いつも多くの感想と誤字報告ありがとうございます。
今回は書いちゃってましたブルーアーカイブ編であります、コラボ編最終話みたいな感じ。
書いちゃったからにはお目汚しってわけでどうぞ。だらだらやってたヤツだから妙に長いぞ。
題名はそれっぽくしただけで特にアニメ版とかではない、ストーリー的にこんなところで起きてるぞってだけ。
当然ですが例のUMA娘はここまで生身で渡り歩いてきているぞ!当たり前だよなぁ!!
ちなみにこの世界、原作の法則でほぼ全員シールド有みたいな感じですっごい頑丈。
キツイ光景だった、これまでになくキツイ現実だった。清潔な病室の中で意識のない親友たちがただ機械に繋がれている光景。
傷一つないきれいな姿で、声を掛ければいつものように起きそうな姿で、本当にただ寝ているだけの姿で…でも彼女たちは起きなかった。
彼女たちを呼ぶご両親、答えのない沈黙、押し殺してもなお部屋に満ちる嗚咽と鳴き声。
遅々として進まない奇病の解析、いつになく諦めに近い溜息を吐く群馬医療の精鋭たち。
いつか見たような光景だった、悲しみに暮れ、なすすべもなく、泣くことしかできず、ただいつか来る結末に怯えるばかり。
俺は何もできなかった、俺には何もわからなかった、いくら声を掛けても誰もいつものように答えてくれなかった。
声を掛けた、話をした、体を揺らした、食事を作った、映画を見せた、酒を持ってきた、昔の話だってしてやった、いつもならあいつらが飛び起きることを全部やった。でもだめだった。
ホクリクダイオーも、ツバキプリンセスも、ノルンファングも、いつか世界を取るためにレースに挑んでいた彼女たちは、なぜかこんな似つかわしくないところにいる。
何もなかったはずだった、なにも事故も起きてなかった、いたって普通の生活をしていただけだった。
群馬トレセン学園の競争ウマ娘として当たり前の日常と当たり前の練習をして、学生の様に遊んで駄弁って、寮に帰って、次の日に元気に起きる。
ただそれだけのはずなのに、3人はそのまま深い眠りについて起きることはなかった。原因不明のこん睡状態、まるで魂だけが抜けたように。
生きている、科学的には生きている、脳も活動していて体の健康そのもの、それどころかまるで時が進んでいないかのように変わらない。
一週間、運動も食事をしていないのに体は衰えていない。体は鈍らず痩せもしない、栄養補給の点滴をしているにしてもあまりにも不可解極まりなかった。
俺には何もできなかった、俺には何もわからなかった。それは仕方ないことだ、解ってる、解っているが…
(悪い事なんざこれ以上ないって思ってたのに、畜生め…)
だというのに、まったくもって悪いことは続くもんだ。息苦しい、無理矢理呼吸を整えながら俺は目を開ける。
上には見るからにこの世の物じゃない空と大穴、そして苔生して自然に飲み込まれた遺跡のような場所で俺は何とか体を起こした。
そこかしこにショートして煙を上げるオートマタ兵士の残骸、足元にはぶっ壊れたAKM。
「くっそ…痛いなぁ、最悪だ、最悪過ぎる」
全身が痛くて痛くてしょうがねぇ、吐き気がして止まらねぇ、けど寝転がってたら死ぬから無理してでも起き上がる。
前前世でもそうだけど、前世でもそうなんだけど、なんで時々に世界観変わんのかな俺の人生。
酒造が本業で趣味に走り屋だったのになんか競馬で変なことになったし、今だって俺は普通の女子高生だったはずだ。
いつにも増してボロボロな俺、借り物のミレニアムサイエンススクールの一般的な白シャツとスカートの制服にプレートキャリア、そしてほぼほぼ空になった武器弾薬ポーチ類。
最後に不死切り・開門を腰に添えて少しだけサムライ風味…いやなんというか変なサイバーパンクかよ。
「まったくもってついてない」
最後の最後で良いのを貰った、オートマタのボディブローはやばいって分かってたのによぉ…おかげであばらが何本か逝ったぞ。
おまけに最後の防弾プレートと一緒にプレートキャリアはお釈迦、無かったら死んでたとはいえレベル5クラスだったのが一撃だ。
何度も言うがこちとらただの走り屋、護身程度に剣術納めて、CQCができるだけの一般女子高生だぞくそったれ。
こんな世界で過ごしてたら命がいくつあっても足りんわ、さっさと帰らせてもらうぜ全く。
「インチキだ、軽く常識を超えないでもらいたいよ」
無事なココアシガレットのしわくちゃな箱を取り出して数少ない一本を口に咥え、腰のナイロンホルスターからM9を引き抜く。
今にも分解しそうなくらい痛いのを我慢して誤魔化しながら滅茶苦茶になった遺跡内を歩く。その先には苔生した観測塔。
ここは小高い丘の上にある古い遺跡の観測塔だ、ここが一番あの穴に近い場所で360度全てを見渡せる塔が絶好の設置場所なのさ。
くそ、足も腕も罅が悪化してやがんな。頭痛もしてきたし、視界も霞む、出血してないだけ奇跡じゃねぇか畜生。
苔生した観測塔の足元にはボロボロな床に刻まれたミレニアムサイエンススクールの校章の上に駐機された自動制御トレーラー。
それがけん引してきた大型コンテナは既に空っぽだが、外部は焦げ付いたへこみと無数の小傷がついている。
コンテナの観測塔のほうに抜けると、広場のようになった場所で近未来的な高射砲を取り付いている紫色の長髪のやや場違いなエンジニア。
頭に未来的な装飾を付けて不思議な形をした天使の輪を備えた少女、白石ウタハがいた。
「ウタハ、トラムの発電機を再起動したぞ。お前の言う通りひどく調子が悪そうだ、いつ停止しても不思議じゃない。
あの路線の劣化具合から見ても計算通り一度が限度だな。長居は無用だ、さっさと終わらせて帰ろう」
「まだだ。少し待ってくれ」
観測所へ上がるリフト内に設置した銃身が上下に分かれてるレールガンみたいに近未来的な高射砲の制御装置を弄り回しているウタハの返答は芳しくない。
ここまで来てトラブルか?いやここまでもトラブル三昧だったからちょっとやそっとでは驚かんぞ。
≪こ、こちらクイーン。カイザーの増援が麓に集まってきてる≫
≪増援ですね。アリス、撃ちます!!≫
≪待って待って狙撃手居るから頭下げて!!≫
≪当たらないよお姉ちゃん、風が強いから…でもアリスちゃんだけじゃ時間稼ぎにもならないかな≫
ゲーム部は仮設拠点の防衛ライン、道は一本道で見晴らしがいい。迎撃には最適だが相手からも撃ちまくられる。
≪こちら00、こっちも確認した。ありゃ戦力再集結って動きだな、チビ撃つな、居場所が割れる≫
≪こちら01、先生と通信できないけどトラブル?あとなんか、相手柔くなかった?≫
≪03より00、残存兵力の撤退を確認。戦力再集結で間違いありません、もしかしてこれは…≫
≪こちら02、同じく戦力の撤退を確認。今までのカイザーにはない動きだが…なるほど、包囲するつもりだ≫
C&Cは遊撃、こいつらの練度からして無駄な言葉はいらない。やれやれまだまだ敵さんは元気みたいだな。
対応が早い、評判はどうあれ歴戦PMCだ。うちの世界でもめったに見ない、アラサカの護衛PMC並みじゃねぇの。
「そうも言ってられん、カイザーがまた上がって来る。それと通信があっちと繋がらん、理由は分かるか?」
「…ならみんなを先に戻してくれ、君達には説明しよう」
「ふーん」
あ、そういう状況。俺解っちゃった、不運野郎セミプロの俺を舐めるなよ?なりたくてなったわけじゃねーけど。
短くなったココアシガレットを口に押し込んで食い切り、M9をホルスターに収めて無線機のプレストークを押した。
「こちらCB、通信不良のため代わりに通達する。作戦完了、繰り返す、作戦完了。
各員再集結地点ポイントブラボーまで後退、プランEに移行する。繰り返す、各員再集結地点ポイントブラボーにてプランEに移行、以上」
≪こちら00、了解した。C&C、移動する≫
≪こちらクイーン、解りました。待機場所に向かいます≫
悪いな、これも大人の知恵ってやつだ。
「さて、何があった?」
「感心しないけど…仕方ないか。良いニュースと悪いニュースがある」
「聞かせてくれ」
「まず、さっきの戦闘で無線の中継器がやられた。先生との連絡が取れないのはそれが原因だ」
ウタハが指を差したのは無線の中継器、信号増幅もしてくれる優れものの箱…の残骸。グレネードでも食らったか。
なるほど、それは痛い。ここまで少数で無数のカイザーPMCのオートマタを倒して登ってこれたのは、本部で指揮してくれていた先生がいたからだ。
その先生からの指揮を受けられなくなったという事は、カイザーPMCに追撃されれば勝ち目はない。まぁ、ここに追撃できる戦力がいればの話だ。
このあたり一帯のカイザーPMCはほぼ掃除したが悠長にはしてられん、この観測所の上空は乱気流でヘリが飛ばせない以上戦力を再度投入するのには時間がかかる。
しかし奴らもそれが分かってるから俺たちはここに居る。あいつら、無理に止めずに受け流して包囲殲滅するほうに変えてたわけだ。
ネル達C&Cとアリス達ゲーム制作部は無事、弾薬と戦意も十分だがいかんせん人数差がある。
三女神さまというチートも居るが、しかしこっちも消耗はしてるしはっきり言って隔絶したパワープレイだから崩れるとやばい。
「悪いニュースは?」
「ドローンが底をついた、スクラップででっち上げるから時間が欲しい。それまで私は戦力外だと思ってくれ」
「嘘が下手だな、そうじゃねーだろ」
「真実なんだがね…高射砲の制御装置が壊れた。自動制御、自動照準、タイマーも全部ダメだ。手動で操作するしかない」
…確かに悪いニュースだ、この上ない最悪の類だな。
「すまない、私のミスだ。襲撃に後れを取った」
「得手不得手は誰にだってあるさ…直せないか?」
「直せるよ、持って帰って解析できればね」
コンテナの防御は完璧だった、流れ弾じゃビクともしないしミサイルが当たっても焦げる程度で中身は無事だった。
だが設置の段階で潜伏していた連中に突貫を掛けられたのは痛かったな…時間稼ぎのつもりか、嫌がらせのつもりで装備破壊していきやがった。
「そんな暇はないだろ、もう時間がない。長いことここにはいられんぞ」
「解ってるよ、だが何か手があるはずだ。せめて先生と連絡が取れれば何とか…少し時間を稼げないか?」
「無茶を言うな、あの人だって限界がある。カイザー共なら何とかなっても上のあれは俺達にはどうしようもないだろ」
俺は空を指差す、この狭間の世界から見上げる空模様が狂った空中にはうっすらと見える円形の穴があった。俺達の世界とキヴォトスのある世界をつなぐ大穴だ。
何かの事故かなんかで空いた大穴だが、すでに二つの世界で修正力が働いていて修復されかかっている。これはいわば薄い瘡蓋だ。
俺達はこいつを少し引っぺがして、修正力に影響を出さないように潜り抜けなきゃならなかった。
この装置が通じるのはもう今しかない、そうしなければ俺たちはこの世界に閉じ込められてしまう。
「もうそいつでぶち抜けるギリギリなんだ、機能は問題ないんだよな?」
「あぁ、装置は問題ない。女神さまの力とやらも十分に充填されてるし、電力や砲身も問題ない。
射撃装置や装填済みの通常弾にも異常はないから、立ち上げればいつでも撃てる状態だ。
だが自動補正や自動制御、時限起動はダメだ、小手先の修理ではどうにもならない」
「つまり誰かが残ってやるしかない、でもそれは…」
世界に穴を開けるんだ、何が起きるか分かったモノじゃない。予想が何もできない危険な仕事なんだよこれは。
それで世界の大穴に吸い込まれたりでもしたら、どうなるか分かったもんじゃない。死ねたら幸運だ。
この世界の狭間のような場所でそうなったらもうどうしようもない、追跡調査なんぞできるもんじゃないからな。
そもそもこの機械自体曰く付きの代物、先生曰くゲマトリアとかいう普段は敵の組織から提供されたもんだっていうんだからな。
それにキヴォトス人から見ても危険なことを俺たちがやったら、それはもっと悲惨だ。誰か一人は置いてけぼり、帰れないってことなんだからな。
「私がやろう、それが最善だ。タービン、刀を。二人はみんなを頼む」
「バカ言うんじゃないよ、君は唯一まともに戦えるんだ。向こうに帰ってもらわないといざって時に困る。
僕が残るよ、かわいこちゃんも居るから退屈しなさそうだしね。さぁ」
「それはいけません、あなたは学生さんに刺激が強すぎます。私が残りましょう。ご心配なく、教師としてなら私が一番ですから」
おっといつから聞いてたんだ赤いの青いの黄色いの、ってかいきなり後ろから声かけてくんな。
バイアリータークさんが真っ先に手を差し伸べてきたと思ったら、ダーレーアラビアンさんがそれを遮る。
二人が押し問答している所に割って入るようにして押しのけて、あらあらうふふと言いそうなゴドルフィンバルブさんも手を差し出してきた。
確かに、こいつらが言うことは正論だ。きっと一番正しいし、俺は守られる側なんだろうな。それが普通なんだろうな。
というか、そもそもこいつらが興味本位でこんなところに遊びに来てヘマやったのが悪いんだよな。
現世の写し身の姿で遊びに来たとか神様がやるべきことか…いやまぁたまには遊びたいのも分かるけども!!
こいつらの責任ではあるし、こいつを渡しちまえばそれでいい、もとより俺の身に余るんだ。不死切りも、こんな戦いも。
「いや、俺がやる。あんたたちは戻れ」
「…何を言ってるんだい?」
震えそうな声を抑えて、今にもブルっちまいそうな体を全力で虚勢を張った。
ダーレーアラビアンさんが怪訝そうに眉を顰めるが虚勢を張る、かっこつける。
逃げたいけどさ、だめなんだよな、納得できない。なによりそれダメって勘が言ってるんだよなぁ!
「あんたたちにはあいつらを絶対に送り返してもらわなきゃならんし、向こうの世界にはあんたたちは絶対に必要だ」
「待ってくれ、気は確かか?そんな事をしたら君が帰れなくなるじゃないか」
ウタハ、そんな顔するんじゃねぇよ。
「キミがそんなことする必要はない、あなたたちもだ…私がやろう!狙って砲撃すればいいだけなんだ!!」
「お前こそバカ言ってんじゃねぇよ。こいつの衝撃波はキヴォトスの人間には有害だ、そう先生に教えられただろう?
だから時限起動で安全にやろうって話にしたんじゃねぇか、ぶっ壊れちまったがな」
「だがそれは君だって同じだろう」
「いいや…俺はちがう。話しただろ、俺はあいつらを助けるために送り込まれたんだ。意図的にな、だから大丈夫だ」
俺にはこいつらみたいなヘイローがない、それは何故か。理由は推測に過ぎないが、たぶん俺が正規ルートでこちらに来たからだ。
ヨモツヘグイに似たようなもんなんだろう、本来あり得ない異物は弾かれるとか長く存在できないとかありそうだしな。
現に騒動の原因である三女神さまにヘイローはなく、巻き込まれて引き摺り込まれたあいつらとウララにはあった。
だから俺はこの世界の理に染まっていないし、染まらなければ存在できないわけでもない。あの黒服が変に気にしてたのはそういう理由だろうよ。
あのクソ龍ちゃんとしてやがったわけだ、片道出撃だとしてもな。そら車ごと放り込むなんざ余裕か。
この装置が発砲したときにバラまかれる三女神のパワーと恐怖とか言う不思議パワーは問題ではない。
だから俺ならば安全にできる、やった後に逃げる余裕が俺にはある。
「俺の世界でできる奴がいるんだ、こっちにだっているさ。事実、何代前は分かんねぇとしてもミレニアムはここを作った、だろ?」
ノープランってわけじゃねぇのさ、あぁ、0パーセントじゃねぇんだ、帰れないって決まったわけじゃない。
俺は自腹で帰るだけさ、走り屋にはよくある話だぜ。俺は今回ヘマして事故った、それだけさ。
「ま、気を病むんならあとで良い武器見繕ってくれ。さすがにこいつもガタが来ちまってる、元々拾い物だから変え時だ」
話題を変えるためにホルスターを叩く、この世界ではどこにでもあるM9が収まってる。
この世界に来てから偶然拾ってここまで使い倒してきたからな、オンボロだ。
「俺はまだキヴォトスにゃ日が浅い、良い店を知らん」
「そんな馬鹿な話で誤魔化せると思うな。私は絶対に認めない、そんなことを言っている君こそ真っ先に帰るべきだ。
そんなボロボロの姿で大丈夫だなんて言われて信じるほど私はロマンに溺れちゃいない!!」
「バレてたのか」
「気づかないとでも思ったか、これでも先生の無茶ぶりには気を使ってた方でね」
なら、隠す必要もねぇか。こいつの言う通りボロボロさ、生傷絶えねぇしあいつらみたいに治んねぇし後を引くしで散々だ。
今も体がぎゃーすか悲鳴上げまくってるよ。花の女子高生だぞ?いくら走り屋だからって限度があるわ。
なのにこっちのやり方に順応したダチの無茶にも何とかついて行ったんだぜ?褒めてほしい位だよ。
「そんな体で何ができる。今の君は悪いが信用できない、絶対にミスをする。気合いだのなんだので済むような話じゃない、ここで失敗は絶対に出来ないんだ。
君がそう言ったんだ、そうだろう!だったらなおさらそんなボロボロの君に任せるなんてできないね、何がどうあろうとだ!」
優しい奴だ、わざときつい言い方で突き放してくれるのか。そんな風に言ってくれるならそれを尊重しよう。
腰のホルスターに差していた不死切り・開門を鞘ごと抜いて、ウタハのほうに差し出した。
「そうまで言われちゃぁ…仕方ないか。頼めるか?」
「謝らなくていい、これは私が決めたことだ。向こうに付いたら信号弾で合図をくれ」
「悪いな」
本当にごめんな、ウタハが不死切りを受け取ると同時にその手を絡め捕って体勢を崩し、体を裏返しながら引き寄せる。
背中の方から羽交い絞めにする形になったところで右腕を彼女の首に巻き付けるように絞めて一気に締め上げた。
藻掻くウタハの手が俺の腕をはがそうともがくが無理だ、もとよりインドア型のエンジニアのお前がウマ娘の俺に力で勝てるわけないだろう?
「ありがとう」
一思いに締め上げて意識を落とす、一瞬の苦しみと同時に気を失えただろう。
やはりビッグボスは偉大だな。CQCの汎用性は本当に役に立つ。世話になりっぱなしだぜ。
意識を失って倒れる彼女の体を抱きかかえると、俺は有無言わせずダーレーアラビアンさんに彼女を押し付けた。
「…バカだな、君は」
「生憎そうなんだ、バカで単純で平凡なんだよ。あいつらと違って、こいつらと違って、あんたたちとも違う」
バカだから結局ズルズルとここまで来ちまったんだろうよ、賢く立ちまわりゃこんな痛い思いしないで済んだんだろうに。
「まだ終わりじゃねぇ、カイザーの連中はまだうようよしてる。今も下では戦ってんだ。あいつらが世界を超えるまで守ってやれる戦力がいる、違うか?」
本部は先生たちが飛行場を守ってる、はやくゲーム開発部とC&Cを戻さんとならん。
忍術研究部や放課後スイーツ部、ウタハのエンジニア部、人数がいないゲヘナ給食部とかアビドス対策委員会も全員で出張ってきてくれてるが無敵じゃねぇんだ。
それなのにおめおめ仲間を犠牲にして帰ってきました?んなもん空中分解もんじゃねぇか。
そういうと余計に拗れそうだから言わんけどな、信用してないって言ってるようなもんだしそういう奴らじゃねぇのも分かってる。
だからこそダメだ、こいつらにそんなことさせてやらない。絶対にダメなんだよ。
こいつらは命の恩人なんだ、だから恩返ししなきゃな。でないと男が廃るってもんだろうが。
「あいつらを頼む、確実に帰してやってくれ。言い訳は任せた、合図を頼むぞ」
「気は変わらない?」
俺は答えない。気が変わるかって?変えてぇよ、俺が変えてぇよ!帰りたいって言いてぇよ!!
やりたきゃ待ってりゃ音を上げるかんな!ホントにいつまでも意地張ってられないかんな!!
「…わかったよ」
「頼む、できれば急ぎでな」
じゃねぇと本気で前線に飛び出してきかねんぞ、今まで伊達に前線張ってきてねぇ経験が生半可にある。
あの4人はもう戦えないんだ、今のあいつらにヘイローはない。帰る為にはそうしたのはあんたらだ。
あの馬鹿ども、なまじサバゲーみたいに撃ち合いしてたから被弾上等で危なっかしいんだよ。
大忍刺しのホクリクダイオー?ゲヘナ給食部の雷落とし?どっちもヘイローがなきゃ一発お陀仏だ。
魔改造チハを乗り回してるノルンだって出せたもんじゃねぇ、無駄に前に出て盾役やりたがるからいつ抜かれてもおかしくねぇ。
大盾でガチガチに固めたうえで引っ込んで、モチグレネードフル装填のアーウェン37で支援してたウララのほうがはるかにましなんだよ。
それっぽい言い訳して後ろに下がらせんのに苦労したじゃないか。だからさ、止めないでくれ。俺だってビビり散らしてんだから迷わせないでくれ。
「撃ったらどうする?」
「強行突破して先生の所に駆け込むさ、下りで俺に勝てる奴はいねぇよ。早く行け、もう時間がない」
俺の気が変わる前に。今だって撤回したい気持ちでいっぱいなんだ。峠と酒の事でも考えてねぇと頭がおかしくなっちまいそうだ。
生きて帰って走るんだよ、作るんだよ。満足して、やり切ったって胸張ってやんねぇと一生気に病むんだよ。
そんなのダメなんだよ、走り屋としても職人としても、そんな不純物が混ざるなんざ断固として認めてたまるか!!
「まだ高一の冬休みは始まったばかりなんだ、こんな苦労背負いこんだんだし少しばかり観光してから帰ってもバチは当たんねぇだろ。
せっかくの異世界だ、どうせなら異世界の峠や酒くらい知らねぇと割に合わねぇってもんよ。
あっちとこっち、どう違うのか興味あるんだぜ?ぜひともこの千載一遇のチャンスを生かしたいもんだね」
「まったく、無理に笑うんじゃないよ…死ぬんじゃないよ」
そう言うあんたもな、ダーレーアラビアンさん。ウタハを落とすんじゃねーぞ。
「みんなを送ったら必ず迎えに来ます、それまで絶対に―――」
「おっと、そこまでだ。女が約束しちゃだめだぜ?できない約束はな」
あぁくそ、できれば男の時に言いたかったなぁこういうの。ゴドルフィンバルブさんみたいな美人さんならかっこつけても言いたいよなぁ畜生。
「心より感謝を、そして武運長久を。一緒に戦えて光栄だった」
最後にバイアリータークさん、芯の入った敬礼をしてくれた。おうよ、俺はそれしか答えられなかった。
そういうのは俺には過ぎたもんだぜ、照れくさい。
三人が走り去っていくのを見送って、俺はリフトを起動して高射砲を観測所の屋上へ運んだ。
屋上に向かう間に、不死切り・開門を特殊砲弾に装着して通常弾とは別の弾倉に装填して高射砲に積み込む。
これで後はスイッチ一つで切り替え可能、いつでも撃てる準備は整った。
屋上はより空に近く、穴が大きく見えた。見晴らしもいい、本部基地での戦闘も良く見える。
滑走路にカイザーから奪った輸送機が出ている、もうすぐ準備が終わりそうだ。あとは合図を待つばかり。つかの間の休憩か…なんとなく空を見上げた。
遠くに多くの機影が見える、カイザーPMCの輸送編隊の様だ。きっと中にはオートマタ兵士がしこたま詰め込まれてるに違いない。
編隊はバラバラで、機体は大きく揺さぶられていて、今もぽろぽろ落ちていくくらいめちゃくちゃだ。
それでも飛んでる。編隊は二つに分けられた、一つは本部基地に向かう。
もう一つはこっちか、機数は18。内訳は大型6、護衛ヘリ12…爆撃編隊じゃねぇか、向こうも必死だ。
「さぁ、もうひと踏ん張りだ」
俺は高射砲の砲手席に乗り込み、マニュアルを片手に近接防空システムを立ち上げる。やはり自動補正装置類が死んでる。
自動補正を切ってマニュアル照準を起動する。失敗できないんだ、ちょうどいい、試射に付き合ってもらうとしよう。
マニュアルモードが立ち上がり、砲手席のHUDに照準用サイト、弾設定、残弾、砲身状態などの情報が投影される。
初弾を近接起爆モードから時限信管モードに変更。対空砲対策の妨害電波位してるはずだ、アナログで度肝を抜いてやる。
起爆距離をセット、装填。次弾、次々弾共に時限信管、距離を設定。一定数発射の後で信管を着発式に変更、直撃なら妨害電波は関係ないだろ。
少し齧っただけなのに不思議と覚えてるもんだ、こんなの初めてなのに妙に馴染む。
背後の弾倉から通常弾が装填された音を聞きながら砲口を敵爆撃編隊に向けて指向させて、編隊を射撃距離まで引き寄せるために一瞬の空白ができて、おもむろに空を見上げた。
◆◆◆◆◆
「…またこの夢か」
目覚めの悪い、こんな寝覚めは数えることすら億劫になった。俺は小綺麗な運転席で体を伸ばしながらため息をついた。
見上げれば見慣れた天井、フロントガラスからは青い空と光の環、地球じゃないどこかの見たこともない空だ。
周りを見れば日本のようでそうじゃない近未来的な街並み、看板は日本語だし言語も日本語なのになんか違う。
住人はロボットやら二足歩行の犬やらねこやらの獣人、そして光の環『ヘイロー』を頭に光らせていろんな銃を担いだ天使みたいな女の子。
女の子たちだって多種多様、羽なり角なりケモミミなりとバリエーション豊か、おかげでウマ耳の俺も全く浮かない。
バックミラーを見れば俺、その頭には赤青黄色の半透明な蹄鉄型疑似ヘイロー、三女神の置き土産だ。
「いけねぇ、居眠りしちまったか」
でも仕方ねぇだろ、俺はただの走り屋、ただの人間だ。俺は女神さまやあいつらみたいにバカみたいな根性があるわけでもない。
ただ強がっただけだ、ただ虚勢を張って大丈夫なふりをしただけだ。俺だって帰りたかったさ、俺も連れてってくれって言いたかったさ。
でもそれじゃダメだったんだ、誰かが残らなきゃダメだったんだ。あの世界には女神さまが必要だ、ダイオー達にはさせたくなかった、だから俺がやったんだ。
後悔したさ、なんでこんな苦しいんだって、どうして俺がこんな目にって、でもそうじゃないと納得できなかったんだよ。
「馬鹿やっちまったよなぁ…まったく、俺ってホントバカ」
でも止められない、何度も何度も繰り返して終わらない。帰りたい、芦名に帰りたい、家に帰りたい。
学校に帰りたい、芦名に帰りたい、秋名に帰りたい、藤原の豆腐が食べたい、ガソリンスタンドで駄弁りたい、峠を走りたい。
家に帰りたい、家族の所に帰りたい。でもよ、ダメなんだよなぁ…馬鹿だよなぁ、凡骨だからよ。
帰ろうとはしてるが未だに叶わず、最近は日にちの感覚もおかしくなってるように感じる。なんか年単位でここに居る感覚だ。
あいつらの魂は無事に帰ったんだろうか、まだ病室のベッドで意識不明になってるとかだったら死んでも死に切れん。
下手すりゃ府中にもう一人同じ状態になってるのが増えてるってことだからな、恨むぞ三女神。
「あっち側は遠いなぁ…」
見慣れた見慣れない空を見上げて呟く。この空の向こうに俺の帰る場所は確かにある、けどそこまでの道筋はまだ見つからない。
あの時使った手段は使えない、時空の狭間に行く手段もそこにあったミレニアムの観測基地も全部壊れちまった。
ウタハたちは今日も研究に励んでるだろうし、俺も足で何とか痕跡を探っちゃいるが未だにうまく行ってない。
「そういや俺はどうなっちまってるのかねぇ」
順当に考えりゃ、あいつらが起きてて俺は路肩のWRXの中で意識不明になってるって感じか。
でもこっちとあっちじゃ時間の経過がまるで違うっぽいしな、あいつら月単位でいたから普通に馴染んでたし。
≪こちらトキ。シマ、応答を≫
「こちらシマカゼ、そっちで進展でも?」
≪はい、こちらは全て外れでした。そちらは?≫
「まだ動きはねぇ、うちの連中からは外れと聞いてる。あとは先生たちだが、動きがねぇしこっちも外れっぽいな」
≪そうですか、先輩方も全員外れとのことでしたのでまさかとは思ったのですか…ヴェリタスが出し抜かれたのでしょうか≫
「どうだか…下手人がダブっただけだしなんとも言えん、ヴァルキューレじゃこっちはほぼ外れって見解だったし―――」
瞬間、どこかでズドンと何かが爆発し、ついでに周囲が一気にドンパチにぎやかになり始めた。
周りを見れば先ほどまでのどかに歩いていた人々が消えて、物騒な装甲車やら武装した女子高生やらがうようよと。
「訂正、先生たちがあたりを引いたみたいだ。切るぞ」
≪了解、合流します≫
「おう」
ショルダーホルスターからP226Rを引き抜き、弾倉に9×19ミリフルメタルジャケット強装弾が装填されているのを確認してからスライドを引き初弾装填。
プレスチェックして初弾が装填されてるのを確認してからデコッキングレバーを押してハンマーを下ろしてホルスターに戻す。
運転席脇の専用ホルダーに固定された刀を確認してからエンジンを回す。
EJ20エンジンが快調に回り出したらハンドルを握り、その場からWRX-STIカスタムを出してガラガラの公道を一気に駆け抜ける。
「おっと」
当然ながら妨害されそうになった、相手も俺の愛車の事くらいもう頭に入れてるんだろう。
進路をふさぐように出てきたクルセイダー戦車を軽く避け、その先にも居た装甲車を慣性ドリフトの要領でパスする。
軽く滑らせて射線を誘導しながら装甲車の機銃掃射を躱し、スレスレを抜けるようにして躱した。
道路わきに展開していた傭兵生徒たちが目をひん剥いて銃を構えているがそんなへっぴり腰の弾なんて当たりっこないし避けきれる。
それを躱して十字路に差し掛かる、一瞬急ブレーキをかけて制動、即座にハンドルを切ってドリフトカーブ。
十字路に差し掛かった時に見えた傭兵が予測射撃で撃ったロケットランチャーのロケット弾をスレスレで躱しつつ傭兵の真横を突き抜けた。
防弾仕様の車体に一発の着弾も感じないまま突破し、そのまま道路を迂回してあらかじめ決めていた合流ポイントまで、頭上の喧しい銃撃戦を聞きながら愛車を走らせる。
なんの変哲もない路地に愛車を駐車させた途端、目の前のビルの中から黄色のスポーツカーが飛び出し、その直後に爆発。
それに追い出されるように人影が3つ、ビルから飛び出した。
「今日もまた派手だねぇ、嫌だ嫌だ」
二人は生徒、白を基調とした警察官風のヴァルキューレ警察学校の制服を着た二人。
妙にデコレーションされたライフル『第14号ヴァルキューレ制式ライフル』を構えてビルからの攻撃に応戦する合歓垣フブキ。
もう一人は当たりもしないリボルバー『第3号ヴァルキューレ制式拳銃』を撃って、結局いつものスモークグレネードをぶん投げる中務キリノ。
最後の一人はこの世界ではかなり珍しいらしい大人、タブレットを抱えて周囲警戒を怠らない黒髪ロングで目つきが細い巨乳の先生。
フブキがすっげぇ不服そうな顔してるから大方大当たり引いちまったか?わかる、ドンパチってのは嫌だよねホント。
あの飛び出してきたスポーツカー、最近盗まれたっていうミレニアムの最新式エンジン搭載のスポーツカーによく似てた。
なるほどね、C&Cが追ってる一件は逃走手段の確保だったわけだ。なかなか用意周到な連中ってわけだ。
俺がすでにいるのを見てすごい安心した笑顔を見せた先生が二人に合図をしてすぐさま乗り込んでくる。
後部座席にキリノとフブキが飛び込み、先生が助手席に転がり込むように乗ってきたのを俺は茶化して歓迎した。
「よう先生、どちらまで?」
「〝追いかけて!!〝」
「あいよ」
これが俺のキヴォトスでの日常の一部、シャーレの運転手としての仕事だ。
◆◆◆◆◆
イベント報酬キャラクター
☆『シマカゼタービン』
加入時セリフ『群馬県立芦名高等学校一年生、シマカゼタービン。ここじゃ無所属ってことになるのかな。
え?ミレニアムの留学生扱いでシャーレ預かり?身分保障か…ならそれでいいか。
すまんが戦闘は専門外だ、あまり期待しないでくれると助かる。
代わりに車は任せてくれ、峠の走り屋は伊達じゃねぇぜ?ついでに酒も得意だ、酒屋の娘なもんでな』
年齢・16歳
生年月日・5月5日
身長・161センチ
所属・群馬県立芦名高等学校
学年・一年生
部活・帰宅部
趣味・峠レース、車、酒、エアソフトガン
基本情報
異世界に存在する群馬県立芦名高校に所属する一般生徒のウマ娘。
どこにでもいる一般生徒であり、酒の匠、峠の走り屋。
実家が酒造業を営んでおり本人も『酒の職人』であると自負していて、その実力は確かなもの。
走り屋としての実力は随一であり、車の運転に関してトップクラスである。
本人曰く戦闘は専門外だというが、実力を知る者は誰も信じていない。
ノーマルスキル『狙い撃ち』
構え直して狙い直し、急所を狙って発砲する。スキル発動後、初弾にクリティカル確定付与、攻撃力300%ダメージ。
抜刀モードでは発動しない。
パッシブスキル『葦名十文字』
一度納刀し、居合切りからの二連撃を放つ。攻撃力300%×2のダメージ。
通常モードでは発動しない
サブスキル『葦名流剣術一文字二連』(コスト4)
攻撃範囲内の一体の標的を選択、瞬時に接近し特殊効果と高火力の二連撃を叩き込む。
一撃目は敵に対して攻撃力140%の攻撃、状態異常効果として敵に麻痺、防御力無効化、被クリティカルヒット確定状態を一秒与える。
二撃目は攻撃力の500%のダメージを敵に与える。
通常モードでは発動しない。
EXスキル『抜刀突撃』(コスト2)
コストを消費して抜刀モードに変化、専用ゲージが0になるまで抜刀状態を維持する。
射撃による通常攻撃をしなくなり、積極的突撃による近接しての剣術攻撃になる。
遮蔽物を使わないようになるがゲージがなくなるまでは被弾しても剣撃で銃撃を弾く。
移動速度アップ、通常攻撃速度アップ、攻撃力アップ、被弾率アップ。
また抜刀モードではEXスキルが変化し『葦名流剣術一文字二連』となる。
固有武器『シマカゼ専用9ミリオート&不死切り・複製』
シマカゼタービンがこの世界で主に携帯しているミレニアム製護身用自動拳銃と日本刀。
日本刀はかつて所有していた『不死切り・開門』を模してミレニアムサイエンススクールのマイスターたちが制作した逸品。
一見古風な拵えであるがエンジニア部謹製の最新技術がふんだんに盛り込まれた逸品、非常に頑丈。
何もなければ振るわれることはない、そして振るう事を彼女は望んでいない。
あとがき
ウマ娘コラボの話っていう設定なのにどう見ても終わり方がワイルドなスピードっぽい感じになっちゃったけどウマ娘です。
ちなみに帰還時は全員同時期になるので時間経過は問題ありません。
ホクリクダイオー達は奇跡の回復、シマカゼタービンとハルウララは一夜の夢でしかない。
シナリオはブルーアーカイブらしい明るめドンパチ珍道中、シマカゼタービンの詳細は物語終盤に視点移って明かされる感じ。
そのため助けに来たという事だけは周知されて四方八方連れ回されて立ち絵差分が無駄に多いキャラ。
なお今回の一件で桜龍は三女神に対して滅茶苦茶キレるし、残ったこいつを救うために奔走します。
余談ですが、馬編での使用銃はトランクに入れてあるぞ!必要な時、あるいはガチギレモードで取り出すぜ。
おまけ・コラボシナリオ『三女神SOS』
アプリゲーム『ブルアーカイブ』にて『ウマ娘プリティーダービー』とのコラボ企画として期間限定(のちに常設化)されたコラボイベント。
シナリオは偶然この世界への道を発見し遊びに来た3女神を、メインシナリオで大ダメージを受けたカイザーPMC残党が見つけて実験対象した結果、世界のバランスが崩れたのでそれを解消するというのが目的となる。
メインシナリオの一件でダメージを受けたカイザーPMCの残党が冒険しに来た三女神を拘束して実験体にし、それを打破するために三女神が群馬の三名を世界に呼び込もうとしたのが発端であるがそれが明かされるのは物語後半である。
プロローグはウマ娘側にて突如原因不明のこん睡状態に陥った『ホクリクダイオー』『ツバキプリンセス』『ノルンファング』を救うために『シマカゼタービン』が葦名の伝承である『桜龍』の力でキヴォトスに送り込まれるところから始まる。
親友たちの現状を打破する手立てがないまま病室を見舞うシマカゼタービン、直後室内が霧に飲まれ目の前に芦名に伝わる伝承である桜龍の使いが出現する。
使いは彼女たちが目を覚まさないのは彼女たちの魂が別世界に取り込まれてしまったためであり、救うためには原因である3女神を救いだして彼女たちの魂をこの世界に連れ戻さなければならないという事実を告げた。
彼女には別の世界『キヴォトス』に向かい事件を解決してほしいと願う、とても困難な仕事になるが彼女にしかできないと桜龍は語るがシマカゼタービンはそれを怪しみ拒絶。
しかし翌日、日課の配達後に峠を走っていたところで再び桜龍の使いに遭遇。彼女はすぐさま逃走を開始し、それを桜龍の使いが牛車で追いかけるダウンヒルバトルがスタートする。
霧に飲まれた峠でのダウンヒルバトルの末、本気度を体で示した使いの顔に免じてシマカゼタービンは桜龍の言葉を信じることにする。
桜龍の使いが息絶え絶えの状態で差し出した『不死切り・開門』を受け取った直後、大きな落雷が体を包み彼女は愛車のWRX-STIと共にキヴォトスのどこかに送り込まれるのだった。
第一章からは視点がプレイヤーの分身である『先生』に戻り、キヴォトスの日常では普段の日常が流れている場面となる。
世界は平穏であるが問題がないわけではなく、直近の先生が抱える事件はここ数か月の間に発見された4名の記憶喪失の新入生たち、今も経過観察のためにシャーレに来てもらっている4名のウマ娘達だった。
数か月前、ゲヘナ学園にて『ツバキプリンセス』アビドス高等学校にて『ノルンファング』百鬼夜行連合学院にて『ホクリクダイオー』トリニティ総合学園にて『ハルウララ』の四名が同時に保護され、先生の元に緊急の案件として回ってきた。
4名は自分の名前と自分たちがウマ娘であるという以外は記憶を失っており、所持品の類は一切なく何も手掛かりがない。
このような生徒は発見された学園に在籍していない不法侵入者であるが、状況があまりに特異過ぎるための措置であった。
現状では彼女たちを保護したゲヘナ、アビドス、百鬼夜行、トリニティの第一発見者達の元でその学園に転校生として入学し、問題もなく生活しているのだが次第に雑多な記憶は取り戻しつつも自身に関しては一向に記憶は戻らない。
経過観察でも進展はなく、日常生活における事情聴取に終始、結局その日もキヴォトスの日常はそのまますぎる。
ゲヘナでは給食部の新入りが美食テロリストを撃退し、アビドスは新規事業で復興を加速させ、百鬼夜行では本物の忍術研究に余念はなく、トリニティではゆるゆる放課後スイーツの日々。
そんな日々の中、キヴォトスではある噂が広がっていた。それはヘイローを持たない生徒が街で車を乗り回しているというモノ。
トリニティ自治区でスイーツを頬張るハルウララの耳にも届いており、スイーツ研究の一環として所属部活の放課後スイーツ部と先生を巻き込んで捜索を開始。
途中、インスピレーションを求めて遠出していたゲーム開発部と顔を合わせる。
彼女達もまたヘイローを持たない生徒の噂を耳にしており、新しいゲームシナリオを作るネタにしようとしていた。
懇意のエンジニア部が躍起になって分解・解析している形式不明のスポーツカーの出所がトリニティ近辺だったため、もしかしたらその生徒の愛車かもしれないという目星をつけてきたのだという。
しかし当日のトリニティ側捜査不発に終わり。後日、放課後スイーツ部とゲーム開発部は先生を連れ立った状態でミレニアムサイエンススクール自治区側を捜索する。
結果としてゲーム開発部と行動を共にしていた先生はミレニアム自治区に潜伏していた傷だらけのシマカゼタービンと遭遇、一触即発の状態となる。
彼女はすでにスケバンなどと交戦していたため警戒心MAXであり、賞金稼ぎの襲撃者の乱入もあり問答無用の乱戦となる。
その遭遇を聞いて援護に来た放課後スイーツ部、乱戦の中で傷だらけになりながら刀を振るうシマカゼタービンの姿を見たハルウララは記憶を取り戻す。
記憶喪失のハルウララが記憶を取り戻したこと、ヘイローを持たない記憶を持ったウマ娘のシマカゼタービンという存在を先生が知ったことで事件は動き出していくのであった。
おまけ2・コラボレーションストーリーの評判
コラボストーリーは発表当初、実に賛否両論と闇の噴出などと騒がれプチイベントが巻き起こった。
理由はあまりにも『重い』『渋い』『違うそうじゃない』『しっかり作ってるのが腹立つ』という意見が多かったためである。
これはコラボ企画第三弾という事で、気合いを入れたためであった。
前回コラボストーリーでよく言われたコラボキャラの登場理由が『雑』である事。
そして事件の解決に関してもなんとなくそれっぽくても『雑』であったためであり、おおむね好評なれど制作側も気にしていた。
そのため世界観と理由を含めてがっつりと仕込むことでこれに応えようとしたのだが、今度はそれが行き過ぎて『やりすぎた』のである。
理由をある程度しっかり作り説得力を持たせたのはいいが、結果として理由がある故の無力感が従来にはない無駄な渋さを出してしまったのだ。
作中は従来のブルーアーカイブと同じであり、お祭りタイプの明るいシナリオ展開で物語が進むことも相まって終盤のタービン視点に入ると伏線回収の結果『タービン可哀そう』とまで言われる始末である。
さらに物語の終わりがブルーアーカイブらしいハッピーエンドではないこと、メインキャラのシマカゼタービンの戦闘に対する否定的スタンスなどそれに拍車をかけている。
ただでさえ運営は別のゲームでコラボキャラの『流刑地』などと言われるハードコアなゲームも運営しているので、余計に際立ったとされる。
これによりファン層は『コラボは多少雑なくらいがちょうどいい』という認識で固まった。
なおこれには制作側も思うところがあったのか、コンシューマー版『ブルーアーカイブ+P』でのDLC版追加シナリオではかなり加筆修正がされている
おもに新規エンディングとシナリオが追加されるのだが、他にも各キャラのセリフや個別イベントも多数追加された。
原作同様、シマカゼタービンのみが取り残される『トゥルーエンド』(シナリオ報酬・シマカゼタービンのみ加入)
三女神のみが帰還し、五名全員がこの世界に取り残される『バッドエンド』(シナリオ報酬・ウマ娘全員加入)
全員の帰還に成功して誰も残らない『ベストエンド』(シナリオ報酬・特定キャラクターに永続バフと特殊能力)
先生やイベント同行生徒もろともウマ娘世界へ『ハプニングエンド』(シナリオ報酬・ゲームオーバー)
それぞれに専用スチル、新規派生シナリオ有り。なお一番人気は空気が軽い『バッドエンド』である。
これは単純にプレイヤーの戦力増強と解放シナリオや追加演出の増加が一番顕著なため。
『違うそうじゃない』というコメントは多いものの、DLCそのものの売れ行きは好評だった模様。
おまけ3・専用エンディングスチル
トゥルーエンド・薄暗いオフィスの窓際に座り、スマホに何かを表示して夜景を肴にウィスキーを嗜んでいるシマカゼタービン。
スマホに表示されているのは夏休みに取られた浜辺の集合写真、ツバキプリンセス達と一緒に藤原拓海とイツキの姿がある。
必ず帰る、そう小さくつぶやくと彼女は異世界のウィスキーを掲げて一人乾杯した。
ベストエンド・先生のプライベートアドレス宛にメールが届く、メールは簡素な一文と画像が一枚。それは関係者全員に共有された。
そこには『第XX回有マ記念優勝』と書かれたトロフィーを手に、ツバキプリンセス達や見慣れぬ黒鹿毛の少女と一緒に笑うシマカゼタービンの姿があった。
『世界の荒波軽く超え、峠の韋駄天完全勝利!これが公道最強だ!!』
それを見て彼女たちと主に過ごした日々を思い出し、それぞれが懐かしそうな笑みを浮かべるのだった。
バッドエンド・シャーレ事務室内、ホワイトボードに一枚の写真が貼られる。それは改めてシャーレに身を寄せたウマ娘達の集合写真であった。
各々が所属学園の制服に身を包み、戦車をバックに愛銃を携えて肩を並べて笑っている。
しかし一人だけ、シマカゼタービンの笑みにはどこか困ったような雰囲気があった。
ハプニング・世界の狭間で遺跡崩壊に巻き込まれ、群馬トレセン学園のグラウンドに漂着した先生たち一行。
見慣れた学園に帰還を喜ぶホクリクダイオー達の姿に今度は自分たちが同じ状況になってしまったのだと知る。
しかしまぁ何とかなるだろう、何とかして見せよう。それが先生としての仕事だから。
そういつものように考える先生となんだかんだ納得した生徒たちの表情は明るく、次なる冒険にどこか心を躍らせているのだった。
その後ろでシマカゼタービンだけが表情を渋らせており心底嫌そうに『勘弁してくれ…』とぼやくが、それは虚空へ吸い込まれた。