生産職になりたいのでDEXに極振りしたいと思います。 作:紙吹雪
気がつくと、私はとても奇妙な場所に立っていた。
そこはどうやら屋外のようだ。日光が眩しい。それから、地面は砂だった。かと言って周囲は砂漠かと言うと、完全にそうと言うわけでもない。
周りには中世風な建物の残骸が彼方此方に放置されている。なんだか滅んでしまった古代都市の跡地を見ているようだ。実際それがコンセプトなのだろう。
「・・・すごい」
こんな景色、現実じゃ滅多に見られないだろう。この景色だけでもこのゲームを買った甲斐があったと思える。
それで、結局此処はダンジョンなのだろうか?いや、ダンジョンって洞窟とか、塔を登って行く感じのイメージなんだけど・・・
取り敢えず、じっとしていても意味が無いと思い、私は適当な方向に向かって歩き出した。
◆◆◆◆◆◆
どれだけ歩いても景色が変わらない・・・どうしよう、困った。あれから1kmは歩いたと思うけど、全く目に入るものに変化が無い。上を見て太陽を目印にしようと思っても真上にあるし、建物には入り口が見当たらないから入らなさそうだし・・・
「はぁ、どうしよう・・・うん?」
いや、よく見ると変化がある。なんと言えばいいか、金色の糸?みたいなものが建物に巻き付けられている。なんなんだろう、あれ?
その金色の糸みたいなのに巻き付けられた建物はある方向に固まって配置されていた。他に何も指標もないことだしそこに向かって見よう。
あと、一つ気になる事がある。ここが仮にダンジョンだとすると、敵が全く出てこないのはおかしい、はず。
つまり此処はダンジョンではない別の何かである可能性が高いのではないだろうか。その何かが分からないのだが。
「う〜ん、一体何が待ち受けているんだろう?」
考えてもさっぱり分からない。仕方ないのでとっとと例の方向に向かってみよう。
「キシャーーーーーー!」
「わっ!?え!?なになに!?」
地面からなんか出てきた!?見た目は・・・カマキリ?え?カマキリって地面に潜ったりするの?初耳なんですけど!?しかも色が金色じゃん!確か草の色とか木の色に擬態するんだっけ!?だったら砂の色に擬態したのかな?ってそんなことを考えてる暇はない!
大きさは大体私二人分はある。でかい!しかもあの鎌、当たったら絶対死ぬじゃん!ど、どうしよう!?
「キシャーーーーーー!」
・・・いや、待てよ?確かカマキリは複眼だった筈・・・ならば!
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
やっぱり・・・動がなければ認識されない!しかし、これからどう行動すべきか・・・あのカマキリが地面に戻ってくれれば助かるが、そんな気配は全くない。ぬぬぬ・・・
「キシャー?」
辺りを見回しているようだ。これでは動いた瞬間あの鎌の錆になりそうだ。
私が身動き出来ないで困っていると、あることに気付いた。
「むむ?」
よくよく見れば、そのカマキリは脚を怪我していた。というか、千切れていた。あれか?共喰いでもしたのかな?いやでもここはゲームの世界なのに?そんなことある?そこを妙に現実ににせる必要ある?
「キシャーーーーーーー!」
「げっ、二体目!?」
やばい、挟まれた・・・どうやらここまでかもしれない・・・と思ったその時。
「キシャーーーーーーー!」
「キシャーーーーーーー!」
え?え?仲間割れ!?いや、なんだっていい!ここから逃げるチャンスだ!
私はその場を離脱しようとした。振り返ると、意外にも脚が千切れていた方の個体が圧倒していた。というか、瞬殺してる!?
「ひぇ・・・」
「キシャーーーーーーー!」
って、やばいやばい追いつかれる!?急げ急げ!と言うかなんで脚欠けているのにあんなに速いの!?これ絶対あの猪よりも速いよね!?
「はぁ、はぁ・・・!」
「キシャーーーーーーー!」
くそ、このままじゃダメだ・・・こうなったら、ストレージから何か出して投げるしか・・・
私はアイテムストレージから適当な物を出して投げつけようとする・・・が
「キシャーーーーーーー!」
「みゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
捕まった!?やばい、死ぬぅ!?鎌で首を落とされるぅ!!??
「助けてぇぇぇ!?」
「キシャーーーーーーー・・・シャ?」
「・・・・・・え?」
動きが止まった・・・?なんで?
「キシャー」
「えっと・・・もしかして・・・これ?」
「キシャ!」
どうやらストレージから取り出したアイテムの・・・『ミドラシアの花蜜』というアイテムが欲しかった・・・のかな?ちなみにこのアイテムは確か料理に使う奴で、甘い味がする、らしい。説明欄にそう書いてあった。
花蜜を差し出すと、カマキリは喜んで食べ始めた。瓶の中に入っているのだが、両手の鎌で器用に蓋を開けて飲んでいる。
・・・確か、カマキリって主食は他の昆虫だったような・・・って、ちょ!?
「キシャーーーーーーー!」
「ちょ、放し・・・みゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」
避けるまもなく鎌で掴まれて、そのまま捕食される・・・と思ったがそのまま鎌で掴まれただけだった。何故かダメージもない。そのまま、カマキリはその場から動き、何処かに向かっているようだった。
暴れても離してもらえず逃げたくても逃げられないので、私はそのうち考えるのをやめ、借りてきた猫のように大人しくカマキリにドナドナされていった・・・
カマキリってカッコいいよね。
9/2 誤字修正しました。指摘してくれた方ありがとうございます!