四番隊は今日もゆく   作:yuzuna*

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レポート地獄やら、部屋の整理が終わり、落ち着いた夏休みがやってまいりました。
まったり、投稿を続けていきます…。

そして今回からは三人称からではなく、誰かしらの一人称で物語を進めていきます。
大体、燈さんですね。



施設調査へいざゆかん(2)

 

 

**=燈side

 

 

 

勢いよく空まで開通した穴。

 

そこから差し込む大量の光。

 

そして、それらを霞ませるようにパラパラと舞う土と石。

 

強い光が土砂の間を縫ってチカチカと突き刺してくる。

 

 

(視界、悪いなぁ…)

 

 俺は上に向けた右手の指の隙間から光の差し込む穴を見た。

 

 この穴を空けた相手が敵なのであれば、想定されるのは燎並み、もしくはそれ以上の存在。

 

 

 

(身動き取れないよなぁ…)

 

 強大な力を前にすると迂闊に動けなくなる現実にため息がでてくる。

 

 

 

 現在、俺は落ちてきた瓦礫の裏に隠れている。

 

回避行動を叫ぶ燎に突っ込む声は各方向へ飛んで行ったので、おそらく他の四番隊のみんなも各自で隠れていることだろう。

 

 さて、それでどうしたものか。

 

敵が何者か分からない上に山吹き飛ばすくらいの大物と来たもんだ…。

 

 

 上の階にいたはずのみんなや、飛行艇にいるみんなが心配だけど、はっきりと状況がわからない現状で俺が飛び出したところで不利だろう。

 

 

 

 …周囲を見渡してみるが、俺が隠れた位置から見える範囲には敵のようなものはいない。

 

 

 物理的に山の中にある施設に穴を開けたのであれば四番隊のいる最下層まで穴を開けた本人のその肉体が落ちてくるはずだ。

 

つまり、今周囲になんの影もないと言うことは、敵は物理ではなく、放出系の遠距離攻撃でここまでの穴を開けたことになる。

 

 

…と、推測する()

 

 

 

まぁ、推測できたところで安全に動けるわけでもないのだけどね…。

 

 

 (みんながどこにいるのかもわからないのに、出て行って(敵と)鉢合わせたらどうする? ってかなんでみんな別々に隠れたんだよ…。バカかよ…。)

 

 ほんとうにバカである。

 

自ら孤立して身動き取れなくしていくアホである。

 

俺はついさっきまで傍にいた四番隊の仲間を思い浮かべながら頭を抱える。

 

 

 (こうなったら燎とかが出てくるのを待ってから動くかぁ…?)

 

あいつ運すごい良いしなぁ…。あいつが出て来たら安全なんじゃない…?知らんけど…。

 

適当だけど燎の運は信頼に値すると思うんだよね…知らんけど…。

 

実際、外の状況を知れる無線機持ってるの燎だしな…知らんk…これは知ってたわ。

 

 

 

(うーん。でもなぁ…。このままここで待つのもなぁ…。)

 

 何が起こってるかわからないから迂闊に飛び出してはいけないのに、何が起こってるかわからないからこそもやもやする。そんなことはないだろうか。

 

 ここで待っている判断が正しいのか、飛び出して探索する判断が正しいのか全く分からない。

 

 

 

(様子を確認する感じで…)

 

 しばし悩んだが、結局俺の心はもやもやに押し通された。

 

様子を見るの大事なことだよね。状況把握大事だもの。

 

相手がちょっと危険すぎるかもしれないだけで…。

 

と、自分の行動を肯定化するべく顔をうんうんと揺らす。

 

 

 

…唐突だが、最初の山を貫通する大きな衝撃が来て以来、敵は静かだと思う。

 

揺れる振動も、舞う砂埃も、穴が空いたことによって建物と地面が崩壊しかけてるからであって、敵本体は近くにいないのではないか?

 

つまり、今が絶好の(外に出る)チャンスなのでは?

 

 

 「行くしか…」

 

…ん?今俺なんて言った?行く決心を固めようと思ったが、少し気になることを考えたような。

 

んと、この揺れは建物と地面が崩壊しかけてるから?

 

 

…崩壊するってことは?

 

 

 

え?このままいったら俺ら生き埋めじゃね?

 

 俺は自分が青ざめたのがわかった。

 

 「やば…《ズドン》…く…」

 

 生き埋めはやばいと思い、瓦礫から立ち上がった瞬間、

 

穴の開いた方から《ズドン》と大きな音がした。

 

俺の顔をさらに青くする()()がいた

 

 「…………ね……」

 

 やばいっす。全然やばいっす。

 

言葉を言い切る前に、目の前に降りさった一体の龍と目があった。

 

 

 

***

 

 

 

 汗が…汗が止まらない…。

 

やばいなんてもんじゃない。生命の危機だ。

 

龍と言うのは、軍一個じゃ絶対足りない生物なのだから。

 

 巨大生物掃討作戦の時に手間取った大型生物もこいつら龍と呼ばれる生物の中の一体だ。

 

 龍というのは弱い奴も強いのだ。何をいってるのわからないかもしれないので簡単に言えば、龍の中では弱い部類でも俺たち人間にとっては軍一個じゃまず足りないつよつよな生物なのだ。

 

 

俺は呆然としたまま龍と対峙する。

 

 目の前に降りさったその一匹の龍は純白で、鋭く尖る翼と呼吸に合わせて赤く膨らむ喉が印象的だった。

 

龍対俺。

 

…絶対無理。

 

勿体ぶらずとも待つのは死のみ、死あるのみ。

 

 

…ほんとにここで死ぬのだろうか。

 

助けなどは来ないだろうか。

 

一気に頭の中が冷静になった。

 

 

せめて、一人じゃなく四番隊であったなら…。俺は思案する。

 

それなら、勝算はある…。

 

燎の渾身の一撃をもろに決めればワンチャンある…かも…?

 

それはそれで勝てるかはわからないけど、一対一では絶対に敵わない。

 

俺は四番隊が全員集まるまで待てばいいのか?

 

っていうかそもそも、待てるのだろうか…。

 

 

ここまで思案するのにリアルな時間で約1秒。

 

超高速脳処理。

 

 

だが、1秒も有れば龍は俺を認識し、喉をさらに赤く光沢させ攻撃ブレスを放とうとする。

 

 

ブレス、受ける???受けれる?守れるのか?俺の能力で。

 

 

 

 

…さぁ、入りました高速脳処理。

 

 さて、人類の発展と再興と共に

 

私達には戦うための能力が備わりました。

 

火、水、雷、草、地、風、氷、竜、花、星、血です。

 

 その中で、()の能力は火と花。

 

2つの能力を併せ持つハイブリッド型である。

 

多くの人類は1つの能力しか有していないため、2つの能力を有するハイブリッド型は希少かつ強い存在とされているし、実際強い。

 

 ちなみに、最前線で戦うユエリナ軍には1つの能力を極めた者と、ハイブリッド型が集まっているために、ハイブリッド型の人間は珍しいものではない。

 

 

さて、俺の能力の話に戻ろう。

 

まず、火は想像通り、火を出せる能力。

 

そして、花は防御壁が張れるもので、

 

俺が四番隊の中で防御が得意というのは防御壁が張れる花の能力があるからだ。

 

 果たして、龍のブレスに俺の花の能力を使った防御壁は有効だろうか。

 

防御壁を破られてしまえば勿論俺はブレスをモロに受けるので良くて負傷、最悪は死。

 

 

 

…と、先程と同じく、ここまで約1秒、

 

超高速脳処理(なんとなく締めに使ってる)

 

 

現実に戻ってみると俺の目前では龍の光ながら膨張していた。

 

龍がブレスに使うエネルギーを貯めた証拠だ。

 

 

力の解放へ向けて、龍が口を少しずつ開ける。

 

その間、俺は動かずにいた。…動けずにいた。

 

 理由は二つ、一つは正直なところ怖いから、足がすくんだからだ。

 

だが、そんなマイナス要素もプラスに言い換えれる理由がもう一つ。

 

それは後ろにある破壊されずに残っている施設の保護を考えたからだ。

 

 

 人間、大変な時ほど色んなものが目につきやすくなるし、気にしてしまいがちになる。

 

ブレスが来ると思ったときにふと後方にある機械たちが目に入った。

 

 ここに来た目的は、施設の調査であり、気になったものを回収するためだ。俺がブレスを避けてしまっては、施設の破壊が進み、もしかすると大事な回収物を失ってしまうかもしれない。

 

 自分の動けない理由を正当化するように見えるが、守るしかないのだ。ブレスを真正面から受け止めるしかないのだ。

 

 

そう考え、覚悟を決めた俺は足を少し大股に開き、手を前に出した。

 

俺の周りを桜のような花弁が浮遊する。

 

それと同時に、龍の口が光った。

 

 来る!!

 

(受けとめろ。俺ええええ!!!)

 

俺の手から花の能力のエネルギーが防御壁を展開する。

 

 

龍が光を放った。

 

それはまた凄まじい閃光と張り裂けるような轟音を繰り出した。

 

高い位置から俺を目掛けて放たれた一発のブレス。

 

少し腰を落とす。後ろに吹き飛ばされてはいけないから、全力で踏ん張るために。

 

衝撃はすぐに届いた。

 

凄まじい光が目の前の防御壁へと当たってくる。

 

周囲を花弁が激しく宙を散乱し、それぞれの威力がすさまじいことを周囲に示す。。

 

 

 「ッ……‼︎んぐぐッ…んぐぅぅぅぅぅ!!!」

 

 思わず顔を背けた。

 

 衝撃の後は、押されて押されて、ひたすらに押される。

 

ブレスの勢いが…凄い。

 

 

…が、実はここでもう俺は勝っているのだ。

 

 最初の衝撃で防御壁を破られなければ、後はそれを維持するために粘るだけ。根性勝負だ。

 

 歯を食いしばり、足にさらに力を入れる。

 

 根性なら龍相手でも負ける気はしない。

 

防御壁は破られなかったのだ。耐えれば守り抜くことも、生き抜くこともできる。

 

その状態で根性を振り絞らない奴などいるのだろうか。

 

 

否、いないだろう。

 

 

花弁がその激しさを増す。

 

(これは…もらったぁぁぉぁぉ!!!!!!)

 

力を振り絞りながら、龍のいるであろう方向を睨みつける。

 

 「ぐッ……!!!!!」

 

 押される力が突然なくなったことで声が漏れ、桜の花弁が飛散した。

 

 龍がブレスを出し切ったのだ。

 

 それは俺がこの龍のブレスを受けきったということでもある。

 

 

 (俺が止めれるのなら完全勝利だって狙えないわけじゃない…) 

 

 俺が全て受け止めれば、誰も怪我をせずに、誰も失わずに勝てる未来がある。

 

龍というのは強い。だが、一つのブレスを止めたことで俺はそんな自信を持った。

 

完全勝利だって狙えるのだ。勝てないなんてことはない。

 

希望が大きく見え始めた。

 

 

 龍を見上げる。

 

ブレスは龍の貯めたエネルギーを多く使ったようですぐには動くことができないようだ。

 

しかし、それはこちらも同じ、かなり踏ん張ったために少し体に反動がきている。

 

 

…両者ただの睨み合いの構図だ。

 

 

 すると、突然左後方から強風が吹き抜けた。

 

吹き荒れる風に目を薄く閉じ、吹き飛ばされぬようまた少しグッと足に力を入れた。

 

 

 「このッ…風ッ!!!」

 

 それはビュゥっと吹き抜けて行ったのだが、

 

俺はこの風の()()を知っている。

 

 その風の正体はすでに龍の横をも通過したようで龍は一瞬怯んだ後、上を見上げた。

 

 

 おそらくこれは()の最高速度。

 

 

 「頼んだぞォ!!!鳳ぃぃ!!!!」

 

 後ろから聞き慣れた叫び声が聞こえる。

 

パッと思い浮かんだ風の正体は当たっていたようだ。

 

 鳳は風の力の持ち主だ。

 

風を操ることと風を放つことができ、上手く使えば空を飛ぶことも、誰かを飛ばすこともできる。

 

そして、当たり前ではあるが極めれば極まるほど、その飛行は速く、精密に行えるようになる。

 

 鳳はユエリナ軍四番隊の風の能力保持者だ。

 

その技量は凄まじく、今の風はこの鳳が最高速で飛んで行ったことによって放たれた風だろう。

 

 

 「燎、鳳をどこに飛ばしたの。」

 

 後ろから少しずつ近づく足音に、龍を注視したまま問う。

 

 「俺らのカメラと、見つけた銃を二つ、あとは壊れた無線機持たせて飛行艇まで」

 

 燎の声が後ろから聞こえてくる。

 

 なるほど、これからの戦闘を予想して鳳が一人で持てそうな軽くて重要なものを預けたと。

 

 「お前があいつと戦ってくれてたおかげですんなりできたぜ。またせたな。」

 

 少しだけかっこつけではあるが、得意げな顔をしてわざわざそういう燎に頼もしさを感じる。

 

 「…俺のカメラ持ってってもらえてないんだけど」

 

 そんなことは言ってやる気はないので、依然として俺の腰にカメラが下がっていることを茶化す。

 

 「いいだろ。お前のカメラ一個くらい、壊れたらドンマイなレベルだ」

 

 なんともないように言ってくる。俺の写真に価値がないと言うことだろうか。こいつの心霊写真もどき集よりは価値はあると思うんだが…。

 

 

 燎が横へと並び立った。

 

 「綵は?」

 

 「知らん。どっかで生きてる。」

 

 この場に未だ現れていない綵について尋ねるが、居場所がわからないらしい。

 

それをけろっと言い放つところに少し冷たい気もするが、これは信頼の上だろう。

 

 俺もあのひょうひょうとした綵がそう簡単に死ぬとは思わないのでひとまず龍との対面に集中する。

 

 「そう、それと無線機…」

 

 俺と離れている間、無線機で上と連絡を取ってはいないだろうかと無線機について燎に問う。

 

 「あぁ、壊れた。」

 

 ……?

 

 「壊したの間違いでは?」

 

 「いや、回避行動を取ったら尻に潰されてしまった。あの龍のせいで壊れたんだ。」

 

 「それ壊したって言うんだよね。あんたの尻ならあんたのせいでしょ。」

 

 頼もしさなど1ミリもなかったことにしたい。

 

 燎はなんともない風に言うが、燎はユエリナ様にあとでちょっと愚痴愚痴言われることになるだろう…。連絡手段を戦闘中に壊して失ったのは大きな痛手だもの。

 

俺は燎の後のことを考えて苦笑を浮かべた。

 

まぁ、それもこれも全部こいつ()を片付けてからなのだが…

 

 

 キュェェェェェェ‼︎‼︎‼︎

 

 

 突然鳴り響いた高音に俺も燎も思わず耳を塞いだ。

 

目の前の龍が鳴き、空を見上げている。

 

お前そんな鳴き声だったの!?

 

 「あいつ、鳳追う気じゃない?」

 

 俺はそう口にしながら、腰の刀の鞘に右手をかけた。

 

龍がもしも鳳を追うのであれば、それは絶対に止めなくてはならない。

 

回収品を失うばかりか、もしかすると飛行艇にまで危害が及ぶかもしれないからだ。

 

 

 「行かせねぇ!!」

 

 おそらく同じことを考えた燎が龍の懐へと潜り込むため地面を蹴った。

 

俺もそれに続いて、刀を抜刀し、龍の元へと進む。

 

 

が、

 

 

 龍がその大きな翼を地面に叩きつけた。

 

その風圧が俺たちを怯ませる。

 

 

 ギャエエエエ‼︎‼︎

 

再びさんざめく咆哮を上げた次の瞬間。

 

 

 「ぅ゛…!!」

 

再び凄まじい風圧を放ち、龍が空へと舞った。

 

 

 

 

 「行かせないッ!!!!」

 

 龍の頭上、空から一つの影が降ってきた。

 

 「綵!!?」

 

 

 綵であった。空から綵が降ってくる。

 

なんで空から!?と俺は思ったが止めてくれるならなんだっていい。

 

きっとあいつなら止めてくれるだろう。そんな信頼が心の中にある。

 

 

 綵は空中で構えを取ると、鋭い音を鳴らして銃を放つ。

 

彼が放った銃弾は一直線に飛んでいき、龍の首筋へとヒットした!!

 

 

 キュエエエエ‼︎‼︎

 

 ヒットした…のだが、龍は意に介さない様子で、浮上を続けていってしまう。

 

 空から龍とすれ違った綵がスタッと降りてきた。

 

 「硬い鱗にはやっぱり手も足も出ないわね。私。」

 

龍はそのまま地上へと翼をはためかせ進んでいく。

 

 

 「え、いま完全に止める流れだったよね。」

 

つい言ってしまった。

 

 「誰かさんが脳内で止められなくなるフラグを建てたからかしら。」

 

降りてきて最初に言った言葉がまた悲しい内容でしたね…。

 

 

 「俺たちも上へ向かうぞ。」

 

 燎が上を見上げたままで言う。

 

 「そうね。そろそろ地上での戦闘が始まるわ。」

 

 綵も上を見上げ燎に同意する。

 

続けて、

 

 「急がないとここも崩れるだろうし…」

 

と言った。

 

 

 あっ、そうじゃん。

 

俺もそれに気づいて動いたんだった…。

 

おそらく綵が上から降ってきた理由は綵も地上へ早く出ようと地上を目指して施設を登っていたのだろう。

 

…え、あれ俺さっき龍からその崩れる予定の施設を守らなかったっけ。

 

 

 「そうか。どうせ潰れるのか。」

 

 燎が噛み締めるように不穏な言葉を放った。

 

どうせ潰れるとはなんだろう。

 

どうせ潰れるのに俺はブレスを真っ向から受けに行ったのだろうか。

 

人間とは混乱すると状況の整理がつかなくなるのだろう。

 

あの行為は無駄だったのかもしれない。

 

 

あぁ、なんか喪失感。

 

 

でも、どうして今燎はどうせ潰れるならというような発言をしたのだろうか。

 

どうせ?どうせなら??

 

 

 「なら、すぐ出るいい方法がある。」

 

俺は少しだけ嫌な予感がした。

 

 

 「やるにしても聞いてかr…「それは、お前らを投げて俺も跳ぶ作戦だ。」…嫌ですね。」

 

 俺の言葉を遮って放たれた作戦内容はあまりにも嫌なものだった。

 

 燎が何をしようとしているのか、前にもあったのでわかるのだが、それは燎の馬鹿力を使った作戦だ。

 

燎が俺と綵を馬鹿力で空へぶん投げた後、馬鹿力で地面を蹴って自分自身も地上へ飛び出す算段だろう。

 

 おそらく自分が跳ぶ際に全力で地面を蹴ると、足元の地面を抉ってしまうことが今まで多々あったので龍が侵入した後であったが、施設内でその方法をとるのは躊躇していたのだろう。

 

 

 確かにこの方法は現状では最善で最速の脱出経路となるだろう。

 

 しかし、投げられる側が辛いのを燎は知らない。過去にも投げられた人しかわからない。この方法は

 

恐怖の塊である。

 

 かなりの勢いで高速で空へと飛ばされるのだから何かにぶち当たったりでもしたら……ぷちゅん…。

 

よくて大怪我、悪くて死。

 

飛ばされる側に操作性はないため、この馬鹿が力加減や投げる方向を間違えでもしたら、その瞬間お陀仏である。

 

 

 さ・ら・に!!!

 

 いつものように何もない空に飛ばされるのならまだいい。

 

だが、今回投げ出される場所は地下だ。コントロールが悪ければ地上に出る前にどこかの壁や土にぶちあたる可能性が大の大の大!!!

 

 

 その現実が恐怖を駆り立てる…。

 

ガシッ

 

 「…あの…燎さん…?嫌だって…」

 

最悪のシナリオを想定し、龍と目があった時のように青くなる俺の腕を燎が掴み、引き寄せる。

 

 「あの…いや、別の方法で…」

 

俺の刀を固定している腰のベルトへと燎の手がかかる。

 

 

 「よし、行くぞぉ!!!!」

 

 燎が自信ありげに言う。

 

 「え、まじでやるの?嫌だって言ってるんだけどこっちは!!!」

 

 「ウオラァァァァァアアアアアア!!!!」

 

燎の咆哮が聞こえ、身体が上へと持ってかれる。

 

ベルト…お腹…苦しい…!!

 

 

 「綵ッ…!!たすけっ!!!」

 

 最後に見えた綵の顔は青ざめていた。

 

…あ、もう…、

 

 「いやだぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!!!!」

 

俺は絶叫とともに地上へ向けて放たれた。

 

 




とりま馬鹿力は最強卍
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