やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。   作:アルファ麻呂

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最終話

結衣とメイクーモンは何も無い世界で眠り続けていた。アルファモンの力によって作られたデジタル空間には、結衣とメイクーモンを除けば生物は存在しない。色すら存在しない、文字の通りの無だった。

 

常人ならば一日と持たずに正気を失ってしまうであろう世界だったが、結衣とメイクーモンはそんなことなど知る由もなく眠り続けていた。何故ならば、この世界では時間の概念すらも曖昧だったからだ。ここで眠り続けている限り、結衣とメイクーモンは時間の流れから取り残される。その為眠りを妨げる要因も存在しないのだ。

 

しかしそんな世界で、結衣は誰かに呼ばれた気がして目を覚ました。

 

「誰か、私を呼んだ…………?」

「僕も聞こえた…………」

 

本来ならあり得ない目覚め。結衣とメイクーモンが辺りを見渡すと、色の存在しないデジタル空間の筈なのに黄金の光が結衣達の前に現れていた。

 

「この光…………マグナモン?」

『君達の知るマグナモンじゃあないよ。僕はロイヤルナイツのマグナモン。まだ君たちに直接会うのは危険だから、テレパシーで失礼するよ。実は君たちに見せたい物があるんだ』

 

黄金の光はやがて巨大なスクリーンに変わり、そしてそこに映し出されたのは…………

 

「インペリアルドラモン!?スサノオモン!?」

「ディアナモンに、ガイオウモン!タイガーヴェスパモンにリリスモンに…………アレはなんだろう?」

『シャウトモンさ。シャウトモンの最強形態、シャウトモンX7。君たちを助ける最後の希望の実現の為に、君たちの仲間が来たんだ。僕たちは手伝えないから、せめて見せてあげたくて』

「ヒッキー、ゆきのん、みんな…………」

 

 

 

アルファモンの王竜剣とインペリアルドラモンファイターモードのパンチが真正面からぶつかり合い、激しい衝撃がカーネル内部に迸る。究極体の中でも特に巨大なインペリアルドラモンファイターモードとアルファモンでは、こちらの方が大体目算で1.5倍くらいの大きさだ。パワーもジョグレス進化で二倍とはいかなくとも並みの究極体を圧倒するはずなのに、僅かに後ずさったインペリアルドラモンと違い、アルファモンは王竜剣を持ち替えるだけで特に響いた様子もない。

 

「パワーはむしろあっちが上か………インペリアルドラモン!!ドラゴンモードで押し込め!!」

「モードチェンジ!!ドラゴンモード!!」

 

俺の指示でモードチェンジしたインペリアルドラモンが四足歩行の勢いで突撃していく。王竜剣を振るうアルファモンだったが、当たる直前に飛びあがって回避したインペリアルドラモンが威力を抑えて連射したメガデスを放って牽制する。威力を抑えたといってもそれなりに威力のあるメガデスを放置出来なかったのか、アルファモンは王竜剣で直撃コースのメガデスを全て撃ち落としてしまう。だが、その爆風を俺たちは待っていた。

 

「いまだ!!インペリアルドラモン!!」

「合点承知!!」

 

葉山の出した指示通りに飛び込んでいったインペリアルドラモンがアルファモンの右腕に嚙みついた。アルファモンは鬱陶しそうに腕を振るうが、四足で一気に体重を込められて態勢を崩す。背中から倒れたアルファモンを前に、今度は手加減なしのメガデスを放とうとするインペリアルドラモンだったが、アルファモンは無事な方の手をインペリアルドラモンの腹部に当てると強烈なエネルギー弾を連発した。

 

「デジタライズ・オブ・ソウル!!」

「ぐあっ!!」

 

吹き飛ばされるインペリアルドラモン。アルファモンはゆっくりと立ち上がり、まだまだ余裕の様子で王竜剣を肩に担いだ。

 

「マジで強いぞ、あいつ………」

「比企谷は疑ってたけど、最後のロイヤルナイツって話は嘘じゃなかったみたいだな」

「当り前さ。元々私はロイヤルナイツが誤った道に進みそうになった時の抑止力だからね」

「いざとなれば十二体全部叩きのめせるくらい強いってわけか」

 

ただでさえ強いロイヤルナイツ。その中でもトップクラスの実力者だと臆面もなく言い放てるだけの実力は間違いなくある。ほかの連中が楽だと言うつもりはないが、出来れば助けて欲しいと思ってしまった。

 

「ドラゴンズロア!!」

「天羽々斬!!」

 

その時、もう一つの激しい衝突がカーネルに響く。デュナスモンとスサノオモンの激突だ。二つの必殺技の威力は互角、しかしデュナスモンは不満げな吐息を吐く。

 

「そんなものがお前の本気か!?スサノオモンの力はその程度なのか!?」

「まだまだ小手調べよ」

「嘘をつくな!!」

 

スサノオモンの懐に飛び込んだデュナスモンの爪が閃く。ダメージを負ったスサノオモンが僅かに後ずさるが、反撃のパンチでデュナスモンの方は微動だにしない。そのパンチの威力にも不満なのかデュナスモンは拳を握り締めた。

 

「お前は本調子ではないんだろう!!あのメイクーモンのウィルスに脅かされた後遺症だな!!そんな状態でこのデュナスモンに勝つつもりなのか!?」

「勝つわ。例え体調が万全でなくても………あなた達が居ない間のデジタルワールドの危機は待ってはくれないでしょう?」

「………!!」

 

スサノオモンの力は、たとえ人間である雪ノ下の制御下にあったとしてもデジタルワールドの神に等しい存在だ。今のちば組のメンバーの中で、ロイヤルナイツでさえも問答無用で一目置くのはスサノオモンだけだ。そのスサノオモンがロイヤルナイツの一員相手に互角にすら届いていなければ不満にもなるのだろう。

 

しかし雪ノ下、いやスサノオモンは負けるつもりも同情を誘うつもりもない。ゼロアームズ・オロチを構えてデュナスモンを真正面から睨み据える。そして、デュナスモンもまた必殺技の構えを取る。

 

「なら、今出せる全力でこのデュナスモンを超えて見せろ!!」

 

再度ぶつかり合うスサノオモンとデュナスモン。そしてその爆発の向こうでは激しい剣戟の音が響き渡っていた。ディアナモンとロードナイトモンの戦いだ。

 

「スパイラルマスカレード!!」

 

四本の帯剣が自在に伸び、四方から一斉に襲い掛かってくる。ディアナモンは空を自在に飛んでその攻撃を避け続けていくがそれに必死で反撃の糸口が見つからない様子だった。

 

『あーもう!!考えてみたら一対一で究極体と戦うなんて何年ぶりだろ………』

「だけど勝たないと!!」

 

一色の愚痴がこちらにも聞こえてくるようだった。しかしそれでも死線を潜り抜けてきた経験は簡単には消えない。直撃コースの帯剣を手にした三日月型の槍で切り払い、背中の突起から取り出した氷の矢を放つ。

 

「アロー・オブ・アルテミス!!」

 

必殺技の氷の矢がロードナイトモンに迫るが、ロードナイトモンはその場から一歩も動くことなく右手のパイルバンカーで防いでしまった。

 

「なぜだ。なぜそこまでして戦う?あの少女とメイクーモンにはそれほどの価値があるというのか?」

『私にとってはただの先輩だし。私には命がけで取り返すほどの恩はないかな』

「ならばなぜ?」

『そりゃ、私が好きだったせんぱいの恋人だから!!』

「答えになっていないぞ………」

「いろはにとってはそれが答えなんだ!!」

 

一気に突撃していったディアナモンとロードナイトモンがぶつかり合い、そして再び大量の氷が砕け散る音が響いた。

 

「オラオラオラァ!!どうしたぁ!!その程度かぁ!?」

 

カーネル中に響き渡るほどの怒号。ガンクゥモンがガイオウモンと殴り合っていた。

 

「ガイオウモン!!負けんじゃないよ!!ロイヤルナイツが何だっていうの!!」

「ど、どっちも暑苦しいぞ………」

 

ガイオウモンを挟んで激しく燃え上がる川崎とガンクゥモン。ガンクゥモンのヒヌカムイが激しく燃え上がり、川崎のデジソウルが爆発的に膨れ上がる。何がそこまで川崎のやる気を燃え上がらせたのかは謎だが、総エネルギーだけならこの空間では一番になりつつあった。

 

ガンクゥモンのヒヌカムイがガイオウモンをぶん殴り、後ずさったガイオウモンが双剣を地面に突き刺して吹き飛ばされるのを阻止する。更にそこへ飛び蹴りを放ってくるガンクゥモンを前に、ガイオウモンは素早く刀を抜き居合抜きで切り付ける。だが、気がつくとガイオウモンの刀は真ん中でへし折れてしまっていた。

 

「何っ!?」

「ふん。その程度の居合抜きを見極められねえようじゃ、ロイヤルナイツは務まらねえんでなぁ」

「だったら!!チャージ!バースト!!」

「ガイオウモン!厳刀ノ型!!」

「そうこなくっちやなぁ!!」

 

更なる力を解放したガイオウモン厳刀ノ型の大剣とガンクゥモンのヒヌカムイがぶつかり合った。

 

「ペンドラゴンズグローリー!!」

 

その時、上空から大量のレーザー光線が降り注いだ。リリスモンとタイガーヴェスパモンを狙ったエグザモンの必殺技だ。

 

タイガーヴェスパモンは超高速移動で降り注ぐレーザーを回避し、リリスモンは闇のオーラで作ったバリアで防ぐ。一発でも直撃すれば原型から残さず蒸発しかねない程の威力のレーザーの雨あられだが、当たりさえしなければ問題はないと言わんばかりに全て凌いで見せたタイガーヴェスパモンとリリスモン。だが、エグザモンは即座に上空から急降下してくる。

 

「ドラゴニックインパクト!!」

 

急降下と同時にエネルギーを噴出し、高熱と衝撃が同時に広範囲に広がっていく。

 

「殺意凄いわね…………大丈夫?リリスモン」

「なんとかね。全く、オメガモンとの戦いの傷なんて残ってないじゃないの」

「えーっと、雪ノ下さんの姉?なんとかどっちかの攻撃を当てないとジリ貧になりそうな気がするんだけど」

 

なんとか安全圏から戦況を眺めていた陽乃さんと三浦。タイガーヴェスパモンに抱えられて上空に逃げてなんとか技の効果範囲から逃れていたリリスモンが近くにまで寄ってくる。エグザモンに一方的に攻められ続けているこの状況が不味いのは二人とも分かっていた。

 

「せっかくニ対一なんだから、どっちかが相手を抑えてもう片方が攻撃しかないんじゃ無い?」

「それなら私がとりあえずバリアで防ぐわ。タイガーヴェスパモン、必殺技叩き込んでちょうだい」

「承知した!優美子、タイミングを教えてくれ!」

「わかってるって!!」

 

まずはリリスモンが広範囲に暗黒の吐息、ファントムペインを放つ。真っ黒なガス状のオーラが広がっていくが、エグザモンはそれを槍を奮って簡単にかき消してしまう。

 

「リリスモン。魔王が人間に与するとは」

「今の私は七大魔王じゃなくて、陽乃のパートナーなのよね。貴方もデジタマに戻ったら、次は人間のパートナーになってみるのも悪くないかもしれないわよ?少なくとも退屈はしないし」

「簡単に言ってくれるものだ」

 

巨大な槍、アンブロジウスを構えて突撃してくるエグザモン。リリスモンもナザルネイルに全エネルギーを込めて待ち構える。

 

「アヴァロンズゲート!!」

 

アンブロジウスを突き立てるエグザモン最後の必殺技。だがリリスモンは薄らと笑うと、エグザモンの槍は虚空を突いていた。幻影、とエグザモンが理解するよりも先に、タイガーヴェスパモンが背後から迫った。

 

「今だ!!」

「マッハスティンガービクトリー!!」

 

完璧な不意打ちで放たれたタイガーヴェスパモンの超高速の連続突き。だが、全て叩き込まれてなおエグザモンは微かに呻くばかりで即座に振り向いてアンブロジウスで反撃してきた。

 

「うっ!?」

「技は決まったのに…………!!」

「今の技は悪くは無かった。だが、進化できるようになったばかりの究極体の技で、ロイヤルナイツである私の体に傷を付けられると思っていたのか?」

 

エグザモンの一撃を真正面から食らってしまい、地面に叩きつけられてダウンしてしまうタイガーヴェスパモン。エグザモンの指摘する通り、タイガーヴェスパモンでは圧倒的に経験値が不足している。そしてもう片方であるリリスモンも、以前のガイオウモンとの戦いの傷は今だ癒え切っていない。

 

「うーん。デジモンの戦いに関しちゃ私も素人だしなぁ。リリスモン、なんかパワーアップ出来るやつないかしら?それこそめぐりのアルフォースブイドラモンみたいに、X抗体とかさ」

「X抗体なら前は持ってたけど、ガイオウモンとの戦いで無くしたわよ」

「じゃあ、普通にこのまま倒す方法を………」

「い、いや!!X抗体ならあるし!!タイガーヴェスパモン!!あんた、確か素でX抗体持ちだったよね!?リリスモンに渡せない!?」

「あ、ああ………完全に受け渡すことはできないが………欠片くらいなら」

 

三浦の指摘を受けたタイガーヴェスパモンが自分の胸のユニットから光り輝くデータを抜き出し、リリスモンに差し出す。それを受け取ると、リリスモンは失われたX抗体の力を取り戻してパワーアップした。

 

「ふふ。感謝するわタイガーヴェスパモン。完全には程遠いけど………これならロイヤルナイツ相手でも戦えるわ」

「ほざいたな。七大魔王のリリスモン………例え人間のパートナーになったとしても、かつての悪行を忘れたとは言わせんぞ!!」

「大丈夫大丈夫。私がちゃんと手綱握るから」

「そうね。陽乃と一緒なら、せこい悪行なんてもうしないわ」

「「ふふふふふふふふふ」」

「自信満々になった途端に悪役感万歳なんだけどこの二人………本当にあの雪ノ下さんの姉なん?」

「キャラの濃さは姉妹とも共通ではあるが………」

 

三浦とタイガーヴェスパモンの呆れ果てた声を他所に、リリスモンXはエグザモンの槍を軽くいなしてナザルネイルを突き立てる。タイガーヴェスパモンの一撃では傷すら付かなかったエグザモンだが、リリスモンXの攻撃では流石にダメージを負ってうめき声を上げた。

 

「ま、こう見えても比企谷君は可愛かった子供の頃からの付き合いだからね。お姉さんとしては助けてあげたいのよ」

 

そう言う陽乃さんの横顔は、一色とは比べ物にならないくらい真っ黒な笑みを浮かべていたのだった。

 

「ガルルキャノン!!」

 

その時不意にカーネル全体の気温が一気に下がる気配を感じて振り向くと、オメガモンがシャウトモンX7に向けてガルルキャノンを放っていた。

 

「シャウトモン!!ぶっ放せ!!」

「うおっしゃー!!ダブルフレアバスター!!」

 

小町の指示でシャウトモンX7が左手から放つエネルギー波がガルルキャノンを相殺する。大量の水蒸気と爆風で一瞬お互いの姿が見えなくなるが、オメガモンはグレイソードで煙を切り裂き突撃していく。

 

オメガモンのグレイソードとシャウトモンX7のマイクがぶつかり合い、激しい鍔迫り合いが始まる。だが、シャウトモンX7はこう言う真正面からの殴り合いに特化した最強形態だ。例え相手がロイヤルナイツのオメガモンであろうとも一歩も引いたりはしない。

 

「流石だ。シャウトモン」

「そっちもな!!オメガモン!!だが勝つのは俺達だ!!」

 

マイクを振り下ろしてオメガモンを振り払い、強烈なタックルで吹き飛ばす。オメガモンも流石にうめき声を上げて後ずさるが、それでも負けじとガルルキャノンを連発してシャウトモンX7を牽制する。流石のシャウトモンX7もガルルキャノンの直撃は避けたが、僅かに距離を取ったオメガモンはその体に新しいデータをダウンロードしていく。

 

「私たちも君たちの勝利を願ってはいる。だが、だからこそ手加減は出来ない。はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

オメガモンの体が輝き、その背中に背負ったマントが黒く染まる。そして両肩のグレイソードとガルルキャノンが、なんとガルルソードとグレイキャノンに切り替わる。

 

「うえっ!?オメガモン、もしかしてX抗体とか!?」

「いや。ブリッツグレイモンとクーレスガルルモンのデータを受け継いだ新しい姿…………Alter-Sだ。かつて君たちを苦しめた暴走形態のAlter-Bとは違うぞ」

「み、見れば分かるっての!!けど、燃えてきたぜ!!小町、どでかい一発行くぞ!!」

「うん!やっちゃえシャウトモン!!」

 

再び切り掛かってきたオメガモンAlter-Sのガルルソードをマイクで迎え撃つシャウトモンX7。氷の力を宿したガルルソードを前に、マイクに業火が宿る。

 

「ガルルソード!!」

「クロス!!バーニングロッカー!!」

 

大爆発と共に二つの必殺技がぶつかり合い、競り勝ったのはシャウトモンX7だった。オメガモンAlter-Sはダメージを負いつつも後退り、今度はグレイキャノンを構えた。

 

「グレイキャノン!!」

 

今度は灼熱のエネルギー弾が迫ってくる。それを迎え撃つシャウトモンX7はどっしりと構えて、胸のブイにエネルギーを込めた。

 

「行くぜ皆んな!!ありったけをぶつける!!」

 

デジクロスした仲間達の想いを胸に込め、全身全霊のエネルギーを放出するシャウトモンX7の最強の必殺技だ。

 

「セブンビクトライズ!!」

 

放たれたエネルギー波はグレイキャノンとぶつかり合い、激しい鍔迫り合いになる。

 

「シャウトモン!皆んな!!」

「ウオオオオオオオオオオ!!」

 

小町の声援を背に、シャウトモンX7は限界を超えてエネルギーを込めていく。やがてグレイキャノンとセブンビクトライズのぶつかり合いは、オメガモンの方へと流れ込んでいった。

 

「…………見事だ」

 

遂にオメガモンAlter-Sの体にセブンビクトライズが叩き込まれ、カーネルの戦いの最初の決着がついた。

 

そしてその勢いは、一気にこのちば組とロイヤルナイツの対決の流れを変えた。

 

「八神雷!!」

「クレセントハーケン!!」

「奥義!刀華静謐!!」

「ファントムペイン!!」

「マッハスティンガーV!!」

 

スサノオモンの雷が、ディアナモンの三日月型の槍が、ガイオウモン厳刀ノ型の大剣が、そしてリリスモンXの黒い波動に合わせて放たれたタイガーヴェスパモンの連続突きがロイヤルナイツ達に放たれる。

 

四つの爆発が起きて、最後に残されたのは俺達とアルファモンだけだ。

 

「比企谷、まさかとは思うが…………ここでみんなの援護を期待するような恥知らずな考えは持ってないよな?」

「ば、馬鹿野郎!そんな訳あるとでも思っているのか!?」

「「思ってたな!!」」

 

葉山に図星を付かれて思わず声が裏返り、インペリアルドラモンがわざわざ振り向いてツッコミを入れてくる。そんな事している暇があったらアルファモンと戦えや。

 

「ドラゴンモードで突撃だ!!」

「「あいよ!!」」

 

再び放たれたデジタライズ・オブ・ソウルを回避しながら突撃していくインペリアルドラモン。アルファモンは王龍剣で迎え撃とうとするが、そのタイミングでファイターモードへとモードチェンジし、勢いに乗せた飛び蹴りを放った。

 

「何っ!?」

「いいぞ!!そのまま格闘戦だ!!」

 

アルファモンが王龍剣を取り落としたのを見た葉山の指示で、強靭な足で強烈なローキックを連続で放つインペリアルドラモン。アルファモンは両腕でガードするが、キックの連続で遂にガードが下がった。

 

隙を見逃さず、即座にインペリアルドラモンは強烈なローリングソバットでアルファモンを吹き飛ばす。モロにキックを食らったアルファモンが初めてうめき声を上げてよろめき、俺達はD-3を介してインペリアルドラモンに必殺技の指示を出す。

 

「「トドメだ!!」」

「「ああ!!ギガデス!!」」

 

生体砲を胸に装着し、全エネルギーをぶちかますインペリアルドラモンの最強必殺技だ。アルファモンは即座に手元に王龍剣を呼び戻すと、あちらも全エネルギーを込め始める。だが、既にエネルギーを込め終えたインペリアルドラモンのギガデスと、当たる直前にエネルギーを込め始めた王龍剣ならこちらの方が圧倒的に優位だ。

 

「究極戦刃王龍剣!!」

 

エネルギーを込めきれないうちから王龍剣を振り下ろすアルファモン。王龍剣の切っ先はギガデスのエネルギーに真正面からぶつかり、そして王龍剣はあっさりと弾かれた。

 

「…………見せてもらったよ。人間とデジモンの可能性を」

 

その言葉を最後にアルファモンはギガデスの光の中に消えていった。

 

「勝った、のか…………?」

「多分、ね」

 

全員無事に揃って駆け寄ってくる。しかしインペリアルドラモンも一気に幼年期のチビモンとミノモンに退化してしまい、雪ノ下以外のメンバーのパートナーもそれぞれ幼年期の姿に戻ってしまっていた。

 

「条件はこれで揃ったはずよ。後はイグドラシルにリブートを実行してもらうだけのはず」

「流石に残りのロイヤルナイツと戦えって言われたらキレますよ、私…………」

 

雪ノ下の言葉にルナモンの幼年期、ムンモンを抱いた一色が本気でうんざりした顔で呟いた。その隣でコロモンを抱く川崎も、声には出さないものの同意する様に頷く。

 

「最初はちゃんとあの六体を倒したらオッケーって話でしょ?」

「ちゃんと契約書に残しておいた方が良かったかなー?」

 

プロロモンを抱いて不安げな顔をする三浦。その隣でパグモンを肩に乗せた陽乃さんが妙に現実的な事を言い出した。

 

「あ、見てお兄ちゃん!なんか光の扉が!!」

 

トコモンを頭の上に乗せた小町の指差す先にゲートが現れた。俺たちはお互いに顔を見合わせ合い、そのゲートをくぐり抜けた。もうここまで来て立ち止まってはいられない。

 

ゲートを越えた先は、カーネルとは正反対の真っ白な空間だった。十三の光の塊が円を描き、その中心に聳え立つ巨大な城壁の様な建造物。これこそがデジタルワールドのホストコンピュータ、イグドラシルだ。

 

そしてそのイグドラシルの足元に、ポツリと立ち尽くしているピンク色の髪の女子が。

 

「ヒッキー、みんな…………」

「由比ヶ浜!!」

「由比ヶ浜さん!!」

 

思わず駆け寄り、俺と雪ノ下の二人で抱きしめてしまう。言葉も無ければ恥ずかしいとかそう言う感情も無い。とりあえず、由比ヶ浜が実在していると言う確証が欲しかったのは、俺も雪ノ下も同じだ。そして由比ヶ浜も同じ気持ちだったのか、ギュッと俺たちの背中に手を伸ばした。

 

「ごめんねヒッキー!ごめんねゆきのん!!本当にありがとう…………!!」

「いいのよ…………だって、と、友達じゃない」

「お前とメイクーモンの為だったら、これくらいやれる」

 

思わず口をついて出てしまった言葉に、真後ろの方から何やらオー、だのキャッ!だの変な声が聞こえてきたが聞こえないフリをした。と言うか気にしている暇も余裕も無かった。とりあえず今は、由比ヶ浜が目の前にいるという事しか頭に無かった。

 

そんな中、イグドラシルは一際輝きを増していく。十三の光の塊がゆっくりとイグドラシルに吸収されていった。当代のロイヤルナイツの最後だった。

 

「必ず、デジタルワールドは守るからな」

(約束だよ)

 

アルファモン、いや既に幼年期の姿からデジタマに戻りつつあるその存在は、それだけ言い残して始まりの街へと帰って行く。そしてその代わりにイグドラシルの中から一つの光が落ちてきて、それは由比ヶ浜の腕の中に収まった。

 

「メイクーモン?」

「…………うん。僕だよ」

「メイクーモン!!」

「わぷっ!!」

 

由比ヶ浜の腕の中から顔を出したメイクーモンの体からは、もうあの赤黒い稲妻は出てこなかった。暴走ウィルスは完全に消えていた。メイクーモンの人格データにも一切の欠損も無く、こうして俺たちの二度目のデジタルワールド冒険は、俺たちの覚悟やら何やらを置き去りにしてアッサリと終わったのだった。

 

 

 

 

 

三ヶ月後。

 

桜の開花を目前に控えた総武高校で、俺たちは休日だと言うのに奉仕部の部室で弁当を食べていた。

 

「良かったわね。ちゃんと小町さんが総武に受かって」

「ああ。大志の野郎が落ちて小町に近寄る心配が減ってくれれば一番だったんだがな」

「大志君もちゃんと受かって良かったって言うところじゃないの!?」

 

小町達の受験は色々とあったがうまく行った。来月からは同じ高校に通えると言う幸運と、大志が小町相手に色目を使うんじゃないかと言う疑いで落ち着かない気持ちで悶々としてしまう。と言うか大志は受験の直前にデジタルワールドに呼び出されて一週間くらい冒険して帰って来ていたから内心総武は無理かもなと思っていたのだが、案外何とかなるもんだ。チッ。

 

何はともあれもうすぐ城廻先輩達の世代の卒業式と、小町達の入学式が待っている。どちらも生徒会の仕事がてんこ盛りだからと一色に呼び出され、俺たち奉仕部はこの所毎週の様に休日出勤だ。せめて賃金は欲しいのだが、一色が真顔でメイクーモン事件の時手伝いましたよね?と返してくると分かっていれば逆らえない。

 

「あーあ。八幡、俺やっぱ帰って良いか?」

「ダメだブイモン。働け。出来れば俺の代わりにな!」

「ふざけんな!!俺は帰るぞ!!小町とシャウトモンが合格記念パーティーやってんだ!!」

「まーまー、たまには良いじゃん。ね、ブイモン」

 

四つ並んだ最後の机の上で弁当を食べていたブイモンが愚痴り、それをメイクーモンが諌めるいつもの光景。ブイモンも優しく諭してくるタイプのメイクーモンには中々逆らえないのか不貞腐れた顔でお茶を飲んでいた。

 

総武高校の入学式と卒業式はパートナーデジモンを連れてきても良いと言うルールだ。故にデジモン用の椅子やらトイレやらを用意しないといけないのだが、その辺の準備にもやはりある程度デジモンの力を借りないと出来ない部分も出てくる。

 

今はこうやって特別な時に一々準備しないといけない訳だが、いつかはパートナーデジモンを連れて来るのが当たり前の時代が来るのかもしれない。昔はその辺の未来を想像して、何が楽しいんだか、と冷めた目で見て来た。だが、今は…………

 

「あ、メイクーモン。口に付いてるよ。ちょっと動かないで」

「ん」

 

由比ヶ浜がハンカチでメイクーモンの口元を拭く姿を見て、そんな未来も悪く無いんじゃないかと思える様になって来た。心変わりの理由は自分でもよく分からない。

 

デジモンが居る世界。選ばれし子供。テイマー。俺が今生きているこの世界は、そんな世界だ。色々あったけど、俺はそんな世界だから出会えたデジモン達の事がきっと好きになったんだろう。もしかしたら、ずっと前から好きだったのに、素直にその事を認められなかっただけだったのかもしれない。

 

俺がそんな風に素直にこの世界とデジモンが好きだと自覚できるようになれた理由があるのなら、それは…………

 

「そろそろ仕事に戻りましょう。みんなが待っているわ」

 

雪ノ下の言葉に頷き、俺達は荷物を纏めて体育館に移動する。

 

「あ、八幡!」

「みんなだー」

「来たよー」

「と、戸塚ぁぁん!!」

「我も居るぞッ!!」

「…………あ、そう」

「リアクション違い過ぎない!?」

 

体育館の扉を開けば、そこにはテリアモンとロップモンを肩に乗せた天使、戸塚が居てくれた。その隣に見苦しいデブが居る気がするが、そんなことは無いだろう。材木座なんかが戸塚の隣に居れば霞んでしまうのは自然の摂理なのだから。

 

「僕たちも手伝いに来たよ!」

「ありがとう戸塚!一緒にやろう!!」

「うん!!」

「ちょ、ちょっとストーップ!!」

 

思わず戸塚とはじめての共同作業を始めそうになるが、それを由比ヶ浜が力づくで引き剥がされてしまった。

 

「何をするんだ由比ヶ浜!俺と戸塚の共同作業を!!」

「いや、目つきキモ過ぎ!!明らかに危険な目をしてた!!」

「ええそうね。不審者…………いえ、変質者の目をしていたわ」

 

由比ヶ浜と雪ノ下のダブルアタックに思わず後ずさってしまうが、今度は遠くの方で生徒会役員達に指示を出していた一色と目が合ってしまう。どうやら遠目に見て何が起きたのかは一発で理解できたらしく、あからさまに気色悪そうな顔で近寄って来る。

 

「またですかせんぱい。彼女持ちなんだからいい加減戸塚先輩に欲情するの辞めません?」

「よ、よくじょう?」

「お、おいおいオイオイ一色!?何を変な事言ってくれちゃっている訳!?」

「そうだよヒッキー!ちゃんと私の事見てよ!!」

「何ぃッ!?」

 

今度は由比ヶ浜がとんでもない事言い出して、しかも言った本人がすぐに顔を真っ赤にしてフリーズしてしまう。そしてしばらくアワアワした後、意味不明なうめき声を上げて逃げ出してしまった。

 

「あーあ、八幡。流石に酷いんじゃないか?」

「お、お前まで俺が悪いってのかブイモン!!」

「当たり前じゃん。小町にまた通報されたく無かったらサッサと追いかけろよ」

「今の流れは全て記録させてもらっているわ。比企谷君、十分以内に仕事に戻れなければ…………分かっているわね?」

「クタバレリアジュウ」

 

ブイモンと雪ノ下の冷たい眼差しと、俺と由比ヶ浜が付き合い出してから時折死んだ目で同じセリフを繰り返す様になった材木座のせいで居心地が悪い。仕方なくメイクーモンを抱き上げ、由比ヶ浜の匂いを探らせた。

 

「結衣はこっちだよー」

「すまん…………」

 

後ろをついて来るブイモンの眼差しを背中に浴びながら、メイクーモンの案内に従って辿り着いたのは屋上だった。思わずここでも色々あったな、と思い返してしまうが、まずはフェンスに背中を預けて蹲っている由比ヶ浜が先か。

 

「あー、その、なんだ…………悪かった。つい、戸塚を前にしちゃうとテンション上がるんだよ」

「…………」

「悪ノリって言い訳は、言い訳にならないよな。うん。由比ヶ浜…………俺…………」

「…………結衣」

「え?」

「…………反省してるなら、結衣って呼んで」

 

思わず声にならない悲鳴が漏れた。一応、俺達は付き合い出してそろそろ四ヶ月。にも関わらず、俺は由比ヶ浜を下の名前で呼んだことは無かった。由比ヶ浜も俺をヒッキー呼びしているんだし、と言い訳して来ていたのだが、予想外の所で試練になって襲い掛かって来た。

 

暫く無言の時間が続く。由比ヶ浜は蹲っていて顔は見えないが、僅かに見える耳は真っ赤だった。当然、俺も。

 

「…………」

「…………」

「…………ぃ」

「…………」

「…………悪かった。反省してる。本当に、悪かった…………結衣」

「…………いいよ。八幡」

 

そう言って顔を上げた由比ヶ浜…………いや、結衣の顔は当然ながら真っ赤。そして俺も心臓がバクバク言っていて、真っ赤なんてものじゃない。今にも失神しそうな程の恥ずかしさと、結衣と呼べた事がなんとなく嬉しかった事がごちゃ混ぜになって思わず視線を逸らしてしまい、録音機を片手にニヤついてるブイモンと目が合った。

 

「ブイモンお前ー!!!!!」

「へへへ!コイツで晩飯のオカズ一つ追加だぜ!!」

「ふざけんな!!消せ!!」

 

俺の手から逃れるブイモンの満面の笑顔に色んなモノが台無しになってしまう。見れば結衣の側に駆け寄るメイクーモンの懐にも、通話中の画面のスマホが。

 

「あ、メイクーモン!お前まさか…………!?」

『気づかれたわね。消すわ』

「ごめんね。雪乃に頼まれちゃって」

 

テヘッと片目を瞑るメイクーモン。どいつもコイツも可愛くないったらありゃしない。

 

「畜生!!やっぱり…………!!」

 

やはり俺とブイモンの青春ラブコメは間違っている。




これにて完結でございます。

今までお付き合い頂き本当にありがとうございました。書き出した当初は正直言って、お気に入りが十件に届けば良いかなくらいの気持ちで始めたこの二次創作。気がつけば評価バーに色が付き、赤くなって二度びっくり。後半になるにつれて書く話がまとまらなくなっていくに連れて折れそうになる心を支えてくれました。

俺ガイルの人気は未だに衰えず、デジモンシリーズもゴーストゲームに02劇場版にサヴァイブの発売も控え、両コンテンツはこれからも末長く続いていく事でしょう。私も一ファンとしてこれからも追いかけていきますし、このハーメルンでの盛り上がりを楽しみにしていきます。

それでは改めて、これまでありがとうございました。
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