しばらくは下準備中です。
「皆さん、今年も無事に年を越せそうですね。これからも龍門の繁栄と安泰を願い、そしてこれからもロドスとの交流に!」
メリークリスマス&ハッピーニューイヤー!!
優雅な音楽をバックにたくさんの人々の和気あいあいとした会話が弾んでいる中、一人の女性はせっせと束となった書類らしきものを運んでいた。
彼女はマイヤ・リカクラーン。ジュン・リカクラーンの妻である。
マイヤは他の皆がパーティーを楽しんでいる中で仕事をしていた。と言ってもそんな大変なものでもなく単に書類をコピーするだけの仕事だった。
「ふぅ~、あとはこの書類を纏めて、コピーするだけね」
マイヤはロドスの職員として紅雀タワーで仕事をしていた。と言うのもロドスと龍門は以前にとある作戦で(めっちゃ砕いて分かりやすく言えば)協力関係になり、それ以降はある程度の交流関係が続いてる状態なのだが、その交流関係を維持するためにマイヤがその交流メンバーとして一役買ったのだ。日頃からお世話になっているロドスに恩を返したい、そして何より、自分と娘のために身を粉々にして働いてる夫の負担を少しでも軽くするためにと彼女なりの恩返しと献身だった。
結果はうまくいき、今日までのロドスと龍門の交友関係は他の国に比べて良い状態を保っている。その功績でもちろんメンバーの一人であるマイヤも、より重要な職員へとめでたく昇格することになった。
このパーティーもロドスと龍門の交流会の一環であり、他のロドスの職員もいる。その人たちは一足先にパーティーに参加しているが。普段はのほほんとした陽気さと人柄の良さ、そしてちょっとした天然な性格で職員やオペレータたちを和ませている彼女は、仕事に関してはしっかりと真面目に取り組むので、ロドスからも龍門の関係者たちからも好評で慕われているのである。
「やぁ、マイヤ!まだ仕事かい?」
そんな真面目に仕事をこなしている彼女の背後から、髭を生やしながらもイケメンですらっとした体型の長身男性が声をかけてきた。
「こんばんは、タウウェンさん。いえ、もうこれらの書類をコピーしたら終わりなので大丈夫ですよ」
「いやぁ~真面目なのは君の美徳の一つでもあるけど今日はクリスマスイブだよ。たまには仕事を忘れてパーティーに参加しようぜ!あとパーティの後、二人でどう?」
「ごめんなさいタウウェンさん。もちろんパーティーには出ますけど、その後には家族と一緒に過ごすつもりなんです」
「あら残念だね」
「だって今日はクリスマスイブで明日はクリスマスですもん。靴下、トナカイに乗ったサンタさん、シチューに七面鳥、ケーキそしてクリスマスプレゼント、そんな幸福な聖夜を家族みんなで楽しみにしてるので」
「あ~僕としては高価な赤ワインに、高級チーズ、真っ赤に燃える暖炉の炎、そんな聖夜を二人で楽しみたいね~」
「ふふふっ、それも楽しそうですね。来年は夫とやってみようかしら?」
イケメン色男のお誘いを持ち前の天然で躱すマイヤ。実は前からもこんなお誘いがあったのだがことごとく断っているのだ。もちろんタウウェンは彼女が子持ちの既婚者だと知っている。もう皆さんには分かるだろうが、コイツは寝取ろうとしているのだ。まさか人妻だと知りながらそれでも手をだそうとする色男だとは彼女も知る由もない。
残っている仕事を終わらすため途中で彼と別れて彼女の仕事部屋に戻ると、置いてあったコピー機に書類をセットする。コピー機が書類を読み取りするために少し時間が掛かるので、彼女はその間にとあるところに携帯電話を掛けた。
数秒待つと、携帯のスピーカーからは大人の女性の声が聞こえてくる。
「もしもし、グラム先生ですか?はい、マイヤです。いえこちらこそ、いつも娘のリーリヤがお世話になって助かっています。リーリヤはいますか?はい、お願いします」
数秒間無音になった後、さっきの大人の女性の声とは違って今度は可愛らしい少女の声がする。
「はい、わたし『りーりや・りかくらーん』です」
「ハーイ、可愛いリーリ♪ママですよ。今日もグラム先生の言ううことをしっかり聞いてお利口にしていましたか?」
「うん!今日はクリスマスイブだから友達みんなでツリーの飾りつけをしたよ!すっごいキラキラしてるよ!ママにも見せてあげたいの!」
「まぁ!それは帰ったら見るのがとても楽しみだわ♪パパにもリーリの作ったツリーを見せてあげたかな?今日はパパもお仕事休みだから―」
「ううん、まだ。パパは
「あらそうなの…?わかったわ。ママももう少ししたら帰ってくるからね。そうしたら明日はパパも一緒に家族でパーティーをしましょうね」
「うん!あっそうだ!グムお姉ちゃんやゾーヤお姉ちゃんたちも誘っていい?」
「えぇもちろんよ!あっ、あと今プレゼントを探してもありませんよ。リーリが今日もお利口に過ごして寝たら、朝にはきっとツリーの下にプレゼントが置いてありますよ」
「うんわかった!ママ待ってるね!」
「じゃあお休み、可愛いリーリ♪」
「おやすみなさい!」
ガチャリと電話が切れる音がする。マイヤが通話を終わらせたころには書類のコピーは終わっていた。
~~~~~~~~~
「へぇ~、このビルが紅雀タワーかぁ~。たっけぇ~ビルだな~オイ」
その頃、ジュンを乗せたTAXIも目的地である紅雀タワーに到着し、たった今降りたところだった。それは先ほどまで青年が気に入ってたクリスマスソングと名乗った爆音ロックを聞かされ続ける地獄からやっと解放されたとも言う。耳がいてぇ。
「そうですよ~。なんたってこのビルは30階以上もあるんですよ。こんなビルを建てられるのは間違いなく金持ちの証ですぜ」
「ふぅ~ん…贅沢だねぇ~」
「そういえば、奥さんに会ったらどうするんです?そのままパーティーに参加するんですかい?」
「う~ん…どうだろうな~。久しぶりで妻にどういう風に声を掛ければいいのやら…」
「そんな弱気になってどうするんですかい、旦那さん!せっかく1ヶ月ぶりに奥さんに会うんでしょう?なら思いっきり抱きしめてからの『アイ・ラブ・ユー』これで決まりですよ」
「……」
「あっ、もし緊張してるならいい方法がありますよ。ふわふわな絨毯の上で靴と靴下を脱いで、足の指、つま先を丸めるんですよ」
「…つま先を丸めるだぁ?」
「えぇ、じつは自分も落ち着かない時とかにはそうしているんですよ。そうすると絨毯のふわふわな感触が足をやさしく包み込みこんでくれてリラックスするんですよねぇ~。ぜひやってみるといいですよ!効果は自分が保証しますよ!」
「…あぁうん、いつか試してみるよ」
ジュンはフェリーンの丸坊主青年のアドバイスを適当に聞き流しながら、お目当ての紅雀タワーを見上げる。流石30階以上ある高層ビルなだけあって、正直首が痛くなりそうなくらいだ。
「あっそうだ、え~と…。お前さん名前は?」
「オーガスタです」
「オーガスタ、悪いけど待つことってできるか?もしかしたら俺すぐに戻ってくるかもしれねぇから」
「もちろんできまっせ。地下駐車場に車止めておくんで、そこに来てください。もし、時間が掛かるようでしたら…これ、自分の電話番号なので掛けてくださいな。上手くいくといいですな」
「ご親切にどうも、オーガスタ。助かるよ」
「へへへ、感謝の気持ちはチップでどうぞ、旦那さん♪ではまた後で!」
ジュンに電話番号が記載された名刺を渡したオーガスタは、そう言って彼を残してTAXIを走らせ、紅雀タワー専用の地下駐車場に向かった。
「にしてもやっぱりたっけぇな~、タマがヒュンしそうだなぁ」
再度、紅雀タワーを見上げるジュン。こんな高いビルはチェルノボーグにもあまりなかったし、何より元いた世界の都市を思い出す。狭い土地なので横に長い建物はほとんどなく、縦に長い建物がひしめき合っているとある街のことを。
色んな意味で昔の思い出に浸っていたがふと、商店街で占ってもらった婆さんの言葉を思い出す。
"お前さんが登ったり飛び降りたり登ったり飛び降りたり―"、と。
「…ふっ、まっさかぁ~」
ジュンは小さく笑い、あの時言われた言葉を一蹴する。
「こんなビルの屋上からバンジージャンプってか。馬鹿馬鹿しい、そんなことやるのは贅沢な趣味をお持ちの金持ちかホントのバカだけだろ」
ジュンは紅雀タワーの中へと入っていった。
おまけ
ジュンの容姿
・身長は180cmくらいはある
・警官職・オペレータ職なため筋肉はついているが、どこかくたびれてる様な雰囲気がある。
・顔はお世辞にも美顔とはいえない。のっぺりしていて少し垂れ目にたらこ唇、てかロドスのほとんどの人が男女ともに顔面偏差値が高すぎるんよ。やはり世の中顔面偏差値。
・若干クルクルっとしたクセ毛の黒髪だが最近は白髪だったり抜け毛だったりと頭皮の毛を心配している。
マイヤの容姿
・身長は160cm後半。
・すらっとした体型で筋肉もついてように見えるが、見た目で侮るなかれ、細腕からは想像できないくらいの怪力を有している。力はジュンよりもある。
あとジュン曰く「着やせするタイプで脱いだらすんごい」
・青い瞳の美人顔ながらにのほほんとした陽気さと立ち振る舞いとピコピコっとした熊の耳が愛らしい。さすがアークナイツの世界の住人。さすがウルサス人。
・落ち着いたストレートの茶髪ロングヘアーに白のメッシュが混じっている。
リーリヤの容姿
・身長120cmくらい
・まだ7歳なのでまだまだそれ相応のすらっとした少女の体型。これからの成長に期待。多分マイヤみたいになるだろう。
・愛くるしい天使のような童顔、眼は茶色が混じった黒。これはジュンゆずりである。マイヤ同様ピコピコっとした熊の耳が愛らしい。さすがウルサス人。
・ジュン同様若干クセがある茶髪ボブヘアー。黒いメッシュが混じっている。