いよいよ本編開始です。
中年オヤジ、(勝手に)出動!
12月24日、それはこの世界にとっても特別な日である。
「クリスマス・イブ」
年の末のイベントの一つとして皆はこの日をそれぞれの方法で過ごす。
家族と過ごしたり、一人で過ごしたり、
静かに質素に過ごしり、ドンパチ派手にやって過ごしたり、
一日中起きていたり、逆に一日中寝て過ごしたり、
などなどである。
そしてそれはとある男も例外ではなかった。
「んん~~」
「…なぁ婆さん」
「うんん~~」
「…お~い婆さん」
「ん"ん"~~!!」
「おいバァサン。ウンコだしたきゃ他所でしてくれよ!ってか俺の占いはどうなんだよ~。もうこっちは5分も待ってるんだぞ、早く教えてくれよ~」
ここ「龍門」のとある街道の隅っこで水晶と睨めっこをしているよぼよぼのお婆さんと、それに付き合わされてるこの中年のオッサンこそが主人公であるジュン・リカクラーンである。
ジュンはロドスのオペレータである。オペレータは簡単に言えば戦闘員みたいなものであり、日々欠かさず訓練をしていた。
だが今日は有休休暇を申請していたため彼は非番である。
また、ジュンはとある用事で龍門を訪れていた。…のだが、賑わっている商店街の大通りにてこの婆さんにしつこく占いをしてみないか~、寄ってくれ~と誘われ、仕方なく寄ってみたのだが、そこで5分くらい足止めを喰らわされていた。
「そうせっかちになるもんじゃないよ、短気は損気じゃ」
「いや、こっちは用事があるんだよ。早く行かねぇと」
「わかったわかった……はぁ~視えてきたわい」
「やっとかよ。んで結果は?」
やっと彼の将来が見えた婆さんにジュンはやれやれと反応する。
結果は…
「結果は…あぁ~お前さん運勢が最悪じゃな。すっごいツイてない」
「だろうな。んで、どうツイてないんだ」
「ん~難しいの~。見えるのは今日お前さんが登ったり飛び降りたり登ったり飛び降りたりの繰り返しをするところじゃな」
「マジかよ…ってなんだそりゃ」
なんだよそれ、俺今日バンジージャンプでもするのかよ。とあり得ない占いの結果に呆れるジュン。婆さんの言葉はまだまだ続く。
「他にも立て籠もり、狭いところを通る、半裸になる、吹き飛ばされるってところが視えた。お前さん今日これから配管工事の点検の仕事でもやるのかい?」
「いやねーよ。つか配管工事もやってねーわ。あと最後のが不吉すぎるんだが」
「そうかい、でも心配するな。わしはこの道を究めてから9年になる。このごろは半分は当たるようになっておる」
「いや、それはそれとしてどーなんだよ」
半分当たるって婆さんそれ占い師として明言しちゃっていいのかよ。しかもその年で9年って…っというツッコミを飲み込んだジュンは時間が差し迫っているので席を立った。
「占いありがとよ、次からは公衆便所にでも店構えとけ。…っでいくらだ」
「まいど、一万じゃ。また来てな」
「もう二度と付き合うか」
と言いながら財布を取り出す彼。取り出す際にコートの内側からホルスター越しに黒い金属質な物がちらりと見えた。それが何なのか分かったのかさすがの婆さんも表情が変わるが…
「あぁ大丈夫。俺はここの近くに滞在している『ロドス・アイランド』のオペレータだ。これは悪さしてる奴にしか向けねーよ。コレを持ち歩くのは前職の分もあわせて11…いや12年はやってる。心配すんな、向ける相手は一度も間違えたことはない」
そう言いながら1万の龍門幣を渡す。無駄にできない時間を消費したので急ぐ彼に婆さんは引き止める。
「これはおまけだが、お前さんの運勢は私が占ってきた中で一番最悪じゃが、天に祈ればなんとかなる。それに今日はクリスマス・イブじゃ。お前さんでもクリスマスプレゼントは貰えるはずじゃ。心配するでない」
「……だといいけどねぇ」
そうして占い所を後にしたジュン。もちろん二度と来ないことを誓いながらだ。
時間が無かったので、TAXに乗ることにしたジュン。これまた運転手も変わった奴で、見た目は仕事服の白いシャツに帽子をかぶっているせいで余計に丸坊主が目立つフェリーンの青年で、陽気な雰囲気がダダ洩れなお調子者である。と前職の警官で腐るほど培ってきた人間観察を無意識にしてしまう。助手席に乗り目的地を教えて運転手がTAXIを走らせてからすぐに、案の定、運転手は彼に色んなことを聞いてきた。
「旦那さん、いったい
「あ?あぁ…ちょっと妻に会いにな」
「へぇ~、奥さん、仕事してるんですか~。ちなみにいつからで?」
「まぁ、1ヶ月くらいは経つな」
「なるほど~、ちなみに旦那さんはどこで働いて?」
「ロドスっていう製薬会社でな。…オペレータとして」
「おぉロドスですか!っとなるとさぞ奥さんと一緒に活躍してるんでしょうな~旦那さん」
「ふっ…そうでもねぇよ…」
自虐気味に笑いながらジュンは煙草を咥え火をつける。煙草は前々から吸っていた。もちろん妻や娘に害が及ばない仕事先とかでだ。だが、ロドスに入ってからは医者たちや他の人からも口うるさく注意されていた。消費する煙草の箱から最近は吸う回数が増えた気がしたな。
車内に煙と臭いが漂う中、運転手は気にせずこんなことを聞いてきた。
「旦那さん、具合悪いんですかい?それか腹でも空きすぎたんじゃないですかい?途中で何か食った方が良いんじゃないすか?」
「大丈夫だ。お前は気にせず運転しろ」
「もし腹が減ったら、先ほどの商店街の肉饅頭、後で食べてみてはいかがですかい?あそこは肉が美味しくてしかも分厚くて食べ応えがありますぜ」
「あぁ覚えておこうか」
「それで話は戻るんですが奥さんは仕事できる方で?」
「…あぁ、それもバリバリできる方だ。今はもう会社を支えている重要な職員に昇進してる。妻は本当にできた奴だよ」
「アハハハ!まるで旦那さん、奥さんを仕事に奪われたようなもんですなぁ」
「…黙ってろ、ってかお前なんでも言うよな。皮肉が良い塩梅で利いてるぜ」
「えへへ。すんません、TAXI走らせ始めたらついクセになっちまいして」
「…まぁ実のところは…いやなんでもない。娘が一人いるんだけどな、娘のためにも親のどっちかは傍にいた方が良いんだけどな…」
「それなら旦那さんが傍についたほうが良いんじゃないんですかい?奥さん重要な役員になったてことはそれなりの給金も貰っているだろうし?」
「…いや、それは無理だ。理由はいろいろあるが、俺は前は警察官をやっててな、悪者をとっちめるのが癖になっちまったんだ。…それに妻だけに金の負担を押し付けるわけにはいかないしな」
「とか何とか言っちゃって~、実のところ奥さんがコケるとまでは思ってないけど、まさかそこまで上手くいくとは思わなかった、とかじゃないんですか~?」
「…フフッ、お前ホントズバズバ何でも言うよな。しかもいい読みをしてやがるな」
「へへへ。ありがとうございまっせ。旦那さん」
「褒めてねーよ」
「折角のクリスマスですので歌でも流しましょうか。僕のお気に入りのクリスマスソングなんですよ~」
そう言いながらフェリーンの丸坊主青年は車についてるラジオのダイヤルを捻ると複数のエレキギター、ドラム、電子ピアノがスピーカから大音量で轟く。なんかさっぱりした塩ラーメン小盛り頼んだら、野菜・背油・ニンニクマシマシのどちゃくそ味濃いめの醤油豚骨ラーメンデカ盛りが出てきた感じだ。
少なくともジュンの想像してたクリスマスソングから母を求めて三千里するくらい程遠かった。
「…これがクリスマスソングか?他にないのか?」
「何言ってますか、旦那さん!これが今のクリスマスソングですよ!龍門じゃ流行ってますよ!」
「……マジか。ってかうるせぇ」
「~♪」
こんな会話が繰り広げられながらTAXIは夕日をバックに目的地の紅雀タワーへ着々と近づくのであった。
今回はおまけなし。