千里の果てにあるものは 作:匿名
待たせてすまない…。なのに物語は全然進まないというね。許して欲しい、切実に。
ふわりと花の香りがした。重い瞼を押し上げて周りを見渡すと、そこは花の楽園と呼ぶべき美しき地。ここのことは知っている…嫌という程。
「やあ、初めましてかな」
「…ああ、初めまして。花の魔術師マーリン。出てくるのがほんの少し早いんじゃないか?」
「おや、キミの
からかうように笑うマーリンに顔を顰めつつ花畑に座り込む。視界に広がるのは、幻想が駆逐されつつあるこの世で幻想種の住む安寧の地、世界の裏側たる星の内海に広がりし理想郷。
「ここが、アヴァロン…」
「そうとも!王の話はいるかい?」
「いい。生まれてからどれだけその話を聞いたと思う?」
「さあ?37685回くらいじゃないかい?」
「なんで数えてるんだ…」
こいつとの会話は疲れる。同じ眼である筈なのに、こちらの全てを見通しているようなこいつの話し方に少しづつ苛立ちが溜まっていく。そんな俺の様子に気が付いたのか、マーリンが肩を竦めて座り込む。
「さて、ここにキミを呼んだ理由は分かっているかい?」
「…大凡は。聖剣についての話だろう」
俺を斬ることを拒絶するように俺と聖剣が反発しあったあの事象。なにか、俺と聖剣の間には何かしらの縁があるのだろう。
「まあそれもあるんだけどね。ぶっちゃけ暇つぶしさ」
「ぶっ飛ばすぞお前」
本気で殴り飛ばしてやろうかとも思ったが、正直な話こいつにバカ正直に殴りかかったところで殴れるビジョンが見えない。
「まあまあ、落ち着きたまえよ。キミと聖剣の間にある縁について話すには少し時期尚早なのさ。そもそも、それをキミに話すなら英雄王の方が都合がいいしね」
「都合…?」
「そう、都合がいいのさ。どうせ色々説明することになるなら、一気に説明してしまった方が楽だろう?」
何故だろう、次ギルガメッシュ王に会う時に恐ろしい事が起こる気しかしないのは。というかマーリンがこう言う形でなにか嘯く時は、絶対何かが起こる。それがいい事か、悪いことかは置いておくとしてもめんどくさい事にはなるだろう。
「さて、悠人くん。人類を救うために地獄へ自ら足を運んだ者よ。キミの運命とも呼べる縁がすぐそこまで迫っている」
「…縁ね」
「敢えて言おう。今ならまだ間に合うとね。さっさと人類最後のマスターの片割れなんて辞めて、全てを藤丸立香に投げ出してしまえばその運命と相対することも無くなるだろう」
「まあ、そうだな」
「それでも、まだ足掻くと言うのかい?正直な話、死ぬのが一番楽な道になるだろう」
死ぬのが一番楽な道ね…。死が救済なんて柄じゃないマーリンが言うんだから、相当なんだろう。──だけど、それだけは出来ないんだ。
「──花の魔術師、マーリン。貴方の忠告に心からの感謝を。だけど、貴方の忠告に従うことは出来ない」
「何故だい?別に、キミは人理救済なんて興味無いだろう?」
「ああそうだ。俺は別に俺だけが生きてればいい。だけどな──」
ふっと口元が緩むのを感じる。そして、首元にいつもかけている金色の鍵に軽く触れて笑う。
「約束があるんだ。絶対に破っちゃいけない約束が」
── ではな、同類。第七の地で会おうではないか
あの街で、
「嗚呼、そうだったね。キミはそういう
呆れたような、微笑ましいような、そんな笑顔を浮かべたマーリンが手に持った杖を天に掲げて告げる。
「ならば意気揚々と地獄へ赴くがいい!運命に絶望しようとも、キミが立ち止まらない限り、私は星の内海から何時でもキミを見ているとも!花の祝福がキミにあらんことを願っているよ─────!!」
花々が散り行き、俺の周囲を舞う。一際強くなった花の香りとともに目を閉ざすと、誰かに体を揺すられる感覚に目を少し開く。
「やあ、悠人くん。元気かい?」
「…さて、お前の眼にはどう映ってる?ロマニ」
「魔力不足に体には怪我が沢山。悪いけど、お世辞にも健康とは言えないかな?だけど、疲れてるだろうけどすまないね、これから少しだけミーティングがあるんだ」
「はいはい、分かったよ。このふざけた素晴らしき世界をさっさと救ってやろうじゃないか」
ロマニが差し出してきた手を取って軋む体に鞭打って立ち上がる。ふと、気になって手に取った首元にある黄金の鍵がほんの少しいつもより暖かい気がした。
ちまちまと投稿していくので、これからもよろしくお願いします。