パチュアリはいいぞ

百合っぽい物は初めて書いたので内容は非常に拙いです
なお結果主義の方にはお勧めできません

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短編は書きたいと思った時に先の展開を考えず書けるから息抜きに丁度良い

息抜きなのでかなり短いですが


春が来た日

 長く冷たい冬もついに終わりを告げ、幻想郷に春がやってきた。咲夜が話すところによれば、大方の予想通り異変で間違いなかったらしい。

 主人のわがままに付き合わされるなんて、そこの庭師と咲夜なら境遇も似ているし案外仲良くやれるかもしれないわね。

 

 

 今回も異変解決を祝してか、それとも霊夢たちがただ吞みたいだけなのか、神社で宴会が開かれた。

去年の私たちの異変の時も同じことをしたからこうなることは分かっていたが、私としては館から出るのも面倒であるし、しかも酔った奴らは騒がしいしで行く気などさらさらなかった。

 

だがレミィがそれを許してはくれなかった。

 

かのわがまま放題の親友は去年も嫌がる私を無理に連れ出し、遠慮する私に無理矢理酒を呑ませた。本の角で()ってやると、流石の吸血鬼でも痛かったのか、咲夜に泣きついてしまって霊夢たちが半ば呆れていたのも今となっては懐かしい。

レミィだってそのことを忘れたわけではないはずだ。だというのに今回も意見を変えようという気がないというのだから分からない。

 

『嫌がっている私と行くくらいならこあでも連れて行けばいいのに。あの娘なら嬉々として行くと思うわよ?』

 

 紛うことなき正論。これには流石のレミィも悩んでくれるだろうと期待したが、これにもいいえと即答された。

 私と行っても楽しくないだろうに。そう嫌味を言ってもレミィは笑顔を崩さない。まったく、この娘と話していると調子が狂ってしまう。

 

『パチェが楽しくなくても私は面白いもの。普段滅多に出歩かないんだから、少しは幻想郷の春を味わってみるのも良いものよ。それに……』

 

 ニヤリと歪んだ笑みをさらに深めながらレミィは続ける。

 

『もう霊夢たちにも貴方が行くことは伝えてあるから』

 

 語尾に☆がつきそうなほど屈託のないウインクでそう言われると、こちらの戦意も失われてしまう。

戦意を失わせる程度の能力。うん。悪くないのではないだろうか。それに運命を操るなんていう曖昧なものよりもよほどわかりやすい。吸血鬼としてはいかがなものかと思うけれど。

 

 

『外堀から埋めるなんて、レミィの頭も多少は成長した様ね』

『それ、私だから何も言わないけど、他の奴らに言ったら間違いなく喧嘩買われるわよ』

『貴方だから言うんでしょう? 他の奴らになんか言う気はないわ』

『複雑な気分ね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局断り切れずに神社に来てしまった。咲夜が準備を手伝うからと早めに来たせいか、神社にはまだほとんど人が来ていなかった。

 

 咲夜が話しかけに行った白髪の少女。庭師と言うよりは剣士と言った方がしっくりくる。美鈴は彼女を見て目を細めているが、武の心得など無い私にとっては彼女の纏う雰囲気もよくわからない。

 残りはいつもの白黒。紅白はまだ準備に追われているらしい。

 

 

 そしてその白黒と話している金髪の少女。

 

 こちらに気づいたようで目を向けてくる。

 

 瞬間、目を奪われた。

 周りで咲き誇っていた季節外れの桜も、騒がしい白黒も視界に入らない。気づけば私はただ、彼女だけを見ていた。

 

 

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 何もかもが不運だった。

 

 冬が終わらない事に疑問を抱き、調査を始めたまでは良かったが、その少し後に来た三人に会ってしまったのが運の尽き。私の集めていた春度は全て奪われ、挙句の果てに旧友には忘れられていた。

 

 

 だからこそ宴会の誘いを受けた時には驚いたものだった。私を忘れていた二人は結局私の事を思い出したようではなかったが、それでも異変時の皮肉を何も気にせず誘ってくれたのは素直に嬉しいと思った。

 

 人付き合いは上手くないけれど、幻想郷で暮らしていくならば酒の付き合いも大切になるだろう。だから参加を決めた。

 

 

 

 

 

 霊夢からは少し早めに神社に来てくれと頼まれていた。宴会料理ともなれば一人で作るのが大変だからだそうだ。

 私の知らないヒトたちも二人程助っ人に来てくれるらしいが二人とも主人の世話があるから少し遅いだろうということだった。

 

 はじめに来たのは冥界の庭師だ。これにてお役御免となった私は霊夢に労いの茶を出され、縁側で休憩することにする。

 ほどなくして魔理沙が来た。片手には酒。もう片手には箒といった何ともおかしな恰好だったが何故か違和感も無く溶け込んでいる。不思議なものだ。

 

 

 しばらく魔理沙と話していると、紅魔館一行がやって来た。確か去年の夏に迷惑な紅い霧をばらまいた連中だ。

 着いて早々、メイドは台所の方へ消えていった。あの時もそうだったが、どうにもメイドを見ると無意識的に身体を震わせてしまう。

 

 何とか震えを止めて、彼女が去った後の一行へ再び目を向ける。

 

 

 紫色の瞳が私を鋭く射抜いていた。

 

 

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 深い蒼が私を見つめる。だがそれも束の間の出来事で、すぐに目を逸らされた。

 

 分かってはいる。現実なんてどうやっても上手くいかないことなんて。

 だがこのおかげで頭が冷えた。冷静になれば周りも見えるようになる。どうやら相手の方からこちらに挨拶に来ているようだ。

 レミィが、常に相手の方から挨拶に来させるべきだと考えている偉そうなお子様であることを魔理沙が教えたのだろう。応じなければ後が面倒であることも。

 

「こんばんは。私はアリス・マーガトロイド。魔法の森の人形遣いよ。よろしく」

 

 アリス、か。心地よい響きだ。しかも感じる力は魔法使いのそれ。同業者ね。話題を上手く作れればあるいは……。

 

「私は紅魔館当主の吸血鬼、レミリア・スカーレット。こっちは門番兼庭師の紅美鈴、そしてこっちは紅魔館が誇る智の泉、パチュリー・ノーレッジよ。魔法使い同士仲良くしてあげてね」

「え、ええ。こちらこそよろしく……お願いしますね」

 

 そう言って挨拶は済んだとばかりに退散していく彼女。やはり初対面でいきなり見つめてしまったのは失敗だっただろうか。そのあたりの機微に疎いせいで、何が良くて何が悪いのかが理解できない。知識だけをただ只管求めてきた代償だろうか。

 

 

 神社の縁側、魔理沙のところへ戻った彼女は再び何か話をしているようだ。聞こえてくる魔理沙の声から判断するに母親の事だろうか。

 

 私には親もよくわからない。物心ついたときには既に自分の周りに人などいなかった。転がり込んだ紅魔館でも、レミィはもう随分昔に親を亡くしたと言っていた。美鈴にも、咲夜にも親はいない。紅魔館とはもはや孤児院と言っても差し支えない。

 だがそんな私たちとは対照的に、霊夢には先代巫女という親(代わりであっても親は親だ)がいるし、魔理沙の親に至っては人里に店を構えているという。

 

 アリスもまだ魔法使いとしてはかなり若い。おそらく人間から魔法使いになったタイプだろうから、幻想郷のどこかに親がいても不思議ではない。

 

 

 私は人間を理解できない。彼女の事を何一つ理解できない。

 今まではそれでよかったのに、今は少しだけ悔しい。

 

 でも私を恐れている彼女に、これ以上の精神的負担をかけるのは可哀そうだ。人間は理解できなくてもそれくらいの気遣いなら私でもできるから。

 

 

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 思わず逃げるように魔理沙のところへ帰ってしまった。私なんかとは格の違う、本物の魔法使いと言うべき少女パチュリー。

 

 先ほどの鋭さを消していたというのに、どこを見ても隙など見つけられなかった。妖怪としての力は絶大であるレミリアが絶賛するのも納得だと思った。

 

 敵わない。そう直感した。

 魔法使いとして目指すべき場所。頂点にほど近い場所。そんな彼女の前にずっといるのは、魔界神、母の前にいるときよりも緊張した。

 

 

 だが一番は、あれ以上あの場にいると少なからずボロが出そうな気がしたからだ。

 

 初めのアメジストのような鋭い瞳も、先ほどのアヤメのような柔らかな瞳も。藤のような髪も。それと対になるような青白い肌も。全てに吸い込まれたようにさえ錯覚した。

 

 

 もしあの時の緊張が別の意味だったとするならば……。

 

 私は神によって作られた人形(オートマタ)。心の事はよくわからない。

 それでもそう、何かあった時に心が揺り動かされるように作られたのだとするならば……

「母さんは凄いわね」

 

 

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 盛大に始まった宴会で、私は美鈴や咲夜が驚いているのも無視して普段よりも呑んだ。酒に強くない我が身に感謝しながら呑んだ。

 

 全て忘れてしまうために。そうしないと、今後彼女が図書館に来ることがあった時にも迷惑をかけてしまうかもしれないから。

 レミィはこんな私を見ても眉一つ動かさずに無視してくれた。それが今の私には一番ありがたいものだと分かっているからか。

 

 親友に感謝しながら酒を流し込む。

 初めて知ったこの感情も全て押し流して、願わくば今日の記憶も消してくれと考えながら。

 

 

 私はただ紅魔館の図書館に一人でいる日陰の魔法使いでいい。魔法使いとは元来孤独に知識をつけ続けるものだから。

 諦める事、逃げる事は決して悪い事じゃないはずだから。

 

 

 

  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 今まで見たことも無いような規模の宴会が始まったが、どうしても酒を口に入れる気が起きない。

 ちら、と紅魔館組の方を見てみても、ただ優雅に赤ワインを嗜む吸血鬼と、日本酒を呷るように呑んでいる魔女がいるだけだ。彼女がこちらを見る気配もない。

 

 あんなに静かそうだったのに、酒になるとあんなにワイルドになるというのもギャップというやつなのだろうか。

 私ならあれだけ勢いよく呑めば記憶が飛んでしまいかねない。

 

 

 だから呑まない。新しく知った感情。人形遣いとして、完全自律人形の制作を追い求めている魔法使いとして、決してそれを忘れてはならないから。

 たとえそれがどんなに私を苦しめることになろうとも、きっと後悔はないから。




レミリアもただのわがまま娘として書くにはもったいないので、彼女の無能そうな行動にも意味づけしてあげてください

この後どうなるかについては自由に解釈して頂ければと思います

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