殺しても死なねーオペレーター   作:mog-san

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イピカイエ―(挨拶)
テロリストVS中年オヤジの始まりである。


予想外のクリスマスイブ 2-1

「!?」

 

外から銃声と悲鳴が聞こえたジュンは、急いで外していたホルスターから銃を取り出し、様子を伺うため扉を少し開ける。

 

―いやあぁぁあああああ!?!?

―オラオラァ!さっさと歩けぇ!

―撃たれたくなかったら、とっとと歩くんだ!

―い、命だけは!?

―うるせぇ!ホラいけ!!

―きゃあああああああ!!??

 

見えたものは怒号と悲鳴、銃声が相まってまさしく阿鼻叫喚の景色だった。銃を持った集団に丸腰の人々は反撃の選択は当然なく,パーティー会場の広間へと無理やり連れていかれる。

当然、その人々の中には…、

 

「オラ歩けぇ!!殺されてぇかァ!!」

「や、やめて、きゃぁ!」

(マイヤ…!)

 

当然、スピーチしに会場へ行っていたマイヤもそこにいた。彼女もまた武装した連中たちに無理やり広間へ連れていかれる。

ジュンはチラッと廊下の奥を見る。正面奥には非常階段の扉が見える。そこまでいけば一応何とかなるかもしれない……、

が、銃を持った大柄な男が一人こちらに近づいてくる。

 

 

銃を持った男は、片っ端から部屋を開けては中にいる人たちを追い出し、広間へ行くように脅している。

他の仲間たちも部屋を見て回る中、まだ見ていない部屋は、奥の部屋だけ。

大柄の男は銃を構えつつ、奥の部屋へと足を運ぼうと―

 

「きゃあああああああああ!!!???」

「!」

 

突然の悲鳴にそちらの方を見る。

そこは丁度通りかかっていた部屋で、中では盛っていた男女が引きずり出されようとしていた。どちらも服が脱ぎ掛けで慌てふためく様は、見ていて滑稽だった。

 

「ひいぃぃい!?こ、殺さないでくれえええ!!?」

「きゃあああああ!?きゃああああああ!???」

「てめぇらも早く出ろ!もたもたしてねェで早くでろってんだ!撃つぞォ!!」

「へへへwぎゃーぎゃーうるせぇー野郎らだぜw」

「まったくだぜ、赤ちゃんかってんだ。ぶははははw」

 

ゲラゲラと男たちは笑いながら最後の奥の部屋の前に立つ。

ガンッと扉を足で蹴って開けるとそこには―

 

「ここには誰もいないみたいだな」

「よく探せよ隠れてるかもしれねぇからな」

「じゃあここはお前に任すわ」

「おいそんなぁ~、めんどくせぇぜ」

 

部屋の中には誰もいなかった(・・・・・・・)

 

 

「―ハッ、ハッ、ハッ―!」

 

危なかった…!寸でのところで連中たちの目線と意識が別の所に向いたので、その隙にジュンは部屋を脱出し、非常階段へ入ることができた。裸足だったおかげで走る時に音が立たなかったのも要因だ。

ジュンは急いで階段を駆け上る。一階上がって31階のドアを開けた。

 

「!」

 

しかしすぐに、そっとドアを閉めた。なぜか?ちょうど目の前で敵が何かを運んでいた真っ最中だったからだ。運んでいた最中だったのか、幸いにも連中は彼には気づいてない様子だった。

ジュンはすぐに上の階へと上がった。

 

~~~~~~

 

未だに銃声と悲鳴がやまない30階のパーティー会場では広間の中央に人々が一か所に集まられていた。

 

「み、みんな、お、落ち着いて…だ、大丈夫だ…!落ち着くんだ…!」

「……」

 

タウウェンは皆を落ち着かせようとするが、本人も恐怖と混乱で言葉がしどろもどろになっている。

マイヤは突然の襲撃に不安に駆られているが他の人みたいに悲鳴などを上げたり混乱してる様子はなく、辺りを見回している。

その隣にいるリー・チュンイは険しい顔をしてパーティー会場を襲撃した連中たちを睨んでいた。

 

~~~~~~

 

32階についたジュンは銃を構えながら辺りを警戒する。リーさんの言っていた通りこのフロアはどうやら工事中らしく、そこら中に仮組に使われているであろう鉄骨や作業機材が置いてあったり、段ボールや木箱などが積まれていた。

人の気配はないものの、ジュンは警戒を緩めずに作業机に近寄り、置いてあった有線電話の受話器を手に取るが…、

 

「くそっ!この電話もか…!!」

 

受話器からは待機音が一切ならなかった。つまりこの電話も使えない。

本当なら自分の携帯電話を使って今すぐにでもこの異常事態を知らせたかったのだが…

 

「携帯はバックの中だ…!ちくしょう!!この馬鹿が!なんで逃げるときに持っていかなかったんだ…!?」

 

彼の携帯電話はバックの中。そのバックも30階の部屋に置きっぱなしだった。ジュンは自身に文句を言うが…、

突然の銃声、悲鳴と混乱、そして敵が迫っていた中で一瞬しかなかった逃げるチャンス。時間がない中で彼の頭からバックの存在が抜け落ちても仕方なかった。

戻ることもできないし、過ぎてしまったことはもうどうしようもない。それよりも、

 

「ハァ…、ハァ…!アイツら…いったい何なんだ…!」

 

息を整え、頭を整理させ、落ち着かせる。

ここでまず大切なのは状況を把握することだ。襲撃した奴らの人数、武装そして目的。それから今紅雀タワーで起きているこの非常事態をどうやって外に伝えるかだ。

連絡する方法も道具もない以上は連絡もできないし、敵の情報が不明な現状では連絡できても駆けつけてくれた人たちや人質たちが危なくなるだけだ。

 

「くそぉ…どうする…」

 

ジュンは窓をちらりと見る。日は完全に落ち、すでに夜になっていた。それに対して龍門の街は光で明かるくなっていた。

そこでジュンはあるところに目がいく。

 

「…ん?」

 

ちょうど隣のビルのとある一室が光っていたのだが、よく目を凝らすと人が受話器を手に何やら会話をしていた。しかも一向に受話器を離す様子はない。

 

(隣のビルは電話が使えるのか?するとこのビルだけの電話線が切られたか…)

「くそっ…考えても仕方ねぇ…。上の階も見るしかねぇか」

 

今できることをしなければ。ジュンはまた非常階段を使って上の階へ上ることにした。

 

~~~~~~~

 

一方の30階では武装した連中らによって人々が広間に集められていた。いまだに混乱と悲鳴が蔓延している中で―

 

「諸君、殺されたくなければ静かにしたまえ」

 

一人の、唯一紳士服を着たループスの男が声を上げる。すると、やっと悲鳴などが無くなり静かになる。

 

「よろしい。聞き分けの良い人は嫌いじゃない」

ループスの男は手に持っていた何かの本を見ながら続けて言葉を発する。

「我らは『NOK』。世界中のあらゆる貪欲で肥大化した国家に神のもとに制裁を下している義勇軍であり有志同盟だ。そして、炎国の中の一都市である龍門の貪欲さ、やり方には非常に目に余るものであり、許しがたいものだ。よって今回、我々は神のもとで有罪の審判が下った龍門に制裁を下しに来た」

 

彼の言葉に皆がざわざわとどよめく。『NOK』、この言葉をいま知らない人々はいない。今現在、あらゆる国で制裁と言う名の悪行を轟かしている少数精鋭のテロリスト集団。まさか自分たちが今日、NOKの人質になるだろうとは思いもよらなかった。

 

「―そして龍門と交流関係であるロドス・アイランド。お前たちのやっていることは何も解決方法も見出してないにもかかわらず、悪戯に感染者たちに希望を持たせ、そして無駄死にさせる。お前たちのやっている行為はとても質が悪く、この上ない非道でイカれた軍事製薬会社だ。龍門に続いてお前たちも神のもと、後に制裁を下す」

「なんだと―!」

「死にたくなければ、静かにしろ」

「くっ…!」

 

これには一部(ロドス)の人たちが反感の声を上げようとしたが、銃を突きつけられ、なくなく黙った。当然ロドスの職員であるマイヤも彼の言葉には怒りを覚える。

 

「さて、この紅雀タワーの責任者はどこにいる?」

 

その言葉に、リーは名乗り出ようとする。

ギュッ―

しかし、マイヤに袖を掴まれる。

「…絶対に…動かないでください」

絶対に名乗り出てはダメ―。

そんなことをすればリーがどんな目に遭うか、最悪…

 

「ふむ…じゃぁこういえばいいか。『リー・チュンイ・ホンチュェ』。紅雀タワーの社長。龍門でもその人柄と実力ゆえに皆から信頼と好意を寄せらている、実に絵にかいたような誠実な人間じゃないか―」

 

その間にもリーの経歴と実績を喋りながらコツコツと人質の中を歩き回るループスの男はジロリと一人一人の男の顔を見る。大抵の男たちは顔を逸らして自分ではないと示す。

 

「…ふむふむ、名乗り出ないのか。なら仕方ない。では―」

『!!』

そう言いながら手を上げると、銃を持った連中たちが人質たちに向けて銃を向けた。これから自分たちの身に起こることに、人質たちの顔は恐怖で青くなる。

「さっそく、ここにいる者たちには制裁を下そうではないか―」

「待て!!」

 

静寂を切り裂くその声、マイヤは悔しそうに目を瞑る。ループスの男はその声を発した男を見る。

 

「私が…リー・チュンイだ」

「そうか、貴方がリー・チュンイでしたか」

嘘だ。このループスの男は最初っからリーのことを知っていた。知っててわざと知らないフリをしていた。炙り出すために。

「お目にかかれて光栄だ。ホット、連れてけ。お前たちは全員から携帯電話などの通信機器を取り上げるんだ」

 

その言葉と共にリーは武装集団に連れていかれたのだった。




今回のおまけは無し。

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