ゲーム知識がまるで役に立たないのだけれど?   作:夢泉

32 / 32
「世界」を眺める者たちⅡ

「………となるわけだ。ねぇねぇイグザムぅ。今の仮説についてどう思う?」

 

 古い遺跡のような場所で白髪赤目の何者かが問いかける。

 

「マーレイ…君、まだ居たの?さっさと帰ってくれって僕は言ったはずなんだけどな」

 

 対して答えるのは声だけ。姿形は見えず、遺跡全体に声だけが響いている。

 

「そうだっけ?まぁ、いいじゃないか。友人が一人寂しく廃れた遺跡にいるんだ。話し相手になってあげようという気遣いだよ。受け取ってくれると嬉しいな」

「頼んだ覚えはないし、君と友人になった覚えもない。…はぁ、それで何の話だっけ?」

 

 相変わらず気心の知れた友人同士の会話のようではあるが、双方ともに相手のことをかけがえのない友人と思っているわけではないのだ。

 

「そうやって最終的には会話に付き合ってくれるんだよね、君って。まぁ、簡潔に一言で言うなら「()()()()()()()()()()()()()」ってことなんだけど。君はどう思う?」

「あぁ、なるほどね。僕は未だに「バグ」という表現に納得はしてないけど、言いたいことは分かるよ。凡人君がサムライ君とお姫さんに会ったことについて言っているんだね?」

「そうそう。あれらも「バグ」だ。特にサムライ君は異常個体だろ?」

「まぁね。お姫さんの方は明確なきっかけがあったけど、サムライ君は何もなかった。物心ついたときには武の頂を目指して走り始めていた。そしてその過程で本能すら捻じ伏せてしまった、か」

「うん。ただ邪魔だからという理由だけで世界の理すら超越してしまった異常個体。「バグ」の中の「バグ」。与えられた境遇ではなく自らの意思で逸脱したのだから、あの魔王なんかよりよほど異常だよ」

 

 マーレイはイグザムの苦言も構わず、生きている存在に向かって「バグ」と連呼する。楽し気に笑いながら話していることも合わさって異様さが際立ってしまう。

 

「そうかもしれないね。正直、僕もアレについてはニエーナに同情する。あんなのが現れるとか想定できないでしょ」

「あはは、そうかもしれないね。でもさ、それが「ヒト」って存在なんだと私は思うよ」

「時に君や僕たちの想定すら超える「可能性」の具現存在、か」

 

 そう、「ヒト」とはそういうもの。「ヒト」もまた「大いなる神」が生み出した存在。ソレが最初に持っていたモノをもとに生み出された最後の作品。

 

「そういうこと。それで話は戻るけど、さっきの話について君はどう思う?」

「振り返ってみれば僕の所に至った「バグ」は仲間を見つけていたり、その後に巡り合ったりすることが多かった。……世界から仲間外れにされて孤独を抱える者たちだからこそ、惹かれ合うのではないかな」

「傷を舐めあうということかな?なるほど言い得て妙かもね。滑稽で愛らしくて、まさに「ヒト」らしいと言えるだろう」

「どうして君はそういう言い方しかできないんだ…それで、君自身はどう思っているんだい?」

「うん、私かい?そうだね…」

 

 すると、マーレイは僅かに考える仕草をする。

 常に何もかもを理解しているように話すマーレイにしては珍しいことだった。

 

「おそらく、「バグ」が集まるんじゃない。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ややあって、マーレイは大げさな身振り手振りを加え、劇的に語り始めた。

 

「例えば“Speranza”の母親やサムライ君が良い例だ。ああいう唐突な「バグ」が周りに影響を与えて変えていってしまう。この場合、“Speranza”の父親やお姫さんが影響を与えられてしまった存在となる。まるで癌みたい…うん、そうか!そうだよ、彼らは癌なんだ!なるほど、そういうことだったのか!」

「……最後の「癌」呼ばわりはどうかと思うけど、それ以外は概ね納得できる。……もしかして、君が「凡人」を送り込むのは」

「その通り。唐突な「バグ」の再現。分かりやすく言うなら、癌細胞を移植するみたいなものさ。正直、私は送り込んだ「凡人」がどうなっても構わないんだ。死ぬまでに周りに少しでも影響を与えてくれれば、それだけで世界の崩壊は早まっていくのだし」

 

 その言葉から明らかなように、マーレイにとって全ての存在は生きようが死のうがどうなっても良いのだ。「愛している」と口にするくせに、それが死んでも一切心は痛まない。

 いや、或いは。「死」が生み出すものすら「愛して」しまっているから、こうなるのか。

 

「君みたいな奴に目を付けられた「凡人」君たちには心底同情するよ」

「あはは、何を言っているんだい?君も私が目を付けている存在だよ?」

「気持ち悪い。さっさと帰れ」

 

 そこは、「試練の祠」。

 数多の「バグ」が目指した最後の地。

 それは今日も何も変わらず存在し続けている。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

拝啓母さん、俺はもう限界です。(作者:胡椒こしょこしょ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

「よく一緒に冒険する女の子が最近怖い....冒険者辞めてもう田舎に帰ろうかな....。」▼>少女達が現れた!少女達は熱い視線を送っている▼>ハンスはにげだした!▼>しかし後輩系魔法戦士にまわりこまれてしまった!▼>ハンスは助けを求めた!▼>しかし男友達系鍛冶屋にまわりこまれてしまった!腹黒系聖女にまわりこまれてしまった!▼>ヤンデレからはにげられない!▼これ…


総合評価:6567/評価:8.57/連載:5話/更新日時:2023年04月23日(日) 19:43 小説情報

魔王の娘であることに気づいた時にはもう手遅れだった件について(作者:naonakki)(オリジナルSF/冒険・バトル)

主人公が自宅ごと異世界に転移してしまうお話。そこでとある少女と出会い……。


総合評価:4899/評価:8.1/連載:8話/更新日時:2021年05月08日(土) 16:38 小説情報

エクストリーム魔王狩り転生バトルロワイヤル(作者:丸米)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

魔王に転生したけどヤバい連中に囲まれてもう死にそう


総合評価:4457/評価:8.37/連載:21話/更新日時:2023年05月28日(日) 18:00 小説情報

俺「以外」の全員が「2周目」は流石に鬼畜仕様過ぎる。(作者:夢泉)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

◆勇者は敵。魔王軍も敵。親も敵。スタート時から四面楚歌。◆▼主人公が「やり直す」は王道だよな。大好きな展開さ。▼ヒロインやラスボスみたいな重要キャラが「やり直す」…これも時々見かけるな。面白くて愛してる。▼けれど、さ。▼俺「以外」の全てが「周回プレイ」は、流石に冗談が過ぎるだろ?キレて良い?▼全く覚えのない理由で殺されそうになる!▼両親も!友達も!近所の人も…


総合評価:9136/評価:8.36/連載:54話/更新日時:2023年04月05日(水) 13:17 小説情報

真の実力はギリギリまで隠しているべきだったかもしれない(作者:ちぇんそー娘)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

初手チート蹂躙しようとしたら主人公系とか悪役令嬢みたいなのが纏めて爆散してバグった。今更隠してももう遅い感じ?ハーレム作ろうにも女子がみんなビビって近づいてくれないしやたら熱い目で見てくる男しかいないんだが?


総合評価:15910/評価:8.26/連載:19話/更新日時:2022年08月12日(金) 00:01 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>