ちょっと遅くなってすみません! なんか書いてたらこっちも長くなりました!
これで正真正銘、外伝最終話です。最後までお楽しみください!
「おわっ! っぶな!!」
首を狙った一撃。直前まで全ての察知能力を欺き、透明になっていた生物が、攻撃の瞬間だけ現れた。しかし、常在戦場の心構えで臨んでいたズシは、それを際どい所で躱す。再び消えようとする敵の尻尾をオーラで拘束する。
「カマイタチッスか。直前までまるで分かんなかったッスね……」
「コレは虚空イタチ。珍しくはあるけど、今の貴方なら襲われる前に対処可能。貴方のオーラを広げて硬くすればよい。ただそれだけのこと…」
「なるほど…ふっ! お、2匹捕まえたッス! 感知出来ないのに捕まえてる感じがするッス! いや〜それにしても〝聖光気〟って便利ッスね」
ズシはあれからも狂気の特訓を果たし、無事に暗黒大陸への資格を得た。一足先に南へ赴き、そこから上陸を果たしたのだ。尚、移動手段は船である。フリーになった錬金植物メタリオンの回収に、ハンター協会主導で船を出していたのだ。そこに同乗して護衛し、ハンター達がブツを確保して帰るまでを見届けた後、彼は旅に出た。カルトと、まだ見ぬその娘に自らの力で会いに行くために。
最初は場所を聞いてからと思っていたが、彼らも居住地を転々としており、また、流石にカルトに警戒されたので手探りで行かざるをえなかった。そんなズシだったが、現在暗黒大陸からの熱烈歓迎を受けつつ、もうかれこれ5年は彷徨っている。そんな彼は現在右目を失っており、その代わりのオーラの瞳を具現化しているし、左手は肩からないが、それもまたオーラの左手を具現化する事で補填している。暗黒大陸の洗礼をばっちり受けた証と言えよう。それでも彼はめげずにがんばっている。そのポジティブさにも理由がある。
「いや〜助かったッス!
「いやだから…僕の名前はカマエルだって…まぁいいけど……」
彼は、つい最近まで〝聖光気〟を獲得していなかった。唯一彼の煩悩が邪魔をして、取得できなかったのだ。しかし、元々からあった彼の能力が完成し、それが極まったものであったため、辛うじて暗黒大陸探索の許可をもぎ取る事ができた。
そして、そんな彼も暗黒大陸の熱烈歓迎を受け、瀕死になる事数知れず。ようやく辿り着いた安全地帯で己を見つめ直し、カルトへの煩悩を昇華する事で漸く〝聖光気〟を取得する事ができた。流石の彼も暗黒大陸の過酷さに心が折れかけていたとも言える。
そうして〝聖光気〟を取得し、これからどうしようかと悩んでいた彼の元に、唐突に天使達のスカウト合戦が始まった。彼も困惑して最初は断っていたものの、ある天使の1柱の容姿と言動が彼の琴線にものすごく触れて無事契約へと至ったのである。
どんな容姿だったかは言うまでもないだろう。
「使徒様…あれだけ身も心も慰めているのに…。必ず僕が癒してあげるからね。だから僕だけを見て欲しい」
「? 当たり前じゃあないッスか。いつも見てるッスよ! 愛してるッス、カルトさん」
その返事に、黒髪の天使は深い溜め息をつく。彼の認識を覆すのはまだまだ時間が必要なようだ。よくこんなんで使徒になれたなと思わなくもないが、それもまた主を疑う事になる為考える事をやめた。数多くの天使達を差し置いて自分を選んでくれた幸運。そして、代償行為といえどこれだけ愛してくれる。それを忘れないようにしつつも、今はただ、目の前の彼を正しく導こうと心に誓う。いつか、完全にその執着を断ち切って人々を導く程の存在になれるように。
「使徒様、遠くに幻呪蝶の群れと黄金カバが見える」
「あー! アイツ! 以前危うく呪い受けて死ぬとこだったヤツッス! カバも初見だとボコボコにやられたッス……今こそリベンジの時!」
「その下から煉獄土竜が……って聞いてない」
巨大な蝶の群れと、超巨大な光り輝くカバが戦っている所へ、ズシが突撃していく。そして、幻呪蝶の呪いもなんのその、瞬く間に全て撃墜し、黄金カバの突進丸呑みも正面からオーラで受け止めてカウンターで穴だらけにした。
瞬く間に彼らを屠ったズシだったが、地面から灼熱の炎を噴き出す超巨大モグラ生物が彼を丸呑みした。天使カマエルは再度溜め息をつきながらも、全身鎧を具現化し、右手の剣と左手の盾で使徒を救出すべく、巨大モグラに突進していった。カマエルがモグラと激闘し、その腹を切り裂いたとき、同時に内部から背中に向けて超出力の神気が放出され、完全にモグラは沈黙した。
「いや~~熱かったッス! マジで溶けるかと思いましたもん。ありがとうございます、カルトさん」
「使徒様……良くこれまで生きてたね……これに懲りて、もう無謀な吶喊はやめて」
「いやまぁ……オレもこっちで活動始めてからはもうちょいと慎重だったんすけど、カルトさんが来てくれたから100人力かなぁって……ごめんなさいッス」
「…………まぁいい。ただ、もう少し修行の余地有り。拠点でまた特訓だね」
「うっ……分かったッス…」
「そのあと、
「!? うおぉぉぉ!! がんばるッス!!!」
めぼしい食料になる部位を回収し、彼は拠点へと急ぐ。愛しい人からの素晴らしいご褒美を貰うために。その拠点はちょっと前にズシが見つけた安全地帯である水晶洞窟だ。その中に潜む水晶蛙の軍団との激闘を制し、彼は無事水晶洞窟の主へと収まった。そして、そこで〝聖光気〟の取得ができたのだ。つまり、彼にとっては思い入れの深い場所である。
彼が張り切ってその拠点へと帰る姿を眺めながら、カマエルは溜め息を再度つきつつも苦笑する。可愛い人間である。そんな彼が、少しでも理想の強さへと近づけるように頑張っている。それが永遠に叶わぬ恋だとしても、彼は探し、進み続けるだろう。叶わぬ事を知っていながらも、前へ進み続ける。その愚直なまでの不器用さをカマエルは愛した。だからこそ、その代償として見られようとも彼と共に歩むのだ。
──その行く末を確かめたくて。
いつかきっと、彼が報われる時が来る。カマエルはそう願っているし、きっとそうなるだろう。なぜなら、脳を焼かれようと、彼はそこまで人を愛し続けることができるのだから。
だからこそ、その時が来るまで、いや、その時が来ても尚カマエルは彼を愛し続けるのだ。
それが、人間を愛してしまった天使の矜持であるゆえに。
◇
巨大なトランプが、強大な魔王の暗黒体の身体を引き裂く。魔王の権能も今や陰り、効果を十全に発揮できていない。それどころか、相手に吸収される始末である。そして、ごく僅かに残った魔王の首をめがけて、暗黒のオーラが迫る。
「じゃ、サヨナラ❤︎」
「お、おのれ、こんなところでぇぇぇ〜〜〜!!!」
ジュッ! という音と共に、その魔王はこの世から完全に消滅した。その下手人であるヒソカは満足げに、トランプを手元に戻した。
「う〜ん❤︎ 楽しかったケドめんどくさかったな〜♠︎ ま、これで10体、だね♦︎」
荒廃した、暗闇の領域。かつては禍々しく豪華絢爛だった建造物も、すっかり破壊し尽くされ、配下の悪魔達の死体がそこかしこに転がっている。そこへ、ヒソカと契約している神が姿を現した。
「ナナシ、お疲れ〜。コイツは特に面倒な奴だったから助かったよん」
相変わらず変なTシャツを着たパンクファッションの少女。だが、その力はこの暗黒大陸でも最上位。最強に最も近いと言える女神である。
「お、今度は視覚か♦︎ 久しぶりに見えたよ♣︎ これで五感は戻ったから、あと少しだね❤︎」
「順調ね〜。いいことだわ。あと3体。それで貴方の魂と失われた名前が取りもどされる事になるわ。そうなれば以前よりも強くなるわね」
「う〜ん、別に名前はいいんだけどね? 多分彼、もうちょっと強くなってるだろうし、完全復活してもまだまだ全然足りないんだよなぁ♠︎ それに、キミにもまだまだだろうしね♣︎」
久しぶりに視界に映る彼女をニヤニヤと見ながら、ヒソカはこぼす。その様子を満足そうに見返しながら、冥界の神は語る。
「そーねー。だから、まだまだゴミ退治に付き合ってもらわなきゃね! 私が直接ブチ殺せたら早いんだけど」
「冥界の神としては直接は手を出せない♦︎ そういう誓約だから…でしょ?❤︎」
「そ。貴方達とは意味が違うけど、そういう誓約だからね。嫌がらせなら出来るけど。だから貴方がいると助かるわ〜」
そう言って、始末の終わった領域を冥界化する。片手間に行っているが、そんな事をできる神は彼女ぐらいなものである。冥界化の後に、汚染された領域内を徹底的に配下達に洗浄させて、正常な地域へと戻す。それは彼女の暇つぶしと実益を兼ねており、更に現在有益な〝手〟が増えたことにより、彼女は充実した日々を過ごしていた。
「さて……じゃ次はどいつかな?」
「次はね~元神だった奴で、零落して魔王になった奴かな。バフォメットって言うんだけど」
「うん? ソイツって、彼が別世界で殺した奴じゃない?」
ナナシはその名に聞き覚えがあった。正確には前世、宿敵と闘ったときに見えた記憶の欠片の中にあったものだ。宿敵の中ではベストバウトとまではいかないが、相当苦戦を強いられていて、異世界の力全てを結集して何とか倒していた。そんな敵である。
「ん? そーなの? てかよく知ってるわね。ちょっと覗かせて……あぁ、ソレ異世界の別個体ね。
「ふ~~~ん……滾ってきちゃった♥ 早く行こう♦」
「ふふ……その渇望、キライじゃない。じゃあ続けていきましょうか」
そうして、死神と冥界神のコンビは再び動き出す。次の標的を目指して。彼らの出没地域は神出鬼没で、目を付けられた魔王は悉く退治されている。そのため、近年魔王達の間でも密かに恐れられる存在となっていた。
「早く逢いたいねぇ……♥ もうすぐだから、待っててね♥」
「くくく……彼も災難ねェ。ま、ソレまでに壊れないようにね」
2柱が暗黒大陸の影をゆく。魔王殺しの2人はこれからも暗黒大陸を跋扈し、彼らの敵を始末していくだろう。彼らの行き着く先がどうなるかは分からない。しかし確実に言えることは、現在彼らは
冥界の神へカーティアは、増えすぎた魔王を趣味として殲滅することを楽しんでいる。
そして、死神ナナシは、闘いの果てに名と強さを取りもどすことを楽しんでいる。
いつか再び〝彼〟と逢って
◇
「さぁて、次はどの案件だ?」
レオリオが〝聖光気〟を制御しながら空中へと浮かび、その形をぐねぐねと動かしながらモラウに尋ねる。仕事をしながらも訓練中である。
「今んとここれで終わりだァな。ま、オメェさんがやるこたほとんどねェから心配すんな」
「む……ならいいか。オレはちょっともう少し集中して訓練すっから、なんかあったら言ってくれや」
世はなべて事も無し。直近であった大事件と言えば、魔王降臨の世界同時多発テロぐらいである。その事件によって、更にハンター協会、いや、レオリオの王としての地位は強固なものとなった。平和の守護者。その安心感は、到底他の国の者では為し得ない事である。
しかしレオリオはその時の事を反省し、こうして日常の中でも日々訓練を行っている。
「どうだった?」
会長室を出たモラウにカイトがその様子を聞く。彼の様子が気になるようだ。
「大丈夫そうだな。アイツも丸投げが上手くなってきたし、仕事に関しちゃ
「オレも安心したよ。まぁ、第二婦人とか第三婦人の婚姻希望がまだまだあるっちゃあるがな」
「そりゃ無理ってモンよな! あんなにラブラブな様子見てりゃあなぁ」
がははと笑いながらモラウはそれを一蹴するが、カイトは冗談では無い雰囲気でモラウに詰め寄る。
「ならお前が偶には捌いてみるか? 割と洒落にならんのだぞ?」
「おっと、すまん。悪かったよ。それに、それがバレたら奥方が直々に潰しに行きかねねェからな…」
「そうだぞ。本当に気を遣うんだからな……まぁ、子どもでもできれば更に安心なんだがな」
「あの様子じゃすぐだろ……ほら、噂をすれば我等が女王サマだぜ」
2人の前方から、長い黒髪と奇妙なカチューシャを付けた見目麗しい女性が優雅に歩いてきた。その雰囲気は、この世界の女王というものに相応しい。
「あら? お二人ともごきげんよう。彼は?」
「あぁ、今そっから出てきたんだ。相変わらずだぜ。奥方はどうした?」
「その奥方ってのやめてくれる? アルカでいいわ。今、あらかた案件を片付けたトコよ。例の件はお父様に丸投げしたわ。いいよね?」
「問題ねェ。まったく優秀だぜ」
そう。彼らはあれからすったもんだの末、結婚した。アルカは最愛の兄に会えたことと、定期的に会えることで執着がなくなり、更にはそのうち墓参りにも行けそうと言うことですっかり落ち着いた。そして、不器用なレオリオとの交流を重ね、見事ゴールインしたのだ。
「いや、それはないわよ。だって、私なんかたまに来るクラピカさんとは比べものにならないから」
「……あのな? ありゃ人間のレベルを遥かに超えてるからな? 比較するなんて無理なんだぜ?」
「それでもよ。見習うところはまだまだ多いわ。精進しなきゃね……で、私も愛しの旦那サマと一緒に修行しようとおねだりしに行こうと思ってね」
あれから暗黒大陸組は龍神と交渉し、一年のうち二週間だけは滞在しても良いという許可を得た。ただし、様々な制約があり、自由自在に行動できるわけでも無い。それでもいっさい没交渉よりは全然良い。レオリオもその期間に集中して自らの力を高める訓練をし、更にその間の仕事はクラピカとビスケが協会の仕事を手伝うという事をしばらく続けていた。今はその必要も無いほどにアルカが活躍しているし、レオリオの修行も一段落している。尚、この体制を作り上げたジンとネテロはまるで帰ってくる様子が無い。ジンは一度帰ってきて、カイトに自慢話をしようとしたところをモラウ達に捕まって監禁されながら仕事をさせられたという経験から、彼は近づくことを避けているようだ。ただ、その時にジンが作り上げた仕事の見直しと構造改革によって、彼らの仕事が大幅に能率が上がったということから、ジンの恐ろしい程の有能さが伺える。
「ふぅん…ま、アイツも幸せなこった。こんないい嫁さんもらえるなんてな」
「しかし、修行もいいが仕事が片付いたのなら偶には遊びにでも行ったらどうだ?」
黙って会話を聞いていたカイトがインターセプトする。彼も表には出さないが、後継者問題には頭を悩ませている1人である。
尚、ノヴは最近産まれた5人目の子どものための育休中である。
「そうね……じゃあお言葉に甘えてそうしようかしら。お兄ちゃんもメリルと
そう言って、彼女は会長室へと去って行った。それを見てホッと一息つく二人。彼女は、本人に自覚は無くとも世界の女王として君臨する器を持っている。そんな彼女が本気を出せば、敵対者などいた場合跡形も無く消え去ることとなるだろう。そんな爆弾のような彼女ではあるが、仕事は幹部級以上にできるし、その実力も既にモラウやカイトを飛び越えている。協会を切り盛りする王の伴侶としては申し分ないのだ。更に、ゾルディックとの契約もより強固になり、万々歳である。これで子どもでもできたらもう何も言うことがない。
「これで仕込んでくれるといいが」
「アイツヘタレだからな。最近童貞卒業したからって奥手すぎんだよ。大体それも我慢できずにアルカに襲われてって話だろ?」
「まぁ、それぐらいの方が無闇矢鱈に種を蒔かれるよりもいいけどな。でもそろそろ積極的になってほしいものだ」
「その辺も大丈夫だろ。アルカもその辺は承知してるから任せときゃ安心だ」
「……違いない。ま、精々絞られてこい。いろんな意味でな」
意気揚々とおめかしして、会長室からレオリオを引っ張るアルカを眺めながら二人は呟く。あの様子なら心配は無いだろう。なんだかんだ言って相性の良い2人だし、そこには確かな愛が伝わってくるから。むしろ、初期の頃などラブラブが酷すぎて周りは辟易したものだ。ようやく落ち着いてくれて良かったともいえる。
「レオリオ、今日はショッピングに連れて行って。最近チャネールの新作が出たの。それ、ちょーだい?」
「おうおう、オレを誰だと思ってやがるアルカ、んなモンはいくらでも買ってやるぜ!」
「やった! レオリオだ~い好き!」
「お、おう……」
ぎゅっと抱きついたアルカの感触に思わず前屈みになる人類の守護者。いつまで経っても童貞臭が抜けない男である。だがそれは夫婦にとってはいいことなのだろう。この様子ならば、側近達が待ち望む次世代の誕生も近いはずだ。それは、全世界が待ち望む慶事でもある。
楽園の平和は彼らがこれからも守っていくだろう。人類の王、レオリオ=パラディナイトと、その妻、アルカ=ゾルディック、そして、それらを支えるハンター協会の人々の尽力によって。
◇
「ほい、これがアチアチの
「「「「わ~~~い!!!」」」」
真・アンダーソンパスタとは! アンダーソンパスタを暗黒大陸屈指の食材によって調理した、究極のパスタである。
その調理法の概略は、まず長寿米に匹敵する悠久小麦を桃花源から入手した玲瓏水で練って作ったパスタを若返りの水で茹でる。
その別作業として、美しく光り輝く翡翠玉ねぎと、大地の旨味を広範囲に吸い取って出来上がる地母神ニンニクをオーラで切り分け、一緒に50年に一度実がなる黎明ピーマンと、エンドマンモスの腸詰めであるウィンナー、暗黒大陸の生物を撃退するほどの辛さを持つ夜叉唐辛子(処理によって旨味の方が強くなる)を同時に切っておく。
最終段階として、地母神ニンニクを、暗黒大陸生物すら補食する食虫植物の実である羅刹オリーブから絞ったオイルで炒め、下処理をした夜叉唐辛子も加える。そこに切った翡翠玉ねぎや黎明ピーマンの輪切り、エンドマンモスウィンナーを加えて炒めた後、別にたっぷりと茹でて皮を剥いて潰した天界付近で採取できる極楽トマトを加えて和える。
そこに、アルデンテにゆであがったパスタを茹で汁と共に先ほどの鍋に加えて少し和えることで出来上がる、古今東西無い程の究極のパスタである!
一つ一つの食材が恐ろしい程に稀少な上、極上の美味さを誇るのであるが、それらを贅沢に、ふんだんに使用した、凄まじく手の込んだ料理である。当然味は天上の食べ物に匹敵する…というか、かつて存在しないほどの至高の美味さであると言える。尚、その効能については考えないものとする。
それを食することができるのは──
「うんま~~~~~い!!!」
「ハムッ、ハフハフッ!!」
「うま…うますぎるッ!!!」
「美味し~~~~!!!」
小さな子供たちが目を輝かせて食している。ここは暗黒大陸ではあるが、その中でも元魔王領域だった場所で、以前崩壊させた空中都市に似た場所である。カーム達はこの場所を気に入って、魔王を蹴散らした後に自分たちで魔改造し、現在では城のような豪華絢爛な居住区に加え、城下町とも言える街が広がっている。
「こらこら、トルネ。女の子なんだからおしとやかに」
「タルトくんももうちょっと綺麗に食べるのよ!」
「パイロ……君もだ」
「アリエルちゃん…貴女も少し何とかしようね……」
カーム達はあれからこの拠点に居を構え、平和に暮らしている。たまに別荘探しに出るが、ここらで一旦落ち着こうという意見が出て、ここが本宅に採用されたのだ。彼らはあの後しばらく幸せに過ごしてそれぞれの相手と1人ずつ、合わせて二男二女をもうけた。どの子がどの母親かはご想像にお任せする。
「まぁまぁ、いいじゃないか。まだまだ子供なんだし。……本格的に言わなきゃならないのはそこのキミ達だからな」
「ん? おかわり」
「我も」
「我もだ」
「オイラも~」
「余にも頼むぞ」
「あいよ~……って、キミ達なんでいるの? しれっとさぁ!」
いつの間にか食卓に加わり、ナチュラルに料理を堪能しているお騒がせなメンバーは、言わずと知れたドン=フリークスと愉快な仲間達である。彼らのグルメツアーももう長いこと続いている。その一環として、希有な食材集めとその調理の達人であるカームの領域を探し当て、お邪魔しているのだ。恐るべきはその食欲センサーである。
「ふむ……そう言われてもな。美味いものがここにある。ならば余達がここに来るのも当然の帰結であろう?」
「わり~な! にしても久しぶりに会ったなぁ! しばらく世話になるぜ!!」
「ヒトの英雄よ、久しいな。あれから精進しておるようで何よりだ。我が貴様の悪い運命を吹き飛ばした甲斐があったな」
「ふっ。我も向こうに運んだとはいえ、また此方で逢うとは思わなかったぞ。いや、重畳重畳」
「初めまして! オイララタトスク! それにしてもここはすげぇ街だなぁ! オイラこんなに人間見たのは久しぶりだぞ!」
そう、いつの間にかここの領域は何故か暗黒大陸の住民が集まり、街を形成していた。各地から、過酷な迫害生活を過ごしていた人間をはじめ、亜人種、つまりエルフやドワーフ達や、翼を持った天翼族や、狩猟を生業とする龍人族など、多種多様な人々がこの場所に集結しており、その中心にあるカームの居城を囲むように平和に暮らしている。今ではこの空中都市から地上への回廊まで完成し、続々と移住者が集まってきている。無論、彼らはここを安息の地としており、そこの中心に座すカームを神としてあがめている。
実質、カームは小国の王という形におさまっていた。尚、統治については街の住民が行っており、彼はノータッチである。たまに街の住民と交流するぐらいで、君臨すれども統治せずの状態だ。カームの妻達は、近くに街ができたからわざわざ帰らなくてもショッピングを楽しめると喜んでいる。
「メルエムも久しぶりねぇ。アンタ、国はそろそろできたの?」
「うっ……まぁ、なんだ。この美食ツアーがあまりにも面白すぎてな…」
「もうオメーさんはそれでいいんじゃねーか? それにしても、まさかお前の方が国を興すとは思わなかったぜ」
「いや、私も全く意図してなかったんですがね……今も続々と入植者が来てますし」
「王とはそういうモノだ。なろうとしてなるものではなく、自然とそうなってしまうものだからな」
そこに、おかわりすらも空にした子供達が、久しぶりに表れた客に興味津々で絡みに行く。
「そーだよ! パパは凄いんだ!!」
「ねぇ、リスの兄ちゃん強そうだね! ご飯食べたら遊ぼ?」
「おじちゃん! 旅してたなら面白いおはなしして~」
「美味し~~~。虫のおじさん、こっちもどう?」
「「……」」
「ん? いーけどオイラに勝てると思うなよ?」
「お、おう。分かった分かった。この後相手してやっからよ!」
「む……これも美味いな! 褒めてつかわす」
いきなりヒトの子供に絡まれて動揺し、沈黙する龍と鷲。平常運転で返事する蟲の王。精神年齢同じぐらいで平気で返すリス。そして、実は子供と接触するのが久しぶりな為、どもる人間と綺麗に対応が別れた。その惨状を目の当たりにして、カームが助け船を出す。
「子供達、少しこのおじさん達とお話しするから向こうで遊んでおいで。そのお話が終わったら遊んでくれるそうだから」
「ええ~」とぶーぶー言いながらも子供たちは別の部屋に引っ込んだ。どうせ念能力で盗み聞きするつもりだろうが、母親達と共に精神年齢の同じぐらいなラタトスクが一緒に向かったので大丈夫だろう。
「おいおい……オレ等は子守かよ」
「滞在費って事で。彼らも久しぶりの客だったから喜んでいるのでね」
「ふ……最高の一皿を馳走になったし、しばらくは馳走になるからそれぐらいはやってやろう」
「むぅ…ヒトの子守なぞやったことないぞ。貴様はどうだ? フレースヴェルグ」
「ふふん。我は子供向けの姿にもなれるからな。余裕だ」
「何? それぐらい我にもできるぞ!」
「こらこらケンカすんな……ところでお前さん、久しぶりに会ったから聞いときたかった事があるんだ」
ドン=フリークスがカームに向き直る。真剣な表情だ。
「……何をです?」
「以前、オレがお前さんに言ったな。人生楽しめってよ。今、お前は楽しんでるか?」
そういえば、もう遙かな昔、暗黒大陸から帰還する際に彼に言われたことだった。それを律儀に覚えていてくれたことにカームは感動する。そして、胸を張って彼に伝える。その想いを。
「えぇ。今、とっても楽しくて、充実してて幸せですよ!」
◇
「ねーねーパパ-。あの人達いつまでこっちにいてくれるの? ずっと遊びたいんだけど」
「そーだなー。まぁ、彼らも目的があるからな~。美味しいものを探すっていうさ」
「え~! なにそれ楽しそう! 僕もいっしょにいきた~い!!」
「ん~まぁ、もうちょっと大きくなってからかな~」
「えー!! ずる~い!」
「まぁまぁ、そう言わずに。本当にそう思うなら勉強と修行をもうちょっとしっかりやろうね」
「うっ……頑張りマス」
「ふふ、そうしてくれ」
「じゃあさーパパのお話しして~」
「ドンおじさんからお話は沢山聞いたんじゃないのかい?」
「パパからも聞きたいの~」
「そっか……じゃあ、パパの自分のお話をしようか。それ聞いたら寝るんだよ?」
「「「「わかった~」」」」
──どこから話そうかな。そうだな。パパは昔、身体がとっても弱かったんだ。そう、産まれる前の前からね。ずっと病院で過ごしていたよ。その時もとっても家族を心配させたなぁ。そして、いまから300年も前に、パパは生まれ変わったんだ。このとっても面白い世界にね。それからパパの物語は始まったんだ──
以上で、この話は完全に終わりになります。まだまだ色々なことが書けそうですが、これ以上になるとくどすぎるかな、と思って切りのいいところで。最後はドン=フリークスとの交流で締めたかったのでこうなりました。
この話はこれで終わりですが、最近別作品で暗黒大陸の話もでてきたので、とても嬉しいです! 他の作者さんの書く暗黒大陸も楽しみに読んでますし、楽しみにしています!
あと、冨樫神も復活していてとても嬉しい!(このペースでずっと続いてくれればいいな…)
さて、これまで、様々な誤字脱字でご迷惑をおかけしましたし、更新が止まっちゃって本当に申し訳ありませんでした。たくさん誤字報告をしてくださった皆様、この場をお借りしてお礼を申し上げます。そして、ここまで見てくださった読者の皆様、これまで本当にありがとうございました。
またどこかでお目にかかれるのを楽しみにしています。
それでは、皆さん。さようなら……ではなく、またね!