12月25日の夜、

当時、柏木優(カシワギ マサル)の想い人であった宮本彩芽(ミヤモト アヤメ)は、世間の見せ物にされながら彼の前で死んだ。

そして柏木優は決意する。

彼女を見せ物にした世間を更生する事を。

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お久しぶりです!
新作描きました。
私にしてはすごく長文です。
おそらくこれからは月1投稿くらいだと思います。

前回の作品とはまだ関わりがあまりないですが、今後に関わってくるような物語だと思ってます!

セリフ部分などキャラ名入れてみました。
みづらそうなら今後検討ということで、この下に簡単なキャラ紹介あるのでそれを軽く見てから本文読んでね!

それでは宜しくお願いします!

以下キャラ紹介

柏木優

本作の主人公であり、更生の心意の持ち主。

心意の弾丸を飛ばす事ができ、その弾丸が命中した箇所を更生(巻き戻す)させる。

1年前に当時付き合っていた彼女が自殺してしまっており、それ以降温厚だった人格は負けず嫌いでよく感情的になるといった以前とはまるで別人のような人格へと突如急変する。

宮本彩芽

柏木優の想い人。
1年前に自殺しており、すでに故人。
正義感がとても強かった。

御久川羅伊

謎の人物。
宮本彩芽の自殺に関わりがあるらしい。

落川迅

柏木優の前に現れる心意統制機関カルマに所属するエージェントの1人。

鹿野紅葉

柏木優の前に現れる心意統制機関カルマに所属するエージェントの1人。



更生の道導

 

AGE 2020 〜地球・日本〜

 

Place: 住宅街

 

Time:12月25日 22:04

 

柏木は本当に救いたいと願っていた彼女を救えなかった後悔と悲しみの気持ちで夜の住宅街を散策していた。すると目の前に1人のスーツ姿の女性が現れ、柏木へ向かって話しかけてくる。

 

 

スーツの女性「ちょ、ちょっと────。」

 

柏木優「・・・」

 

スーツの女性「大丈夫?」

 

柏木優「初対面でいきなり大丈夫? って色々誤解を招きそうだけど、まぁ、俺は大丈夫っすよ────。」

 

スーツの女性「そう────。」

 

 

柏木はスーツの女性からそれ以上会話がない事を察すると自身の自宅の方へと戻っていった。

 

スーツの女性も、柏木が自宅へともどる背中を見えなくなるまで見送ってから、自身が来た道を戻っていった。

 

 

スーツの男性「紅葉、どうだったよ、優の様子は────。ここから見ててもだいぶ辛そうだったけどよ。」

 

スーツの女性「正直、かける言葉もなかったわ────。 てゆうか迅。あんた見てたんなら来なさいよ! ものすごく気まずかったんだから!」

 

スーツの男性「悪い、俺もあの雰囲気はどうしようもできん。。 ただ、ああなったのは俺たちの責任でもある。 なんとしてもあいつにまた俺たちで道導を与えるんだ。 英雄になる為に────。」

 

スーツの男性、落合迅と合流したスーツの女性、鹿野紅葉は乗ってきた車に乗り、その場を後にする。

 

*************************

 

AGE 2020 〜地球・日本〜

 

Place: 柏木の家

 

Time:12月25日 22:15

 

柏木は自宅の玄関前で先程家を出た時とはなにか違う違和感に気が付く。

 

柏木優「鍵が、、空いてる────。」

 

警戒しながらドアをゆっくりと開け、中に入ると、リビングの電気が付いていた。

 

柏木優「確かさっき家を出た時は消した筈だけど────。」

 

柏木はリビングとキッチンを挟むドアノブに手をかけ、間髪入れずに勢いよくドアを開ける。

 

謎の男「よう、非常に待ったぜ────。柏木優。」

 

柏木がリビングに入ると、見知らぬ男性が椅子に座りながら出迎えた。

 

柏木優「お前、誰だよ! 勝手に人の家に入って────。」

 

謎の男「いや、なに。 お前を待ってたんだよ、非常に今が殺りどきだからな────。色々準備に時間がかかったが、今日で全部終わりだ。」

 

そう言うと謎の男は立ち上がり、柏木へ向かって懐から取り出した拳銃を向け、発射した。

 

柏木優「────ッ! ガハッ!!」

 

男の放った銃弾は柏木の腹部を貫き、後ろの暗闇へと消えていった────。

 

柏木優「お、お前は誰だ────、なんで俺なんかを────。」

 

柏木は正真正銘の最後の力を振り絞り、男にそう問いかける。

 

謎の男「まぁ、どうせ死ぬ事だし教えてやるよ、俺の名前は御久川羅伊。 因みにお前のガールフレンドも俺が殺した────。

 あーでも殺したって言う表現は少し違う気がするな、あれは────そうだな、どちらかというと俺がそうさせた。だな────。」

 

御久川羅伊と名乗る男は柏木へ軽々とそう告白する。

その告白を聞いた柏木はあまりの衝撃に身体が震えながらも、力む様に拳を握ろうとしていた。

 

柏木優「お前は────。か、必ず俺の手で更生してやる────。彩芽ちゃんに免じて殺しは、しない。 彩芽ちゃんは優しいからな────。真っ当な善人だった、、いい人なんて言う都合のいい人じゃなかった────。」

 

御久川は呆れた様な顔で地面に這いつくばる柏木を見て、こう言う。

 

御久川羅伊「はぁ? 俺を更生するだ? それは非常に興味が湧く話だな。 それは何故かと言うとお前にはもう何かをする時間は無いんだよ。」

 

御久川は再び手にしている拳銃を柏木へ向け、駄目押しと言わんばかりに、1発、2発と連続で弾丸を放つ。

 

御久川羅伊「息なし────。死んだか。

非常に楽だった────。さっさとおさらばしますか、カルマの連中が気がついて戻ってくる前にな。」

 

御久川は柏木の死亡を確認すると、玄関ではなくベランダの方へと向かい、高さ10メートル程からパルクールの要領で柵を飛び越え、アスファルトの地面に着地する。

 

御久川羅伊「────? 雪だ。ああ、そうか今日はクリスマスか。 オ〜ル、アイフォント、フォ〜クリスマス、イ〜ズユ〜。」

 

12月25日、22時23分。

この時、東京には久しぶりの雪が降り、

その冷たい結晶は宮本彩芽と柏木優の死を華麗に称えた────。

 

宮本彩芽────死亡(死因:自殺)

柏木優────死亡(死因:銃殺)

 

***************************

 

AGE 2020 〜地球・日本〜

 

Place: 柏木の家

 

Time:12月25日 22:44

 

降り続ける雪を通して、夜空に浮かぶ月の光は柏木の家の窓から入り込んで、物静かな部屋の中を薄く照らしていた。

 

落合迅「おい! 鍵が開きっぱなしだぞ! 先に中入ってる────!」

 

鹿野紅葉「ちょっと、、待ってよ! 私も一緒に行く────!」

 

柏木宅の玄関は夜の23時近いにも関わらず、大人の男女が何やら騒がしくしている。

 

落合迅「うッ────。さっむ! 窓が開きっぱなしだ。優はまだ帰ってきてないのか?」

 

鹿野紅葉「私に聞かないでよ。でもさっきあった場所からここなんて4分から5分位で着くはずだから、もう家に居ても変じゃないと思うんだけど・・・」

 

少し前にこの辺りでなった銃声の音を聞きつけて急いで戻ってきた鹿野と落合だったが、

すでに家に着いているであろう優の姿はなく、家の中は無防備な状態であった。

 

「ペチャリ────」

 

落合迅「ん────?」

 

落合が柏木宅のリビングを散策していると、

不意に革靴の裏に生じた違和感に一瞬立ち止まる。

 

そしてその違和感の発生源でもあるリビングの床に目を向けると、そこには小さい血溜まりのようなものが出来ていた。

 

落合迅「────! なんだ!? コレは! 血溜まりが出来ている!」

 

鹿野紅葉「どうしたの。 何か分かった────? って、ええ?!」

 

急な叫び声に反応した鹿野は、落合のいるリビングの方へ向かう途中、薄暗い部屋の中で足を妨げる何かに躓き、転びそうになるが反射的にそれを堪えて、なんとかその場に留まり、妨げた何かを確認する。

 

落合も足元の血溜まりから細長く伸びる血の流れを目でたどりその何かに辿り着くと同時に、その何かの正体にも気が付く。

 

鹿野紅葉&落合迅「人だ! 人が倒れている!」

 

鹿野はその場でしゃがむと、自身の足元でうつ伏せになっている人の顔を恐る恐る確認する。するとそれはつい先程会ったばかりの男の顔であった。

 

鹿野紅葉「ま、優────。」

 

落合迅「そんな、、嘘だろ────。宮本彩芽だけじゃない。セットで優も御久川に狙われていたんだ! もっと警戒しておくべきだった────。」

 

鹿野紅葉「私、奴を探してくる───!」

 

鹿野はそう言うと既に開いていたベランダの窓から勢いよく飛び出していき、白銀の世界へと消えていく。

 

そして鹿野の場所と変わるように落合は優の既に死体となった体に近づき、彼に話しかけるようにその場にしゃがみ込む。

 

落合迅「柏木優────。まだ1人も救えていないぞ。俺たちとは違ってお前は決められた役割があるんだ。それなら贅沢に全うしてから死んでくれよ────。」

 

落合がそう言い終わると、静寂に包まれた一室には白銀の世界が生む冷たい風が再び室内に誰かを運んでくる。

 

鹿野紅葉「ダメ、この辺りにはもう居ないみたい────。 足跡も残ってなかった。」

 

落合迅「いや、帰ってくるの早いな! あの去り方だと明日の朝まで顔見ないと思ってたよ────。」

 

鹿野紅葉「しょうがないでしょ! 寒かったし! 足跡も何故か残って無かったし! 寒かったし!」

 

落合迅「はいはい、寒かったのは伝わったから────。 後で司さんの喫茶店でも寄って行こう。」

 

鹿野紅葉「え!? あのお店この時間でもやってるの?」

 

落合迅「なに言ってんだよ、あのお店24時間営業だろ────。」

 

鹿野紅葉「まじか! 自営業の喫茶店が24時間営業ってなんかもう・・・はー、人が死んでるのになんか笑えてくる────。

 所詮は他人の死か────。」

 

落合迅「・・・他人の死か。 優が他人だったのかは置いといて、「死」自体が軽いものでないことは明らかだ────。

 その辺はわかってるつもりだけど、お互いに間違わないようにしていこう。」

 

鹿野紅葉「────そうね。」

 

落合迅「さて、それじゃあ優はひとまず事務所に運ぼう。っとその前に先輩に連絡しておかないとな────。 もしもし先輩、優が────。」

 

落合がリビングで電話を行なっている最中、

鹿野が柏木の死因を調べていると、死体の場所と血溜まりの場所が不自然な事に今更気付く。

 

鹿野紅葉「ん? あれ。これって────。

 迅! ちょっと火葬がどうとかそういう話ちょっと早いかも────!」

 

落合迅「?早いってなんでだよ。俺後になって徹夜してまで準備するのは嫌だから今進めたいんだよ────!」

 

鹿野紅葉「ちょっと! そういう意味じゃないって! まだその準備は要らないかもって意味! これ見て。」

 

鹿野は長々と電話中の落合を無理矢理静止させると、自身が違和感を感じた箇所を指で指す。

 

落合迅「なんだ、、これ。一体どうなってるんだ。」

 

鹿野紅葉「分からないけど、とにかく! 事務所に連れて帰ろう────!」

 

 

********************

 

これは一体誰の視点なんだ────。

 

俺が見える。

 

恐らく今日の光景だろう。

 

クリスマスの夜、ショッピングモール内で急にいなくなった彩芽ちゃんを探している俺が見えている。

 

そういえばこの後だった。

 

外に探しに出たら人だかりができていて、

その中の中心に彩芽ちゃんが居た────。

 

彩芽ちゃんを囲む人だかりはスマホを片手に平然とした態度で動画やら写真やらを撮っている。

 

そうだ────。

 

俺たちは「これ」が嫌だった。

 

だから変えたかったんだ。

 

だけど────、結局彩芽ちゃんは、「これ」の犠牲になってしまった。

 

一体どうやったら「これ」を変えられるんだろうか。

 

いや、違うな。

 

今は逆にどうやって「これ」が生まれたかを考えるべきだな────。

 

********************

 

恐らく廃墟であろうビルの一室には、ベットが置かれており、そこに眠る青年がたった今、時間で言うと約1年ぶり程に目を覚まそうとしていた。

 

その一室には青年の他にもう1人椅子に座りながらお菓子を摘んでいる青年が居る。それと年代物のような古いブラウン管テレビが置かれており、丁度ニュースが流れていた。

 

ニュースキャスター「本日2000年12月24日。2020年の未来人達がやって来てから、実に3週間ほどが経過致しました────。

 この時代に生きる我々と未来人────。

互いに助け合い、生きていく事は果たして可能なのでしょうか。

 今回はその2020年、最も活躍したミュージシャンであるらしい早峰紫音さんにスタジオへお越し頂けました。早峰さん、本日は宜しくお願い致します────。」

 

青年「え!? 早峰さんもこっちに来てるのかよ! あの人大丈夫かな────。」

 

青年はブラウン管テレビに向かって、ボソボソと独り言を呟いており、ベットに横たわる青年には見向きもしていない様子であったが、摘んでいたお菓子がなくなるとテレビを消し、ベットに横たわる青年の方を向き呟く。

 

青年「────。この人本当に生きてんのかな。無理矢理迅さんがこっちにも連れて来たけども・・・もう1年くらい眠ったままらしいじゃん。 名前なんだっけ────。

 えーっと。あっ、そうだ。 柏木優さんだ。」

 

柏木優「え────? なに?」

 

青年「え? え? え?!」

 

青年がベットに横たわる青年の名を呼ぶと、それに答えるかの様に約1年ぶりに柏木優は目を覚ました。

 

青年「えー!? じ、じ、迅さーん!!」

 

青年は驚いた様で、床に勢いよくしりもちをつき、部屋の外へと大慌てで出ていった。

 

柏木優「此処はどこだよ────。ってゆうかなんかテレビがすげー古いな。」

 

柏木は約1年ぶりに起き上がったというのに、

フラフラとよろける訳でもなく、その頑丈な足でいとも簡単に立ち上がり、室内を見渡たしていると古いテレビを見つけた。

 そして間髪入れずにテレビの電源をつける。

 

早峰紫音「いや────。本当に俺が売れたのは奇跡というかなんというか。まぁ、ただ俺が奏でた音楽がたまたまみんなの耳に合わさったって感じなんすよね!」

 

柏木優「早峰紫音だ────。彩芽ちゃんが好きだったミュージシャン・・・。

 ────!? 2000年!? どういう事だ!俺はタイムスリップでもしちまったのか?」

 

テレビをつけると先程のニュース番組が流れており、柏木はテレビの左上に映る本日の日付を確認し、驚愕する。

 すると、先程部屋から出ていった青年の声が聞こえてくる。

 

青年「────いや、だから! 早峰さんもこっちに来てるんですって! まぁその話は後にしましょうよ。 そんなことより、驚かないでくださいよ────!」

 

落合迅「紫音がこっちに来てるのは知ってるよ? 直哉に見てもらってる────。

 やぁ、どうも。 柏木優、俺は落合迅。

 約1年ぶりって感じかな。

 まぁ、あの時は俺会ってないけど────。」

 

青年が連れて来たであろう人物、落合迅は陽気な声で、柏木優へと声をかける。

 

柏木優「えーと・・・どなた?」

 

落合迅「えーと・・・あれだよ、この間怪しい女の人が君に話しかけてこなかった? その女の人の同僚ね────。

 まぁ敵じゃないからそこは安心して欲しいかな。」

 

柏木優「あ────。グレーのスーツ着てた人か。 確かに居ましたね、そんな人。

 その人は今どこに?」

 

柏木がそう聞くとあたりの雰囲気は途端に重くなる。

 

青年「女の人って? 間宮ちゃんじゃないですよね────。そんな人いたっけ。」

 

間宮玲「鹿野さんよ、私たちの先輩────。

少し前に大きい怪我して今まだ意識戻ってないのよ────。悠真・・・あんたも最初に紹介してもらったじゃん。」

 

桜木悠真「え、あ、、そうだった〜。」

 

落合迅「────。つまりそういう事。」

 

落合と先程の青年、桜木悠真が立つ後ろのドアから急に現れたか間宮玲の口から柏木唯一の知人である鹿野紅葉の現状を聞かされる。

 

柏木優「そうか────。」

 

落合迅「まぁそれは置いといて、優────。今のこの状況は初めてかな?」

 

落合は静かになった一室の空気を振り払うかの様に、柏木へと軽く質問をする。

 

柏木優「この状況って、、もしかしてタイムスリップの事かな?」

 

落合迅「あー、そうだね。それそれ。

 今、優の視点だと時代が変わった様に感じてると思うんだけども、これって初めて?」

 

柏木優「あぁ、こんな事は今までないかな。」

 

落合迅「ん、了解。といってもなんでこうなってるのとかまで説明するのは面倒だから簡単に今の状況を説明するよ。 

 今、この2000年の時代には俺らみたいな2020年の人たちが大勢そのタイムスリップをしてるんだよ。 そんでそのタイムスリップが起きてから今日で3週間目って訳。」

 

落合は今のこの状況の事を説明する。

 2020年に生きる人達が大勢この2000年にタイムスリップして来ているということ。

 そしてそのタイムスリップが起きてから既に3週間程経っているという事を。

 

柏木優「タイムスリップが起きてって、

その言い方だと自然現象みたいだな。」

 

落合迅「いいや? これは人口だ────。おっと、悪い。電話が来た。」

 

柏木が疑問点を挙げ、落合が答えようとしたところで電話がなり、話は遮られてしまった。

 

柏木優「これが人口だと────?

もう俺たちが更生できる世の中じゃなかったのかもな、彩芽ちゃん────。」

 

柏木が呟きながら部屋の窓から外を覗き、

外を眺めていると落合の電話が終わったらしく、再びこちらに話しかけてくる。

 

落合迅「良いニュースと悪いニュースがあるんだけど、まず良いニュースからいこうか。

 えーと、後4〜5分で現代に戻れる。

悪いニュースは俺の携帯の電源が切れた。

 以上、臨時ニュースでした!」

 

桜木悠真「いや、悪いニュースがどうでも良すぎて、なんか実感がわかないっす。先輩」

 

落合の朗報によりこの場の空気は少しだけだが、朗らかになる。

 

落合迅「よし、それじゃあみんなで帰る支度でもするか────!」

 

柏木優「いや、もう完全に遠足のテンションじゃん────。一体なんなんだよ、これ────。」

 

落合の掛け声により、間宮と桜木は部屋を大慌てで出ていった。

 

落合と柏木で2人きりとなった一室で、落合は先程とは少しトーンが低い声で柏木に質問をする────。

 

落合迅「優────。さっき起きる前まで、

ようは寝る前の記憶は残ってるか?」

 

落合がそう聞くと、柏木は思い出したかの様に顔をあげる。

 

柏木優「あ────。そうだ、確か御久川とかいう奴に家の中で銃で撃たれて、その後は────。いいや、それで今だ。その後は知らない。」

 

落合迅「そうか────。それじゃああれは無意識だったって訳か────。」

 

柏木優「え? 無意識ってなにが?」

 

落合迅「ん、なんでもないよ。 戻って来れて嬉しいよ。」

 

柏木優「は、はぁー。どうも?」

 

落合は柏木から答えを聞くと、満足度で部屋から出ていった────。

 

その数分後、落合は柏木がいる部屋へと戻ってきた。

 

落合迅「よし、それじゃそろそろ来る頃かな────。」

 

柏木優「来るって、、なにが?」

 

柏木がそう聞くと、落合はまぁまぁと言って焦らされる。

 

落合迅「お、来た────。」

 

柏木優「いや、、だからなにが!?」

 

柏木は再び落合へ問いただすが、次の瞬間、

落合は手を上に掲げて、指パッチンの動作を取る。

 

落合迅「はい。では今からわたくしの指パッチンと同時に現代に帰りまーす。

 本日は『過去へタイムジャンプ!』アトラクションにご搭乗頂きまして、誠にありがとうございました。ではアディオス!」

 

「パチンッ」

 

柏木は落合のジョークに呆れて、目を閉じた。

 

柏木優「すげーつまんなそうなアトラクション────。 あれ?」

 

柏木が目を開けると、それは先程までいた廃墟ビルの一室。ではなくちゃんとした現代風の病室の様な背景へ変わっていた。

 

柏木優「マジかよ────。」

 

新たな現代風の一室の壁には日付付きの時計がかけられており、その日付は2021年の12月24日を示していた。

 

柏木優「マジかよ────。1年くらい寝てたのか、実感が湧かないな。落合くん、これ本当に現代? 未来飛んじゃってない?」

 

落合迅「いーや? ちゃんとここが現代だよ? なんたって明日の夜は楽しみにしてた『ユニコーン探索隊・クリスマス特集』のスケジュールがちゃんと手帳に書いてあるしな────。」

 

柏木優「その、UMA特集みたいな番組は俺も気になるな────。

 まぁいいか、それで俺はこれから自宅に戻っていいのかな?」

 

落合迅「んー。まぁ意識も戻ったみたいだし、帰ってもいいかな────。

 あぁ、そうだそれと明日、18時にマルイモールに来てくれ────。」

 

柏木優「マルイモールか。。てゆうか落合くん。俺たちってどういう関係?? 会ったの30分前くらいだけども、その関係でクリスマスを一緒に過ごすのはなんだかなーって感じだ。」

 

落合迅「あーそっかそっか。そうだよな。俺が一方的に知ってるってだけで優からじゃそう見えてる訳だもんな────。まぁいいやそれじゃあ、今から友達になろう。

 はい、それでこの話は終わり────。」

 

柏木優「正直この話をそう簡単に終わらせて貯まるかって感じだけど、疲れたからもう良いや、、オーケー。友達ね、それじゃあ迅。

 家まで送っててくれ────。」

 

落合迅「距離の詰め方と切り替えの速さが尋常じゃないな────。

まぁいいや、わかったよ、、」

 

柏木に乗せられた落合は仕方なくお願いを聞きいれ、2人揃って部屋を歩いて出ていった────。

 

********************

 

まただ。

 

これは一体誰の視点なんだ────。

 

彩芽ちゃんだ。

 

御久川も一緒にいる。

 

マルイモールの屋上テラスで何か喋っているみたいだ。

 

「よく私は、死にたいと思ってしまう時があるの。

 けどそう思うのはほんの一瞬で、次の瞬間にはもうそんな事は全て忘れてしまう。」

 

彩芽ちゃんは一体なにを言っているんだ。

 

そんな事は俺も聞いたことがない────。

 

「とても幸せでも、そう思ってしまうの。

 その時丁度わかったわ。

 幸せだから不幸にならないわけじゃない。

 不幸の原因は「心」なの────。

 幸せは「心」の形ではないから────。

 だから、私の幸せは壊れていない。」

 

「それで────。遺言は済んだか?」

 

「悔しいけど私はこれから貴方の思惑通り不幸の象徴になってしまう。

 この後の私を見てみんな『可愛そう』だとか思うだろうけども、それは死んだ私を見た上での結果でしかない。

 それは違う────。

 私の道導は『幸せ』だった。」

 

「非常に、愉快な人生観だ────。」

 

 

 

御久川が彩芽ちゃんに向けている人差し指の先には黒点が渦巻く。

 

 そしてやがて黒点は御久川の人差し指の先から切り離され、彩芽ちゃんへと着弾した。

 

その後は、まるで身を投げ出す為の様に屋上テラスの塀を登り、後は流れる様に身を投げ出した────。

 

********************

 

AGE 2021 〜地球・日本〜

 

Place: マルイモール・エントランス

 

Time:12月25日 17:50

 

クリスマスのマルイモールは、一段と賑わっており家族連れやカップルなどが多く訪れている。

 

そんな中、柏木は本日の供人である落合を淡々と待っていた。

 

柏木優「流石に30分前はやっぱり早すぎかな────。 デートでもあるまいし、俺は何やってんだよ────。」

 

少し経って、黒のコートを身に纏って落合がやって来た。

 

落合迅「おー、優、もう着いてたか。お疲れ様。」

 

柏木優「んー、お疲れ様。

 それで? 今日読んだ理由を教えてくれよ。」

 

落合迅「そうだな、まぁ着いて来いよ。」

 

言われるがまま柏木は落合の後ろを着いていき、エスカレーターを登り続け、屋上テラスへとやってくる。

 

柏木優「ここは────。」

 

落合迅「身に覚えがあるみたいだな────。ここは丁度1年前、宮本彩芽が亡くなる生前までいた場所だ────。

 俺もあの時ここに居た────。」

 

柏木優「────!?」

 

落合はそう柏木へ告白すると、柏木は驚愕する。

 

落合迅「俺はあの時、御久川を追っていた。

 その途中でああなったんだ。 

 それで、実は宮本彩芽が死ぬのを止める事も出来たんだ────。

 だけどもしなかった。

 俺は宮本彩芽の生き様に共感してしまったんだ。 

 そしてここで死ぬのが宮本彩芽の運命だと悟った。」

 

柏木優「────。それを俺に言って一体何を望んでるんだよ。」

 

落合迅「いいや、優には何も望んでないよ。

 これは俺の覚悟だ────。

 よく聞いてくれ、優。

 お前は一度死んでいる。

 そして生き返ったんだ────。

 お前の心意なら何もかも戻せるんだ。

 人の命も────。」

 

柏木優「お、俺の心意が人の命も戻せるだって? そんなのはとっくに試してるんだよ!

 婆ちゃんが死んだ時だって! 母さんが死んだ時だって! 何回も試したよ! だけどそんな事は出来なかった────。」

 

落合迅「それはお前の心意がまだ進化していなかったからだ────。

 優、お前の心意は宮本彩芽の死によって進化したんだ────。」

 

柏木優「俺の心意が、、進化────。」

 

落合迅「そうだ────。

 今のお前なら何にでもできる────。

 今意識のない紅葉も亡くなった宮本彩芽も全て戻せる────。

 そこで、優。

 お前に決断させる────。

 宮本彩芽をここへ戻すか。

 御久川をここへ戻すか。

 どちらか選ぶんだ────。」

 

柏木優「そんなの、彩芽ちゃんを戻すに決まってるだろ!」

 

柏木は落合が用意した分岐点を即決する。

しかし、落合の回答は柏木が思ったものとは正反対であった。

 

落合迅「宮本彩芽を戻したら、次は俺が宮本彩芽を殺す────。

 宮本彩芽はもう既に死んでいるんだ。

 それはマラソン大会のゴールテープを破った直後にまた新品のゴールテープをその先に貼られるのと同じような事なんだよ!

 もう、宮本彩芽の素晴らしい人生は終わったんだよ────。

 俺は宮本彩芽に幸せな人生のまま終わっていて欲しい。

 それが彼女の願いだと思ってる────。

 だから優。

 宮本彩芽を戻すなら俺から全力で守り切れ。

 御久川を戻すなら俺はお前の横に立つよ────。」

 

********************

 

AGE 2020 〜地球・日本〜

 

Place: マルイモール・3F

 

Time:12月25日 20:44

 

 

宮本彩芽「優はさー、死のうって思った事ある?」

 

柏木優「いやー、まだ無いかな。死にたいって思った時は沢山あったけど、じゃあ死のう、、なんてことは無いね。

 俺は、死ぬのは怖いよ────。

 死んだらもう柏木優はいなくなっちゃうしね。」

 

宮本彩芽「そっかー。

 ねぇ、なんで死ってさ、悲しいだったり不幸って思われてるんだろうね────。」

 

柏木優「どうだろうね、それがどんな死にもよるんじゃないかな。

 殺人事件の被害者なら正直、悲しい死だろうけどさ、寿命の限界まで生きて亡くなるならそれは素晴らしい死とも捉えられる気がするよ、あとさヒーローとかも自分の身を挺して誰かを救ったりとかさ、それでヒーローが死んだとしても俺はそのヒーローを誇らしいと思うよ────。」

 

宮本彩芽「そっかー。優は頭ハッピーだね!」

 

柏木優「それは煽りと受け取っても良いのかな?!」

 

宮本彩芽「まぁ!まぁ! でも、そっかー。

 じゃあ私が死んだら私の死が一体なんだったのかってちゃんと決めてね!」

 

柏木優「なんだよ、それ!

 そんなバカップルみたいな例え話恥ずかしいから辞めてくれ!」

 

宮本彩芽「バカップルって、、最近聞かないわね────。」

 

 

********************

 

AGE 2021 〜地球・日本〜

 

Place: マルイモール・屋上テラス

 

Time:12月25日 18:15

 

 

『私の道導は幸せだった。』

 

 

柏木優「彩芽ちゃんは幸せだった────。

 ・・・それなら邪魔しちゃ悪いよな。」

 

柏木は何かを決断したのか、1年前に御久川が

丁度立っていた辺りに人差し指を向け、親指に中指を添え、指パッチンの用量で何かを放つ。

 

次の瞬間、柏木が放った何かが着弾したのか、辺り一面の雰囲気が一変し、そこに現れたのは御久川羅伊の姿だった────。

 

柏木は一直線で御久川の元へと向かって走っていくと、顔へ勢いよく殴り込み、その拳は直撃する。

 

御久川羅伊「な、柏木優!? 生きてやがったのか────!?!」

 

柏木優「よう、御久川。

 予告通りに更生してやるよ────。

 今だけ変えるぜ────!」

 

2021年12月25日、18時16分。

柏木優の更生を後押しするかのように、丁度1年ぶりの雪が降り始めた。

 

********************

 

AGE 2021 〜地球・日本〜

 

Place: マルイモール・5F 映画館内

 

Time:12月25日 18:21

 

「僕は! 君を愛しています!」

 

マルイモールの映画館ではちんけなB級の恋愛映画からハリウッドで大作と称えられる程の映画まで全てのジャンルを網羅している。

 

その中でもそのちんけなB級の恋愛映画を見るものはクリスマスの土曜日であれ、数は少ない。

 

そしてB級恋愛映画は終盤。

主人公が愛人に愛の告白をする瞬間。

 

ある者は暇そうに携帯を眺めている。

 

またある者は緊張した眼差しでスクリーンを凝視している。

 

そしてまたある者が少し大袈裟な音と共にその様々な気持ちが行き交う空間へと突如として介入する。

 

(なんで、柏木優が生きるんだ────。

あの時たしかに息の根は止めたはずだ・・・いや、そういえばさっき後ろに迅がいやがったな! やはり今回もカルマに邪魔されていたか────!)

 

そしてまたある者達がそれを追うかの様に再びその歪な空間へと介入してくる。

 

柏木優「たしかここの劇場に入っていったはずだ────!」

 

落合迅「あぁ、そうだな。俺は外で待機する。中は暗くて見づらいからな、いつのまにか逃げられたなんてならない様にしないとな────。

 奴の攻撃には気をつけろよ!」

 

柏木優「おう、了解!」

 

(迷わず入ってくるか! 柏木優! 俺の能力は事前に迅から聞かされているだろうが、この暗闇じゃ俺の攻撃は避けられない! 喰らえ!)

 

御久川は自身の人差し指で渦巻いた黒点を柏木へ向け発射する。

 

柏木優「奴がここにいるのなら、必ず攻撃が来る────。 」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

 

数分前・・・

 

 

柏木と落合が屋上テラスより抜け出した御久川を追う最中────。

 

 

落合迅「御久川の心意は『堕落』だ!

 奴の黒点に触れればお前であれ正気を失う可能性があるぞ────!

 今は生憎と夜だ。 

 外での戦いはあいつが有利すぎる。

 基本的にモール内で戦おう。」

 

柏木優「当たったら即死かよ────!

 それは強すぎないか!? 何か対策はできないのかよ!」

 

落合迅「対策は多分できる! これは推測だが恐らく奴の『堕落』は接触した者の心意の強度によって強弱が変わる────。

 簡単にいえば目的を絶対に見失うな! 奴を倒す事だけを考えろ────。それ以外の思考に囚われたら奴の『堕落』に堕とされるだけだ────!

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

(この中は暗闇だ────!

 俺の攻撃は攻略できないッ────!

 よし! 当たるぞ!)

 

柏木優「────。

 あー、この映画俺も昔観たことあるな。

再上映か何かか? まぁいい! 主人公が振られてお悔やみ中で真っ暗だが! 映画の前半部分は立派な青春物語なんだよ────!     青春! この劇場を照らせ────!」

 

柏木は更生弾をスクリーンへと打ち込む。

すると映像の画面は急に切り替わり、主人公達が真夏の海をバックに優雅に楽しんでいるシーンへと切り替わる────。

 

柏木優「んー、ちょっとばかし季節違いだが、、この光なら十分だ────!」

 

スクリーンの明かりに照らされた劇場は、一気に明るくなり柏木へと向かってくる黒点をも綺麗に映し出した────。

 

柏木優「────! 見えた! やはり俺への攻撃は始まっていた! 奴はこの劇場内のどこかに必ず居る!! それならッ!」

 

柏木は劇場内に御久川が居るとわかると劇場中心へと再び更生弾を発射する。

 

(柏木! 一体何をするつもりなんだ?!)

 

柏木優「1分前────。

 御久川、お前はこの空間のどこに居たんだ? 今、空間を更生する────!

 次の瞬間、お前は1分前にこの空間に存在した場所に戻るッ!」

 

更生弾が劇場内上空に発射された次の瞬間、

御久川は柏木の目の前、劇場入口付近の廊下に出現する。

 

御久川羅伊「クソッ! またこれか!」

 

柏木優「2発目だッ!」

 

柏木は御久川へ再び拳を勢いよく顔面へ叩き込もうとすると、廊下の両側に存在する手すりの違和感に気が付く。

 

柏木優「な、なんだ? 小さいが黒点が手すりに────」

 

次の瞬間、両側で挟む手すりは異様なまでの鋭い形に変貌し、柏木の胴体へと躊躇なく向かってくる。

 

柏木優「な、なに────!? クソッ!」

 

柏木は更生弾を廊下の地面へと打ち込む。

しかしその対応は一瞬遅れていた────。

 

柏木優「クッ────。」

 

柏木は御久川へ踏み込む前の場所へと移動を成功させたが、その代償に冬場に愛着しているネイビー色のコートには複数の穴が空き、

身体から出る血はその穴をも塞ごうとしてた────。

 

柏木優「物にまで使えるのか────、

 俺の心意に似ているな────。」

 

御久川羅伊「確かにそうかもな────!」

 

御久川は振り返ると劇場の入口であるドアまで走り始める。

そしてドアを開け、劇場を出ると───

 

落合迅「どうも────!」

 

落合は御久川が劇場内から出ようとする瞬間、自身のスーツの裏に忍ばせている刀の持ち手のようなものを取り出し、勢いのあるスナップと同時にそれは勢いよく刀身を表し、御久川へと斬りかかる────。

 

御久川羅伊「フッ────!」

 

御久川は向かってくる素早い斬撃を身体を捻り交わし、落合の胴体へと黒点を打ち込んだ。

 

御久川から放たれた黒点はやがて落合に着弾する。

 

落合迅「なんだ───」

 

御久川羅伊「今更お前をちまちまと殺すわけないだろう? 一撃で仕留める────!」

 

落合の胴体は黒点が着弾した直後、凄まじい破壊力とスピードで後方10m付近の壁へ直撃する────。

 

御久川羅伊「落合────。

 お前ここで終わり────」

 

落合迅「いつ────立場が変わった?」

 

御久川羅伊「なっ────!」

 

10m程吹き飛んだはずの落合はまるで瞬間的に移動したかのような異次元のスピードで吹き飛ぶ寸前までいた場所へと戻ってくる。

 

落合迅「今お前、、必死になったよな? 

 何を勘違いしたかは知らないが、いつお前が狩る側になったんだ? 俺が狩る側だ────!」

 

すると御久川は突然と驚いたリスのように背を向けながら、映画館内の廊下を走り去っていく。

 

柏木優「────直接ではなかったが、少しは更生できた────。 

 あいつに追い風は吹かない────。」

 

落合迅「優────!

 奴の思考を戻したのか!」

 

先程の劇場ないから出てきた優は先程の御久川から受けた攻撃の傷は無くなっており、すっかりと元気になっていた────。

 

柏木優「あぁ、人が優勢になるのは自分が相手より優れていると思った瞬間だ────。

 つまりその瞬間にさえ辿り着かなければ奴が優勢になる事はない────!

 直接は当てていれば終わってたけど、奴の心意自体を貫通するにはまだ早かったな。

 迅────! あいつを追うぞ!」

 

落合迅「あぁ────!」

 

********************

 

AGE 2021 〜地球・日本〜

 

Place: マルイモール・4F

 

Time:12月25日 18:27

 

御久川はモール内の吹き抜けを巧みに利用し、5Fから4Fへと移動し落合と柏木から距離を取ろうとする。

 

しかし今、ゾーンに入っている様な状態にある柏木らから距離を離すことは難しかった。

 

柏木は御久川の背中を追う様に5Fの吹き抜け側の手すりを使用し、パルクールの要領で4Fへと向かい際に勢いをつけ、御久川へと強襲を掛ける。

 

御久川羅伊「────!」

 

急な不意打ちだった為、完全に決まったかに思えた柏木の勢いある蹴りは御久川の頭部スレスレを掠める。

 

柏木優「なんだよ! 後ろに目でも付いてんのか!?」

 

御久川は直感的に柏木の蹴りを避ける。

そして空中にいて身動きが取れない柏木へと裏拳を直撃させる。

 

柏木優「────ッ、グハッ!!」

 

柏木は勢いよく隣の本屋へと吹っ飛ばされ、本屋内は一瞬にして荒れ果てる。

 

柏木優「────クソ、あの野郎。。

 そっちもいける口かよ────。」

 

柏木を吹き飛ばし、勢いをつけた御久川は正面から再び抜刀された刀を構えてやってくる落合へも怯まず、そのまま迎え撃つ。

 

落合迅「よっ、と────。」

 

落合は刀を軽く振り、刃は空を切ったかに思えた────。

次の瞬間、落合は御久川の背後へと回り、再び刀を今度は御久川本体へと振りかざす。

 

しかしそれを見知っていたかの様に御久川は、振りかざされる刀身を真剣白刃取りの様に受け止め、落合の勢い止める。

 

落合迅「は!? 神業────!!」

 

落合は自身の刀身を受け止められると、刀の持ち手を易々と手放し、左手に忍ばせていた小型ナイフを取り出し軽く振る。

 

すると落合は再び御久川の背後へと周り、腰を落としながら回転し、地面に足をスライドさせ御久川の体勢を崩す。

 

そして自身が信頼している人物へと後を託す────。

 

落合迅「優────!」

 

名前を呼ばれた柏木は綺麗な本屋を後にし、

映画館での続きと言わんばかりの勢いで左足を踏み込み、体勢を崩しかけている御久川へと鋭い拳を撃ち込む。

 

御久川羅伊「────ッ、グハッ!!」

 

落合迅「イイね────。

 クリティカルだ────。」

 

御久川は勢いよく吹き抜けを抜けて3Fへと

吹き飛ばされる。

 

柏木優「迅────!」

 

落合迅「これは!」

 

先程、御久川羅伊に触れた柏木の右手と落合の右足には微量ではあったが黒点が付着していた────。

 

柏木優「時限爆弾────。」

 

次の瞬間、両者に付着していた黒点は鋭く変形し、柏木優の右手と落合の右足を貫く。

 

落合迅「────ッ」

 

柏木優「攻守交代か────!」

 

さっきまで3Fにいた御久川は、

いつの間にやら歪んでいたモール全域から押し出されるように這い上がっていき、

4Fから自身を狩らんとする狩人達を見下ろしていた────。

 

********************

 

AGE 2021 〜地球・日本〜

 

Place: マルイモール・3F

 

Time:12月25日 18:29

 

マルイモール全体が突然と大きく揺れだし、

落合と柏木を含む大勢が体勢を崩し、その場に倒れ込む。

 

落合迅「な、なんだ! この揺れは!」

 

柏木優「押し上げられている感じがするぞ!

 モール全体が迫り上がってきてるんだ!」

 

「ボコ」

 

柏木優「な、んだ。」

 

次の瞬間、柏木が立っていた廊下の真下は歪な音を立てながら、突如として崩れていく。

 

柏木優「これは!」

 

落合迅「優────!」

 

2Fへと落下していく柏木。

そこへ追い討ちをかけるように空中で身動きが取れない柏木を中心に黒点から鋭い刃へと変形する。

 

柏木優「────ッ!」

 

柏木は自身に向かってくる刃へと向かい更生弾を撃ち込む。

 

更生弾は空を切り、黒い刃へと着弾するかに思えたが、更生弾はその対象を無かったかのようにすり抜け、モール内の壁に直撃する。

 

柏木優「まじか! 判定ないのかよ!」

 

そして更生弾をすり抜けた黒い刃は柏木の胴体を貫く。

 

柏木優「────ッ、グハッ!!」

 

柏木優(やばいな、またダメージ受けちまったか。

 さっきから傷は戻してるのに心の違和感が消えない────。

 思ったより厄介な心意だな、)

 

落合迅「優! 無事か?!」

 

柏木優「生きてはいるけど、無事ではないな! 迅、奴から目を離すなよ!」

 

御久川羅伊「おいおい、迅、紅葉がいないと大したことないな?

 くれてやるよ! 特注品だッ!」

 

御久川は手を振りかぶり、落合へ向け何かを投げ込む。

 

その何かが空中へと放たれた直後、なにもない空間には突如として亜空間のようなものが出現する。

 

そして亜空間は全てを吸い込みながら落合へと向かっていく。

 

柏木優「なんだよあれ! ブラックホールか!?」

 

その光景は下から見ていた柏木の目から見ても明らかに災害と呼べるに相応しいレベルであった。

 

「「どうなってんだ!!?あれ!!」」

 

「「いつのまにかあんなのが!?」」

 

「「逃げろ────!!」」

 

柏木優「しまった────! 心意共感が外れちまった。 みんなこの異様な状況に気づき始めてしまう!」

 

心意共感────。自身の心意を相手に共有する心技の一つであり、今まで柏木はモールにいる全員に対して、自身の更生の心意を共感することにより、この異常事態に気づくものを完全にシャットダウンしていた。

しかし、御久川から受けた堕落のダメージにより、柏木の精神管理能力が著しく低下したため、心意共感が今まさに外れていってしまってた。

 

柏木優「迅────! それをなんとかしろ!」

 

落合迅「はッ────。

 今時のパワハラ上司でもそんなこと言わないぜ?

 ────心意解放。」

 

心意解放は自身の心意を文字通り内側から解き放つカルマの切り札の1つとも言える心技。

 

そして今まさに落合迅が解き放した自身の心意は思────

 

 

次の瞬間、モール中央に存在していた災害は一瞬にしてその空間から跡形もなく消え去っていた。

 

柏木優「はぁ?! まじかよ! やばいな迅!」

 

御久川羅伊「なッ────。んてね!」

 

完全に消えたかと思えた巨大な亜空間は再び姿を表し、落合の目の前に出現する。

 

柏木優「黒点を重ねていたのか!

 まずい! 当たるぞ! 迅────!」

 

落合迅「クソッ────!」

 

巨大な亜空間は一瞬にして落合を飲み込み、

この場から消え去った────。

 

柏木優「迅────! クッ、この野郎!」

 

柏木は2階層上にいる御久川へ向け、狙いを定め更生弾を撃ち込む。

 

御久川羅伊「柏木優────! お前は単調だな! 何も持たないものは何も変えられないんだよ!」

 

御久川は更生弾の向かう道筋から逸れ、

柏木の視界からも見えなくなってしまう。

 

柏木優「待て! 逃げるな、御久川!」

 

柏木は御久川を追う為、すぐさま4Fへと昇る道へと向かう。

しかしその道中、すでに見慣れた黒点は再び柏木へと寄ってくる。

 

柏木優「あいつ、逃げるつもりじゃあない!

 あいつは、、俺を殺しに来ている────!」

 

黒点は柏木へと追尾するように近寄って来ており、その軌道はまるで居場所が分かっているかの様な雰囲気であった。

 

御久川羅伊「いいぞ、もっと追い込まれろ!

 不安要素は一切残さない! ここで必ずお前を消す!」

 

柏木優「奴はどこから俺を見ているんだ。

 あの黒点には仕掛けがあるはずなんだ!

俺はその仕掛けを解かなければならない、そしてその仕掛けを利用して俺もあいつに攻撃が出来るはずなんだ────!」

 

モール内で入り乱れる人々。

 

柏木の目の前を浮遊する黒点はその人々の様にそれぞれがある目的を持ち、行動を行なっている。

 

その目的の結果にいるのが柏木である。

 

ある人は柏木優を視界にとらえる。

 

ある人は柏木優を思考する。

 

またある人は柏木優を聴く。

 

それら全ての行動に対して柏木優が存在する。

 

青年A「あのー、どうかされましたか?」

 

青年が話しかけた対象は柏木優である。

 

故に辿る心意は柏木へと辿り着く────。

 

柏木優「なッ────」

 

その途端、青年はみるみると黒点へと変貌し、柏木へ襲いかかる。

 

柏木優「話しかけられるのが黒点が出現するトリガーなのか────!? いや、、違う!! それならこれまでの条件と合っていない! 奴も心意を使っているんだ、俺ならどうする────。」

 

更生しか脳のない柏木優は思考する。

 

そしてある結果へと向かう。

 

柏木優「人の心を辿っているのか────。

 今、あの人は俺に対して話しかけてきた。

それは俺に感情が向けられたからだ、、

 そして今までも、誰かが俺を見ていて、

誰かが俺を考えていた────。

 そうだ、心意なんだ!

 それは幻想でなく、仮想でもない。

それなら、、辿れる────。」

 

柏木は黒点へと変貌した青年に質問する。

 

柏木優「肌が黒くて、金髪の奴見なかったか?」

 

青年A「え? あ────、確か、、」

 

すると黒点は何もなかったかのようにして青年へと戻る。

 

そして青年はあたりを見渡し、頭の奥に存在する記憶を辿る。

 

青年A「あの辺で見たような、、、」

 

青年はケーキ屋の目の前を指を指す。

 

ケーキ屋の店長「そういえばさっきの金髪のにいちゃんなんだったんだ? 急いで上にいったけどよ────。」

 

ケーキ屋は吹き抜けの上へと目線を向ける。

 

そして柏木から向けられた心意は上フロア全体へと拡散していく────。

 

「あいつ、、なんだったんだよ!」

 

「さっきの人、体大きくて逞しそう!」

 

「あの人、ニヤけてるけど何してるのかな?」

 

「あの────、何やってるんですか?」

 

御久川羅伊「あ────?」

 

御久川は話しかけめきた警備員の後ろからすらりと出てくる心意を視界に捉え、唖然とする。

 

柏木優「くらえ、御久川。

 これが更生の道導だ────。」

 

御久川羅伊「なに────」

 

現れた心意は形を纏い、御久川に一直線で向かっていき、足へと着弾する。

 

御久川羅伊「な、なんだ────」

 

御久川へのダメージはない。

 

ただし痛みのようなものが無いと分かると御久川はすぐさま着弾した足を切り落とす。

 

「「キャ────」」

 

御久川をいつの間にか取り囲んでいた人々は悲鳴をあげ、その場を散り散りと去っていく。

 

柏木優「お、おい! みんなその場を離れるなよ! 詳しい位置がわからないじゃないか! まったく、、切り落としたのはいい判断だったな、もう一発いくぞ────!」

 

御久川の現在位置を寸分違わず把握した柏木は更生弾を吹き抜けへ向け撃ち込む。

 

更生弾は吹き抜けを抜けて4Fに突入、そして角度を急激に変え、御久川へと一直線で飛んでいく。

 

御久川は足を切り落とした直後であった。

 

いくつもの枝分かれしていた人生の選択。

 

先程の御久川の判断は正しかった。

 

しかし再び正しい判断を行う時間は御久川になかった。

 

落合迅「元気が無さそうで何よりだ!」

 

御久川羅伊「迅────」

 

先程突然と姿を消していた落合が再びこの場に現れる。

 

そして御久川はその一瞬、静止する。

 

その静止が御久川羅伊の人生を大きく枝分かれさせた。

 

飛んできた更生弾は御久川へ直撃する。

 

そして後方へと吹っ飛び、4Fから1Fのクリスマスツリーが聳え立つエントランスへと落下していく。

 

********************

 

AGE 2021 〜地球・日本〜

 

Place: マルイモール・1F・エントランス

 

Time:12月25日 18:41

 

柏木優「もう終わりだ────御久川。」

 

御久川羅伊「ぁ────、たぁ────。

 た、のむ。

 た────すけて、、」

 

柏木優「安心しろよ、殺しはしない。」

 

御久川羅伊「ぐぅ────、、クソ!!

 ここにいる奴ら全員人質だ────!!

わかったらここから消え失せろォ────!」

 

柏木優「あ────。

 はいはい、人質ね。

 了解、了解。

 それならさっさとお前の視界から消えてやるよ。」

 

柏木はそういうと後ろに振り向きこの場から立ち去ろうとする。

 

御久川羅伊「は、勝負はまだ終わっちゃいないぜ────! 死ね────!!!」

 

御久川は後ろ向きの柏木へ向かって不意をつくかのように攻撃を行う。

 

落合迅「なんてまぁ、悪役が言いそうなセリフ。 だけどそのセリフは本当のクソ野郎のセリフだな。

 この先のお前には似合わない────。」

 

御久川羅伊「────ッ、グハッ!!」

 

落合は飛び出すと御久川の目元を切り裂き、

視界を奪う。

 

落合迅「ほら、優。

 有言実行だな────。」

 

柏木優「御久川羅伊、、本当に悪に染まっていたな────。 

 全身を巡れ、その身全てを更生しろ!

 さよならだ、御久川羅伊。

 次の世界でまた会おう────。」

 

再び放たれた更生弾。

 

それは御久川の足元から駆け上がる。

 

更生弾の勢いに身を委ねされざる終えなかった御久川はモールのはるか上空まで登りゆく。

 

「パチン────」

 

「「「メリークリスマス」」」

 

柏木がこの戦いの終結を讃えるようにそう呟いた────。

 

********************

 

AGE 2021 〜地球・日本〜

 

Place: マルイモール・1F・エントランス

 

Time:12月25日 18:48

 

御久川羅伊の更生から数分後、戦いを制した者たちはモールの外で雪降る中、星空を眺めていた。

 

落合迅「お疲れ、終わったな────。」

 

柏木優「・・・」

 

落合迅「浮かない顔だな────。

 なにか納得いっていないのか?

御久川はこの後、監獄行きだ────。 

 奴の中身が変わると言ってもやってきたことは変わらない。

 奴はこれから向き合っていくんだ。」

 

柏木優「・・・なんでも無いよ、手伝ってくれてありがうな、迅。」

 

落合迅「おう、なにか困ったことがあったら言ってくれ! やれることなら検討するからさ!」

 

柏木優「お、おう────。じゃあな。」

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

あぁ、終わってしまった

 

なにも変わらなかった

 

空いた穴も埋まらない

 

なんのためにやったんだっけ

 

明日からいつも通りなのか?

 

朝起きて、会社に行って────。

 

今日は不思議な体験をした。

 

こんな日が続けばいいのに

 

いつもどおりは退屈だ────。

 

そうだ、この日常を更生しよう。

 

またいつかこんな不思議な体験ができると信じて。

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

********************

 

AGE 2021 〜地球・日本〜

 

Place: 港

 

Time:12月25日 21:00

 

???「はぁー! もうまったく! 船の出港時間まで暇だったからモールに行ってみたら迅に会うし、、もうほんと最悪────!!」

 

「まもなく、出港致しまーす。」

 

???「いやー、久々にゆっくりできそう。

 素敵な船旅楽しまなくちゃ!!」

 

「今回はノア号世界1周クルージングに参加していただき、誠にありがとうございます。

 皆様にとって素晴らしい1年になりますよう心からおもてなし差し上げますので、宜しくお願い致します────。」

 

雪降る夜。

 

月下の海上に響くアナウンス。

 

それらを遮るように月を横断した影から一枚の羽根が船上へと落下していく。

 

水兵A「おい、カイリース。

 また空なんか眺めてよ、お前水兵だろ?

それなら海眺めとけよ────。」

 

カイリース「空はいいよ? 海と違って自由なんだ────。

 遮るものは何もない────。」

 

水兵B「はは! カイリースがまたポエムじみたこと呟いてるぜ!! 無視して船内に入ろうぜ? 今夜は寒い────。」

 

水兵A「それもそうだな────。

 まぁ、寒さはカイリースのポエムが滑ったのが原因だがな!!」

 

水兵B「ギャァハハハハ────!!!」

 

カイリース「────。

 はぁ、あ! 流れ星!!!」

 

********************

 

AGE 2021 〜地球〜

 

Place: カルマ本部

 

落合迅「────ですので、今回は私が彼の

キーマンとなって、、、」

 

???「そんな事を聞いているんじゃあないよ、下位役。

 そもそもオリジナルのキーマンを守れなかったのが今回の問題点なんだよ。

 今日から下位役、君は最下位役だ。

 それと休暇中の鹿野紅葉準下位役、彼女ももういらない────。 

 すぐにでも心意の回収を行い、処分したまえ────。」

 

落合迅「────」

 

???「返事は????」

 

(処分だと?人を物扱いしやがって)

 

落合迅「了解致しました! では準備が整い次第、、、処分を開始致します。。」

 

********************

 




ここまで読みたえた猛者達よ────。
ご苦労であった。

というわけでお疲れ様でした。
実は3週間くらいかけてちまちま進めていったので途中途中に描いてる人変わった!?なんてことがあったかもしれませんがご安心ください。

次回作を最後に匂わせていますがその通りです。

marvel映画のエンドロールの最後にあるようなあれ!!
ああいう演出私すごく興奮してしまうんですよね。

はい、それで次回作は海上が舞台になりますね。

今回今が初夏だってのに真冬の物語ですみませんでした!笑

次回から少しその辺も意識していこうということで真夏の海上の物語になってます!

それと少しミステリアスな物語を目指して7月中旬を目標に頑張っていきます!

それでは皆さんまた一ヶ月後!!

お仕事、学校、、、あと知らないけどみんな頑張っていこう!!

by休日の夜中にエアコンに当てられながら深夜テンションのもみじん

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