なのはにそっくりなマテリアルSがスクライア族の落ちこぼれに出会った話。   作:あおい安室

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遅刻して本当に申し訳ないです。
最初は文字通りなのはにそっくりなマテリアルSがスクライア族の落ちこぼれに出会った話がコンセプトだったのに、
どうしてこういう話になったのか私にもわからない……そもそも、ボーイミーツガールなのかな、これ。


……オッサンミーツガールやガールミーツガールも規約ではOKらしいしボーイミーツガールですね!(錯乱)


追伸:さっきまで短編投稿であることに気付きませんでした。ちゃんと連載にしておけよ私!!!


最後の記録

 高町なのはではない。その問いにマテリアルSは頷いた。

 

「はい、そうなります。彼女をベースにしたコピーです。色々と追加された部分もありますからタカマチナノハから見てみればある種の劣化コピーかもしれませんね」

 

 コピー。なるほど、新聞で見た容姿と異なっているのはそういうことだったのか。

 

「一人だけ納得されても困ります、スクライア」

 

 温泉に足を付けながら、ルシフェリオンを起動してバリアジャケットを展開すると杖を向けた。

 

「これが最後の質問になります。私、マテリアルSはどういった経路を持って産み出されたのか。それをお答えください」

 

 真剣な表情で問い詰めに来たマテリアルSを見て頭をかく。これまで隠していたことがついにバレてしまったかと冷や汗を流しつつ、これを教えた後に消し去られる覚悟を決めた。

 

「──はじめは、ただの偶然だった」

 

 

 

 とある廃墟を調査していた時のことだ。わたしはそこで奇妙な石を拾った。手のひらに収まるほどの小さな青い宝石で、つい最近新聞記事で見た曰く付きのロストロギアだと知っていた。

 

 そのロストロギアの名前は、ジュエルシード。

 

 スクライア一族の一人が発掘したが事故でとある管理外世界にばらまかれ、そのスクライア族と現地住民の協力によって大半が回収されたが、一部が事故を起こした首謀者と共に虚数空間に落ちて失われた代物だった。その一部がなぜか目の前に落ちていた。

 

 虚数空間に落ちた物がごくまれに普通の世界へ放出されることがある、とは聞いていたがまさかそれを目の当たりにする時が来ると思わなくて興奮したのを覚えていると共に。

 

 私はそれを盗んでしまった。

 

 ジュエルシードを見つけたことを報告して管理局へ提出してもただの善意の協力者どまりだ。しかし、ジュエルシードは歪んで願いをかなえる代物である。これをうまく利用すれば遺跡調査に使える一か八かのジョーカーに。切り札になるんじゃないか。そう思ってしまったのだ。

 

 そして、それを使う時がこの世界で訪れた。

 

 数か月前に墜落して以来攻略の意味もないためずっと放置されていたという人工衛星の存在を知ると、私はそれをどうにかして攻略してやろうと考えた。しかし、戦力が足りないという問題があり。現地の管理局員もわずかで、事故でやってきた局員も頼れそうにない。

 

 

 故に私はジュエルシードを用いて──遺跡攻略の戦力を求めた。

 

 

 その時脳裏に浮かんでいたのは例の新聞記事で読んだスクライア族を助けた現地住民の姿だった。同じスクライア族としてならば協力を得るのも容易いかと思ったんだ。

 

 

 

「タカマチナノハを求めた。そういうことですか」

 

 スクライアは頷いた。随分と無茶をするものだと呆れる。

 ジュエルシードが正常に働いていたとすればタカマチナノハ本人をここに転移させていたか、あるいはコピーを作成したのかもしれないが、歪んで叶えてしまえば能力はタカマチナノハ、精神はただの暴れる狂人ということもありえただろうに。

 

「そういう意味ではあなたは幸運なのでしょうね。私は元をたどればタカマチナノハですが、異なる点も多いゆえに歪んだタカマチナノハ、と呼べなくもないですから」

 

「歪んで願いを叶えた結果、歪んだタカマチナノハを、マテリアルSを呼び出した、と?」

 

「恐らくはそうなります。消滅したはずの私を召喚できたことについては気になる点はありますが、推測は可能ですし」

 

 消滅寸前で崩れかけた私の体を転移させてジュエルシードの力で無理やり直した。タカマチナノハとジュエルシードは関わりがある為、そこを逆経由して無理やり召喚したか。恐らくは前者だろう。

 

「となると何故空中に呼び出されたのかが謎になりますが」

 

「……実は、な。ジュエルシードが暴走したら困るから、時限式で起動する仕組みを作って例の無重力のタワーに設置してたんだ。多分それが剥がれて重力で引っ張られながら起動したせいかと」

 

 あれもあなたのせいだったのか、スクライア。もはや呆れるしかない。

 

「しかしどうしてそれに気が付いたんだ、マテリアルS。私はそこが疑問なんだが」

 

「簡単な話ですよ。魔力の回復に難がある、魔力が突然流出したりと目覚めてから私のリンカーコアは異常でした。そこを疑問に感じていたのですが、確信に変わったのはつい先程です」

 

 胸元に手を当てる。温泉からの魔力をジュエルシードが吸い上げているのか強度を取り戻したこの体は内臓に触れることはできなくなった。

 あの時私が触れていた内臓こそ、ジュエルシードだったのだ。

 

「……なるほど。疑念を持っていればそれを裏付ける証拠を探すだろうなぁ」

 

「そういうことです。では……これで全て終わりですね」

 

 杖を消す。バリアジャケットを再びインナーだけに戻すと、温泉に浸かり直した。ああ、いい湯だ。温泉を堪能していると、スクライアがポカンとしていた。

 

「おやおや、どうしたのですか。鳩が砲撃魔法を食らったような顔をしてますよ」

 

「それは死んだ鳩の顔だろう。マテリアルS、わたしを……殺さないのか?」

 

「殺されたいのなら殺しますが。せっかく私の協力で遺跡を攻略できたのですし、その成果を利益に変えるまでは死にたくないでしょう?」

 

「だが、わたしは君を利用していたんだぞ?先程まで君はデバイスを向けていたじゃないか。あれはそういう意味では……」

 

「ただの脅しですよ。この期に及んで嘘を吐かれては困りますし。だって、ほら──」

 

 私はもうすぐ消える身ですから。

 

 お湯から出した足先は既に光の粒子となって崩れていた。足首から先は既に無くなっているそれを見てスクライアは絶句していた。

 

「バカな!ここは魔力を増大させる効果があるはずだぞ?ジュエルシードの魔力から産み出された君を回復させる効果はあるはずだ!」

 

「回復はしてますとも。ですが、それは上限値が減りつつあるバッテリーを充電しているようなものでして。尽きかけていた電気を充電しただけでゆっくりと崩壊は進んでいたのですよ」

 

 実はさっき立っていたのもかなりバランスの維持が大変だったりするのだが。それを聞いても笑ってはくれないだろう。

 

「……ジュエルシードの限界、だったのか?」

 

「一度虚数空間に落ちた代物だと言ってしましたね。その際に破損した可能性もあるかと」

 

「魔法をかき消す空間だ。性質そのものが変化している可能性もある……もう少し検査しておくべきだったか」

 

「次からは気をつけてくださいね」

 

「……その次の時は、君はいないのだろう?」

 

 わかりきったことを聞きますね、とクスクス笑う。既に消滅しつつある私をどうしてそんな泣きそうな顔で見るのやら。

 

「ふむ。興味が湧きました。追加の質問といきましょう、スクライア。私のことをどう思っているのですか?」

 

「……指す指もなくなっているのに指されても困る」

 

「なんと」

 

 左手が消えていた。右手はまだ残っているというのに、妙な時間差があるものだ。自らに呆れていると悩んでいたスクライアは答えを口にした。

 

「世界で一番美しいライター」

 

「懐かしい言葉ですね」

 

「兼砲撃魔導士」

 

「事実ですね」

 

「兼……助手、だ」

 

「……ふむ。悪くはないですね」

 

 70点をあげましょう、というと少しだけ笑ってくれた。

 

「最初は、な。ただ協力してくれればそれで良かったしそれ以上関わるつもりはなかったよ。だけどさ。マテリアルSが割と不器用だったからな」

 

「はい?今なんと?」

 

「不器用、だよ。言動は危なっかしいし行動も似たり寄ったり。正直言って放っておけなかった」

 

「……今からでも燃やしたくなりましたね。その気に入らない髪を無惨なことにしてやりましょうか」

 

 温泉に潜られた。髪を濡らして燃えにくくする作戦ですか。

 

「勘弁してくれ……だけどな。そんな君と一緒にいるのが楽しかったよ。不器用で自信家だけど、本当に衛星を攻略したのを見たときは素直にすごいと思った。羨ましかったよ」

 

「そうでしょうね。ちなみにオリジナルのタカマチナノハもなかなかのものですよ」

 

「あんなのが他にもいるのか。勘弁してくれ」

 

 もっとも、砲撃以外の面でも実力者がタカマチナノハの回りにはまだまだいるのですが。

 

「それに、安くて雑な飯をあんなに喜んでもらえるとは思わなかったな」

 

「もっと美味しいものが食べたかったですね。特に甘いものが」

 

「そうしたい気持ちはあるが……在庫切れだよ。諦めてくれ」

 

「……」

 

「無言で見つめないでくれ。表情も消さないでくれ」

 

 この時点で腕がしっかり残っていればお湯を思いっきりぶっかけるところですよ。

 

「後、書類仕事をやってくれたのは本当に助かった。あれは本当に苦手だから……」

 

「そうでしょうね。あなたが過去に書いたものを端末で見ましたが酷い文法でしたし」

 

「だろうなぁ……いや、待て。となると提出時代筆を疑われるんじゃないか?」

 

「そうかもしれませんね。一応似せて書いたつもりですが、後で確認しておいた方が……何をしているのですか」

 

「拝んでいる」

 

「そんなことをする暇があれば私の姿勢維持を手伝ってください。太ももが消えたのでうまく踏ん張れないのです」

 

 そういうと複雑な表情をしつつ、くぼみと組み合わせてうまく座らせてくれた。

 

「……とまあ、色々あったわけだ。多分一週間もなかったと思うが、マテリアルSと一緒にいた時間はすごく楽しかったんだ。きっと、スクライア一族の里を出た日から今日までの人生の中で、一番楽しい時間だったよ。そんな時間をくれた君が……」

 

 いなくなるって考えると。どうすればいいのかわからなくなるんだ。

 

「……なるほど。やれやれ、情けない男ですね」

 

 溜息をついた。大の大人が涙を流しているように見えたが、それは温泉の水滴であることにしよう。手が残っていれば撫でてやることもできるのだが──残念ながら、そろそろ時間切れの様だ。

 

「スクライア!」

 

「っ!」

 

「最後に一つ、私から言っておくことがあります」

 

 動かせるのは口だけ。それだけで十分だ。思いを伝えるには、十分だ。

 

「私も、楽しかったですよ。これからどうすればいいのかなんて、簡単な答えですよ」

 

 

 楽しめばいい。これまでも、そしてこれからも。

 

 

「そんなことすらできないあなたの前には二度と顔を見せるつもりはありません。ですが。できたのなら、またお会いすることもあ──」

 

 口が崩れ、顔が一気に消えていく感触がした。同時に薄れていく意識の中で私の正直な想いを彼がどう受け取ったのかと思考したが──消える速度の方が早かった。

 

 

 ……ただ。どこかから楽しそうな笑い声が聞こえてきた気がする。

 

 きっと、彼は大丈夫だろう、と。その考えすらもぼんやりと薄れていった。

 

 

 

 


 

 

 

 以上で、管理局への提出しない個人用の資料を締めくくる。

 

 自分しか読むことはないし他人が読んだとしても荒唐無稽な話だと笑うかもしれない。ああそうだ、存分に笑ってくれていい。利用するはずの存在にある意味利用されていたどころかお互いに楽しい日々を過ごしていた笑い話だ。面白い……かどうかは別にして、楽しい話だと思う、うん。

 

 それに彼女が私のそばで実在したという証拠も一応残っている。

 

 半壊したルシフェリオンだ。彼女の存在そのものには関係しないデバイスであったゆえか、待機状態の紫色の丸い宝石が私の手元にはある。ひび割れているが、その内金があれば見た目だけでも直してやろうと思う。船よりも、私のデバイスよりも先に。

 

 

 ……すねるな。記録を続けてくれ。

 

 

 あの墜落衛星遺跡の調査成功によってそれなりの金になったから、次の調査へ出かける準備もできたし機材も購入できた。おかげでまぁ……多少は儲かって、それなりに楽しい日々は過ごしている、うん。いや、笑うなよ。おまえ最近変に人間臭くなってきたな。

 

 それで今の私は管理局から今更送られてきた遅すぎる事故の賠償金で安い酒を買ってちびちびと楽しみながらあの頃の記憶を思い出している。そして、楽しかった思い出を記録しているのだ。

 

 いつか、マテリアルSともう一度会えた時。

 

 その全てを話してやろうと思っている。彼女がどんな反応を見せるのか。呆れるのか?笑うのか?いや、嘲笑う可能性もあるな、うむ。では、その日を夢見て今日の記録を終えよう。

 

 

 以上、記録終りょ――ん?連絡?一体誰からだ。

 

 

 はい。――スクライアです。ああ、第2764管理外世界で墜落衛星を調査しましたが。

 

 

 それで聞きたいことがあると?わかりました。すぐに出頭します。一応担当官の名前を伺ってもよろしいでしょうか?

 

 

 ――。なるほど、第97管理外世界の事件で活躍したあの管理局員ですか。

 

 

 え?伝えておけば分かる名前がある?なんですか、それは。

 

 

 シュテル・ザ・デストラクター?知らない名前ですね。

 

 

 そもそも。わたしの名前はシュテル・スクライアなのです。同じ名前とか気味が悪い……どこの物好きなんでしょうね、そのシュテル・ザ・デストラクターさんって。

 

 

――シュテル・スクライア:エルトリア調査団同行数日前の音声記録より。




その後、とある少女に名前を拝借されたことを知って少し怒った大人がいたのは関係ない話。
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