ガチャは悪い文明…
一夜明け、遂に始まった通常授業は「プレゼント・マイクがうるさい」という点を除けば、概ね普通の高校授業と変わらないものであった(内容がハイレベルなのは置いておくが)
そしてお待ちかね
「わーたーしーが! 普通にドアから来たァ!」
「オールマイト! 本当に先生やってるんだ!」
「シルバーエイジのコスチュームだ、すげえ」
「画風が違いすぎて鳥肌が……!」
No.1ヒーロー、オールマイトによる授業が始まるとあって、他の生徒達は興奮を抑えきれないといった反応を示す
「(てか、マジでリアルで見ても画風違うよな…アニメや漫画で見るなら判るが、どーなってんだアレ?)」
「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地を作るため様々な訓練を行う科目だ! 早速だが今日はコレ!
「おおおっ!」
壁からせり出る構造に興奮を隠すこともせず、各々がコスチュームケースを持って更衣室へと急ぎ、俺もケースを確認する
「身体の動きを阻害せず、防刃、防弾、耐火性に優れたスーツ(ポケット多め)とは言っておいたが…」
ぶっちゃけ、武器も防具も自分で創れる俺がコスチュームの要望を出す必要があるのかといえばそれまでなのだが…
一人だけコスチュームが無いという悪目立ちは避けたかったから出しただけだ
まぁ最悪、創った防具は上から着込んでも良いわけだし、なんならアクセサリーの類だけでもそれなりの防御力は手に入れられる
文字通り、防具がオマケになるような性能のアクセサリーも存在する訳だが…
「流石に創るにゃ時間が足んねぇ、と…」
着替えを終えて市街地を模した演習場に入ると、既に何人かの生徒がオールマイトに質問を投げかけていた
何人もの生徒に質問攻めされる姿は、さながら聖徳太子のようだった…いや、自分で聖徳太子って言ってたが
「状況設定は「敵」がアジトに「核兵器」を隠していて「ヒーロー」はそれを処理しようとしている」
設定がアメリカンなのは、気にしたら負けだとして
くじ引きで決まったチームの結果、俺が端数として省かれてしまった…
いや、本当はハズレくじ的なのを引いただけなのだが
「あのー、俺はどうすれば?」
「おっと、神尾少年が引いたか!そのくじは一人で戦ってもらう代わりに一番最後!皆の手の内が多かれ少なかれ判明した状態で、希望するチームと戦うことができるよ!あ、まだ戦闘可能なチームだけね!」
「一人で戦う代わりに情報が手に入る…一長一短なのか…!」
「おそらく昨日今日組んだだけで直ぐにチームとして複雑な動きが出来るようにはならないはず…するとどうしても攻め手にせよ守り手にせよ動きが単調になってしまう、そこをどう崩すか考えながら動かなきゃいけないしでもそれに対応出来るかどうかは別だしm…」
「Hey!緑谷少年ストップだ!」
「はいッ!?」
オタク特有の早口モードになってしまった緑谷をオールマイトが現実に引き戻す
「ンンッ…まぁ、今緑谷少年が言ってしまったが、まだ経験も無い有精卵のキミ達では直ぐに複雑なチームワークは組めないだろう?その隙きを突くのが神尾少年、逆に隙きを突かれ無いように工夫をこらすのが指名されたチームの課題だね!」
それを初っ端の授業からやらせようとしている辺り、雄英高校が厳しいのかオールマイトが厳しいのか…
カンペ覗きながら授業進行するくらいだから、多分そこまで考えてなかったのでは?と言いたくなるものだ
ヒーローとして一流でも、新人教師としては…ってやつだな
まぁ、今までやってこなかったであろう畑違いのことをやろうとしているのだから、仕方無い部分はあるのだが
「良し!!まずはAチームがヒーロー!!Dチームがヴィランだ!!それ以外の皆はモニター室に行こう!!」
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爆豪の奇襲から始まった初戦は、概ね原作通りの展開で進んでいった
まぁ俺に手の内を見られるからといって気にするような爆豪では無いだろうし、何より爆豪の頭の中は緑谷を潰す事でいっぱいだろう
強さという流動性のあるものの上で胡座をかいて踏ん反り返って見下していたら、いきなり相手がその地盤を脅かしかねない存在になっていて焦ってるんだろうな
「まぁ、なんともガキっぽい…」
挙句の果てに明らかに
幸いにも当たらなかったが…いや、わざと外したのかもしれんが、もし当たって緑谷が
「どうするつもりだったのやら…」
私怨でそんなことになれば、少なくとも高校は退学、下手すりゃ家裁送致か?ヒーローなんて夢のまた夢だな
出てきても周りからは責められるだろうし…それでも強さを求めるならヴィジランテか…最悪は
まぁそんな最悪は起らず、無事に…とは言い難いが緑谷チームの勝利で初戦の戦闘訓練が終了する
「オールマイト」
「ん?神尾少年どうしたんだい?」
「緑谷の怪我、治療薬があるので渡しに行きたいのですが」
「お、それじゃ直ぐに行ってあげてくれるかい!恐らく保健室に行くと思うからさ、あ、勿論その間にも訓練は続けるけど、後でモニターの録画見てから決めて構わないからね!」
「ありがとうございます、それじゃ」
流石にあの腕は見るに堪えないので、オールマイトに許可を取って緑谷にポーションを届けることにする
身体の欠損レベルでは無いため、恐らく治るはずだ
「すんませーん、リカバリーガール、こっちに緑谷とかっていう右腕ボロボロのヤツ来てます?」
「あ、神尾くん!」
「コラコラ、余り動きなさんな、アンタ昨日も来てて治しきれないんだからね」
チューッと伸ばしていた口を戻しながらリカバリーガールにお小言を貰う緑谷
「リカバリーガール、コレを」
俺はポケットに収納しておいた小瓶を取り出し、リカバリーガールに渡す
「おや、コレは?」
「経口摂取出来る治療薬で、効果は自分で確認済み、即効性アリのものです」
「ああ…アンタ、もしかして入試でも同じ様なものを配らなかったかい?」
「あ、ハイそうです」
流石に救護班から話は伝わってたか
「ありがとねぇ…アンタが受けた試験会場とは別の場所で、怪我人が出てたから、あの時は助かったよ」
おおう、ちょっとしたポイント稼ぎのつもりで渡したものが役に立っていたとは…
「ほれ、緑谷、グイッといけ」
「え、あ、うん!」
俺に急かされ、小瓶を受け取った緑谷は躊躇う様子も無く一気に飲み干した
「あ、飲みやすい…リンゴ?っぽい味だね」
「お、正解だ。誰でも飲みやすい様にリンゴ味に調整してある」
もしコレを救助活動で使う場合、苦い薬の味だと子供は飲めないだろうし、吐き出したりしてしまうかもしれない
無味無臭にも出来るんだが、ソレはそれでただの水だと疑われるかもしれないしなぁ…
なお、ビールやワイン等の味に変更も出来る()
「アンタ、よく考えてるねぇ…ウチで医療専門に学んでみないかい?」
「アハハ…戦闘訓練でボコボコにされたりしたら考えときますよ(汗)」
「わ、スゴい…もう痛みが引いてきてる…」
チラリと緑谷の方を見ると、既に折れた箇所は元に戻り、その他の生傷も治っていた
「治ったな?ではリカバリーガール、きちんと治っているか診てやってください。緑谷は大事を取って、授業終わったら戻ってこいってよ」
「う、うん!」
「はいよ、ちょいと触診するからね(この短時間で骨折が治るなんてねぇ…とんでもない効き目の薬だこと…)」
「じゃ、俺は授業戻るから」
俺はそのまま保健室を後にし、授業中の演習場へ戻る
戻るとどうやらちょうどヤオモモのチーム(お荷物つき)が負けた所だった
授業だというのに、性欲に忠実過ぎるエロブドウのせいで負けたヤオモモが不憫すぎる…
「味方の足を引っ張るとか、ヒーローとしても敵としても二流以下では…?」
「おおっと!神尾少年!戻ってきたね!緑谷少年の様子はどうだったかな?」
俺が戻ってきたのに気づいたオールマイトが、モニター前を離れコチラを振り向く
「薬もしっかり効いてたし大丈夫だと思います、リカバリーガールにも念の為もう一度診て貰ってますが」
「うむ、神尾少年、治療が出来る個性というのは非常に貴重なんだ、有難う!」
「いえ、あの腕を見てられなかっただけなので…」
これから緑谷がフルカウルをモノにするまで、あのバキバキに折れた腕を見せられるのは勘弁願いたいモノだ
「では今の訓練、どこが良くて何処が悪かったかだけど…」
「峰田の性欲が全て悪いと思います、退学かパイプカット手術が妥当かと」
「(((ブハッ!?)))」
途中からしか見てないが、俺が感じたことを率直に言ったら何人か吹き出していた
「ああ…ウン…ちょっと今回は八百万クンにはかなりやりにくかっただろうね、まぁあれほどじゃなくても、相性の悪い個性の組み合わせ、みたいなチームアップもあるから気をつけようね!」
若干引き攣りながらも、オールマイトがそう締めくくる。小さく「相澤クンに相談かなぁ…?」と言っていたので、峰田には何かしらの制裁が下されるだろう
峰田、多分ヤオモモとチームなら真面目にやらないと思うんですよね…
ずっとヤオヨロっぱいヤオヨロっぱい言って抱きついてきそう
で、そこを相手(上鳴&耳郎チーム)が見逃すはずもなく、上鳴の放電を絶縁シート辺りでいなしたとしても、二人まとめて心音流されてダウン…って流れで考えてます
で、そんな授業をマトモに受けてない、なんならヤオモモの邪魔しかしてない峰田になんの制裁もないのはちょっとおかしいかな、と
一応、退学させるつもりは無いので、厳重注意か反省文辺りを書かされた、としておいてください