何となく書きたくて書きました。
自分でもよく分かりません。
多分よく分からないけど、でも、物語なんです。
「絵美〜前髪、切ってくれない?伸びちゃったの。」
黒く長い、美しい髪の少女が声をかける。
「また?瑠花の髪って伸びるの早いよねぇ。準備するから、先座ってて。あ、その前に前髪とかして濡らしといて〜。」
少し金色の入った明るい茶髪を肩で揃えたメガネの少女はそう言うと、読んでいた本を閉じると席を立った。
今日は何も予定がない休日。親友である2人は絵美の家で自由にくつろいでいた。
「りょーかい!!そう言われると思って櫛と霧吹き持ってきてあるんだ〜。絵美の手先が器用で助かるよぉ。」
そう言うと、黒髪の少女、瑠花は椅子に座って髪をとかし始めた。
「瑠花、自分で切った時酷かったもんね。手遅れになるかと思った。」
茶髪の少女、絵美は苦笑いしながら道具箱を持ってきた。箱の中には髪を切るハサミやらクリップやらが入っている。
「いつも通りでいいの?」
「うん。」
「おっけ、じゃあ切るよ〜。目、閉じてて。」
瑠花が目を閉じた。
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ジャキン
瑠花の美しい髪が前掛けに落ちた。
次の1束を切ろうと髪を触った時、絵美の中の記憶の引き出しが開いた。1番初め瑠花の髪を切った時。あの時は前髪じゃない、後ろ髪を、今と同じくらい長かった瑠花の後ろ髪を自分と同じくらいまで短く切った。理由は、瑠花の失恋だった。彼に振られた。断ち切るために、親友である自分に切って欲しい。そう頼まれた。切り終わったあとの瑠花は前と変わらない笑顔でお礼を言ってくれた。振られた原因は分からない。瑠花は、可愛い。美しい黒髪と真っ白な肌。華奢な腕は、誰もが守りたくなるだろう。笑うとえくぼができる顔は整っていて、誰もが納得する美少女だ。幼い頃からの仲である自分は、瑠花がモテていることもよく知っていた。だからこそ、振った理由はわからない。深く聞こうとしなかった。いや、聞けなかった。瑠花を振った男は、自分が慕っていた男だった。自分の思いを瑠花に打ち明けたことはなかった。だから、付き合ったと聞いた時も瑠花を恨んだりはしなかった。何となく、自分の思いを瑠花に知られたくなくて、付き合った時も別れた時もそして現在に至るまで、この気持ちは伝えていない。それでも、こうして瑠花の髪に触る度に、彼を思っていた気持ちが、瑠花の後ろ髪を切った時の複雑な気持ちが、蘇る。
ふと我に返った。感傷に浸っている時じゃない。この子の美しい髪を、切らなければ。
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ジャキン
切り取られた髪が、鼻先を掠めた気がした。絵美の、少し冷たい手の甲が額に当たっている。今、絵美はどんな顔をしているのだろうか。きっとそのメガネの向こうの目は、過ぎ去った過去を映し出しているのだろう。前に同じように切ってもらった時、絵美の手が止まったので、なにか起きたのかと薄目を開けた。絵美は無表情で手の動きを止めていた。何となく、私を見ていない気がして、そっと目を閉じた。何となく、絵美が何を思い出しているかわかったからだ。私は過去に1度、絵美に後ろ髪を切るように頼んだことがある。付き合っていた彼に振られたので、心を入れ替えようと親友である絵美に頼んだ。快く受け入れてくれた絵美は私の髪を丁寧に梳いて、綺麗に切ってくれた。絵美は、振られたことについて、詳しく聞かなかった。でも、私は知っていた。私を振った彼が絵美の好きな人だったことを。向こうから告白された。嫌いではなかったので付き合った。その時は、絵美の思いは知らなかった。数日後、たまたま近くにいた女の子たちが、そのことを話していて、そこで初めて知った。なんてことをしてしまったのだろう、そう思った。知らなかったとはいえ、親友の想い人を取ってしまった。罪悪感に苛まれて、数日間の間、絵美を避けていた気がする。でも、絵美は何も変わらなかった。しばらくすると私も安心して、また2人で話すようになった。だから、振られた時は少し嬉しかった。元々そこまで好意があった訳でもない。振られた理由はしょうもないことだった。これで、絵美の好きな人はまた誰とも付き合ってない状態になる。もしかしたら、2人が付き合うかもしれない。心のどこかでそう期待もしていた。だが、絵美は彼と付き合うことはなかった。というのも、そもそも彼に興味が無くなったらしい。親友を振った男は好きになれない。と言っていたという話を誰かがしていた。思いを寄せていた人よりも私を優先してくれた。その事に対する幸福感と、彼女の恋心を終わらせてしまったという罪悪感を同時に感じた。だから私は、髪を切っている時に絵美の手が止まっても何も言わず目を閉じ続ける。遠い過去を思い出す親友を思いながら、私を同じ過去を思い出している。
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ジャキン
髪を切り終わると、瑠花は読書を再開した。絵美はお茶を飲みにキッチンへ向かった。
ね?何も無いけど、確かに物語だったでしょ?
自分でもほんとによくわかんないけど、書きたかったの。