寝落ちでクロス   作:浅草一丁目

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前話同様、こちらも書き換えるかもしれません。
捏造もりもり、拙い部分も多いと思うのでご注意ください。


鉄血

 アーブラウの防衛軍発足式典を切っ掛けに起きたテロ行為は、局所的な武力衝突を招いたものの、大きな戦火とはならずに鎮圧された。

 その立役者となったのは地球外縁軌道艦隊であり、迅速果断にして毅然としたその振る舞いは、かつての傲慢さに嫌気がさしていた者たちをして、認めざるを得ない程のものだった。

 

 司令、カルタ・イシューによって統率されたモビルスーツ部隊はもとより、目覚しい活躍を見せたのは、ガンダムキマリスと青いグレイズリッターの改修機、グレイズリッター・グレイプニル。

 キマリスを駆るガエリオ・ボードウィンを知らない者はいなかったが、その隣に立つグレイプニルを操縦する仮面の男の正体を知る者は少ない。

 青を基調とする機体色はマクギリス・ファリドが好んで使用していたとされるが、アーブラウでのイズナリオ・ファリドとアンリ・フリュウの癒着が発覚したことで、イズナリオは失脚。マクギリスが当主を継いだものの、隠れて行っていた阿頼耶識の研究に際する搭載型グレイズの暴走等の責任から除名処分、同時に火星支部の不正を暴くなどといった功績をもってこれを相殺し、無期限の謹慎処分が改めて下された。

 故に、仮面の男がマクギリス・ファリドであるはずがない。

 そんな猜疑の目を向けられつつも、ガエリオと共にボードウィンの邸宅に立ち寄った仮面の男は、駆け寄ってくる少女を認めて姿勢を低くした。

 

「マッキー!」

 

 第三者がいたら即バレである。

 

「もう、婚約者の前で仮面なんて外してしまえばいいのにっ」

「……これは、友と誓った戒めだからね」

「お兄様!」

 

 詰るような目を向けられたガエリオも、これには苦笑するしかない。

 無期限の謹慎処分と言っても、セブンスターズの合議ですぐに解除できるもの。

 ガエリオやカルタは、マクギリスに請われてその処分を引き延ばし、ファリド家の当主としてではなくマクギリス個人として、贖罪を続けさせているに過ぎない。

 

「……だ、そうだが?」

「すまない、アルミリア。まだ、俺はなれていないんだ」

「なれて、いない……?」

 

 初めて聞く少女……アルミリアが首を傾げたのに対し、ガエリオはやれやれといった風に肩を竦める。

 

「マクギリスは、ガンダムになりたいんだそうだ」

「がんだむに……?」

 

 意味が分からない。

 そう言って憚らないアルミリアに対しても、マクギリスは怒ることも悲しむこともなく、ただ強く思う。

 

「そう……私はなりたいんだ。あの日、私をガエリオたちと向き合わせてくれた……、力ではなく、心で分かり合わせてくれた、あの青いガンダムのような存在に」

「俺としてもあの機体に感謝する気持ちはあるが……、さすがに自分の機体を似たような色にするのはどうなんだ?」

 

 ガエリオの言葉通り、マクギリスのかつての乗機、シュヴァルベグレイズがほぼ青一色だったのに対し、グレイプニルは青と白、そして僅かに赤い配色が施されていた。

 

「マッキーはガンダムが好きなのね?」

「こういうのはガンダム馬鹿っていうんだ」

 

 ガエリオの明け透けな物言いに、しかしマクギリスは笑った。

 

「最高の誉め言葉だ」

 

 バエルはどうしたバエルは。

 ベルティーナやラスタルがいればそう突っ込んだかもしれないが、彼らはここにはおらず、

 

「お前たち、いつまでもエントランスにいないでこちらに来なさい。カルタ嬢が今にも飛び出しそうで見ておれん」

「ボ、ボードウィン公……!」

 

 ガルス・ボードウィンの言葉にたじろぐカルタが姿を見せ、三人は互いに見合い、奥へと足を進める。

 

 

 そこは今、気の置けない笑顔で満たされていた。

 

 

 

 

「しぶといというか、しつこいというか……よく生きてましたね。イオク様」

「あの悪運の強さは天性の物だろう。それを活かせる機会はないに越したことはないがな」

 

 自分から火中の栗を拾いに行くような性格のままでは、それも難しいか。

 しかし、これからのことを考えるなら、絶対に矯正しなければならない。

 テーブルに置いたままのタブレットを一瞥してそんなことを考えていると、それを目ざとく追ったジュリエッタがタブレットを見遣る。

 

「ラスタル様、それは?」

「……ふむ。お前には教えておいた方がいいかもしれんな」

 

 一度手に取って彼女に渡し、その反応を待つ。

 案の定というべきか、ジュリエッタは目を瞬かせ、

 

「これは……本当ですか?」

 

 と訊ねてきた。

 

「まだ草案程度だがな」

 

 内容は、ギャラルホルンの民主化に向けた計画。

 火星でのMA探索が終わり、月、そして木星での探索が済めば、一つの区切りとなる。

 MAの存在が忘れ去られていた平時に行うことと、厄祭戦以来のMA戦闘を経た今執り行うことでは、意味が大きく変わってくる。

 

 そしてその時こそ、停滞し、腐敗の横行した今のギャラルホルンから脱却する好機だ。

 

 セブンスターズの廃止も含まれているため、エレク・ファルクやネモ・バクラザンからの反発は必至と予想されるが、マクギリス・ファリド及びガエリオ・ボードウィンによれば、多くの青年将校が賛成に回ると予想される。

 合議制という体裁をとっている以上、セブンスターズの過半数が賛同すれば、いくらファルク家やバクラザン家が拒絶しようとも道理はこちらにある。

 抵抗があまりに強いようなら……とまで考えて、ラスタルは自嘲した。

 

 小さい箱庭の……それもほぼ身内での政治闘争など、本当の戦場に比べれば児戯のようなもの。

 立ちふさがる者を、策と武を以って叩き潰す。

 目的を達するためには必要なこと、という考えは変わっていないが、手段を択ばず徒に命を減らすのは怠慢。

 より時間がかかろうと、より良い結果が得られるのであれば、そちらを選択する努力を怠るべきではない。

 

 今ではそう考えている己を自覚して、ラスタルは立ち上がる。

 

「メシだ」

「え?」

 

 これは甘くなったのではない。そうラスタルは断じる。

 言うなれば、これは彼女への義理立て。

 彼女によって生き永らえた多くの命を、徒に減らすのは彼女への恩義に悖る。

 そして、道理から外れれば、彼女が牙を剥くだろう。

 

 だから、これは彼女との駆け引きでもある。

 道義に悖ることなく、命を浪費せず、しかし断固として目的を達成し、次代へと道を繋ぐ。

 容易いようでいて、甘く見られれば足元を掬われるかもしれない……だが、だからこそ臨む価値がある。

 

「肉だ! 肉を食って英気を養うぞ」

「は……はい!」

 

 ラスタルは不敵に笑みを浮かべ、ジュリエッタは御馳走を想像して微笑む。

 イオクもたぶん笑ってるだろう。

 

 ギャラルホルンは、緩やかに変革への道を歩き出していた。

 

 

 

 

 その日、鉄華団の面々は歳星にいた。

 

「なんか静かですねー。中とはえらい違いだ」

「そりゃあ、祝いの席だからな」

 

 ちら、とオルガが目を向けたのは、歳星の式場である。

 式場から一歩外に出ると、先程までの煌びやかさや喧噪が嘘のように薄暗く、辺りは静寂に包まれていた。

 

「フミタンさんとサヴァランさんかぁ。おやっさんとメリビットさんは先月結婚したし、昭弘さんとラフタさんももうすぐって感じでしょ。団長はそーいうのないんですか?」

「あ? 俺はねえよ。鉄華団のことで精いっぱいだ」

 

 これは強がりではなく紛れもない事実で、そんなことにかまけている時間があるなら、一つでも仕事を熟したいと考えている。

 言うなれば、鉄華団の団員すべてが家族であり、兄弟であり、子供のようなもの。

 たとえ血が繋がっていなくても、結婚というものが家族を作り支えるということなら、とうに済ませていると言っても過言ではないだろう。

 

「俺たちもけっこう話すんですけどねー。団長と誰がケッコンするんだろうって。フミタンさん、メリビットさんって声もあったんですけど、違ったし……。あ、俺はベル姉ちゃんがいいじゃないかって思ってます!」

「ベルだぁ? お前な……あんなのと結婚してみろ。何をしようと全部お見通し。力も頭も勝ち目がねえし、尻に敷かれるどころじゃねえだろ」

 

 そんなのはご免だ、とオルガは苦笑を浮かべた。

 だが一向に返事がなく、不思議に思い辺りを見渡すと、ライドの姿がない。

 その代わりに、

 

「そんな風に思ってたんだ」

 

 と薄く笑う、ベルティーナがいた。

 

 ――な、なんてことしやがる、ライドォ……!

 

 平静を装い、しかし内心汗だくなオルガの横に並ぶように歩みを進め、ベルティーナは口を開く。

 

「報告。月と木星の事前調査は無事終了した」

「……そうか」

 

 月はまだしも、木星の調査は一人でできることではないと思うが、それほど驚いていない自分がいる。

 むしろ、オルガが気になったのは別の事。

 

「そっちが大事なのはわかるが、たまにはこっちに顔を出してもバチは当たらねえんじゃねえか?」

「……そうかもね」

 

 今回も、前回も、誰もがベルティーナを呼びたがっていたが、どこにいるかがわからず、連絡をつけることすら儘ならなかった。

 彼女自身もばつが悪いと感じているようで、いつもより言葉の歯切れが悪かった。

 

「今からでも構わねえだろ。お前が顔出せば――」

 

 みんな喜ぶ。

 そう言いきる前に、ベルティーナは首を横に振った。

 

「もう一つ、言っておきたいことがある」

「……なんだ。改まって」

 

 手摺りに寄りかかり、歳星の街並みを見るような格好だったベルティーナはオルガに向き直り、

 

「私は、身を隠そうと思う」

 

 そう彼に告げた。

 その言葉に驚きつつも、どこかでそうなるよう予想していたのかもしれない。

 さほど驚いていないことを自覚しながら、オルガは問う。

 

「……それは、そうしなきゃいけないことなのか?」

「私は、力を見せすぎた」

 

 そこに後悔はないし、また同じ状況になれば同じことをするだろう。

 だからこそ、そうする意味がある。

 

「私が姿をくらますことで、一種の抑止力になる」

 

 OOの世界でソレスタルビーイングがそうしたように、力を持った者が確かに存在する、と人々に意識させることが重要となる。

 だがそれは、一個人の幸福や権利の一切を捨て、死ぬまで世界に奉仕するようなもの。

 

「……お前はそれでいいのか?」

 

 勿論、とベルティーナは首肯した。

 

「最初に言ったけど、私はあなたたちに潰れて欲しくなかった。それが、少し広がっただけ」

 

 その少しの違いが大きく、つきっきりではいられないから、抑止力となることが一番の方法だった。

 

「……そうか」

 

 言いたいことはある。

 彼女を知っている者たちだって、みんな言いたいことがあるだろう。

 だが、ベルティーナの考えも分かってしまうから、オルガは一つ呼吸を置いて、手を差し出した。

 

 別れの握手を交わし、

 

「……?」

 

 放そうとするベルティーナの手を再び握り、オルガは告げた。

 

「お前はもう鉄華団の一員だ」

 

 握る手、見据える表情に拒否の感情はなく、彼は続ける。

 

「血は繋がってなくても、俺たちは家族だ」

 

 ――だから、いつでも帰ってこい。

 

 そう言って、オルガは手を離した。

 その表情に浮かぶのは、自信に溢れたいつもの笑み。

 

「……ありがとう」

 

 ゴーグルを外したベルティーナも緩く……それこそ、歳相応に見える笑顔を浮かべ、手を離した二人は別の方向に歩んでいく。

 

 式場に戻ったオルガは、結婚式というものはこういうものだったか? と首を傾げたくなるどんちゃん騒ぎに驚くも、フッと笑ってサヴァランたちに向かって吶喊。

 飲ませ飲ませて、飲まれて飲ませ、顔真っ赤。

 

「なにやってんだよ団長ぉ!」

「なんだよ……結構飲めんじゃねえか……。ふっ」

 

 酔っぱらったオルガは倒れ、

 

「ぐあっ!」

 

 チャドはそのあおりを受けて右肩を強打した。

 

 

 鉄華団は、笑顔の絶えないアットホームな職場です。

 

 

 

 

 トレミーの艦長席で、ベルティーナは火星の大地を眺めていた。

 鉄血は、他作品に比べテラフォーミングのかなり進んだ世界だ。

 それを可能にするだけの技術が発達しているが、それでも砂嵐によって作物が不作になったりと、完全に御しきれてはいない。

 そして、それは人の欲も同じ。

 誰かがより良い道を選んでも、きっと、また別の誰かが争いを起こすのだろう。

 

 それでも、少しづつ改善していけば、その度に人は前に進んでいける。

 かつて死の星と言われた火星を、もう一つの故郷としたように。

 

「……もう一つの故郷、か」

 

 時間にしてみればわずか数年。

 それでも、この星を、この世界を大事に思っている自分がいる。

 

 最初は、トレミーだけが居場所だった。

 でも今は、自分にも帰る場所がある。

 

 拠り所なく彷徨うのではなく、心の拠り所となる場所がある。

 

「……こんなに嬉しいことはない」

 

 アムロもこんな感じだったのかな。

 そんなことを冗談交じりに考えながら、ベルティーナの意識は微睡みの中に落ちていく。

 

 

 

 

 

 この世界には、ガンダムにまつわるいくつかの伝説があった。

 その中でも多くの人間に知られているのが、非合法組織には死神と呼ばれ、無辜の人々の間では青い天使と呼ばれる『2B』という存在だった。

 

(たすけて……!)

 

 子供たちは、『2B』に祈る。

 木星に向かう商船に乗っていた彼らは、海賊に襲われ、今や売られるのを待つだけの身になっていた。

 大人たちは殺され、自分たちを助けてくれる存在は、もう『2B』しかいない。

 

「あん? 妙に静かだと思ったら……まさかこいつら、誰かが助けに来てくれるとでも思ってんのか?」

「あれだろ。ToBeだか2Bだかってやつ」

「ああ。あのお伽噺か」

 

 お伽噺。

 その言葉に、絶望を浮かべた子供がいたのだろう。

 子供たちを監視している男たちが笑声を上げる。

 

「俺たちゃあもう5年も海賊やってんだ」

「あんな大層なもんがいんなら、とっくにおっちんじまってるよ! ギャハハハハ!」

「お前たちを待ってるのは天使じゃねえ。ただの地獄さ!」

 

 男たちの言葉に希望を失ったのか、あちこちですすり泣く声が聞こえる。

 それに苛立ったのか、男の一人が泣いている子供を蹴り上げようとして、

 

「ぬぁっ!?」

「な、なんだ!?」

 

 艦が大きく揺れたことでバランスを崩し、それは叶わなかった。

 

『モビルスーツだ!』

『数は少ねえ! 全機で囲んじまえ!』

 

 艦内に響く通信に男たちが狼狽えていると、今度は照明が消える。

 非常灯の僅かな光を頼りに、男たちが慌てて子供を監禁している部屋から出ようとして、

 

「……先に乗り込まれてるとは考えないんだな」

 

 それを防ぐように立つ存在に、ようやく気付く。

 

「な、なんだてめえは」

「聞かねえ声だな。一体どこの――」

 

 言いながら銃を向けようとした二人の男は、銀色の光を見たと思った。

 

「あ?」

「あ、あ……」

 

 自分たちの腕がない。

 そのことに気付いた瞬間には、その首が落ちていた。

 

「……やっぱり……さんには敵わないかな」

 

 チン、と鍔を鳴らして納刀し、子供たちの下に向かう。

 

 泣いたままの者、怯える者、ただ茫然と眺める者……。そんな子供たちを見て、闖入者は所在なさげに首を搔き、口を開く。

 

「えっと……助けに来た」

 

 もっと言うことがあるだろう。

 そう突っ込む者もおらず、妙な空気が流れる中、一人の子供が思わず訊ねていた。

 

「2B……?」

「え? ……ああ、違う違う」

 

 丁度その時、復旧したらしい照明が辺りを照らす。

 子供たちの前にいたのは、まだ青年とも言えない年頃の少年。

 明るいクリーム色の髪に青い目をした少年は、どこか感情の読めない表情から一転、人好きのする笑顔を浮かべた。

 

 

 時が経ち、火星が地球の経済圏から独立し、ヒューマンデブリ廃止条約が制定されても尚、宇宙のどこかでは、力ない子供たちが理不尽な暴力に曝されていた。

 

 それでも、希望の華が散ることだけは決してない。

 

 

「俺たちは、鉄華団」

 

 言いながら指示した場所には、赤い華が象られていた。

 その華こそが、力なき子供たちの希望。

 

 その華こそが、鉄と血とが混ざりあい――

 

「俺は、鉄華団の暁・オーガスだ」

 

 

 決して散らない、鉄の華。

 

 

 




出てきていないキャラもいますし、納得いかない点も多々あると思いますが、この話で一旦完結とさせていただきます。

感想で予想されている方もいらっしゃいましたが、この作品は色んな世界を渡る感じにしようと思っていました。
でも書いてみたらもう身体が持たない!ってなったので、これで一旦終わりということにさせてください。

書き続けてる作者様はガンダムフレームと鋼の精神でできてるんでしょうか。本気で尊敬しています。

遅くなりましたが、多くのお気に入り登録、ご感想、ご評価を頂き、恐悦至極に存じます。
もういらねーよと言われるかもしれませんが、なるべくご感想に返信できたらと思います。

読んでいただき、本当にありがとうございました。

ガンダムはいいぞ!


※追記(2021/07/24)
一週間経過し、ここから大きく変わることはないと思うので、アンケートを締め切らせていただきました。
ご投票、ありがとうございました。

自分で書いておきながら、補完と閑話に何を書こうか迷っていますが、オリンピックも始まったし、タカキも頑張ってるし、俺も頑張らないと!の精神で行こうと思います。

時期は未定ですが、続きを書くとして

  • とっとと次の世界に行け
  • 別の世界はいいから鉄血の補完と閑話を
  • 両方書いてもいいのよ?
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