デート・ア・ライブ 士織イフ   作:翔兎(とびうさ)

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どうも、翔兎です。
お待たせいたしました。やっと投稿出来てホッとしています。

実は私、デート・ア・ライブはアニメ勢でしたので、
つい先週、原作を最終巻まで、まとめ買いしまして、現在読み進めつつ執筆を行っています。
なので、原作キャラの言動、性格などがブレていないか心配です。
今後も、2週間前後の投稿になると思われますが、いろいろな方に楽しめる作品にしたいと思っております。



『訓練』

 信じられない体験をした翌日、士織は普段と変らない日常を送っていた。

昨日はあの後、詳しい説明を組織の人間から聞かされたり、書類にサインを書かされたりしたせいで、家に帰るころには深夜を過ぎていた。

朝起きて昨日の出来事は全て夢でした。

なんて、事も少し期待したが、身体の気怠さが全て物語っていた。

 

疲れ切った体で授業を乗り切り、帰りのホームルームで支度をしていたその時、士織は突然、折紙に手を掴まれた。

 

「来て」

 

「え? ……あ、ちょっと、折紙?」

 

尋ねるように名前を呼ぶが、折紙は何も答えない。そして、手を掴まれたまま教室から出て、階段を上がっていき、気がつけば屋上の扉の前に連れてこられた。

 

「えっと……どうかした?」

 

「昨日、士織はなぜあんな所にいたの」

 

改めて士織が尋ねると、折紙は士織を逃がさぬよう壁際に追いやり、掴んでいた士織の手を指を絡めるように握り、迫るようにじっと見つめて言った。

 

「あ、あの妹が警報発令中に街にいたみたいで、探してて……」

 

突然の折紙の行動に、驚きを見せながらも、照れからか少し顔を赤くしながら視線をそらして答えた。

 

「見つかった?」

 

「う、うん、なんとかね」

 

なんだったら、どこぞの組織の司令までやってました。

 

「なら、よかった。士織も無事で安心した」

 

「心配かけてごめんね……」

 

「かまわない、けれど、昨日のことは全部忘れた方がいい」

 

昨日の出来事、それはつまり。

 

「……全部って、あの女の子の事も?」

 

「………」

 

折紙は何も答えなかったが、握られている手に力が込められたのがわかった。

 

「あの女の子って、一体何者なの?」

 

もちろん、あの少女が「精霊」という存在なのは、琴里からは聞かされていたが、少女と戦っている折紙は、彼女をどう見ているのか気になった。

 

「あれは、精霊」

 

そう答えると、折紙は続けた。

 

「私が倒さなければならないもの」

 

「……あの子って、そんなにも悪い子……なの?」

 

士織がそう質問すると、折紙の手にさらに力が込められより深く繋がれた。

 

「私の両親は、五年前に精霊のせいで死んだ」

 

「──っ!」

 

思いもしなかった答えに、士織は言葉がでなかった。

 

「私のような人間は、もう増やしたくない」

 

精霊という存在が現界するたびに、誰かが被害を受けてしまうことは、士織自身わかってはいたことだが、目の前にいる折紙がその一人であった。

それを聞いてしまった瞬間、士織は胸が何かに、締め付けられるような感覚に襲われた。

 

何も言い返す事が出ぎず、数秒の間二人に沈黙が訪れた後、また折紙が口を開い。

 

「聞きたかったのはそれだけ?」

 

「……うん」

 

「そう。では、二つ約束して欲しい」

 

折紙はそう言うと、もう片方の手を前に出し一本ずつ指を上げながら約束事を告げた。

 

「一つは、昨日のような無茶はしないで欲しい。何かあった場合、私に言ってくれれば必ず対処する。もう一つは、今話した事と昨日見た出来事を誰にも話さないで欲しい」

 

おそらく、二つ目の約束の為に人のない所へ連れてきたのだろう。

 

「わかった……約束する」

 

とは言ったものの精霊を救うためには、一つ目の約束は果たせそうにない。士織は心の中で「ごめん」と詫びを入れた。

 

「ありがとう。じゃあ、また明日」

 

折紙は納得すると、絡めていた手を放し、士織に別れのあいさつを告げて階段を降りていった。

 

「うん、またね」

 

一方の士織は折紙にあいさつを返し見送った後、壁に背を預け「はぁぁ…」と大きく息を吐くと、その場にゆっくりと座り込んだ。

 

──私の両親は、五年前に精霊のせいで死んだ

 

折紙の放ったその一言は、士織に重くのしかかっていた。

 

もし、精霊のせいで自分も家族が、琴里が──ダメだ。これ以上考えてしまうと、大切にしていた気持ちが揺らいでしまう。

 

「私って、甘いのかな……」

 

ずっと握られていたを見つめながらそう呟く。

 

その手は汗で湿っていた。士織の汗だけではない、どちらかと言うと折紙の汗だった。彼女なりに無茶をしていた士織の事を心配し、怒っていたのだろうか? 何かを訴えかけるようにとても強く握られていた。

そして、精霊の話になったとたん、折紙の手を握る力はさらに強くなった。

 

表情には全くでなかったが、ほんの少しだけ握られた手を通して折紙の精霊に対する想いが伝わった気がする。

 

だが、自分はあの精霊を救う。そう、決めたのだから何があっても、その思いを突き通さなければならない。

 

「……折紙って、意外と大胆?」

 

考えがまとまった後、握られていた手を見つめたまま最後に思ったことを何気なく呟くと、立ち上がって士織も階段を下りていった。

 

と、下りていった先で、なにやら廊下に白い物体が転がっていた。

 

「………ふぇ?」

 

白い物体をよく見ると、白衣を着た女性がうつ伏せ状態で廊下にぺったりと張り付いていた。

 

士織はそれに気が付くと、一目散に駆け寄った。

 

「だ、大丈夫ですか!」

 

「ああ……心配いらない。転んでしまっただけだ」

 

そう言いながら、女性は顔を起こすと、士織と目が合った。

 

「え、あ、あなたは」

 

その顔には見覚えがあった。<ラタトスク>の解析官である村雨令音だった。

 

「……ん? ああ、君か」

 

「君か、じゃないですよ、何してるんですか、こんなところで……」

 

「……見てわからないかい? 教員としてしばらく世話になることにしたんだ。ちなみに教科は物理、二年四組の副担任も兼任する」

 

白衣に付けているネームプレートを指しながら、令音はいった。

 

「いや、わかりませんよ……立てますか?」

 

そういいながら、令音に手を差し伸べてると、令音もその手を取り立ち上がる。

 

「……ん、悪いね」

 

「どういたしまして、えっと……村雨解析官?」

 

先生? 解析官? 村雨さん? どう呼んでいいわからず、首を横に傾けながら伺うように名前を呼んだ。

 

「……ん、ああ、令音で構わんよ」

 

「わかりました。令音……さん」

 

そう言えば、琴里も名前で呼んでいた。歳は明らかに令音の方が上だが、呼び捨てで名前を呼び合ってるのだから、仲が良いのだろうか。

 

「……うん、では、私も名前で呼ばせてもらおう、連携と協力は信頼から生まれるからね」

 

そういうと、考えるように顎に手を当てながら、令音は士織の顔をじっと見つめ、一拍開けて口を開いた。

 

「ええと、君はシオリ、だったかな」

 

「………………」

 

「……ん、ちがったかな」

 

「い、いえ、あってます」

 

令音の事だからよくわからない名前で呼ばれると身構えていたが、逆に何もなくて驚いている。

 

「……さてシオリ、早速だが昨日琴里が言っていた強化訓練の準備が整った。ちょうど君を探していた所でね、このまま物理準備室に向かおう」

 

そう言って、令音が歩き始めると、士織はその後をついていった。

 

「あのー、訓練って一体どんなことをするんですか?」

 

「……うむ。琴里に聞いたが、シオリ、君は男の子とも交際をしたことがないそうじゃないか」

 

「……琴里もありませんけどね」

 

勝手に自分の恋愛経験ゼロの情報を妹に流されたので、仕返しと言わんばかりに妹の恋愛事情も話す姉。

 

「……別にそれが悪いという話じゃあない。姉妹そろって身持ちが固いのは大変結構なことだ。……だが、相手は精霊となるとそうも言ってられないんだ」

 

「そうですよね……」

 

確かに、口説くことに成功すれば、世界の脅威が減る。何が何でも成功させなければならない。

 

そんな話をしている途中、ちょうど職員室の近くを通りかかった時、

 

「……!!」

 

士織がセンサーのように何かに反応し、視線を職員室の方に向ける。

 

「……どうしたのかね?」

 

令音も士織と同じ方向に視線を合わせると、担任のタマちゃん先生が歩く後ろに、見覚えのある影がついて回っていた。

 

そして、あちらも士織の気配に気づいたのだろうか、お互いの視線が重なると「あ!」と声を上げ、琴里が満面の笑みで駆け寄ってきた。

 

「おねーちゃぁぁぁぁん!」

 

「ことりぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

互いの事を叫びながら呼び合うと、両手を広げて突撃してきた琴里を士織が優しく包み込んだ。

 

「会いたかったぞお姉ちゃん!」

 

無邪気な笑顔で、士織の顔を見上げる白リボンを付けた琴里。

 

「私も会いたかったよ。……勝手にお姉ちゃんの恋愛事情を話したのはこのお口かなぁ?」

 

士織も優しい笑みを浮かべながら、琴里のほっぺをむにゅむみゅと優しく触る。

 

「あはは、ごめんなさーい。でも、私はお姉ちゃんを独り占めできて嬉しいぞ」

 

『尊い……』

『あれが、噂の五河姉妹』

『間に挟まれたい』

『マジ尊いわ~』

 

周りの生徒も姉妹のやり取りをみて、男女問わず微笑ましいムードになっている。

 

「あ、五河さん。妹さんが来てたから、今校内放送で呼ぼうとしてたんですよぅ」

 

琴里を追って、案内していたタマちゃん先生が歩いてきた。

 

「タマちゃん先生、わざわざありがとうございます」

 

「おー、先生、ありがとー!」

 

「はぁい、どういたしましてぇ」

 

琴里はお礼を言いながら手をブンブンと手を振ると、先生もにこやかな表情で軽く手を振りながらその場を後にする。

 

「で、琴里はなんで高校に? お姉ちゃんに会いに来ただけ? それはそれで嬉しいけど」

 

「んー、会いたかったのは本当だぞ。でも、詳しい話は……こっちこっち」

 

そう言って、琴里は先に歩き出しながら士織を手招きする。

 

周りには五河姉妹のやりとりに見惚れていた生徒が何人かいた。恐らく人前では話せないことなのだろう。

おそらく、訓練についての説明だろうか、そう思った士織は令音と共に琴里についていった。

 

「……早かったね、琴里」

 

「うん、途中で<フラクシナス>に拾ってもらったからね!」

 

そういえば、昨日は<フラクシナス>についても、後から琴里に説明された。

どうやら、<ラタトスク>の誇る空中艦らしい。ちなみに、琴里のGPSがファミレスの前を示していた件についても、頬赤くした琴里本人から不機嫌そうな顔で説明された。

 

「さ。ついたよ、入ろー、入ろー」

 

ついたのは、物理実験室。ここで一体何の訓練をさせられるのか疑問ではあるが、士織はドアを滑らせて中に入った。

 

「……な、なんですかこの部屋」

 

部屋に入るなり少し唖然とする士織。

 

中はコンピューターやディスプレイなど、物理準備室とは到底思えない機械がならんでした。

 

「……部屋の備品さ?」

 

「どうして、疑問形なんですか! それ以前に学校の設備を勝手にかえていいんですか?」

 

「…………うむ」

 

顎に手をやり考える令音。

 

「………」

 

「………」

 

数秒の時間が過ぎ、令音が口を開いた。

 

「……まぁ、いいじゃあないか」

 

「絶対よくないですよ……」

 

せめて、何かしらの言い訳をされたほうが良かったと思う。

 

「姉さん、いつまでそこに立ってるのよ。ほら、カカシじゃないんだから。こっちよ」

 

いつの間やら黒リボンに付け替えた琴里が、チュッパチャプスを頬張りながら、士織の袖を引っ張る。

 

「う、うん」

 

昨日から見る琴里の変貌っぷりに、まだ驚きを隠せないが、大事な妹である事には変らないと士織のなかでは整理されていた。

このリボンの色がマインドセットのスイッチになっているのだろうか。

 

「……さ、シオリ。さっそくだが訓練を始めよう。ここに座りたまえ」

 

「わかりました」

 

令音に促され、パイプ椅子に座る。

 

「で、訓練て何をするんですか?」

 

机の上にはディスプレイなど複数の機械が置かれているが、訓練をするための道具など、目ぼしい物は見当たらない。

 

「……そう難しい話ではないさ。女性に対する恋愛というのに慣れておいてもらわねばならないんだ」

 

「女性への恋愛……」

 

「……ああ、シオリはクラスの女子との何気ない会話はこなしていそうだが、恋愛になるとその対応は変ってくるということさ」

 

「確かにそうですね……」

 

士織自信、クラスの女子との関係性は良好である。

話しかけるくらいのことは決して苦ではないが、口説いて惚れさせるとなれば話は別だ。

 

「だから、姉さんには訓練として、これをやってもらうわ」

 

と、琴里がパソコンの電源を入れると、ディスプレイに可愛らしい女の子が数人表示され、ポップな音楽と共にタイトルが流れてきた。

 

『恋してマイ・リトル・シオリ』

 

「……えっと、これって」

 

「……うむ、恋愛シミュレーションゲームというやつだ。もちろん、登場人物は全て女性になっている」

 

「本当にゲームで訓練になるんですか?」

 

士織の言うことはもっともだ、シミュレーションといえど、ゲームと現実はかけ離れている。

 

「……まぁ、そういわないでくれ。これはあくまで訓練の第一段階さ。それに、このゲームは<ラタトスク>総監修でね。現実に起こりうるシチュエーションを再現してある。心構えくらいにはなるはずだ」

 

「と、とりあえず、やればいいんですね……」

 

まぁ、琴里や令音さんが言うのだから、信じてプレイしてみよう。そう思い士織はコントローラーを握った。

 

モノローグを読みながらゲームを進めると、画面が一瞬暗転する。

 

『お姉ちゃん、朝だよぉ~! 起きてー』

 

そんな可愛らしいボイスとともに、イベントCGが画面に表示された。

 

「え、この子可愛い。……ほら見て琴里! この女の子琴里にそっくりで、とっても可愛いよ!」

 

琴里の方を振り返りながら、ニヤついた顔でディスプレイに映ったキャラを指さす。

 

「何よ姉さん、二次元のキャラにデレデレして、ああ、もしかしてそっちの趣味が先に目覚めた?」

 

そう言いながら、士織を少しだけ見下すように琴里はここぞと言わんばかりに、強気の態度を見せる。

 

「なーに? 琴里もしかして嫉妬してるの? 可愛いなぁ~もう!」

 

椅子に座りながら、琴里の頭に手を伸ばし優しく撫でる。

白リボンでも、黒リボンでも、琴里の扱い方をよく理解している姉だ。

 

「なっ! ──っ! いいから早く画面の選択肢を選んで!」

 

声を少し荒げながらも、顔を少し赤くして琴里はゲーム画面を指さした。

 

ゲーム画面には、好感度のようなメーターと3つの選択肢が表示されていた。

 

①「おはよう。愛してるよリリコ」愛を込めて妹を抱きしめる。

②「うるさいな……もう少し寝かせて」不機嫌そうに言って二度寝する。

③「リリコも一緒にお姉ちゃんと寝よう」リリコの手を引っ張り一緒の布団で二度寝する。

 

「わぁ、本当に現実的な三択になってる……」

 

「……ちなみに、選択画面は制限時間が設けられている」

 

令音に説明された通り、選択画面の端にはタイマーのようなオブジェクトが備えられていた。

 

「あ、えっと、じゃあこれで……」

 

士織は手っ取り早く、①を選択した。

 

「おはよう。愛してるよリリコ」

私はリリコを、愛をこめて抱きしめた。

すると、リリコは途端に顔を赤くしながら、私を抱きしめ返した。

「う、うん……私も愛してるよ。おねえちゃん」

 

好感度のパラメーターが少し上昇した。

 

「あ、意外とすんなり上がるんですね好感度」

 

「……最初はなるべく優しい難易度に設計されていてね。ゲームの進行が進むにつれて、難しい選択を迫られるさ」

 

思った以上には良心設計になっている。これならば、クリアすることは難しく無いだろうと士織は考えていた。

 

「とは言っても、本番の相手は精霊。選択を間違えれば姉さんはもちろん、私たちも被害を被る可能性があるわ。──だから、もしも選択を間違えたらペナルティーが発生するように設定しているわ」

 

「え……一体なにされるの?」

 

恐る恐る琴里にペナルティの内容を聞くと、一瞬ニヤっとした表情を浮かべ、コントローラーを貸してと言わんばかりに、手を差し伸べてきた。

 

士織がコントローラーを渡すと、慣れた手つきで操作し、先ほどの選択画面に戻ると、②の選択しを琴里は選んだ。

 

 

「うるさいな……もう少し寝かせて」

私は、不機嫌な態度でリリコを追い返した。

「う…うう……お姉ちゃんに嫌われたぁ~」

リリコは涙目を浮かべながら部屋を後にした。

 

好感度のメーターが減少すると同時に再びディスプレイの画面が暗転する。

 

そして、暗転した画面の中心にフリフリの衣装、一般的にゴズロリと言われている服を着た士織の写真が表示されていた。

 

「な……なななななんで! ど、どうして、この服着てる私の写真があるのぉ!」

 

士織は画像を見た瞬間、立ち上がり顔を真っ赤にしながら、必死に画面を隠そうとする。

 

「無駄よ姉さん。写真ならここにたんまりとあるわ」

 

そう言った琴里の手には、ゴスロリ以外にも、メイド服や、眼帯を付けポーズ決めている写真、中には露出している部分が多く、とても際どくカッコイイ衣装着た士織の写真などが数枚あった。

 

「ダメぇぇ! 見ちゃダメぇぇ! 琴里! 今すぐそれを渡しなさい!」

 

「あら、渡してもいいけど、無駄よ既にコピーは何枚もあるんだから。それに、こんなのもあるわよ」

 

と、写真をしまうと一冊のノートを士織に見せる。ノートには『神ノ聖典』と書かれていた。

 

ノートを見た途端、士織の顔は青ざめていった。

 

「ま、待って……琴里。お願いだから……そのノートを今すぐお姉ちゃんに渡して。ね、琴里は良い子だから」

 

無理やり笑顔を作り琴里を説得しようとするが、明らかに表情がひきつっている。

 

だが、琴里はおもむろにノートを広げると、中に書かれた言葉を読み始めた。

 

「えっと、なになに。『私は、神に愛されし──』」

 

「読まないでぇぇ! お願いだからぁ~!」

 

今度は耳を塞ぎ、目に涙を浮かべながら妹に懇願する。もうすでに士織のライフはゼロであるが、昨日の頬っぺたの仕返しと言わんばかりに、琴里はとどめを指す。

 

「ほら、姉さん。こんなのもあるわよ」

 

琴里が端末を士織の目の前に突きつけ、再生ボタンのマークを推す。

 

『──私の力の前にひれ伏すがいい!』

 

端末から流れてきた音声は間違いなく決めセリフを言っていた士織の音声であった。

 

「──っんんんん!」

 

それを聞いた途端、士織の顔は耳まで真っ赤になり、言葉通りその場に頭を抱えてひれ伏した。

 

「……琴里。君、少し楽しんでいないかい?」

 

「あら、そんなことないわよ。ただ、姉さんの反応が面白いだけよ」

 

いや、それを楽しんでいると言うのではないだろうか。

 

しばらくして、士織が少し落ち着きを取り戻すと、涙目のまま顔をあげる。

 

「琴里には、絶対バレないようにしてたのに……」

 

「ふん……何年、姉さんの妹やってると思ってるのよ」

 

腕を組み少し誇らしげな顔をする琴里であった。

 

「……まぁ、誰でも一人で楽しむ趣味くらい持っていても、不思議ではないじゃないか」

 

令音はそう言って士織を少しフォローするが、彼女の場合、趣味の領域を超えるくらい痛々しいデータが残っている。

 

「いえ、一人じゃないですよ。共感してくれる友達がいたので……それが嬉しくてつい一人でもエスカレートすることが多くて……」

 

「ああ、姉さんがたまに衣装を紙袋に入れて外に出てたのは、その人と会ってたってわけね」

 

「……うん。最近は連絡お互いに取ってなくて会えてないんだけどね。あ、でも、その子すっごく美人でね! 上品な言葉使いで、綺麗な黒髪で片目が隠れてるって所が、とってもかっこよくて!」

 

旧友の話になり急に話が弾みだす士織であったが、琴里は「コホン」とわざとらしく咳ばらいをして、話を止める。

 

「姉さん、その話はいいから、今は訓練に集中してちょうだい」

 

「うぅ……元々は琴里が原因で手が止まっただけなのに」

 

しぶしぶパイプ椅子に座り直すと、コントローラーを握り直しゲームを再開する。

 

「ねぇ琴里、それ、全部どうする気なの?」

 

「残念だけどそれは秘密よ。心配しなくても次に精霊が現界するまでにゲームをクリアーできれば、データは全て返してあげる」

 

「……絶対に約束だよ」

 

はたして、士織は無事に精霊が現れるまでにゲームをクリアー出来るのだろうか。

泣きそうになりながらも、必死でゲームをプレイする事を士織は誓った。




お疲れ様でした。

いや、めっちゃ文字数増えました。
むしろ、今後もこれくらいの文字数になるんじゃないかな。

ちなみに、士織の中二病具合は士道君よりちょっと強めで考えています(笑)
また、旧友という立場であのキャラの存在も早めにチラつかせたり、
いろんな、変化を取り入れたいと思っています。

とりあえず今は、琴里や折紙など現在登場している主要キャラとのやり取りを大事に書いていますが、
次回から十香が本格的に登場してくるので、うまく書けるか心配ですが、必死のパッチで頑張りたいと思います。
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