殺しても死なねーオペレーター   作:mog-san

6 / 10
イピカイエ―(挨拶)
今回は短めです。


中年オヤジはつま先を丸める 1-3

自動ドアを潜り、エントランスに入ったジュン。エントランスは音ひとつ無いほど物静かだった。しかし、ヒト気がまったくないわけではなく。

 

「こんばんは。どうかされましたか?今日は会社自体がお休みなので、ご予約した案件はなかったと思いますが…」

 

受付カウンターから出迎えてくれたのはリーベリの男性。キッチリとした清楚なスーツで人が来ずに手持無沙汰になっているとはいえ仕事をしていることは感心する。

 

「ロドスから来ました、ジュンなのですが…あの、今日ここでクリスマスパーティーがあると妻のマイヤ・リカクラーンから聞いたので…。妻にちょっと用があって来たのですが…予約してた方が良かったですか?」

「マイヤさんの…。なるほど、大丈夫ですよ。このタッチパネルで名姓検索すればどこの階に仕事部屋があるのか分かりますよ。その階に本人が基本おりますので」

 

目の前にあるタッチパネルに促され、ジュンは受付の男性の指示に従って指で操作する。

姓名、リカクラーン…RekoKran…R…R

Rを見つけたので押して検索するが、検索結果は―

 

「あれ?ないな…?」

 

―該当する氏名の中に彼女の名前が見つからなかったのだ。

 

「もしかしたら、奥様は旧姓のほうで登録してあるかもしれません」

「…旧姓?」

 

そんな馬鹿な…。受付の言葉に半ば疑いながらもう一回検索する。

マイヤの旧姓は…シェフトヴァ…Sheftova…S…S

Sを見つけて、もう一回検索結果が表示される。すると

 

Sheftova・Mayya

 

「…あった…。…でもなんで旧姓に…」

 

今度は見つけることには成功したもののジュンはあまり喜べなかった。いつの間にか彼女の姓が旧姓に戻っていたのだ。彼女のことだからたぶん何か理由があるのだろうとは思うのだが…。

心の中にモヤモヤ感が生まれるのを感じながらも、マイヤの名前を押す。

すると、マイヤの仕事部屋が表示される。階は―、

 

「30階か」

「30階はパーティー会場になっています。今日はもうその階の人たちだけしかいないですから。高速エレベータをお使いください。すぐに着きますので騒ぎ声が聞こえくると思いますよ」

「…あぁ、どうも…」

「ぜひ楽しんできてください」

 

気分が落ち込み気味になったジュンは比例して少し重くなった足取りでエレベータへと向かった。

 

「……」

 

エレベータを待っている間、ジュンはちらっとカメラと警備員の配置を見た後、1階に到着したエレベータに乗った。

 

~~~~~~

 

「隊長、パトロール隊α、パトロール巡回終わりました。酒に酔った者同士のトラブルが2件ありましたが2件とも無事解決。その他の異常はなしです」

「わかった。次のパトロール隊に15分後に巡回ができるように準備しておくことを連絡しておいてくれ。お前たちは1時間休憩しろ」

「了解しました、隊長。失礼します」

 

隊長と呼ばれた龍のような角の生えた女性に敬礼をして部屋を後にする警備隊員たち。それを見送った女性は椅子の背もたれに体を預ける。

 

「やはり今日はいざこざが多発してるようですね。これで合わせて13件ですね」

「…クリスマスを何かの祭り(バカ騒ぎ)と勘違いしている連中がどうにも多いな」

「この調子だと明日はもっと多くなりそうですね」

「はぁ…」

 

パトロールおよび先ほどのいざこざの件の事後報告書をまとめている鬼のような角が生えている長身の女性が、自身なりに分析し明日の予測を言ううと、隊長はため息をつく。

 

「聖なる夜の日なんだから今日はくらいは静かにしてほしいものだな…」

「静寂な龍門なんて絶対に想像がつかないですけどね」

「…それもそうか」

 

隊長の願いも長身の部下にうまい返しをされて、ついつい納得してしまう。

夜の龍門は無数の光とチンピラたちの騒ぎと化する街だ。理想的なクリスマスとは一番疎遠なところかもしれない。

 

「話は変わるんですけど、ロドスから聞いた例のテロリスト(・・・・・・・)の件なのですが…」

「あぁ、その件か」

 

長身の部下が話題を切り出したのはテロリストの話。と言うのもここ半年前からとあるテロリストが世界の所々で名を上げているからである。

そのテロリストの名は『N・O・K(NoOneKnow)(ノック)』と名乗っている。

テロリスト曰く、各国の政治的・経済的に対する不満を理由に見せしめとして人質に対して制裁、粛清をして、人質を解放するための要求はほとんど無茶苦茶なものばかりで、良くても1~2割、最悪の場合3分の2の人質が犠牲となる。

すでに、NOKによる被害はウルサスやカジミエージュ、クルビア、イベリアなどその他の国でも出ている。

少数規模なテロリストであるものの、その犯行の手口、連携は精錬されたものであり、いつも足取りも掴めぬまま逃げられてしまう。

脅威はいま世界中から恐れられているあの「レユニオン・ムーブメント」ほどではないものの、とても危険で厄介な集団には間違いない。

幸い、龍門やその大本となる炎国には魔の手が掛かってないものの、それももはや時間の問題だろう。

龍門もこのテロリストの行動には警戒をするものの、情報がほとんどなく、色んな国からさまざまな種族があつまるロドスからの情報を共有してもらっているのが現状だ。

 

「他国でも被害が出ているとロドスから聞いている…。龍門にも被害が出る前に早いところ手を打たなければな」

「しかし…難民、無登録感染者にレユニオン対策、そして今日明日はクリスマスの影響でいざこざの多発、それと今後に向けてのテロリスト対策…正直、今日明日の警備はかなり厳しいものです。動ける警備隊員にも限りがあります」

「今日明日の分の警備にはロドスにも協力はしてもらっているが…それでも手が足らなくなるな。だからクリスマスは苦手なんだ」

 

角の生えた隊長と部下は今日と明日、そしていつ来るか分からない敵に頭を悩ますのだった。

もう、その連中(・・・・)が龍門の中に侵入しているとも知らずに。




今回はおまけは無し。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。