殺しても死なねーオペレーター   作:mog-san

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イピカイエ―(挨拶)
今回は書く時間が掛かってしまった分長めです。
キャラの心情を書くのは少し手間取ります。


中年オヤジはつま先を丸める 1-4

ポーン♪という音と共にジュンの乗っていたエレベータの扉が開く。

到着したエレベータの先に広がっていたのは、広い豪華なパーティー会場とぱっと見でも30人くらいの、もしくはそれ以上の人がいた。男性はほとんどスーツ、女性はドレスやチャイナ服などTPOにあった服装であった。

それに対して、ジュンの格好はどうだろうか。冬用コートの下は緑と白のチェックの厚手シャツ、下もビジネス用などのスーツパンツではなくボテッとしたベージュ色のワークパンツ。どう見ても私服だ。場所にもよるが少なくともこの場の雰囲気には合わない格好だった。

そんな服装が場違いなオッサンは気にも留めずに妻を探しにパーティー会場の人混みに入っていく。

 

「メリークリスマス、シャンパンをどうぞ」

「あぁ、ありがと」

 

従業員からシャンパン(…なのかコレ?何かすっごい赤いぞコレ)を貰い、こくりと一口飲む。

 

「……」

 

渋い顔をしてすぐに他の従業員にシャンパンを返す。残念、どうやら彼の口に合わなかったようだった。

その後も辺りをキョロキョロ見渡すが、人混みが思いのほかすごいせいでぶつかってしまう。

 

「あぁどうも失礼」

「いいえこちらこそ」

時には、

「やぁ~!メリークリスマスー!」

ちゅっ❤

「!?」

 

酔っぱらった男性に頬をチュウをされてしまった。これが龍門式のメリクリってか。たまんねぇなこりゃあ(汗)。

※ジュンはノーマルです。

こりゃあ妻を探すのになかなか骨が折れそうだ。そうだ、酔ってなさそうな人に聞いてみよう。できればお偉いさんとかに聞いた方が手っ取り早いだろうな。

そう考えたジュンはさっそくめぼしい人を探す。

そのとき、

 

―ねぇ、あの人って…―

―えっ…うわ、なんであの人がいるんだよ…―

―あの人ってマイヤさんの旦那さんだよね…―

―なんでここに来てるのかしら?―

―おい、あんまりあの人を見るなって。言いがかりつけて嫌がらせするらしいぞ―

―噂では他のオペレーターと喧嘩沙汰になったって話らしい。しかも自分のミスなのに開き直るとかなんとかって話らしい―

―えっ、何それ酷くない?―

―他にも食事に難癖つけてわざと手を付けずに残すらしいぞ。それでグムちゃんを泣かせたらしいぞ―

―何それ、最低じゃない…!―

―なんでマイヤさんはあの人と結婚したのか、そこだけは本当に理解できない―

―マイヤさんも可哀そうだよね…。きっと男を見る目がなかったんだわ―

 

「……」

 

人々の色んな騒音の中、こんな会話が聞こえてきた。ヒソヒソと小声で話しているので騒音に搔き消されるはずなのだが、ジュンには澄んだように聞こえる。

悪いけど聞こえてるんだよなぁ。っと内心で吐き捨て、ジュンは聞こえないフリをしてめぼしい人を探す。

すると、少し段差を上がった場所にお偉いっぽい人を見つけたので、声をかけてみる。

 

「あの、すみません」

「おや、何かね?」

「ちょっと人を探してて…えっと、マ―」

「マイヤ・シェフトヴァ、ですかな?」

「っ!えぇ…」

「それでは貴方がジュン・リカクラーンだね。リー・チュンイです。マイヤ君から君の話は聞いてるよ」

「どうも。妻のマイヤがいつもお世話になっております」

「いやいや、むしろお世話になっているのはこちらの方だ。マイヤ君はとても優秀だよ。龍門も喉から手が出そうなくらい欲しい人材だよ」

「妻も楽しそうにやりがいのある仕事だといつも聞いてます。ありがとうございます。それにしてもこのビルは素晴らしいですね。室内に池があるなんて見たことがありませんよ」

「ははは、そう言われるととても嬉しいよ。でもまだこのビルは未完成でね、上の階がまだ工事中なんですがね、完成すればもっと素晴らしくなるよ」

「それは楽しみですね。是非とも見てみたい」

「ええ是非!あ、マイヤ君ならまだ仕事中だけど、そんな大した仕事じゃないからすぐに戻ってくると思うから、彼女のオフィスで待ってるといい。案内するよ」

リーチュンイは彼を案内し始める。後をついてくジュンは礼と謝罪を言う。

「ありがとうございます。それとすみません、突然押しかけてしまって」

「いえいえ、構いませんよ。さぁここが彼女のオフィスです」

 

先ほどのパーティー会場からすぐ近くの部屋に案内された。扉には『M・SHEFTOVA』と書かれている。

リー・チュンイの後に続いて部屋に入ると、そこにはマイヤではなく、髭の生えたイケメンが何かをやっていた。

 

「タウウェン?こんなところで何をしているんだ?」

「あっ、いや、ちょっとここの電話を使っていたんです。…ズズッ、ここの電話が一番電波がつながりやすいので…ズッ」

 

いや、厳密には何かを吸っていた(・・・・・・・・)

そしてタウウェンは慌てて腕で机を拭いた。

おいおい、元警官・現製薬会社に所属している者としては見過ごせないところを見ちまったんだが。

ジュンはその男が何をしていたのか、一瞬で見抜いた。リーは何事もなかったように話を進める。

 

「こちら、ジュン・リカクラーン氏だよ。マイヤ君のご主人でロドスのオペレータだ。タウウェンはロドス交流担当兼龍門開発部門担当です」

「ズッ…どうも、お噂はかねがね聞いてます」

鼻をすすりながらタウウェンは手を差し出す。ジュンも彼の手を取り握手をする。

「どうも。……まだ付いてるぞ(・・・・・・・)

「!」

 

そう返されると、彼は慌てて鼻を拭く。

本当だったら現行犯逮捕ものだが、俺はもう警官じゃないし、ここは龍門だ。リー・チュンイが見逃しているってことは合法かはたまた許容してるんだろうな。

そう考え、ジュンはタウウェンの行為を深く追求しなかった。そんなことよりも、っといった感じで一通り部屋や仕事机を見渡す。マイヤは整理整頓ができる性格なので、机の上には何枚か書類が置いてあるものの、散らかってはいない。質素ながらもちゃんと整理されている部屋だった。

他にも何個か写真立てが置いてある。家族写真、娘とのツーショット写真、職場仲間との集合写真などなど、これも埃ひとつ被らずに綺麗に置かれてある。

 

「何か食事や飲み物でもお持ちしましょうか?シャンパンとかどうです?」

「あぁいえ、お構いなく…。ホント、素晴らしい職場と環境だ。ここなら妻も集中して仕事に励むことができますね」

「アハハハっ!そりゃあもちろん!龍門とロドスの協力関係をより良くしてくれた立役者ですもんね!」

「あぁ、その通りだ。彼女がいる限りは来年も良い関係が続けそうだよ」

「…そうですか」

 

二人が彼女を褒めちぎっていると、後ろから、

 

「…えっ?アナタ…?」

 

まるで豆鉄砲でも喰らった鳩のような驚きの声。そしてジュンにとっては一番聞きなれている女性の声だった。

 

「…やぁ、マイヤ」

「え?アナタなの?ど、どうしてここに?」

天然気質なマイヤもさすがにこれにはビックリしている様子だ。

「とっても親切なサンタさんに連れてこられたんだ(笑)」

そう言うと、サンタさん(リー・チュンイ)が笑い出す。

「いやぁ、実はプレゼント袋に紛れ込んでしまったらしくてな。マイヤ君宛だったから届けに来たんだ」

「ははは、うまいな~リーさん」

「もう!都合のいい人たち!」

 

マイヤは少し頬を膨らませ、ムッとした表情でジュンに近づいていくる。

そして、

 

「…ジュン、会いたかったわ」

「ああ、俺もだ」

ギュッとハグをしてきた。もちろんジュンも彼女をハグする。数秒間して、ハグを解いて少し離れる。

「リーリを怒らないでくれな。あの子には口裏を合わせてもらっただけだから」

「わかったわ。でもそれだと今日リーリが…」

「リーリは今日はみんなでお泊り会をするって言ってたからな。先生たちもいるし、友達もたくさんいる。だから今日は大丈夫だ」

「そう…?それならよかった」

「…あいかわらず仕事の方はうまくいってる感じだな。リーさんから少しだけ話は聞いたぞ」

「えぇ。でもそれもこれもロドスや龍門の皆さんがいてこそ、できたことだからよ」

「オイオイ、そんなに謙遜しなさんなって!あっそうだ。マイヤ、旦那さんには見せたのかい?…腕時計」

「……」

 

ニッコリしながらタウウェンが横やりを入れてくる。しかも、わざわざジュンが知らないことをだ。

コイツ…、内心イラっとするが、マイヤに迷惑をかけるわけにはいけない。ここは我慢我慢。

 

「?いいえ、まだですよ。あとで夫に見せますね」

「いいじゃないか!別に~。今回一番頑張ってくれたので、それの記念品として贈ったんですよね。…とてもお高い奴をね」

「……あとで拝見させてもらいますね」

 

このヤク中野郎めがァ!!ブッ殺してやろうかァ!?

 

……落ち着け、落ち着け…。にっこりにっこり…っと、ジュンは自重して内なる自分を抑える。そうだ、たかが腕時計だ。慌てることはないんだ。

でももうこのヤク中野郎とは一緒の部屋ににいたくないので、ジュンは話題を変える。

 

「アァー汗カイタナー。マイヤ―、ドコカ顔ヲ洗エル場所ナイカナー?」

「?えぇ。リーさん、2つとなりにある部屋を使ってもいいでしょうか?」

「あぁ、もちろん。リカクラーンさんもどうぞごゆっくりお寛ぎください」

「はい、何から何までありがとうございます。では…」

 

案内するためオフィスを後にするマイヤ、彼女の後に続くジュン、リー・チュンイも部屋を出てパーティーに戻る。そして、取り残されたタウウェンは、

 

「…フンッ」

気に食わない様子で鼻を鳴らす。

「あの男がマイヤの夫?あんなブサイクがか?冗談よせよ」

ちょうど今さっき吸ったモノが効いてきたのか、調子がどんどん上がっていく。

「俺の方が顏はイケてるし、金もあるんだ。あんなダサい奴なんかよりもずっとな!俺の方がマイヤを幸せにすることができるのに!」

 

なんであんな奴がっ!!気持ちが高ぶっているタウウェンはとあるモノが目に付く。

 

「なにニヤニヤしてんだよ!えぇ!?」

 

それはマイヤとジュンとリーリヤが映っている家族写真。いくつかある写真立ての中でも一番大きい。

その写真の中に、ジュンがいることがとっても気に食わない。

タウウェンはジュンのことが心底嫌いだ。いくらマイヤを口説こうとしても彼女の口からはいつも彼の名前がでてくる。

彼女の隣にふさわしいのはこの俺様だ!俺様の方が彼女を愛してるんだ!俺様の方が彼女を幸せにできるんだ!俺様の方が―!

 

バンッ!

 

彼は腹いせに家族写真立てを倒したのだった。




おまけ

現時点でのジュンのクセ

・やたら監視カメラと人の配置を確認する。
・悪い噂や小言がやけにはっきりと聞こえてしまう。

どちらも前職で身に付いたクセですね。
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