四番隊は今日もゆく   作:yuzuna*

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神の落とし子(1)

 

 

 ユエリナの執務室を出た後、四番隊は予定通り、食堂へと来ていた。

 

 食堂は軍の非戦闘員である補給隊の働き場でもある。彼らはいつも五種類の献立を用意し、飛行艇内の食を賑わせてくれる。

 

 本日のメニューは、

 とんかつ定食、味噌カツ定食、かつ丼、カツカレー、チーズカツカレーの五つである。

 

 

 「お、あんたら今日はみんなで朝食かい?」

 

 カウンターの前に並び、どれを食べようかと四番隊が悩んでいると、奥の調理場からおばちゃんが出てきて、声をかけてきた。

 

 「そうだぜ! あ、おばちゃん!今日俺味噌カツね!」

燎が答え、朝食の注文をする。

 

 

 割とそれぞれが個人的な訓練を朝は行っており、四人でまとまって朝食をとる機会は少ない。

 

 まぁ、綵とかいう男は朝遅くまで寝てるだけなのだが…。

 

 「なかなかに久しぶりだねぇ、それで燈あんたは何食べるんだい?」

 

 おばちゃんは嬉しそうに頷きながら、燈にも注文を聞いてきた。

 

 このおばちゃんはこの飛行船にユエリナ軍が乗り、活動し始めた時から食堂にて注文を受けてくれている。

 

 今ではユエリナ軍にとって母親のような存在だ。

 

 「じゃあ、カツカレーかな。今日はカツの日なの?」

 

注文のメニュー欄にカツを用いる料理が多いことに燈も気が付いたため、おばちゃんに質問を投げる。

 

 

 「そうさ。大量にカツを揚げてるからさ。おかわりもして、たんと食べてくれよ」

 

 おばちゃんはニカッと歯を見せて笑うと綵と鳳の注文を聞いた。

 

 「ふ~ん。」

 

 燈がちらっとみた厨房の奥では大きな炎が上がっていた。

 

 

 

 

***

 

 

 

 「今日はここら辺に座るとするか~」

 

 燎が決めた席を中心に四番隊は次々と席についた。

 

 食堂はとても広く、壁が一面窓となっている部分がある。

 

 ここは空を飛ぶ飛行船であるから、窓からは広大な空と自然が見える。

 

 朝の陽ざしを浴びながら食べたいということで、燎は窓際に席を決めたのだ。

 

 席関係は燈が燎の右横に、鳳は燎の前、その横にして燈の前に綵である。

 

 

 燎は味噌カツ定食、燈はカツカレー、綵は「朝はそんなに入らな~い」だそうで、カツカレー少なめ、鳳はチーズカツカレーを頼んだ。

 

 「いただきます」

 

 と、燈がいい、カツカレーを食べ始めた。一口でわかる。これは大変美味なやつだと…。

 

 

 他の面々もそれぞれいただきますと言い、ご飯を頬張り始めた。…はずであった。

 

 「ごちそうさまでした。」

 「は?」

 

 食べ始めたばかりだというのに前方からごちそうさまでしたという言葉が聞こえ、燈は言葉を漏らしながら前方に向きなおした。

 

 

 見てみるとどうだろう。少なめであったとはいえ、一口では食べ終わらない、なんなら子どもが食べるなら十分な量であろうカツカレーが綺麗になくなっていた。

 

 「か、カレーも飲むんだね…」

 綵の横から鳳が声を絞り出した。

 

 「飲む!?」

 燈が声を荒げた。綵は、かなり食べるのが早いし、実はかなりの大食いである。

 

 しかしだ。それを知っていてもなお、今回のことは驚きが隠せない。

 

 「え、イモは?ニンジンとか、え?固形だよね?」

 

 そう、プリンであれば、まぁ飲むというのは想像ができるが、固形の入ったものを飲む…。

 

 「固形もあったけど?」

 それがどうしたの?と言わんばかりの返答に

 

おそらく綵が死んだとしたら、その死因は窒息だろうな。と燈は考えるだけでそれ以降思考するのをやめた。

 

 

 

***

 

 

 

 綵が優雅に紅茶をすするのを横目に、少しずつカツカレーを減らしていく。(さっきまでカレー飲んでたのに紅茶)

 

 

 すると突然、

 「わたし、、、、こっ、こ、ここに失礼してもいいですかっ!!!!!!」

 

オレンジ色のボブ娘が後ろから声がかけてきた。日和である。

 

 口は堅く結ばれており、頬が少し紅潮している、緊張…と言ってもいいのだろうか。多分そんな気がする。大体はわかる。燈と燎がいるために例のオタク状態になっているのだ。

 

 

 

 「日和~!プレート持って先に行かないでよ~」

 

 その後ろから声が聞こえた。

 

 千景が日和の後ろを追うように駆けてくる。その手に持つプレートの上にはかつ丼があった。

 

 「げっ」

 

 千景が俺たちを見つけ、しまった、と声を漏らした。

 

げっ、はないだろ。げは…

 

 「ご迷惑、おかけしてませんかこの子」

 

心配そうに確認を取ってくる。すいませんと何度も勢いよく頭を下げるため、プレートの上にあるかつ丼はカツが宙に浮いたりしている。

 

 「いや、別に困るものでもないし、日和ちゃんもそこ座っていいからね」

 

 少し苦笑いで返す。迷惑ではないのだ。視線は痛いが、、、

 

 日和が声をかけてきて、座りたそうにしていたのは燈と燎の後ろの二つの席であった。

 

 

 「はぅ、、、お二人を背に纏い、、、食事、、、あぁ、あぁ、あぁ!!!」

 

と、言いながら席に座りご飯を食べようとする日和、

 

 千景ちゃんはかつ丼かぁ…と燈はふと日和のプレートの上を見た。

 

 

 

 「多っ!!!!!?」

 

 そのプレートにはカツカレーと味噌カツ定食が置いてあった。

 

 「ぴっ!?」

 

 後ろからの燈火の声にすこしびっくりしながらも日和が振り向いた。

 

 「日和ちゃん…ちょっと…なんで二食分…?」

 

 この際だ。聞いてみようと思い、燈は疑問を投げかける。

 

 「え!!!!それはですね!それはですね!! よくぞ聞いてくれました!!それは!!!お二人が食べているものだからです!!」

 

 なぜこの子は恍惚とした表情をしているのだろうか。

 

 燈は少し顔が引きつった。

 

 「日和!!いいから食べて!!!」

 

 千景が「すいません!」と日和へ食事に専念するよう促していた。

 

 

 その後、案の定日和はご飯を食べるのが苦しくなり、綵が「あらあら」と助けにいくことになった。

 

 食べ物たちは綵に飲み込まれていった。

 

 ってか綵お前、朝はそんなに入んないんじゃなかったのかよ。

 

 

 

 

***

 

 

 

 「四番隊の皆さんおはようございます。」

 

 

 食事を進み、四番隊の残り三人が食べ終わり始めたころ、肩まで伸びる水色のパステルカラーの髪をふわりと揺らしながら、プレートを持った女の子が燈の隣の席へと座った。

 

 「おはよう。ラノ」

 

 隣に座ったのは、いまだ目を覚まさない二人の人間の補助を任されている十一番隊の隊員、ラノであった。

 

 「皆さんお揃いでなんて、珍しいですね。」

 

 「最近は忙しかったからね」

 

 おばちゃんとも交わした会話が始まった。

 

 ラノは「そうでしたね…」と相槌を打つと、おばちゃんからもらってきたカツカレーを食べ始める。

 

 ラノはかなり物腰が柔らかい人物で、十一番隊の中でも姉のような存在である。

 

髪同様にふわりとした雰囲気を持つが、一応、ユエリナ軍十一番隊所属の戦闘員であるため、戦闘力は中々のものだ。

 

 「ラノは今休憩中?」

 

 熱いのかはふはふと食べるラノに会話を投げかける。

 

見た目も性格もか弱い女の子のようだ。

 

 会話の内容は現在の任務であるあの二人の人間のことであるが、この場で直接的に聞くのはご法度かと燈は考え、遠回しに質問を投げかけた。

 

 ラノは喉からごくんという音を鳴らした後、

 

 「そうですね。先ほどまで待機していたのですが、なにもなくて、ラメちゃんと交代して朝食をいただきに来ました。」

 

 と言った。

 

 ラメというのはラノと同じく十一番隊に所属する快活な女の子である。十一番隊は4人で構成されており、ラナ、ラノ、ラテ、ラメの順で姉妹関係のような部隊である。

 

 さて、あの2人については、ラノの話から察するに、未だに目覚めておらず、何も変わったこともないということであろう。

 

 「そっか。」

 

 答えを聞いた燈は最後の一口を口に運んだ。

 

 

***

 

 

 

 

 「さて、食べ終わったし…このあとお前らなにすんの?」

 

 燎は食器を片付けに行くためにプレートの上を整理しながら、質問を投げかけた。

 

 「朝シャンでもしようかしら」

 

 日和の方から戻ってきた綵が、口元をナプキンでゴシゴシしながら答えた。そういやお前寝ぐせついたままだったな。

 

 「うーん。俺はまた訓練場かなぁ…」

 

燈も答える。今朝の訓練の続きでもしようかな…?

 

 「あ、燈、それ俺もついてっていい?一緒にやらない?」

 

 どんな訓練をしようかと考えていると、鳳が俺と訓練をしたいと言った。

 

 鳳も今朝訓練をしていたようだし、なにか新たな技を試したいのだろうか。

 

ならば…

 

 「いいよ模擬戦でもしちゃう?」

 

 鳳へちょっとニヤッとしながら返事を返す。

 

模擬戦というなの対人戦であれば剣術の練習として効果的であろう。願ったり叶ったりである。

 

 

すると、立ち上がっていた燎が

 

 「お、それなら俺も行きてぇな…体を少しでも鈍らねぇようにしておかねーと」

 

と、燈と鳳の訓練に参加したい事を伝えた。

 

燎が入るとは…かなり白熱した訓練…という名の戦になりそうだと燈は思い、少し顔が引き攣った。

 

 

 「じゃ!この後、四番隊は即移動! 綵も朝シャン終わったら来いよ」

 

 燎が移動を促した。四番隊で唯一参加するという答えを出していない綵を誘う。

 

 「なぜ、体を洗った後に汗をかかねばならないのかしら?」

 

 綵は呆れた顔と口調で返した。

 

 「ま、いくんだけどね?」

 

 綵は顔に笑みを浮かべた。

 

対称的に燈はますます顔をしかめた。

 

その理由は後々わかることだろう。

 

 

 

よし、四番隊全員で訓練だ!!!

 

と燎が一足先に席をたった。

 

 「じゃあ、ラノまた後で」

 

 燈は、まだカツカレーが半分近く残っているラノへと別れを告げ、席を立つ。

 

 「はい。頑張ってくださいね」

 

頬に米粒をつけたラノが少し微笑んで送り出してくれる。

 

 

 

その時、唐突に食堂に館内放送が流れた。

 

 

 『…四番隊、十一番隊は至急執務室まで、繰り返す、四番隊、十一番隊は総員、至急執務室まで』

 

 

 

彼らとの生活がもう始まるのかなと燈は直感した。

 

急な呼び出しに残りのカツカレーを慌てて口に放り込むラノを横目に、燈と考えていることが一致したのであろう四番隊は少し硬くなった表情で、これから始まるであろう生活に決意を固めた。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 食堂を大慌てで出た後、執務室にて待っていた十一番隊の一人、茶色の髪をツインテールにしたラテという女の子から執務室から少し離れた部屋へと案内された。

 

 

 

 「入って」

 

 ドアをラテが二度たたくと中からユエリナの入室を促す声が聞こえた。

 

 

 「四番隊、燎、以下四名入室します」

 

 「同じく十一番隊ラノ、ラテ、入室します」

 

入れの言葉とともに、燎とラノが入室の挨拶をし、その部屋へと入る。続くようにぞろぞろと部屋に入る、

 

 

 すると、二人の男女が目を開けているのが見えた。片方は短い黒髪の清潔感のある顔立ちをした男で、もう一人は長い黒髪のおしとやかそうな女性である。

 

 部屋の中には11番隊が座っていたであろう椅子と、2人の男女が使用している質素なベットが二つ。そしてそのベットの隣には点滴が置いてあった。

 

 そこから栄養素や筋力増強剤を注入していたのだろう。

 

 「びっくりさせましたね。今入ってきたのが、あなたたちの安全を守る四番隊の四人と、先ほど紹介したラナ、ラメと同じくあなたたちの生活の手助けをしばらく担当する十一番隊のラノとラテです。」

 

 燈たちが入ってきたことで少しおどおどと萎縮していた様子の2人にユエリナが優し気な口調でみんなを紹介する。

 

 「四番隊隊長、燎だ」

 

 「燈です」

 

 「綵よ」

 

 「鳳です」

 

 四番隊と一括りに紹介されてしまったため、俺たちは各々自己紹介をする。

 

 その度に相手はほんの少しだけ動く首を動かして応えてくれる。悪い人ではなさそうだなぁと燈は考える。

 

 「ごめんね。彼ら二人はさっき起きたばかりなの。意思の疎通は取れるし、言葉もわかってもらえているんだけど、想定していたように筋肉量の減少が著しくてね。声を出すことや自力での移動がままならないのよね。」

 

 そうユエリナにいわれて、二人の様子をうかがうと、また少しだけの会釈をしてくれているように見えた。

 

 「彼らには回復を待ちながら、明日到着予定の南大陸支部で検査を受けてもらう予定よ。」

 

 ユエリナが淡々と状況を説明してくる。

 

 「二人にはちゃんと説明して承諾も受けました。」

 

 ユエリナの横に控えていたピンク髪をロングにした女性、ラナが補足をする。

 

 ラナは十一番隊隊長であり、しっかりとした性格であり、ユエリナの付き添い人の1人である。ラナの背が高いためラナがユエリナの母親のように見えることもあるが…

 

 「そうね。あとは、さっき聞ける範囲で質問はしたのだけど、収穫はあんまりってところよ。彼らが話せたり、文字を書けるようになったらもっと色んな質問をさせてもらおうと思ってるわ。」

 

 と言うと、ユエリナはとりあえず今回は顔合わせ程度かなと話を終えた。

 

 「それじゃあ、あなたたち二人もいきなり話を聞かされたり、人を紹介されたりで疲れたでしょう。私たちはお暇するわね。ラメ引き続きお願いね。ラノとラテもお願い。ラナはもう少し私と一緒に来てもらえるかしら。」

 

 ユエリナは2人にねぎらいの言葉をかけた後、十一番隊のそれぞれに指示を出す。

 

 「了解でーす!!」

 

 軽く頭を下げるラノの横で黄色い髪をツインテールにしたラメが明るく返事を返す。ラメはイケイケ風な元気っこであるが、幼い印象が強い。これが戦闘時には暴君のようになるのだから驚きものだ。

 

 「了解なのです。」

 

 ラテもラメの隣から返事を返す。

 

ラテは先程執務室でみんなを待っていてくれた子だが、一応大人しい性格の持ち主である。一応というのは、すこし性格は曲がっており、自分が認めていない人には多少雑な対応を取ったり、普段はおとなしめであるが自分が面白いそうと感じたら極限までいじるようなタイプであるので大人しいと一概に言えないのである。

 

 しかし。この癖ありな2人、二色のツインテール娘が並んでいる様は本当に双子のようである。

 

 

 「じゃ、行くわよ」

 

 ユエリナに続いて、四番隊、ラナはその部屋を後にした。

 

 

 

 

***

 

 

 

 部屋を出て、廊下を歩くユエリナ。

 

 

 

 「どうかされましたか?」

 

ユエリナの隣を歩いていたラナがユエリナの唇がきつく結ばれていることに気づいた。

 

 「いや、つくづく奇妙だなぁと思って…。神様がくれたかのような出会いよね」

 

ユエリナは深く考えるように、しかしどこか笑っているかのように答えた。 

 

 「ロマンチックね…」

 

 いつの間に横にいた綵が会話に参加してくる。

 

 「いや隣に並ぶなし」

 

 即座にユエリナは冷たく言い返したのであった。

 

 

 

 

 「…ってかアンタなんで寝癖直してないのよ。」

 

 綵は今朝の寝ぐせを直せていない。

 

くるくるとしているその頭を見ながら、ユエリナはため息を漏らす。

 

 綵は髪の一房をとり、手でいじりながら

 

 「天パってことで…「「「無理だろ」」」」

 

鳳と燈、ユエリナから食い入れ気味のツッコミが飛んだ。

 

 

 

 

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