凍てつく翼の報告記   作:VerT-EX

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 晴れすぎて干からびかけ、ウェルテさんです。夏休み入ったのでしばらくは更新が安定すると思います。多分。

 イヴェルカーナ、MHST2に出ましたね。狩技めちゃくちゃ綺麗で豪快で大好きです。ところでオオナズチとバルファルクのオトモン実装どこですか?


五枚目・零下の白騎士

 雪に呑まれ、落下する。そういえばエルネロッテさんが言っていたっけ、「崖崩れが起きやすくなっている」と。

 なるほど、此処は針葉樹の森の中でも崖に近い場所だったのが、雪が積もって崖に見えなくなっていたのか。それが、ラージャンの行動がトドメになって崩れた、というあたりか。

 

 視界が白に呑み込まれる中、胸元に何かふわりとしたものが飛び込んでくる。俺はそれを、反射的に抱きとめながら落下していく。

 

「ッグ!」

 

 数秒して、背中に衝撃が走る。身構えようにも共に落ちる雪に阻まれていたので無理だ。

 衝撃の後、すぐにどさどさどさと雪塊が積もる。抱えたふわふわを守るような体勢。口の中に雪が入らないよう、口を閉じて。

 

 すぐにどさどさとは聞こえなくなったが、覆いかぶさる雪が重くなっていくあたり、かなりの量なのだろう。息がしにくい。

 

 段々と意識が朦朧としはじめてきた。ヤバい――――――――

 

 

『グォルルルルル!』

 

 轟音と衝撃で意識が覚醒する。気がつけば、体が空中に投げ出されていた。

 

「?!」

 

 雪に埋もれたラージャンが、勢いよく飛び出した。そばに埋もれていたからか、その時に一緒に跳ね飛ばされたようだ。

 そのまま、再び雪の地面に叩きつけられる。が、今度は雪が覆いかぶさったりはしてこない。

 

 全身が痛いが、ふわふわを抱きかかえたまま無理矢理体を起こす。

 

『キュ……』

 

 抱えた物体から鳴き声がして見てみれば、ベリオロスの子供だった。あの手当をした子だ。縋るような眼でこちらを見ている。

 

 

 ラージャンの方を見れば、崖崩れで落ちたのが癇に障ったのだろう。イラついた目でこちらを見ている。おおかた、俺達が原因とでもおもっているというところか。八つ当たりやめてください。

 

 手元にライトボウガンもどきはあるが、手持ちの弾は効かない。閃光玉で目くらまししたいが、手元に荷物がない。落ちるときに飛ばされたのか、ラージャンの向こう側に荷物が見える。あれでは取りに行けない。

 

 

 ラージャンは拳を振り上げながら息を吸い込む。気光砲の前動作だ。

 おそらく避けきれない。切り札を切るべきか?いや、まだか?と、悩んで反応が遅くなっているうちに、ラージャンは量の腕を地面についていた。

 

 避けることはできず、エネルギーの波が俺達を襲う――――――――

 

 

 

 

 

――――――――ことはなかった。

 

 代わりに頬を撫でる冷気。

 不思議に思って、反射的に瞑っていた目を開けば、俺達とラージャンの間に割って入るように傷だらけの白い影が……親ベリオロスが、いた。

 

 ラージャンの攻撃が中断させられたのは、親ベリオロスの放った冷気のつむじ風が命中したからだ。

 

『グ、クルルルル……』 

 

「お前……!」

 

 牙はひびが入り、棘は半数折れ、体中についた傷から血を流しながらも、しっかりとラージャンを睨みつけている。

 

 ラージャンは割って入って邪魔をして来たベリオロスを睨み、唸りながら睨み返す。

 

 かと思えば、突然ラージャンは跳躍し、ベリオロスへ向けて空中から飛び込みを仕掛けた。

 

 若干鈍いながらも、ベリオロスは的確にラージャンへとブレスを命中させる。

 

 

 左脚を凍らされたラージャンは、空中にいるというのに無理矢理体勢を立て直し、ベリオロスに向けて雷電を纏って飛び込む。

 

 既にボロボロのベリオロスは避けきることが出来ず、モロにダイブをくらう。

 しかし、それでもなおベリオロスはラージャンに一矢報いて撃退しようと、その琥珀の牙を突き立てる。

 

 鮮血が飛び散る。ラージャンの剛毛と言えど、牙のように一点に力を込められれば貫通する。

 ラージャンはベリオロスを剥がそうとベリオロスの首根っこを掴むが、その体のどこに力が残っているのか、ベリオロスは食らいつき続ける。

 

 

 呆然と見ていたが、ふと今なら……と思い立ち、俺は子ベリオロスを抱えたまま鞄の方へと走った。

 そして、鞄の中から閃光玉を探り出す。

 

 

 その瞬間、「ボキッ」という音が響いた。見れば、ベリオロスが中空に投げ出されていた。牙が無くなっており、折れた牙はラージャンの腕に深深と刺さったままになっている。

 

 どさり、と雪の上に叩きつけられたベリオロスから、白い雪の上に赤い血が広がっていく。ラージャンはそこに追撃をしようと腕を振り上げた。

 

 

「っ、せい!」

 

 ラージャンの顔面の前で、投げた閃光玉が破裂する。強烈な光が周囲を包む。真っ白い雪にも反射して、光の強さは普段よりも強く襲いかかる。

 

 俺は咄嗟に目を瞑り、子ベリオロスの目を塞ぐ。それでもなお、瞼の上から刺すような光が襲いかかる。

 

 そしてしばらくして、光が止んで目を開ける。

 

 光に眩んでクラクラしたラージャンは、驚いてその場で地面を殴りつけている。

 

 その間に、慌てて親ベリオロスの方へと駆け寄る。

 親ベリオロスに近づくなり、すぐに子ベリオロスは腕の中からするりと抜け出した。

 

『キュ〜……キュー!!』

 

『クルルル………』

 

 親ベリオロスは風前の灯火どころか、残り火しかないような状態だ。

 子ベリオロスもそれが分かっているのか、それでも親が死ぬのは嫌なのか、必死で傷を舐める。

 親ベリオロスは穏やかな眼差しで子ベリオロスを見つめると、優しく子ベリオロスを毛繕いした。

 

「………」

 

 

 親の死に目に会える子は少ない。それは、人間もモンスターも変わらず。

 むしろモンスターなら、親に殺されかねない事もある。電竜などがその好例だろう。

 

 しかし、このベリオロス親子はまだ幸せな方だ。死ぬ間際に、何やら話せたのだから。

 

 しばらく親子が話しているのを見ていれば、子ベリオロスは『キュ』とひとつ力強く頷き、こちらへと飛び込んできた。

 

「うわっとと?!」

 

 どういうことかと親ベリオロスを見れば、「任せた」とでも言わんばかりの小さな鳴き声を発した。

 

 断るなんて野暮なことは出来ない。こればかりは仕方ない。

 

「分かったよ。任せてくれ」

 

 ならば、まだラージャンが混乱している間にこの場を離れなければ。

 荷物と子ベリオロスをしっかりと抱え、ラージャンの脇を抜けて走り出した。

 

 

 しかし、その瞬間目くらましが解けたラージャンが、怒り狂った様子でこちらへ突撃してきた。

 

 ヤバい、と思ったものの衝撃は来ることがなかった。来たのは頬を撫でる冷風だ。

 

 親ベリオロスが、最後の力を振り絞ってブレスをぶつけたのだ。その執念にビビったのか、左半身を凍らせたラージャンはどこかへと逃げて行った。

 

 

「……ありがとう」

 

 親ベリオロスが目を閉じたのを見送り、フェルト村へと足を進めた。




モンスターデータ

【ラージャン】
・白トカゲに「ちゃんとやって」と怒られたから改めて書く。
 金色の雷を纏う"金獅子"。超攻撃的生物、古龍級生物とも言われる、自然界の超実力者・黄金の暴風雨。キリンの角を折って食べるらしい。怖い。
 普段は黒い色をした剛毛だが、ひとたび闘気化すると黄金に変わる。超野菜人
 弱点は氷。雷と火だけでなく、龍属性も無効化する。親ベリオロスがラージャンを撃退できたのは、弱点だったというのもあると思う。
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