妖精魔界戦記ディス・アヴァロン   作:サンダーボルト

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メインストーリーを書く意欲がすっかり消え失せた今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。

とりあえず別の話を書きたくなったので、短編集にしました。


【幕間】妖精たちの短編集

【起き抜けメリュジーヌ】

 

 

 朝、目覚ましの音で目を覚ました俺は、夢うつつの状態で洗面所へと向かう。良い睡眠がとれたおかげか、心地良いまどろみに浸っている頭を現実に戻すために冷たい水で顔を洗う。

 タオルで顔を拭きながら部屋に戻ると、俺の部屋の壁に人型の穴が開いていた。

 

 

「またか……」

 

 

 穴の中に手を突っ込み、柔らかい感触のそれを掴んで引きずり出した。

 

 それは、生地の薄い寝巻に身を包んだメリュジーヌだった。

 

 

「……お、おはようコバヤシ」

「お前も懲りない奴だな。何度も言ってるだろう、寝込みを襲いに来るんじゃねえってよ」

「そんなはしたない真似はしていないよ。ただ、添い寝しようと潜り込んだだけさ!」

「似たようなモンだろうが……」

 

 

 この惨状をやらかしたのはメリュジーヌであり、俺でもある。

 

 常在戦場の環境である魔界に適応した俺は、寝ている時でも警戒心を発揮してしまうようになり、近づいてきた相手を問答無用でぶっ飛ばしてしまっているらしい。

 らしい、というのは俺に全く自覚がないからだ。寝ているんだから当たり前だけどな……。

 

 メリュジーヌの馬鹿が俺に黙ってベッドに潜り込むという暴挙をやらかし、返り討ちにあったのをきっかけにこの悪癖について話してあるのだが、一向に止めようとしないのは困りものだ。

 

 

「まあいい……さっさと顔を洗ってこい。飯にするぞ」

「私、朝は弱いの。龍なので。だから洗って♡」

「…………」

 

 

 片手で抱えられたままで甘えた声を出すこいつを、天の川にでも投げ入れてやろうかと考えたが止めた。アホらし……。

 

 

「しっかしお前……軽いな」

「ふふ、当然でしょう?強くて軽いのは高性能の証なのよ?」

「いや~、アレになりたいっつってカタチを真似たなら中身がスッカスカなのは納得だわ」

「ねえやめてよ!!私の軽さをそんな理由にしないで!?」

 

 

 バタバタ喚くメリュジーヌをうるさく思いつつ、洗面所の蛇口を全開にしてコイツの顔を突っ込んだ。

 

 

「がぼぼがぼごぼぼぼぼごぼっぼぼ!?!?」

 

 

 そこそこ強力な水流を顔に浴びて悶絶する様子を楽しみ、しょうがないので顔を洗ってやった。柔らかいタオルで水気を拭い、妖精國で一番美しいと評判の顔が艶を取り戻す。

 

 

「ふぅ……早起きは苦手だけれど、恋人と一緒にいられるのなら悪くないね」

「いや、だからさ……いい加減、ベッドに潜り込むのは止めろって……」

「え?止めないよ?」

「なんで……?」

 

 

 こいつ真正のアホなんだろうか。ぶっ飛ばされると分かってても奇行を繰り返す理由が分からずに聞き返すと、メリュジーヌは目を細めて笑って返した。

 

 

「だって、見えたんだもの。私と貴方が一緒のベッドで寝ている姿を……ね」

「…………幻覚?」

「違うから。まあ、それに……貴方が暴れなくなったら、貴方が私を受け入れてくれた何よりの証になるじゃない?」

「…………」

「恋人の初めては何であれ、欲しくなっちゃうの。私、欲張りだから♪」

「――――――――」

 

 

 美しい笑顔で言い放たれた台詞の後、沈黙が続く。

 

 俺の内心の葛藤を知ってか知らずか、メリュジーヌが可愛らしく小首を傾げた。

 

 

「……コバヤシ?どうかした?」

「……いや……何でもない。俺は着替えるから、お前も一旦自分の部屋に戻って着替えてこい」

「うん。じゃ、また後でね!」

 

 

 ウインクと投げキッスという置き土産を残して、メリュジーヌはワープゲートを開いて自室に戻る。

 

 ……俺はといえば、椅子に座り込んでゆっくりと息を吐きだして気持ちを落ち着けていた。

 

 

「……やっべぇなァ……」

 

 

 もしかしたら、ここまで巨大な()()()()()()を女に抱いたのは初めてかもしれねぇ。さっきの俺、目がやばかったんじゃなかろうか。

 

 俺の心中に芽生えているこの欲望にも、全てが終わった後でケリをつける必要があるだろう。

 

 

 

 

【ガールズトーク】

 

 

 私は暗黒議会議長。このミニ魔界の平穏を維持するために普段から目を光らせています。今日、そんな私の鋭い目がミニ魔界の異常を検知しました。

 異常の出所はどうやら食堂のようですね。今度はどんな面白い……もとい、厄介なトラブルが出てきたのでしょうか。

 

 そこそこ席が埋まっている食堂を見渡せば、どことなく重い空気が漂っているようです。普段から好きに動いて楽しく生きている悪魔達にしては、珍しい反応です。

 そんな食堂の真ん中には、周りの空気などお構いなしで話に花を咲かせる女の子が2人。期待のルーキー、バーヴァン・シーさんとアルトリア・キャスターさんが座っていました。

 

 一体どんな話をしているのでしょうか?気になった私は2人の話を盗み聞きするために近くの席へ座ります。あまり褒められた行為ではありませんが、私は悪魔なのでなんの躊躇もありません。さてさて……?

 

 

「なにアンタ、ここに来る前は足の指が無かったワケ?」

「うん。馬小屋って夏は死ぬほど暑いし冬は死ぬほど寒くてさ〜。冬の時期に床に張った氷に足がへばりついちゃって、剥がそうとしたら指が取れちゃった」

「あー、あれ痛いのよねー。私も大昔、指を潰された記憶があるのよ」

「うわー、悲惨……。私も人のことは言えないけど。あ、じゃあ周りの妖精に×××××されたり――」

「あるあるー!×××××だけじゃなくてクチん中に×××とか足を×××××とかも――」

「えー!!うっそー!?足は私もされたことあるよ!」

「マジで!?一緒じゃん!」

 

 

 聞かなきゃよかった。

 

 

 和気あいあいとおしゃべりをしている可憐な少女の口から飛び出す、食欲が消え失せる言葉のオンパレード。どうしてこの子たちは自分たちがされた虐待の過去を、放課後に喫茶店で駄弁る女子学生のノリで話せるのでしょうか……?

 

 ああ、流石は悪の華バーヴァン・シーさん。流石は魔猪の氏族のアルトリアさん。野次馬根性丸出しで集まってきた悪魔たちを、こんな方法で撃退するとは考えもしませんでした。皆の箸が進む速度は遅くなり、プリニーなんかは白目をむいています。

 天使兵の皆さんが「おお……神よ、あの哀れな子羊達に救いを……」なんて祈ってますが、あの子達の世界の神様、もうとっくに死んでますよ。救いも何もあったもんじゃない。

 淫魔幹部さんが「どんなプレイも両方が楽しんでないとダメなのよ!ブリテンの妖精どもは何にも分かっちゃいないわ!!」と熱弁しています。あの人は末期なので放っておきましょう。関わるとエロい目に遭わされます。

 

 

「お前らちょっとこっち来い」

「「ふわあっ!?」」

 

 

 おお、ここで我らが魔王様のご登場です。首根っこを掴まれて魔王様の執務室へ連行されていく二人を見て、皆がほっと息を吐くのが見えました。

 果たして上手く諫める事ができるのでしょうか?楽しみですね。

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、お前ら今までロクな友達もいなかったんだろうし、俺だって話すのが楽しいっていうお前らの気持ちは大事にしたいよ?でもさぁ、話す場所……というか、内容に問題アリなんだわ」

 

 

 執務室で二人を椅子に座らせ、頭をかきながら話し始める魔王コバヤシ。彼としても、女の子二人の会話程度で目くじらを立てたくはないのだが、状況が状況なので口を挟む他ないのだった。

 

 

「始めに訊いておきたいんだけど、お前らは自分が過去にされた仕打ちがいけない事だってのは分かってるよね?少なくとも、虐待だったって認識はしてるだろ?」

「う、うん……」

「はい……」

 

 

 躊躇いがちに頷くアルトリアと、急にしおらしくなったバーヴァン・シー。どうして本来悪党サイドの魔王の自分が、善性持ちのこいつらに一般常識を説かねばならないのだろうか。くたばれ妖精ども。ブリテン滅べ。滅べブリテン。怨嗟の念を心中でまき散らし、コバヤシは話を続けた。

 

 

「ここにはいるのは殆ど悪魔だけど、悪魔だからって悪い事何でもオッケーな訳じゃないからな?みんながみんな、拷問大好きパラダイスな頭してるんじゃないんだよ。

 飯食ってる最中に指が取れただの潰されただの、そんな話をされたら飯が進まなくなるのは当然だろう」

 

 

 というか、なんだってこいつらは悲惨な過去をおかずに飯食ってんだ。もっと美味しい思い出をおかずにしろよ。あ、無いのか。春の記憶無かったもんな。滅べティンタジェル。滅べダーリントン。なに、もう滅んでる?当然の結果だザマァ!!心の中でせせら笑い、コバヤシは話を続けた。

 

 

「と、いうワケで話す内容には気を付けてほしいってだけだ。話は終わり。出て行っていいぞ」

「うん……ごめんねコバヤシ。食堂の皆にも謝ってくるよ」

「そこまでやらんでもいいと思うが……その方が蟠りもないか。好きにしな、任せるよ」

「分かった。じゃ、行こうよバーヴァン・シー……あれ?おーい……?」

 

 

 説教というよりは、本当に簡単な口頭注意だけで済ませたコバヤシに、アルトリアは頭を下げた。元々たいした問題ではないから軽い注意だけだったので、アルトリアもすんなり自分の非を受け入れて反省していた。

 さて、出ていこうとした時にバーヴァン・シーの異変に気が付いた。なぜだか、顔が真っ青になっている。

 

 

「ち、ちが、ちがうの、コバヤシ。はなしをはじめたのは、わたしで、アルトリアは、わるくないの」

「……お、おう。いや、それはどっちでもいいんだが……」

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい、ちゃんとできなくてごめんさない」

「俺は別に怒ってないから。だから話聞いて?な?」

「わたし、つぎはもっとじょうずにおはなしするから!だから、おねがいだからすてないで!!」

「俺、ひとっこともそんな話してないよね???」

 

 

 酷く取り乱したバーヴァン・シーを抱いてあやしながら、遠い目をしてコバヤシは天井を見上げた。どうも、叱られる事に強いトラウマが根付いてしまっているようだ。

 

 

「(やりづれぇ……)」

 

 

 強く叱った憶えは無いのだが、こうも泣かれてしまうと自分のやり方に問題があるのかと思ってしまう。バーヴァン・シーを抱きしめて暖めてあげると、彼女は落ち着きを取り戻して優しく抱きしめ返した。

 

 

「……ご、ごめん。私、また……」

「いつもの調子に戻ったならいいよ。それより、話は覚えてるな?」

「うん……いつもアリガト。拾ってくれたのがコバヤシで、本当に感謝してる」

「おう……」

 

 

 離れる寸前でバーヴァン・シーは、抱きしめた男の耳元でそっと囁いた。

 

 

「――私、ここでいっぱい頑張るから。頑張って、コバヤシが自慢できるようないい女になるから。だから私の事、ずっと見ててね、私の王様♪」

 

 

 ぴょんっと飛びのいて、カーテシーを決めたバーヴァン・シーは鼻歌を歌いながら部屋から出て行った。思わぬ不意打ちを受けて硬直したコバヤシは、しっとりした視線を受けて我に返る。

 

 

「おおう、すげぇ破壊力だった……で、お前は何してるんだ」

「…………むー」

 

 

 ぷくー、と頬を膨らませ、両手を開いてスタンバっているアルトリアの姿がそこにあった。

 

 

「ん!」

「お前まで何だってんだ……」

「……んっ!!」

「…………分かったよもう……」

 

 

 唸るおねだりに負け、今度はアルトリアを抱きしめる。なでなで、ぎゅー、と優しいスキンシップをされたアルトリアの表情は、見る見るうちに緩んでいく。

 

 

「(あったかい……私これ、好きかも……)」

 

 

 人前では絶対にできないけれど、二人だけの今なら好きなだけ甘えられる。ここぞとばかりに堪能したアルトリアは、元気100倍で飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「お見事です、我らが魔王様。あの二人をああも簡単に手懐けてしまうとは、感嘆の意が絶えません」

「つまらん世辞はやめろよ」

「いえ、割と本気で感心しているのですよ。人の不幸を楽しめるのが我々悪魔なのですが、あの子達はその、そんな次元にいないというか……」

「今でも疑問に思うわ、星の内海にいたのって本当に妖精か?実は七つの大罪を司る悪魔だったりしない?仲間割れで一人死んで六人だったってオチじゃないの?」

 

 

 本日の締めの業務を行いながら軽口を叩く魔王と議長。ミニ魔界を受け取った時からの長い付きあいである二人は、割と気安い関係を築いていたりする。

 

 ――仕事も終わったし二人で飲みにでも行くか

 ――もちろん奢りですよね?

 ――そうじゃないと来ないだろお前……

 

 ちゃっかりしてる部下に苦笑いしつつ席を立った魔王。しかし扉をノックする音に足を止めた。入室を許可して入ってきたのは、妖精國女王モルガンであった。

 

 

「おや、モルガンさん」

「どうした、何かトラブルでもあったか?」

「……昼間、我が娘が問題を起こしたと聞きました」

 

 

 そう言われ、顔を見合わせる二人。所詮は些事なので気にも留めていなかったが、この母親は律儀にも謝りに来たようだ。

 

 そういう事なら、謝罪を受け取って彼女も誘って飲みに行こう。そう考えてモルガンに視線を戻した二人は度肝を抜かれた。

 

 

「――娘の失態は母である私の責任です。どのような重い罰であっても受け入れます。……ですので、どうか温情を」

 

 

 杖を置き、床に正座して手をついた姿勢のモルガン。平たく言えば、土下座の一歩手前であった。

 

 

「魔王コバヤシ……どうか、バーヴァン・シーを捨てないで――」

「捨てねえっつってんだろうが!!!!!!」

「本当にもう……愉快な方々を拾ってきましたね、コバヤシ様」

「ごめんなさいねえ!!!!」

 

 

 

 

【愉快な妖精達】

 

 

「失礼致します、魔王陛下。妖精騎士バーゲスト、参りました」

「おう、入れ」

 

 

 トップ直々の招集命令に従い、鎧を着たバーゲストが少し緊張しながら入室する。執務室の大きな机には部下からの報告書が積まれており、傍に用意されたもう一つの机でアルトリアが書類の束とにらめっこをしていた。

 ただでさえ小さい妖精が紙の山に隠れてしまって更に見えなくなったな、とバーゲストは頭の片隅で呟いた。

 がばっと頭を上げた小さな妖精が小動物のような威嚇行動を始めたが、巨大な妖精の興味は既に他に移っている。自分を呼び出した主人が一枚の書類をひらひらと振っていた。

 

 

「お前を呼びだしたのはこれについて聞きたいからだ」

「何か不備がありましたか……?」

 

 

 仕事は人一倍真面目に取り組んでいる自負のある彼女は、困惑した様子で聞き返す。

 

 

「いんや、不備はない。たかが床のへこみ傷一個を処置して、それで報告まで上げてくるお前のマメさには感心してるよ。これからもその調子で頼むぞ。お前みたいのがいないと、現場が締まらんからな」

「は、はい。ありがとうございます」

「はーい!それ直したの私!私だからね!」

「それもしっかり書いてあるから知ってる」

 

 

 自分が必要だと褒めてもらえたのは嬉しいが、呼ばれた理由は何なのかと疑問が残る。

 

 

「で、えー……床を傷つけた原因が、お前が履いていたヒールが砕けたからだって書いてあるんだけど、文章だけじゃちょっと分からんから、直接お前の口から聞こうと思ってなぁ。説明してくれる?」

「ハッ、了解しました」

 

 

 なるほど。多くの猛者の頂点に君臨するお方だが、このような些事であっても見逃さない注意力もまた、強さの秘訣なのだな。

 主君に惚れ直し、女の部分がキュンキュンしているバーゲストだが、今は女ではなく騎士の時間だ。いつものように真面目な口調で説明を始める。

 

 

「当日ですが、私は別魔界探査の当番でしたので、戦闘準備を整えた状態で自室から探査船へ徒歩で向かっていました」

「うん」

「ですが、歩いている途中で私の靴が負荷に耐え切れなくなり砕けました」

「……うん」

「幸い、床は軽くへこんだ程度の損傷でしたので、アルトリア・キャスターに事情を説明して修復作業を頼みました。

 私も確認済みですが、床は完全に直っていましたので問題ありませんでした。今後はこのような事態が起きないように、靴の材質にも気を配ります」

「そうか……」

 

 

 話が終わり、コバヤシは机に肘を立てて指を組み、大きく息を吐いて俯いた。

 

 

「(いや直接聞いてもぜんっぜん理解できねぇんだけど。

 

 歩いてて靴砕けるってなんだよ。いくらバーゲストがデカくて重いからってそんなハプニングある???

 こいつ、ヒール履いたまま四股でも踏んでたんじゃないだろうな……)」

「――ブフォッ!!!」

 

 

 まわしを絞めて、どすこーいと四股を踏むバーゲストの姿がつい、頭をよぎる。そんなアホな妄想を妖精眼が映し出し、アルトリアが噴き出した。

 

 

「――アルトリア。いくら気心が知れた仲とはいえ、魔王様の御前で悪ふざけは控えろ」

「ブフッ……!……だ、誰のせいだと……!」

「なに?」

「いやこれに関しては俺が悪いわ。ごめんなアルトリア。ごめんなバーゲスト」

「は?いや、何故私に……?」

「用事は済んだから、もう仕事に戻っていいぞ」

「……そうですか。では、これより通常業務に戻ります」

 

 

 釈然としないが、もういいというならば無理に留まる理由は無い。バーゲストが部屋を出ていくと、ニヤケ顔のアルトリアがコバヤシに視線を向けた。

 

 

「仕事中になに変なこと考えてるんだよぅ、コバヤシぃ~?」

「一瞬だけ頭の中に出てきただけじゃん……これは不可抗力だろ……」

「そういうのも見えちゃうんだからな~?気をつけろよコバヤシ~?」

「どうしろってんだ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

「議長、この荷物はなんだ?」

「アルトリアさん宛の宅配便です。何かお買いになられました?」

「あ!もう来たんだ!はやーい!」

 

 

 魔界ゲートの近くに積まれた段ボールの山。箱の一つにアルトリアが飛びつき、ワクワクを抑えきれない顔で箱を開けだした。

 

 

「そんなモン頼んでたのか」

「うん。自分のお金で買い物できるのが楽しくてさ、通信販売っていうのをやってみたんだ」

「それはそれは。で、何買ったんだよ」

「ごはん!!」

「飯か~」

 

 

 とても楽しそうなアルトリアの様子を、箱の開け方が汚いと思いながらも見守るコバヤシ。妖精眼で彼の考えている事は筒抜けだろうが、今のアルトリアには目に入らなかった。

 

 

「前から食べてみたいって思ってたんだ~。あの、ほら、朝に牛乳かけてスプーンで食べるやつ……なんだっけ」

「……シリアル?」

「確かそれ!なんとこれには、野菜やお魚も入ってるんだって!」

「へぇ……」

「可愛いワンちゃんのマークも入ってたし、一目で気に入っちゃって……開いた!ほらこれ!」

 

 

 箱の中から大きな袋を取り出し、自慢気に見せつけ始めるアルトリア。

 

 

「ひょっとして、この箱全部……」

「はい!たくさん買うと安くなったので!」

「思い切りましたね……」

「これから毎日食べるからだいじょーぶです!」

「美味いのか、これ……?」

 

 

 コバヤシがおもむろに手を伸ばしてアルトリアと同じく商品を取り出して眺める。

 

 ――そして、硬直した。

 

 

「……アルトリアよぉ。これ、本当に全部食う気か……?」

「え、なに……もしかして、コバヤシも食べたくなっちゃった?ま、まあ一緒に食べてあげても、いいけど?」

 

 

 少しだけ、もじもじしながら答えるアルトリア。

 

 そんな彼女に、コバヤシは取り出した商品を見せつけた。

 

 

「いや、お前、コレ……()()()()()()って書いてあるんだけど」

「…………え゛っ」

 

 

 ――そう言われ、手にしていた袋を穴が開くくらいに睨みつけるアルトリア。

 

 ――何度も、何度も、説明文を読み返し、内容を理解するアルトリア。

 

 ――次第にぷるぷると震えだし、真っ赤な顔で涙目になるアルトリア。

 

 

 それと同時に、魔王の我慢の限界がきた。

 

 

「ぶっはははははっははははは!!!!ガハハハハハハッハハハ!!!!お前本当におもしれえなァ!!」

「う、うるせぇぇぇぇ!!笑うな、笑うなぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 目に涙を溜めるほどの大笑いを始めた男に食って掛かるアルトリア。そんな可哀そうな彼女の頭を乱雑に撫でまわす、上機嫌なコバヤシ。

 

 

「くふふっはははは……お前ら拾ってきたのは正解だったなぁ……おかげで毎日飽きがこねぇ」

「ふふ……ええ、まったく」

「な、なんだよぅ……」

 

 

 撫でられ続けて大人しくなったアルトリアを見て、満足したとばかりにポンポンと叩く。彼らにとってはどんなに強い外敵よりも恐ろしいのが退屈だ。それを良い意味でぶち壊してくれる彼女達の存在は、このミニ魔界で無くてはならない存在になっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、この大量の餌はどうしますか?」

「…………黙ってバゲ子に食べさせるか」

「殺されるぞお前」

 

 

 討論の結果、プリニー達に与えることにした。

 

 

「うめーッス」

「悪くないッス」

「金欠なんで助かったッス」

「……そ、そーですか…………」

 

 

 アルトリアはドン引きした。それと同時にここまで地獄に落ちないような良い子でいようと心に決めた。

この作品の設定を使った別の小説をぼんやり考えてます。なんか面白そうだと思ったものがあれば、一票どうぞ。

  • 転送事故でオラリオへ(ダンまち)
  • 転送事故でワノ国へ(ONE PIECE)
  • 汎人類史モルガンを陰から守る会
  • ゲーティア絶許・グランドオーダー
  • 原作6章、カルデア殲滅ルート
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