黒子のバスケ
黒桃です。
NLが苦手な方は注意してください。

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黒桃です
NL苦手な方は注意してください。



雨がやまないように

やっちゃったなぁ。

窓の向こうに見える景色を見て思った。

外は黒い雲に覆われ、空からバケツをひっくり返したような雨が降っている。

つい数十分前は夏にぴったりのきらびやかな晴れだったのに、大きな雲が現れた途端街を湖に変えてしまう勢いで雨が降ってきた。

そういえば昨日天気予報で急な雷雨に注意っていってたっけ。

まぁすぐにやむだろうと思ったのが運の尽き。

学校の置き傘でも借りていこうかと下駄箱の置き傘コーナーに向かうが、皆考えることは同じだったようで残っているのは骨が折れて使えなくなってしまった傘が一本乱雑におかれているだけだった。

 

あーあ。ついてない。

いつもならこのまま体育館に向かってバスケ部のマネージャーとしての仕事をこなしている。

部活が終わるころに雨がやんでいたならラッキーだし、降ったままだとしても皆で雨宿りしたりふざけて濡れて帰るのも楽しかっただろう。

だけど今はテスト期間。この期間はどの部活も活動禁止のため皆が集まる予定もない。

幼い頃から隣に住む幼馴染を頼ろうと思ったが普段から粗暴な彼が降るかもしれない雨を予想して折り畳み傘を持つようなマメさがあるとも思えないし、下駄箱に彼の靴はもうなかった。

 

「傘ないの?入ってく?」

 

一瞬自分に聞かれたかと淡い期待を持つが近くにいる3年の男女が何やら恥ずかし気に二人で傘をさして帰っていく。

自分の自意識過剰さといわれないみじめさにいたたまれなくなってそそくさと場所を移動する。

校舎はまだ数人雨宿りする人たちがいてあまり寂しくない。

とはいえ誰も話し相手がいないまま学校に残るというのは退屈なので私は時間つぶしに図書室に向かった。

 

もしかしたらいるかも、という予感は当たってカウンターには水色の彼が座っていた。

 

「桃井さん」

 

こちらに気づいた彼はまん丸で優し気な目をこちらにむける。

私はこの淡い水色の目が好きだ。

シックスマンとしての彼は持前の観察眼をいかして皆にパスを回す。

私は何もかも見透かしてしまいそうでいて自分はつかみどころがない、水のような彼が大好きなのだ。

 

「テツくん!今日って図書委員当番は休みじゃないの?」

「えぇ。本当ならそうなんですけど傘を忘れてしまって。

雨宿りのついでに本を借りていこうとよったら丁度先生が職員室に用事があるからカウンターに座っておいてほしいと頼まれたんです。」

「そうなんだ、私も傘忘れちゃったよ~」

「お互い災難ですね」

 

傘を忘れてしまうなんてなんて運がないと思っていたけどとんだ勘違い。

彼と話ができるきっかけになるなんて。今日はなんてついてるんだろう。

まだしばらく雨もやみそうもないし、図書室には他に誰もいない。

少しくらい話し込んだって誰の迷惑にならないだろうというのは少し高慢だろうか。

 

「テツ君、テストどうだった?」

「可もなく不可もなく・・・といったところでしょうか。桃井さんは?」

「そうなんだ。私は全然だったよ~」

 

勿論嘘。今回のテストは自分でもよくできたと思っている。

だけどそんなこと言っちゃうと自慢みたいになっちゃうから小さな嘘をつく。

くだらない持ち上げかもしれないが、少しでも彼に好かれたいという乙女心をわかってほしい。

それに明日のテストは現国だし普段から本を読むのが好きな彼はその才能を発揮するだろう。

 

ふと、彼が体育館のほうに目を向けた。

テスト期間は使用禁止で誰もいないので明かりがついている様子はない。

彼の指が少し落ち着きがないのを見てピンときた。

触りたいのだ。ボールに。

バッシュが擦り切れ、誰かが指示する声、ドリブルやネットをくぐるボールの音。

静寂とした図書室の空間は彼にとって癒しだが、同時にとてつもなくあの喧騒を求めている。

どこか手持無沙汰な彼の手を見て好きだなぁと思う。

何度も何度もチームに貢献してきたパスは肉刺が潰れすっかり固くなりお世辞にも綺麗とは言えない。

だけどそれは彼が誰よりもバスケを愛し、努力してきた証拠だ。

ボールに触れられないこの期間彼は誰よりもあの喧騒を渇望する。

そして私はいつも彼の情熱に触発されるのだ。

 

「・・・テスト、終わったらまたバスケしようね」

 

私はコートの中に入ることはできない。

だけどどうしようもなく惹かれている。6人のキセキ達に。

それは何よりもまぶしくて、時間が止まってほしいと思うほど美しいキセキ。

 

「はい。また」

 

優し気に微笑むその横顔をいつまでも見つめられるよう、

雨がもう少し降り続けてくれるように私は空に祈るのだった。

 

 


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