峰田実にとって緑谷出久という同級生は、クラスメイトの中でも一等にヤバイ奴である。
轟や八百万達特待生に負けず劣らずのその強さは、同中でゲスを煮詰めた性格の爆豪との一騎打ちの映像を見た時、自分じゃ勝てるわけがねえよと思ったものである。
だがその強さに反して緑谷は強い個性を持った人間
何処か
峰田にとって緑谷出久とはチグハグな人物なのだ。
だがそれもこうして自分と肩を並べ、一緒に協力してこの無茶苦茶な状況を共にしている時の頼もしさは尋常ではなかった。
「蛙吹さん「梅雨ちゃんと呼んで」……梅雨さ…ちゃんの能力は理解したし、峰田君の個性もかなり使い勝手のいい能力だからここを切り抜けるのは楽になりそうだよ」
「お、おい緑谷……相手はマジモンのヴィランなんだぞ?……大丈夫なのかよ」
峰田は自分でもビビっている事を自覚できるこの状況で水中で強みが出せる蛙吹なら兎も角、余裕すら感じる緑谷の態度に恐怖が引っ込む。
最初に着ていたジャンプスーツとは違って、蜘蛛みたいな脚が背中から生えた忍者みたいな格好になった緑谷は、いかなる手段か水の上を跳ねながらこの水難ゾーンの船に飛び込んできたときは一瞬誰だかわからず、今は口元を覆っていた布を外して顔を見せている。
峰田は蛙吹に運んでもらってここにいるため、自分一人では碌な結果にならないこの現状に引っ込んだ恐怖と共に苛立ちが湧き上がる。
ついこないだまで自分は中学生で、いきなり殺されそうになる状況など想像すらできなかったのに、なんでこんな事に……。
涙まで出てきた峰田だが。
「大丈夫……ここにいる誰一人、死なないよ」
蛙吹と峰田がそう呟いた緑谷の顔を見た時、ゾクリと背中を何かが走った。
目の奥から感じる強い眼差し、肌で感じるほど高まる緑谷出久という少年の存在感。
「いつか僕達はヒーローとして、こういった状況に陥ることは間違いなくあるんだから、慣れないとね」
「だからって
我慢できずに喚いた峰田に緑谷は苦笑しながら。
「代表との付き合いは短いけど本当に濃い時間を過ごしたんだ……そんな日々の中で代表が言っていた言葉があってね……
デクの言葉に峰田はハッとする。
「だからその悪意が
「勿論よ、緑谷ちゃん」
「……くそう……せめてヤオロッパイに触れたかった」
蛙吹はニッコリ笑い、峰田は若干欲望に即した愚痴を呟きながら覚悟を決めていく。
対して水難ゾーンにいた木っ端ヴィランたちは三人が逃げ込んだ船に攻め込まずに様子を伺っている。
「おい……どうせガキが三人だけなんだ、ちゃっちゃと殺っちまおうぜ?」
一人のヴィランがそう言うが、誰も威勢良くは賛同しなかった。
彼等は悪党とはいえそのヒエラルキーは底辺に近いところにあり、故に彼等は自分達より強い相手を嗅ぎ分ける力が備わっている場合が多い。
そんな彼らがさっき、明確に船の方からヤバイ気配が漂ったのを感じたのである。
何か自分達より明らかに強そうな奴がいる……全員が思い描いたのは背中に蜘蛛のような脚を生やした黒装束の子供?である。
個性なのか水の上を跳ねながら移動したあの子供?は服の上からでも推察できるほど鍛え込んだ体つきをしており、陸上で相対したら普通に勝てなさそうな雰囲気があった。
だが彼等にも彼等なりの悪党としてのプライドがある。それが後ろ指刺される行為でも、それを縁にオールマイト殺害という凶事に呼ばれた
それが彼らの今回最大の選択ミスだった。
「おおりゃああぁぁぁぁ!!!」
船に逃げた3人の中で一番雑魚そうな子供が頭から丸い何かを此方に大量に投げてくる。
ポチャポチャと水面に浮かぶそれ等、しかし木っ端ヴィランたちは触ろうとはしなかった。
肉体から生成して使う個性というのは得てして危険な特性が多い。
触れば爆発するのは可愛いもので、触れると危険な猛毒が分泌されたり幻覚を生み出すガスを噴射するものも少なからず存在する。
または体に融合し、意志とは関係なく操る者もあるので警戒したのだ。
だが彼等はその丸い何かに注視して静かに飛び降りた
原作とは違い力のコントロールが行き届いたその一撃は、余力を残して水難ゾーンの湖に軽々と大穴を開けた後、湖の水がその大穴に収束して木っ端ヴィラン達を引き込んでいく。
「や、やばい!」
すかさず逃げようと動き出した木っ端ヴィラン達だが、デクたちが撒いた罠の事はすっかり頭から吹き飛んでいた。
騒ぎ出す彼等に峰田が投げ入れた丸い玉が引っ付き、そして更に引っ付いた玉がドンドン周りの人間にくっついて木っ端ヴィラン達を一塊にしていく。
「な、何だこれ!? 全然取れねえぞ!」
峰田の個性である《もぎもぎ》は頭の頭頂部に生える黒い玉をもぎって使う個性である。
もぎったそばから生えてくるそれは恐るべき吸着力を持った物体で、峰田の体調次第では一日位は吸着力が持続する。
更に峰田自身には吸着せず、触るとプニプニと跳ねるが、もぎりすぎると血が出るというデメリットがある。
さっきから水面に浮かんでいた玉はそのもぎもぎの玉であり、木っ端ヴィラン達が集まると同時にその玉も木っ端ヴィラン達の所に集まってきたのだ。
それは濡れてなお吸着力は変わらずに木っ端ヴィラン達を一塊にさせようと吸着し続け。
ボーン!!
「「「うわあああぁぁぁぁぁ!!!」」」
収束の反動で巨大な噴水のように立ち昇る水に打ち上げられる様に木っ端ヴィラン達の塊は纏めて宙を舞うのだった。