少し前の話をしよう。人類が再び南大陸へと帰るまでの話だ。
ーーー 人類は新人類へと至る中で新たな力を手に入れた。
この言葉は常に親から子へと受け継がれてきた名文句だ
その力を持っていないとされる者もいるが、その力があったからこそ、今のクニエダ王国とその国民は混沌と化した長い年月を生き永らえてきたといえる。
その力とは、11個に分かれている。
「水」、「炎」、「草」、「風」、「土」、「雷」、「竜」、「星」、「花」、「氷」、「血」。
その能力を有する人口は「水」、「炎」、「草」、「風」、「土」、「雷」がほとんどで、「竜」、「星」、「花」、「氷」は大変少ない。
特に「星」や「氷」の力を持つ人材は本当に貴重である。最後に王のみが持つ能力が「血」である。
各種別に能力を少し詳しく説明しよう。
「水」、「炎」、「草」、「風」、「土」、「雷」、「氷」はその力や物質を創造し操ることができる能力ですぐに想像がつくだろう。
他の三種の「竜」、「星」、「花」については、
「竜」はこれは外見から変わっているのだが、竜のような角、尻尾、翼を持ち、力が強く、空も飛ぶことができる能力である。体内で作られているエネルギーはほかに比べてすさまじく、その膨大なエネルギーを蓄積し、体から放出することができる。(口から出す者もいる)
「星」はものすごい爆発力を持った力であり、その力に耐えれるように体も大変丈夫である。この国の貯水池は「星」の力を持つ者が手を振り落として一瞬で大きな穴を作ったという。
「花」は手から防御壁を張ることができる能力である。その防御壁は能力者の鍛錬にもよるが自在に操ることができる。その防御壁が手から花のように広がることや、能力を発揮する際、体の周囲を花びらのようなエネルギーの欠片を放出することから「花」と名付けられた。
最後に、「血」は王家の血に代々流れている特殊な力である。その力は奇跡の力と呼ばれ、あまりよくわかっていないことも多いが、その時の王たった一人しか使用することはできない。それは新王の戴冠式の際に次代の王へと先代の王から力が渡されているからであって、ただ一人の王のみが持つ力である。
なぜ、これらの力が人類に備わったのかはわかっていない。
しかし、人が世界を牛耳ることができていた時代が2030年代周辺に突如として終わり、直後の新種族の誕生や自然の猛威にさらされた人類が生き残るために進化したと考える者が多い。
この王国の王は力を最初に発言させ、人類を守りながら北の大陸にたどりついた人物の末裔である。現在の北の大陸全域を領土とするクニエダ国を建設したのは現在の王から3代前の3654年6月4日のことである。
とはいえ、その領土から完全に危険な存在が排除されたのはつい最近のことだ。
現在の王であるシュナヴ・クニエダは4年前の建国記念日に大陸の制覇と人類文明の復活を宣言した。
なぜ4年前であったのか。それは今が3760年であるから3756年のことである。国の建国から人類は大陸の東西南北へと国の支配を広げ、3755年には人類に対して危険を及ぼす生物を大陸の南西部に追い込むことに成功していた。
そしてきたる3756年4月7日、人類は南西部の巨大生物掃討作戦に乗り出した。
その戦闘は思いもよらない超常的な生物の登場によって、地獄のような状況に陥り、戦闘が全体で約1か月の間も続いた。
当時までは18歳以上とされてきた国の軍隊に、まだ軍隊学校に通っていた16、17の少年少女が徴収されたほどに多くの戦死者を出した。
結論から言うと、その戦闘は王の奇跡の力によって終結した。王が戦乱の中に飛び込み、大きな光とともに、彼らを消滅させたのだそうだ。
その光を見たものの多くは激しい攻防が行われた最前線であったために、重度のけがを負っており、その後の治療が間に合わず死んでしまった。しかし、息も絶え絶えに伝えた者や、遠くからその光を見たものが大勢いたため、王の力であることの確証を得たとしている。
そうして、大陸全土の人類による完全支配を成し遂げたのであるが、その掃討作戦後に南の海を見た者が新大陸、私たちが言う南大陸を発見したのである。
その後、多数の負傷者や死傷者を出した軍は16歳以下へと軍への志願年齢を下げ、軍の立て直しへと入った。北大陸の防衛を行う防衛府。国内の治安を守る中枢府。そして、南大陸の調査、進行を行う専攻府である。その専攻府の軍、南大陸進行軍の中の一軍隊がユエリナ軍であり、非戦闘員の隊を除くと12の隊によって編成されている。
さて、長々と人類が北大陸へと逃げた後、力を手に入れ再び南大陸を発見するという歴史の流れを説明してきたが、最後になぜユエリナが南大陸進行軍の副長となり、ユエリナ軍の隊長となっているのか軍のちょっとした歴史とともに説明しよう。
まず、理由としてはユエリナの父親が軍再編成前の王国軍総隊長をしていたというのもあるが、それだけでは最年少にして軍をまとめる立場にはなれない。あの掃討作戦の地獄と言われた戦況の中で、その手腕を発揮し、大きな功績をあげたことによる特別昇進が表向きの理由であるが、南大陸という危険な所にユエリナを左遷したというのが本命であろう。
あの地獄の状況を見てしまったのであれば、大体の王国軍のお偉いさんは中枢府へと安寧を求めて異動したのも頷ける。
先ほど、ユエリナ軍が12の隊といったが、専攻府はなかなかに人数が少ないのも事実である。防衛府、中枢府、専攻府のすべてが新興であり、またもともと多くはないクニエダ国の多くの兵や民を掃討作戦にて失ったために全体的に軍へと入れる人口が少ないのはあるが専攻府の南大陸進行軍はユエリナ軍も合わせて3軍しかない。新たな南大陸の占領地は中枢府、防衛府にも軍の派遣や負担を負わせてはいるものの最前線で戦うのはたったの三軍のみである。
ではなぜ、そのような状況下で南大陸への進行と占領を行うのか。その大きな理由は、資源の確保のためである。小さな理由としてはほかの人類との交流などもあるが、なにせ北大陸にある資源は有限なのである。その資源の枯渇が危惧されていたことに加え、北大陸制覇の立役者である王が南大陸へ興味を示したことでこの少人数の精鋭による南大陸進行軍が編成された。その際、国に安寧をもたらした偉大なる王の命令であればと、その南大陸進行軍の維持のためにお金や食料を払う国民も快く受け入れたほどに王の威光はすさまじかった。
ユエリナは4番隊が出ていった扉に背を向け、窓の外を見ながら一人、言葉を漏らす。
「ここから面倒なことが起きるかもというのは勘。これが外れてくれればいいけど…。だけど…面倒ごとであっても…、この2人はきっとそれ以上の何かを持っているはず。ここから先は慎重に、確実な一手が必要。私には武力はない。あるものを大事に使う。それで、勝つ。」
間違ってでも誰も失うことがないように。
伝わったかな…