使わず一番になることで、やつを完全否定する。ずっとそう思っていた。そう、思っていたのに。
「君の、力じゃないか!」
その言葉を聞いて俺は思い出した。母の言ってくれた言葉。
「なりたい自分になって良いんだよ。」
どうして忘れていたのだろう。その言葉に救われていたはずなのに。いつの間にか、忘れていた。
自分の呪われた半身を見る。鏡に映るその姿は右目が緑色にぎらつき、髪も右だけが赤い。俺も夏にいや冬美姉さんみたいに母さんの血を色濃く残していればよかったのに。この右が醜い。親父の血を感じる右が本当に醜い。それをあの時一瞬だけ、忘れられた。でも、それではっきりしたんだよ。
「ああ、いた。次、試合だぞ。急げ。飯田君も、もうステージで待っている。」
「分かりました。」
先生に声をかけられステージに向かう。
*
「二回戦第二試合、お互いヒーロー家出身のエリート対決だ。ヒーロー科・飯田天哉VSヒーロー科・轟凍炎」
俺は、俺の原点は、使わず一番になることだったんだって。
「ふん!」
開幕氷結は読まれる。ここまで俺も兄さんもずっとそれで勝利してきた。それでも使う。それが強力だからだ。
(立ち幅跳びか!)
流石にベスト8までくればそれだけでは勝てないらしい。この距離は飯田の間合い。
「レシプロバースト!」
とっさに伏せて躱す。大きな隙が生まれる。
「決める!」ガン!
強力な一撃だが、来ると分かっていれば意識を保っていられる。氷結を畳みかけるが服を掴まれ場外に向かって走り出される。しかし、その足が突如止まる。
「大規模範囲攻撃しか見てなければ、こういう小細工は頭から抜けるよな。」
動揺したところで左手で飯田の腕をつかむ。それで勝負はつく。
「飯田君行動不能。勝者、轟君!」
控え室に戻る途中で兄に会う。
「凍炎…」
「使ってきなよ。左側。それでも俺が勝つ。俺が、使わず一番になる。」
兄に何も言わせずにそのまま控え室に向かう。べつに裏切られたなんて思ってない。使わず一番になるという目標の一番の障壁は両方使う兄なんかではなかったから。俺の障壁はもう緑谷、オールマイトにあるものを持ってるお前だけだよ。
*
「まさかの兄弟直接対決!両者トップクラスの成績でここまで登ってきた。ヒーロー科・轟凍炎VSヒーロー科・轟焦凍」
さあ、証明して見せよう。使わず一番になれることを。エンデヴァー、俺は、俺だけは何が起ころうともあなたを否定し続ける。だってそれが、俺の原点だから。
轟くんに双子の弟がいたら?という妄想の元書きました。使わず一番を目指すのもそれはそれで美しい。そう思うのです。ところでこのクラスは誰が雄英落ちたんでしょう。