デート・ア・ライブ 士織イフ   作:翔兎(とびうさ)

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お待たせしました。
設定の見直しや、先の物語を考えるうちに、執筆が長くなってしまいました
今後も、1週間前後で更新予定です。


『士織の使命』

──久しぶり。

 

頭の中にどこかで聞いたことのある声が響く。

 

──やっと、やっと会えたね、×××。

 

懐かしむように、慈しむように。

 

──嬉しいよ。でも、もう少し、もう少し待って。

 

あなたは一体誰、と問いかけるも、答えはない。

 

──もう、絶対に離さない。もう、絶対に間違わない。

 

 

だから、

 

不思議な声はそこで、途切れた。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「………………っ琴里!」

 

妹の名前を口にしながら、勢いよく上体を起こして士織は目を覚ました。

 

「……ここはどこ?」

 

すぐさま辺りを見渡すが誰も居ない。と思っていたが、仕切りの向こうから人の気配を感じた。

 

「……ん?目が覚めたね」

 

仕切りのカーテンが開かれると、軍服らしき服を纏った、二十歳くらいの女性が現れ、開いたカーテンを閉めて士織が寝ているベットの隣に立った。

 

無造作に纏められた髪に、分厚い隈に飾られた目、あとなぜか軍服のポケットから顔を覗かせている傷だらけのクマのぬいぐるみが特徴だった。

そして、気絶していた士織の事を看護してくれていたのだろうか、手には救急箱が抱えられている。

 

「えっと、あなたは?」

 

「……ん、ああ」

 

女はぼうっとした声で返事をすると、抱えていた救急箱を仕舞うと、士織の方に振り向いた。

 

「………ここで解析官をやっている、村雨令音だ。あいにく医務官が席を外していてね。……私が代わりに君をみていた」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

感謝の言葉を述べるが、令音という女性も先ほどから、倒れるんじゃないかと思えるくらい、身体がフラフラと揺れている。

 

もう一度、周りを見渡した士織は、さっき呟いた疑問を令音に尋ねてみた。

 

「あ、あの、ここって一体どこなんですか?」

 

自分が眠っていたパイプベッドの周りを、白いカーテンが囲むようにして仕切りが作られていた。

まるで、学校の保健室のような空間だったが、無骨な配管や天井からむき出しになっている配線が、とても気になった。

 

「……ああ、<フラクシナス>の医務室だ。気絶していたので勝手に運ばせてもらったよ」

 

「<フラクシナス>……? 気絶って……あ──」

 

そうだった。妹を探して、謎の少女と折紙の戦闘に巻き込まれて、気を失ったのだ。

 

「やっぱり、夢じゃ…ないんだよね」

 

下を向き、少し頭を抱えながらそう呟いた。

自分が経験したことが、夢ではないという実感が戻ってきた。

 

「……ついてきたまえ。君に紹介したい人がいる。……気になることが多いだろうが、どうも私は説明下手でね。詳しい話はその人から聞くといい」

 

そういうと、令音は仕切りのカーテンを開け、背を向けながら続けた。

 

「……それに、その人に会えば少しは気が楽になるだろう」

 

「──―え?」

 

不意に言われた一言に、下を向いていた士織は思わず令音の方を見る。

 

が、次の瞬間、フラフラと出入り口と思しき方向へ歩いていた令音が、足をもつれさせ、ガン! と音を立てて頭を壁に打ち付けた。

 

それを見た士織は慌てて、ベットから起きて、令音の方へ近づいた。

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

「……むう」

 

一応、倒れはしなかったが、令音は壁に持たれながらうめく。

 

「……ああ、すまんね。最近少し寝不足気味なんだ」

 

「え……どれくらい寝てないんですか」

 

士織が尋ねると令音は少し考えてから、指を三本立てた。

 

「三日もですか!? それは眠くても仕方ないですよ」

 

「……三〇年、だったかな?」

 

「三日どころじゃなかった!」

 

さすがに、予想をはるかに超えた答えだった。

明らかに、令音の外観年齢を超えているところは、突っ込んではいけないだろうか。

 

「……どうも、不眠症気味でね、最後に睡眠を取った日が思い出せないのは本当だ」

 

「ちゃんと、休んでくださいね……」

 

なんだろう、琴里の安否も心配だが、令音の体調も心配になる。

 

「……ああ、そういえば、薬の時間だった。失礼するよ」

 

と、令音は懐を探ると、ピルケースを取り出しふたを開けると、中に入っていた錠剤を一気に口に放り込んだ。

 

「多いッ!」

 

そのまま、なんのためらいもなく、口に放り込んだ大量の錠剤を一気に飲み干す令音に驚き、思わず声を上げてしまう。

 

「……なんだね」

 

「……なんだね。じゃないですよ! 今の適量なんですか!? いったいなんの薬なんですか!?」

 

「全部睡眠導入剤だが」

 

「絶対に適量じゃない! むしろ死んじゃいますよ!」

 

「……でも、いまひとつ効き目がわるくてね」

 

「どんな身体しているんですか……」

 

「まあでも甘くて美味しいからいいんだがね」

 

「もしかして、それラムネですか? ………いや、むしろラムネであってほしいです」

 

漫才をやっているかのように、令音の一言一言にツッコミを入れる。

 

「……とにかく、こっちだ。ついてきたまえ」

 

令音は空になったピルケースを懐に戻してから、またフラフラとした足取りで医務室の扉を開ける。

 

「あっ、待って下さい」

 

士織は、令音のあとを追うようについて行く。

また、どこかに頭をぶつけないか少し心配である。

 

部屋の外は、映画で見た宇宙船や潜水艦の通路を思い出させるような光景が広がっていた。

士織は何が何だか解らないまま、ただ令音の背中を頼りに、足を進ませる。

 

「……ここだ」

 

どれくらい歩いただろうか、令音は通路の突き当りで足を止め、横に取り付けてある電子パネルを操作すると、滑らかに扉がスライドした。

 

「……さ、入りたまえ」

 

令音が中へ入ると、士織も恐る恐るそれに続いた。

 

「は、はい……」

 

そして、扉の向こうの光景に、士織は思わず息をのむ。

 

士織がくぐった扉から、半楕円の形に床が広がり、その中心には艦長席と思われる椅子が備えらていた。

さらに、左右両端には階段が延び、下の段には複雑そうなコンソールを操作するクルーたちが見受けられた。

 

「……連れてきたよ」

 

令音がふらふら、頭を揺らしながらそう言う。

 

「村雨解析官、ご苦労様です」

 

艦長席の隣に立った長身の男が、執事のように軽く礼をする。

 

「初めまして、私はここの副指令を務めています、神無月恭平と申します。以後お見知りおきを」

 

「は、初めまして。五河士織と申します……」

 

丁寧な挨拶に釣られ、少々緊張しながらも士織は両手をへその下で揃え、礼儀正しく深く頭を下げる。

 

「司令、村雨解析官が戻りました」

 

「──歓迎するわ」

 

神無月が艦長席に向かって声をかけると、『司令』と呼ばれるには少々可愛らしい声が響いた。

 

「っ!!」

 

その声が士織の耳に届くと、目を見開き脊髄反射の勢いで下げていた頭を上げ、艦長席を見つめた。

 

毎日の聞いているその声、聞き間違えるなんて絶対にありえない。

 

艦長席がゆっくりと、回転しその姿が明らかになった。

大きな黒いリボンで二つに括られた髪、小柄な体躯、どんぐりみたいに可愛らしい丸っこい目、口にくわえたチュッパチャプス。

 

士織が探していた最愛の妹が艦長席に座っていた。

 

「……琴…里?」

 

「ようこそ、<ラタトスク>へ」

 

普段の士織が知っている、無邪気で愛くるしい雰囲気とは違い、威圧的な雰囲気を発しているが、目の前に現れたのは、間違いなく士織の大事な妹、琴里である。

 

「ったく! 運が良かったわよ、姉さん。私たちが、回収して居なかったら今頃二、三回くらい死んでたかもしれないのよ?」

 

「……」

 

「だいたい! どうして警報発令中に外になんか出てたの? 姉さんは馬鹿じゃないんだから、それくらいわかってるでしょ!」

 

「……」

 

「やたら連絡してきてたから、なに事かと思って探してみたら、あんなところで気絶してなんて!」

 

「……」

 

琴里はペラペラと説教事を並べるが、士織は放心したように、ただぼうっと琴里の方を見つめている。

 

「ちょっと、姉さん! 話をちゃんと聞いて──―」

 

上の空になっている士織を注意しようとした、その時。

 

────バタッ!!

 

士織は糸の切れた人形のように、足元からくずれ、その場に座り込んだ。

 

「──なッ!?」

 

突然の出来事に驚いた表情を浮かべながら、座り込んだ姉の元へと琴里は勢いよく駆け寄る。

 

「一体、どうしたのよ姉さ────っ」

 

その場にペタンと座り込んで居た士織は、ゆっくりと膝を立てると、割れ物でも扱うかのように琴里を抱きしめ、顔をその胸元に埋めた。

 

「な、なによ。……いきなりの戦場で怖かったのかしら? ほら、私がいるから安心しなさい」

 

その言葉に士織はピクリと反応し、腰に回していた手を琴里の頬に持っていく。

 

そして次の瞬間、琴里の頬をつねると、そのまま外側に引っ張った。

 

いひゃい!(痛い! )いひゃい!(痛い! )ちょっほ(ちょっと )らにするのよ!(何するのよ)

 

「『何するの』じゃないでしょ……怖かったに決まってるでしょ……お姉ちゃんがどれだけ琴里の事を心配して探し回ったと思ってるの!」

 

士織は琴里の頬をつねながら、立ち上がり琴里をにらみつける。

 

いっへることのひみがわかんらいらけど!(言ってることの意味が解らないんだけど)

 

「GPSの位置情報が、ファミレスの前からずっと動かないから心配して探してたの! 連絡しても応答はないし、やっと見つけたと思ったら訳の分からない事を言うし!」

 

「ん? ああ……」

 

GPSと言われようやく、姉があんな危険な場所にいた原因は、自分を探していたからだとわかった。

 

わるきゃった(悪かった)、 わるひゃったわよ(悪かったわよ)

 

すぐに、姉に連絡をしなかった自分の非を多少は認め謝るが、それでも手の力は弱まらなかった。

 

ごめんひゃい(ごめんなさい)おねひゃん(お姉ちゃん)ごめんなひゃい(ごめんなさい)!」

 

痛みに我慢できなかったのか、それともちゃんと反省したのか、口調がいつもの琴里に戻っていた。

凄い剣幕で叱ってくる姉には、さすがに余裕がなかったのだろうか。

 

「許してあげない、お姉ちゃん、本当に本当に心配して……っ」

 

とたんに頬をつねる士織の手が急に緩むと、その手が震え、大粒の涙がポタッ、ポタッと零れ落ちていた。

 

「……っ本当に心配したんだから! ……琴里がいなくなったら……おねえちゃん……どうして生きていけばいいの」

 

士織はまた、ゆっくりと琴里を抱きしめる。

そこには、いつもの優しい姉がいて、ホッとする琴里であった。

 

 

 

 

 

 

 

数分後、士織が泣き止み落ち着きを取り戻したころに、今日の出来事について、琴里から説明がなされていた。

先ほどまでつねられていた頬を少しなでながら。

 

「──で、これが精霊って呼ばれてる怪物で、こっちがAST」

 

「……痛む?」

 

「ええ、とっっっても」

 

「…うっ……ごめんてば」

 

感情に任せ手加減を忘れたせいか、琴里の頬は十分に赤くなっていた。

 

士織はちょっと反省した顔を、琴里は少しムスッとした顔でジトっと姉を見つめる。先ほどとは立場がまるで逆だ。

 

「いいわ、許してあげる。あれが姉さんじゃなかったら今頃、その場に土下座させながら、その頭を踏んずけてやる所よ」

 

「司令! それは本当ですか!」

 

琴里の横に立っていた神無月が喜びの声を上げるが、即座に「黙ってなさい」とみぞおちに肘鉄を食らった。

 

そんな光景を見て、大事な妹の周りに得体の知れない人物が何人も居ることに士織は少々不安になる。

 

「で、ここまでの話をちゃんと理解しているんでしょうね?」

 

まるで、何事もなかったかのように、平然とした顔で士織に尋ねる。

隣で幸せそうな顔を浮かべながら、のたうち回る神無月の存在など目に止まらないのだろうか。

 

「あの、ドレスみたいな服を来てた女の子が精霊……だっけ?」

 

「そ、彼女は本来この世界には存在しないモノであり、この世界に出現するだけで、己の意志とは関係なく、辺り一帯を吹き飛ばしちゃうの」

 

「吹き飛ばす……もしかして空間震?」

 

この目で目の当たりにした、街に突如として現れたクレーターと、その前に発生したとてつもない爆風を思い出した。

 

「察しが良くて助かるわ。空間震は彼女みたいな精霊が、この世界に現れる時の余波みたいなものなの」

 

人類の悩みの一つである空間震は、一人の少女が原因で引き起っていたのだ。

 

「まぁ、空間震の規模はまちまちだけどね。小さければ数メートル程度、大きければ大陸に大穴が開くレベルよ」

 

琴里が手で小さな輪を作った後、今度は腕も使って大きな輪を作り、士織に分かりやすいようジェスチャーを入れながら伝える。

「可愛い」そう思いながら、琴里にバレないように手で口元を隠し士織はひそかに軽くニヤついていた。

 

「で、次はこっち。AST。精霊専門の部隊よ」

 

恐らく、折紙が居たあの集団のことだろうと、士織はすぐに察知した。

 

「あの人たちは、なぜ精霊に攻撃するの?」

 

「そんなの簡単よ。ASTの仕事は出現した精霊を処理する。つまり、ぶっ殺す事が仕事なんだから」

 

「殺すって……そんな!」

 

当然と言わんばかりに答えられ、士織は複雑な気持ちになっていた。

 

「なにもおかしい事はないわ。現れるだけで空間震が発生するなんて、もはや存在自体が災害レベルなんだから」

 

「でも、空間震は精霊の意志とは関係ないんでしょ?」

 

「それはあくまで、有力な話ってこと、もしかしたらASTが何もしなくても、精霊は大喜びで破壊活動を始める。なんてこともありえるのよ」

 

琴里には、そう言われたが、何度でも思い返す。士織の脳裏に刻まれた、彼女のあの悲しげな表情を。

 

「それは、……私は、ないと思う」

 

「根拠は?」

 

「あんな、悲しい顔をしてる子が、好きで街を破壊しているなんて、絶対にない」

 

根拠も確信もない。でも、士織にはわかる。

 

士織の真っ直ぐな答えに琴里は「そう」と答える。

 

「でも、どちらにしろ精霊が空間震を起こすことに変わりないんだから、当人の意志なんて関係なく、危険な生物を野放しに出来ないのもまた事実よ」

 

「そうかもしれないけど、だからって、殺すなんて」

 

「じゃあ、姉さんには何か方法でもあるの?」

 

そう言われ、下を向いて黙ってしまう士織。

 

理解している。自分の考えは、ただの我儘にすぎない。

彼女が危険な存在だということは理解している。だから、処理するのが当たり前だろう。

 

でも、今にも泣き出しそうな顔をしていた、あの少女を何が何でも救いたい。

そして、あの子に手を差し伸べられるとしたら、もう自分しかいない。

 

「……方法なんてわからない」

 

確かに方法なんて解らない。でも――

 

「けど、もう一度あの子と話がしたい! あの子に今必要なのは、自分の存在を否定せず認めてくれる人! そして、私ならあの子を救える!」

 

真っ直ぐに琴里を見つめ自分の考えを言い放った。

 

「それでこそ私の姉さん。――いいわ手伝ってあげる」

 

「琴里が……?」

 

琴里は立ち上がり艦内の全てを示すように、両手を広げた。

 

「いえ、私だけじゃない。<ラタトスク機関> の総力をもって、姉さんをサポートしてあげる」

 

「ここの人たち、皆が私を?」

 

その言葉を合図にクルー全員の視線が士織に集まる。

 

「そう。私たち<ラタトスク>は、ASTと違い対話によって精霊の空間震を解決するために組まれた組織なの」

 

「そんな、組織がなんで私なんかに?」

 

組織の司令と呼ばれている琴里に少女と救いたいと、勢いよく宣言したのは自分であるが、どこにでも居るような一人の少女に巨大な組織が全面的にサポートするのは、いささか謎ではある。

 

「だって、この <ラタトスク> は、元々姉さんの為に作られた組織だから」

 

「ま、待ってよ。余計に意味が解らないんだけど……」

 

琴里の一言、一言にさらに困惑する。なぜ自分なのだろう。

こんな船まで用意する組織なら、交渉のスペシャリストなど普通に居るのではないのか?

 

士織は困った顔をしながら、妹に疑問を投げかけた。

 

「まぁ、姉さんは特別なの」

 

が、そんな疑問は、妹の「特別だから」という一言で、解決させられた。

 

「答えになってないよ……」

 

「ごめんなさい、理由はそのうち話すわ。とりあえず、今は私たちを信じるか、それとも一人でなんの対策もせずに突っ込む気か、どちらかを選んで」

 

どちらを選べと言われても、妹にそう言われてしまっては、答えなんて一つしかないだろう。

 

士織は、一度「ふう」と息を吐くと、何かを決心したような顔つきで、琴里の方を向いた。

 

「わかった。私は琴里を信じる」

 

「ありがとう、姉さん」

 

多少なりとも不安があったが、こんな巨大な組織が力を貸してくれるなら、心強いことこの上ない。

 

「教えて、琴里。私はどうすればいい? どうしたらあの子を救える?」

 

「それはね……」

 

琴里は少しニヤついた表情を浮かべる。

 

「精霊に――恋をさせるの」

 

艦内がしーんと静まり返る。

 

「………………え、え、え?」

 

さっきまでの真剣な表情は何処へやら、士織は目を点にして、そこら付近に「?」マークを浮かべる。

 

「こ、こい? ………池を泳いでる」

 

「それは、『鯉』。姉さん、お決まりのボケみたいなのは辞めてくれない?」

 

「……え? じゃあ、恋愛のお付き合いするほうの……?」

 

「だから、さっきからそう言ってるじゃない。なに、姉さんそんな鈍キャラだったの?」

 

「いや、言ってることは、わかるよ? ………でも、ほら、私は女の子だよ?」

 

「恋愛に性別なんて関係ないじゃない」

 

「それはそうだけど、……お姉ちゃんも否定はしないよ? ……でも私、誰ともお付き合いしたことないし」

 

「知ってるわ」

 

「んー、知っているならなおさら………じゃあ、まず男の人とお付き合いして、そこから学んで―――」

 

「ダメよ! それは絶対ダメ! 私が認めない! どこの馬の骨かも知れない男とお付き合いするのは絶対に、み!と!め!な!い!」

 

「えぇ………」

 

長いやり取りを、琴里は「とにかく」の一言で打ち切る。

 

「他に方法が無いの、あの子を救いたいなら協力して」

 

「わ、わかったよ……」

 

なぜ、「恋」なのか? 理由については、色々と聞きたい事があったが、信頼する琴里が言うのだからそれしかないのであろう。

そう自らを納得させ、士織は頷いた。

 

「決まりね。今までのデータからして、次に精霊が現界するのは最短でも一週間後。姉さん、早速明日から訓練よ」

 

「……訓練?」

 

一体何をさせられるのかと、不安に思う士織だったが、今は琴里を信じるしかなかった。




黒リボンの琴里が多少優しく見えますが、相手が兄と姉では対応が違うかなと思って、書きました。
また、黒リボンでさえ逆らえない姉というポジションも増やしたいです。

今後もそういう原作との違いが増えるかもしれませんが、温かく見守ってください。
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