四番隊は今日もゆく   作:yuzuna*

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今回はあまり進まない。


副長の執務室

 あの施設の発見から二日が経った。燈は道場を模した訓練場にて日課の早朝訓練を行っていた。

 

 

 4年前から持ち始めた刀の鍛錬である。

 

木刀を振りながら、ふと二日前に見つけたもの、或いは人のことを考える。

 

 

 あの場で待機し、ユエリナ様と今回の作戦で本隊を務める二番隊と合流した俺たちは、あの施設から腐っていなかった二人の人間と思わしき生物と、その付近で動いていた一台の機械を回収した。

 

 カプセルの回収はカプセル自体がその空間と完全に組み合わさっており、回収は不可能と判断された。

 

 カプセルの中の生き物はカプセルの端にあったボタンを綵が押してしまった(この場合むしろ好奇心により押したと思われるが…)所、カプセルが開き、幸いにして生きている状態が確認された。

 

 しかし、衰弱こそ見えないものの、筋力の低下が予測され、起きたところで歩くことすらままならないし、声を出すことも難しいだろうというのが現状であった。

 

 それらはリハビリとサポーター、薬の服用でどうにでもなるが、まだ目を覚ましていないので薬の服用のみに留まっている。

 

 また、回収した一台の機械は回収した後から動かなくなってしまった。電気を流してみると一応反応するのだが、動きはしない。

 

 そのため、その機械は南大陸進行軍の総司令本部へと戻り解析されるまでは、このユエリナ軍本部飛行艇の倉庫にて眠ることとなった。

 

 

 「燈、ユエリナ様が呼んでるってよ。」

 

そんなことを考えていたら燎が後ろから燎の声が聞こえた。

 

 「二日前のことについてかな。総長へは連絡したんでしょ?」

 

 燈は上に振り上げていた木刀を下へと下ろし、振り返って問う。自分が今、司令官に、もといユエリナに呼ばれるとしたら二日前のことについてが最も確率として高いだろう。

 

 総長というのは、ユエリナ率いるユエリナ軍が所属している南大陸進行軍という軍全体の司令官である。南大陸進行軍ではユエリナは副長というポジションである。

 

 二日前、回収を終えた後に、ユエリナは口外禁止をユエリナ軍全体に命じ、総長へと連絡をとったらしい。

 

 「あぁ、なんでもそれは支部に帰った時にカランさんも含めて会議を開くってよ。今のところはやっぱりまだ内密な話だな。」

 

 そう言うと燎は、とりあえず来い、と燈を連れてユエリナの元へ行った。

 

 

 

***

 

 

 

 「四番隊 燎、同じく燈、入室します。」

 

 ドアの前に立ち、燎が隊長として入室の許可を待つ…。

 

はずだったが、燎は一方的に言った後、返事を待たずにドアを開けた。

 

 

 「返事…は…いらないっか…笑」

 

 ユエリナは入ってきた燎をみて、ふふっと笑みをこぼしてそう言った。

 

 ユエリナは外見や顔立ちが相まってまだ十代に見える司令官である。

 

 実際、彼女は20代前半であり、それは編成されたばかりで10代から30代の軍人が集うこのユエリナ軍の中でもなかなかに若い部類である。

 

 ではなぜ、彼女がこのユエリナ軍のトップであるのか。それは彼女もまた天才であるからということであろうか。

 

 司令官レベルでは最年少という若さでありながらも南の最前線を突き進む南大陸進行軍という軍の副長にして一つの軍をまとめる地位に立った彼女。その過去については追々触れられていくことだろう。

 

 ユエリナがいる執務室に入るとソファの上にいた綵があくびをしながら手を振ってきた。その頭には寝癖をつけている。

 

 そしてその隣には燈と同じく朝から鍛錬をしていたのであろう少し疲れてそうな鳳がソファに腰を掛けている。

 

どちらもだらけた体勢でソファに座っていたため

 

 「お前らなにそんなにくつろいでんだよ…。」

 

 つい燈は言葉を漏らした。

 

 「ユエリナ様これで四番隊揃いました。」

 

燎が綵たちの向かいに座っているユエリナへと声をかける。

 

 

 「はい、燎了解。…燈はそう怒らないでよ。この部屋には私たちしかいないし、砕けててもいいじゃない」

 

 ね?とばかりにその紫の髪を揺らすユエリナに燈は、はい、と答えるしかなくなった。ソファの上では綵がいぇーいとか怠けた声を出しているが、

 

 「まぁ、それでも今からちょっと真面目な話をするんだけどね」

 

 少し茶目っ気をいれてユエリナは話を始めるべくソファに座り直した。

 

 「今回の件、彼らは人間なのか。そして、どこから来たのかとか、なにがあったのかとか…彼らの存在は考えれば考えるほど不思議なの。

 

 私たちの国にはカプセル内で人を育てる実験をするような技術力があるとは思わないし、そもそも、南大陸の北端にある私たちの総支部から500㎞も離れた場所へとあの人数をこの飛行船もなしに運ぶのは無理難題よ。」

 

 話の前半については当たり前だ。あの施設自体、未だに何かがわかっていないのだ。検討すらつけられない。

 

 そして後半部分、燈たちの国というのは一つの大陸であるが、この南大陸の北端に位置する総支部から、海峡を挟んで対岸である。まず、巨大生物や肉食獣など危険が潜む海の上を移動するには空を行くしか手段はなく、飛行船を使う、もしくは風の力を持つ者が運ぶなどの方法しかない。飛行艇もなしに風の力で大人数を運ぶのは時間もかかるし、体力がいるので非現実的だ。さらに海を渡った場所から陸を500㎞も移動するなんて無茶である。さすがに力のある軍を一つ投入しても道中に死人が出ることは避けられないだろう。

 

 「と、なると考えられるのはもう一つのみ…。南には他の人類が生きているということ…。そしてその人類はすさまじい技術を持っている。これはさ…なんか、やばくない?情報を掴んで、他の人類と出会ったりなんかしちゃったら新発見というかもはや革命…だよね…」

 

 ユエリナが体を少し前に乗り出して最後の方を謎にじっくりと言う。

 

 多少の語彙の足りなさはあったが、ユエリナが言いたいことはわかる。そして乗り出したことからもわかるように少し興奮?しているようにも思える。

 

 この説通りであればかなり新発見、いやそれ以上に何か大きな影響を国や人々にもたらす事案であることは、直感的に誰もが予測できたため、仕方がないなかもしれない。

 

 「問題は今回見つけた人たちがその技術を知っているのかもしれないってことね~…」

 綵がさらっと言う。

 

 「そう、かなり重要で重大、その上危険な拾いものよ。」

 

 ユエリナは少し乗り出していた体をソファへと戻し、綵の方は指を向け、神妙な顔をして言った。

 

「知っているだろうけど、このことはユエリナ軍の全員と南大陸進行軍の総長副長レベルにしか伝えてないわ。それに絶対的な口外禁止も言いつけた。けど、この先彼らが目を覚まして私たちの国で生きていくのであれば、彼らの情報を得た誰かしらに追われるのは必然でしょうね。」

 

 新技術を欲しがるのは人間の性だろうか。

 

それに違う土地に生まれしもの、しかも南大陸での人間となれば興味は尽きないだろう。

 

 燈は少し、見つけてしまった自分たちが彼らを守らなくてはならないなという気持ちを感じた。

 

 いずれにせよ、ユエリナは新発見になりうる存在を手放す気はなさそうだが、

 

 「さて、そんなこんなでさ。彼らを守れる都合のいいところはどこだとおもう??」

 

 なぜ、ここを質問形式にしたのだろう。先ほどからところどころ茶目っ気を入れたりしてきている気もしなくもないが…

 

 「もうすでに全員が知っているユエリナ軍ってところなのか」

 

 燎が答えた。ユエリナもご名答、それに一番信用できるしねと次は燎を指差して答えた。

 

 この流れでこの会話が進んでいると言うことは、ほぼ確定でユエリナは彼らをこのユエリナ軍で引き受けようとしているのであろう。

 

 「それで俺たちを呼んだってことはもうなにか動こうっていうのか?」

 燎が続けて問う。

 

 彼らの身柄を引き受ける件については、おそらくユエリナがどうにかしてくるのであろう。

 

 彼女のことだ、引き受けることを見越して早速何か動き出そうとしているのだと燎は考えた。

 

 「まぁね。四番隊にはもう一度研究所に行ってもらおうと思っててさ。一応一旦このまま北上して総長たちと直接話し合いをしたり、機械を見てもらったりしてからだけどね。これからこの二人の護衛を四番隊に任せようと思って。一番隊を当てるわけにもいかないし、半端ない攻撃力があって、防御もこなせて、遠距離もお手の物で、高速で動ける部隊なんてなかなか見ないし~」

 

 ユエリナがあからさまに媚びた声でこちらへ言う

 

四番隊の面々は思った。こいつは今回の件が面倒ごとになる予感がしていて、それで尚その自身の興味のために、2人の人間のことを一任してもらおうとしているのではないかと、

 

そして、

 

そのための茶目っ気か…!!と

 

 

 ただ一人、

 

 「任せろ。うちは精鋭だからな!」

 

と快諾する燎を除いては。

 

 

 「じゃあ、そんな感じで固めていこうかな。あなたたちに護衛を任せて、起きてからしばらくの補助は11番隊に任せているから。よろしくね!」

 

 隊長が言うなら引き受けるしかないし、まぁ、もともとユエリナの頼みであれば、命令であれば、引き受けないことなんて絶対にないが。

 

 

 うんうんと頷くユエリナを横目に

 

 「はい(よ)」

 

 と四番隊の面々は各々了解の言葉を言い、ユエリナの部屋を出るためドアノブへと手をかけた。

 

 

 

 

 

 「頼りにしてる。

 

 先代のようにあなたたちと戦えなくても、私は私のやり方で進むから」

 

 決意に満ちた。それでいて凛とした声が背後から聞こえた。

 

 振り返ったその場には、窓から外に見える大きな空を見つめるユエリナの姿があった。カリスマというものなのか、どこかその後ろ姿は勇ましく見えた。

 

顔に笑みを浮かべる四番隊。

 

相対する彼女は立派な司令官である。

 

 

 

 

 

 

 

小さいけど…

 

 

 

 

 

 

 

 

新発見になりそうって興奮してたけど…

 

 

 

 




ありがとうございました。
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