神転して理想の生活を送りたかっただけなのに   作:名も無き二次創作家

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すみません、感想返しは断念します
でも有り難く読ませて頂きます
……まだ感想下さる方が居ればのはなしですがね



条件変更

人間の三大欲求は有名だ。

睡眠、食欲、そして性欲。

なら、健全な男子の欲求はなんだろうか。

俺はこう思う。

「モテたい」ではないだろうかと。

俺はあの時、どうして転生特典の一つに優れた容姿を求めたのか。

モテたかったからだ。

その願いは聞き届けられ、無事にイケメンとしてこの世にやってきた。

だが、思い通りにはならなかった。

自分の勝手な欲望に一人の少女を巻き込み、残酷な仕打ちをしてしまった。

それはとても、自分程度の人生1つを全て捧げた程度で埋め合わせが出来るほど軽い罪では無かった。

脳天気に女の子ときゃっきゃうふふする気になんか、とてもなれなかった。

自分の身も心も何もかも地獄の底に鎖でつなぎ止められた気分だった。

なにをどうあがこうと消せない罪。

せめてこの少女の幸せのために、例え自分の命をすり潰してでも頑張らなくてはならないと思った。

 

 

だが、もうその鎖からは解き放たれた。

 

 

 

どうだっていい。

自分が犯した罪とか、どうだっていい。

そんなこと俺の知ったことじゃない。

巻き込まれた方が悪い。

どうでもいい。

社会のルールも人間の礼節も、責任感も矜持も他人の尊厳も。

全部全部どうでもいい。

自分の生きたいように生きる。

これが狂気に身を委ねると言うことなのか?

なんだろう、この安心感は。

狂ったという文字が使われているのだから、もっと苛烈なものだと思っていたのに。

愛も恋も欲も何もかも、あのとき捨てたはずの全てを取り戻した。

だから、あの時は敵だったはずの腕の中の女性ですら愛することができているのだろう。

 

「エルカ、綺麗だよ。愛してる」

 

「ゲコ!?ちょっと、この間まで敵どうしだったのよ!?」

 

ソファーの上で座っている彼女が、俺の腕から逃れるように身じろぎする。

だが相手は仮にも魔女。

本気で抜け出すつもりならこの程度の弱々しい抵抗では済まないだろう。

つまり彼女も満更では無いというわけだ。

それに、敵同士だった?そんなことが関係あるのだろうか。いや無い。

今俺はお前を愛したい。愛している。そして愛されたい。

メデューサは流石に原作既読勢としてそういう対象には見ることができない(やばすぎて)が、エルカは違う。

彼女は魔女の本能である破壊の導きがあるものの、それ以外は割と良識的で良い子でもある。

死武専との共同戦線では、真っ先に因縁深い死神(の息子)と共闘して未来の魔女の在り方を示すなど、好感の持てるシーンが多々ある。

一部読者の間でも非常に人気のあるキャラだ。

 

抱きしめて、抱きしめ返されて、キスをして、口を離してもらえなくて、舌を入れたら絡め取られて、服の間から手を入れて、求めて、求められて。

 

そうして、俺たちは時間と理性と互いの身体の境界線を溶かし続けた。

 

 

 

 

 

◇◇

 

 

 

 

某国地下施設にて、コツコツと靴音を鳴らして歩く女性がいた。

女性の名前はエルカ=フロッグ。

魔女帽子からはみ出た長い銀髪は美しいものの、左右の口角にはそれぞれ黒い斑点を持ち、黒目の大きい彼女の容姿は人によって好き嫌いが分かれることだろう。

人によってはあまり好みではないだろうが、別の人には大変魅力的に見える可能性がある。

大変評価の分かれる顔立ちである。

 

「ゲコ、メデューサ。ここに居たのね」

 

「あら、エルカじゃない。どうしたの?暫く休暇を与えてあげたはずだけど……彼と上手くいっていないの?」

 

彼女が探していたのは魔女メデューサ。

エルカの体内にヘビを入れて脅し、小間使いとして操っている実質的な主人。

そして先日死武専地下へ侵入し鬼神復活を目論んだ諸悪の根源とも言うべき危険人物だ。

 

「ゲコォ!?ちょっとやめてよ、あいつとは別にそういうのじゃないんだけど!」

 

台詞とは裏腹に、その表情にはありありと朱が差していた。

エルカは子供という歳でも無いが白馬の王子様に憧れる純情初心な乙女ではあるため、男女の関係に茶々を入れらると弱いのだ。

 

「彼のことは予想外だったわ。正直、狂気に落とした後はどうやって縛り付けて研究しようか悩んでいたの。最悪貼り付けにしようかと思っていたのだけれど、それだと研究の幅が狭くなっちゃうでしょ?だからあなたがこうして楔になってくれて助かっているわ。それに、あなたにとっても悪くない状況みたいだし」

 

「う、うるさいわね……」

 

「狂気に身を浸せば本能に忠実になる。でも、だからってこうなるなんて想像もしていなかったわよ。私もまだまだね」

 

「ちょっと、一人で納得してないで説明しなさいよ。こっちはもうなにがどうなってるのかわけが分からないんだけど?」

 

「エルカ、あなた人間の三大欲求は分かるかしら」

 

「え……、と確か食欲と性欲と睡眠欲?だったかしら」

 

「そうよ。私たち魔女は破壊の本能1本だから忘れがちだけど、人間にとっての基本的な欲求はむしろその3つだったの」

 

「まあ、そうね。……ゲコ?でも今まで狂気に感染したやつは大抵破壊衝動だったり殺人衝動に囚われてた気がするけど?」

 

「そこなのよ。今まで狂気に落としてきた相手は殆ど死武専の戦闘員だったし、一般人の時も使ったのは深夜に徘徊してたり居なくなっても騒ぎになりにくいはぐれ者だったりと、かなり偏ったサンプルになっていたのよ」

 

実験とは本来、サンプルに偏りが出ないように気を使わなければならない。

だが狂気研究は下手に痕跡を残すと死武専に自分の居場所がバレる可能性があるため、慎重にならざるを得なかった。

そのためサンプル対象を厳選する余裕が無く、偏りが生じてしまっていたのだ。

 

「ゲコ、よくわかんないけど血の気の多い奴を使いすぎてたってこと?」

 

「ま、そういうことね。その点あの子は死武専生の割には血の気よりも色気だったみたいだけど」

 

「今回もかなり特殊なサンプルだったから、当然と言えば当然ね。狂気に感染して、一周回って理性的になってるみたいなんだけど。普通狂気に墜ちたら会話なんて成立しないじゃない」

 

「直接喋った機会が少ないからなんとも言えないけど、確かに元から狂人めいた奇行が多い子だったから、一周回ってという表現はしっくりくるわね。研究としてはとても素晴らしいデータが取れて私も嬉しかったし、それにあなたにも悪くない状況なんじゃない?……もうやることやったみたいだし。服くらい整えたら?」

 

「ゲコッ!?」

 

素早く両腕で身体をかき抱いて身を引き、衣服ごとメデューサから隠れるようにする。

ニヤリと笑うメデューサを見てタダのカマカケだったと理解し、憤慨するも軽くあしらわれるエルカ。

服が乱れているからどうせベッドの上で遊んできたのだろう?という意味の視線に騙されて反応してしまったエルカは、完全に墓穴を掘った形だ。

 

「そ、そんなことはどうでもいいのよ!それより別の話があるの!」

 

「そういえば、折角の休暇にどうしたのよ。邪魔なのだけど」

 

酷い言い方だが、これがメデューサの平常運転なのでエルカも気にしない。

 

「ゲコ、あの戦いで死武専は地下の警備を強化し、もう地下に侵入することは難しくなったわ。もうあんな大胆な侵入は不可能。鬼神復活計画も完全に泡と消えたわ。これからの方針はどうなるのか気になって、気が休まらないんだけど」

 

「変わらないわよ?」

 

「ゲコ?」

 

「だから、変わらないって言ってるのよ」

 

先程彼女が言ったように、もう死武専地下に侵入することは不可能だろう。

それでも彼女は「方針を変えない」と言っている。

変えないということは、つまりまだ地下に侵入して鬼神を復活させようとしているのだろうか。いや、でもそれは不可能のはずで……。

そこまでエルカは考えて、あることに気付く。

そういえば、メデューサは何故自分にしばらくの間休暇を与えた?

エルカは数学が得意だが研究者では無い。

できるのは精々研究の手伝い程度で、逆に言うと手伝いの要らない研究では邪魔になりさえすることもある。

邪魔だから休暇を与えて遠ざけた。

では、自分が邪魔になるような何かをメデューサはしていたことになる。

それは、つまりメデューサが研究に没頭しようとしていた?

そして先程の「方針は変えない」という言葉。

嫌な予感がエルカの中を駆け回る。

 

「実験ていうのはね?条件を一つずつ変えて何度も何度も繰り返すものなのよ。気温を変えたり、数を変えたり……、何度も似たようなことをやり続けるの。私たち研究者は成果を焦らない。時間をかけることには慣れている。繰り返すことに逡巡も無い。やり直しにだって忌避感は無い。なのに────どうして一度失敗した程度で鬼神復活を諦めると思ったの?」

 

 

 

 

 




一周回って普通の人間らしくなった……のか?

大まかなあらすじは決めてるけど細かいところは全然決まってない。
特にパートナー辺りのこととか。
これどうすんべ。

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