手癖が悪い奴は大抵寝癖も悪い

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手癖・悪癖・虚言癖

 

 

「おや麗華かい、大きくなったねえ」

 

 

「字面だけ見たら久々に再会した祖父と孫みたいだけど、絵面にしたら胸ガン見する不審者と幼気な少女だからね? 捕まれ」

 

 

「冗談だよ、久々に会った幼なじみにそんな酷いこと言うなって。ってか幼気な少女は盛りすぎだろ、乳と同じくらいには盛ってる。掴まらせてくれ」

 

 

「捕まれ」

 

 

 

 

 

 

 

「改めまして、十年ぶりだね麗華。和也だよ。めちゃくちゃ変わったね、綺麗になったね」

 

「そうね。あんたは何も変わってないみたいだけど」

 

 

「なっ……やめろ! 一センチたりとも伸びてない身長を見下ろしながら言うな! 男はタッパが全てじゃないんだぞ、心の広さと男根の太さだって大事なんだから!」

 

 

「ガチで何も変わってないね、もうちょっと再会のムードとか作れなかったの? 私が抱いてたドキドキが全て握り潰されたんだけど」

 

 

「ほんとだ。全然ドキドキしてない」

 

 

「ナチュラルに胸に触るな!! 折るぞ!!! テメーの男根ごと!!!!!」

 

 

「ふふっ、懐かしいね。こんなやり取りするのも」

 

 

「話聞いてる? もう再会の空気を楽しむ流れは終わったんだよ?? 遠い目して微笑んどけば胸触り続けてるの誤魔化せると思ってんの???」

 

「とく、とく、と麗華の鼓動が高鳴っていくのを感じる。今ぼくの手の中には、彼女の生の証、温もりがあった」

 

 

「描写するな。鼓動が高鳴ってるのはキレてるからだから。テメーのちっちゃい手の中には収まり切ってないから。お前の性の眼差ししか感じられてねえから」

 

 

「冗談はさておき本題に入ろうか。これからのぼくらに差し掛かった、大変重要な問題について話したい」

 

 

「まあ、いいでしょう」

 

 

「とりあえず、このあらぬ方向に曲げられた両手指を直してもらいたいんだけどいいかな?」

 

 

「逆方向にも折り曲げてバランスを取ってほしいってこと?」

 

 

「90度くらいそういうこと。で、今後ぼくが麗華の胸を好き放題触っていい契約を結ぶことについての話なんだけど」

 

 

「まさかとは思うけど結婚の婉曲表現のつもりじゃないよね? 婚姻届出したら好き放題触っていいって訳じゃないからね??」

 

 

「え、でも乳繰り合うも多少の縁って……」

 

 

「聞いたことないよそんな諺、しかも明らかに誤用じゃん」

 

 

「で、そうそう。結婚の話なんだけど」

 

 

「はいはい、私たちの親が勝手に決めた許嫁の話ね。ちっちゃい頃の取り決めだし別に解消でいいでしょ?」

 

 

「勿論ぼくもそのつもりだったんだけど、ところがどすこい、そうはいかんでごわす」

 

 

「なんで力士?」

 

 

「おいどん、麗華どんと夜のぶつかり稽古をかまさなければいけないんでごわす」

 

 

「力士と私に謝れ、早急に 」

 

 

「残念ながら、これはあながち冗談じゃない。ぼくらで少なくとも一度は切り結ばないと、あの人たちも納得しないだろう」

 

 

「──ああ、剣道の話ね」

 

 

「そう。ぼくらは没落した流派の跡取り二人、消えゆく剣を後世に遺すために、ぼくらの両親が選んだのが流派の統合、そしてそれを円滑に進めるための、ぼくらの結婚」

 

「家は好きだから文句はないけれど、やり口には少しだけ不満があるわね」

 

 

「そして統合にさしあたっての一番の問題が、型の擦り合わせ。ひとつの道場で二つの打ち方を教えるんじゃいくら何でも問題がある。故に、ぼくたちの試合でより良い剣法を──遺すべき流派を決めることになった」

 

 

「どう考えても間違っている、そう言っても子供の戯言は通らない。私たちの思いつくような解決策は、みんなもう大人たちが試していた。それでもダメだから、こうなってしまったんだ」

 

 

「ねえ麗華さん、一つ言っておくんだけど」

 

 

「何かしら和也くん」

 

 

「ぼく、きみとの試合には負けることに決めてるから」

 

 

「は? 舐めてんの?」

 

 

「そうだよ。こっちが舐めてたから、僕がその責任を取るんだ」

 

 

「…………」

 

 

「そもそもこの話、提案したのはうちの親かららしい。麗華のうちに比べればまだ余裕のあるうちと、もう崖っぷちな麗華んち。藁にもすがる思いで麗華んちは提案を受け入れてくれたみたいだけど、こんなの実質出来レースのM&Aだ。多少のハンデありだろうが、試合なんてどう考えても僕の方が有利だろうし、審判に袖の下を渡すところだって見てしまった。もう臭い息がかかってるとしか思えない」

 

「……だからって、八百長なんて私のプライドが許さない」

 

 

「そう言うと思った。だから、これからするのはひとつの提案だ」

 

 

「提案?」

 

 

「そう。ぼくは本心から、後世に残すのはそちらの流派であるべきだと思う。派手なだけのこっちより、堅実で実用的、故に芸術的なそっちの方がいい」

 

 

「消さない方がいいのはどちらも同じでしょ」

 

 

「なら、ここでもうひとつの提案だ」

 

 

「もうひとつ?」

 

 

「ああ。どうやっても八百長試合になってしまうなら──結論は、子どもに委ねよう」

 

 

「……は?」

 

 

「ぼくたちの子どもに決めてもらおう」

 

 

「……一旦すべてのツッコミを置いといて現実的な話だけするけど、そんな余裕なくない? 私たちの子どもがおっきくなる頃にはもう、流派統一されちゃうでしょ?」

 

 

「いや、子どもに決めてもらうんじゃなくて、子どもで決めるんだよ。つまり──男だったらこっちの家、女だったらそっちの家!」

 

 

「そんな運否天賦みたいな賭け、飲むはずないでしょうが!!」

 

 

「でも、一番平等だぜ。散々やったせいでお互いに手が読めるジャンケンより、あみだくじより、あっち向いてホイより平等だ」

 

 

「……あっち向いてホイはジャンケンでしょ」

 

「はは、確かに」「それに、身重ならきみと切り結ばなくて済む。昔のきみならまだしも、今の、事故で視力の下がったきみと本気でやり会うのは──なんか嫌だから」

 

 

「──知ってたんだ」

 

 

「まあね。いくら死角からだったとはいえ、十年前の君なら胸を触られるような不覚は取らなかった」

 

 

「あたかも確かめるためにやったみたいな面してるけど、普通に最低だからね?」

 

「ごめんて。けどまあ、こんなぼくでも嫌がることなく、しばいて、笑って受け入れてくれるきみのままで、嬉しかった」

 

 

「感謝しなさいよ、ほんとーに」

 

 

「ああ。──さて、一世一代のこの賭け。乗りますか?反りますか?」

 

 

「──乗らせていただきましょうか。物理的に」

 

 

 


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