と七人の東京校の生徒から霞を選んだ理由の、その主だった理由を理解した。
与幸吉は、三輪霞という人を信じてみたいのだ……と。
口から出た言葉は、先ほどの叱咤の激しいものとは真反対で。
心に深く突き刺さる、杭の一つが取れたような気がした。
『ありがとウ』
「うん。メカ丸、私に出来る事ある?」
『西宮に言伝を頼みたイ』
「桃先輩に?」
『そうダ。西宮に五条悟か雨宮蓮のどちらカを呼ばせてくレ』
「両方じゃなくて?」
『出来ればどっちもが望ましいガ、どっちかが来れバ、この事態は収まル。三輪、頼ム』
「うんっ!」
『健闘を祈ル。必ず生きて会うゾ』
「そっちも頑張って!」
そう言い終わると、メカ丸からの音声と反応が途絶える。
さて、不用となった報告メカ丸を、しかし捨てるのもどうかと思った霞は、背広の左胸内ポケットに大事に仕舞って、今度は携帯を取り出す。
「西宮先輩!」
『もしもし、……っぐす、何? どうしたの?』
少し鼻声の西宮桃は、気をしっかりと保ち何でもないように聞き返した。が、タイミングが良いのか悪いのか、丁度霞は森から開けた草原に出た。そこにいたのは美女二人、禪院真希と禪院真依であった。
「真希さんっ!」
「お、さっきの。どうした?」
「はあっ、はあっ、……今、襲撃を受けてます!!」
「何!?」
『ええっ!?』
「えー……」
目を見開き驚く真希、電話越しに驚く桃、面倒そうに驚く真依。みんな違ってみんな良い反応を示し、霞はメカ丸から得た指示に従う。それも、出来るだけ端的に。
「西宮先輩は、外部へ救援要請をお願いします!」
『うん、ありがとう霞ちゃん!』
「真希さん、刀返してください!」
「ほいよ」
「ありがとうございます!」
通話が切れ、刀を返してもらった事で、霞のやるべき事は終わった。少しだけ肩の荷が降り、緊張が切れて安堵する。
「で、どうする?」
「……どうしましょう!?」
「考えてねえのかよ」
「そもそも霞、アンタどうやって襲撃されてるって知ったワケ?」
「ああ、それはメカ丸が──」
──だが、そこから先を告げる事は禁じられた。
諸君、私はむたみわが好きだ
諸君、私はむたみわが好きだ
諸君、私はむたみわが大好きだ
君達は一体何を望んでいる?
交流会襲撃のメンバーを少し増やしました。ちなみにコイツらには名前があります。というか仮想怨霊です。ヒントは「アマテラスとイザナギと関わりがある神霊」。
予想してみてね〜
追記:ヒントに関して感想欄で語弊が生じているので修正をば。「前者がアマテラスに関わりがある神霊、後者がイザナギと関わりがある怨霊」です。紛らわしくてすみません。