「何なのこいつ!?攻撃が効かない...!」
美琴の前に対峙する男は不敵な笑みを浮かべたまま、激しい電撃を軽々と躱していく。
いや、躱しているのではない。当たっている。間違いなく。
なのに、平然としていられるのは何故...?
「フフフ…カラクリを教えてあげましょうか」
男は名前を大蛇丸と名乗っていた。その大蛇丸は手袋を外し、伸び縮みさせて見せる。
バカにしてるのか、と美琴が苛立ち、コインを取り出した。
美琴の代名詞ともいえる決め技、超電磁砲(レールガン)である。
「くらえー!」
放たれたコインは電磁力によって超加速、対象の物体どころかその周りのものさえ薙ぎ払うー。
はずだった。
ーどういうことなの...?
美琴は、目の前の現実を理解するのに時間を要した。
コインは手袋に貼りつき、やがてポトリと地面に落ちる。
「電撃を全て吸収する超特殊加工のゴムよ...私が全身に纏っているわ」
こんなものがどこで開発されていたのか。
まるで、対御坂美琴用に開発されたと言っても過言ではない代物。美琴にとって、相性は最悪どころの話ではない。電撃を用いた攻撃は、あのゴムにより全て無力化してしまう。
「驚いてくれたかしら...?なら、もう一つ驚かせてあげる」
大蛇丸が指をパチンッと鳴らすと、美琴の下から無数の触手が飛び出してきた。あまりに不意をつかれ、美琴はなす術なく触手に絡めとられていく。
「んあっ!くうっ...!」
「これもこのゴムの素晴らしいところね...様々な場面に応用できるわ」
身体を拘束された美琴は必死に触手を振り解こうとするが、触手は美琴の手足を縛り、磔のような状態にしていく。
んんっ、と美琴が喘ぐのをよそに、
「これで貴方はもう動けない...さて、お楽しみはこれからよ」
そう言って再び指を鳴らす。触手はその音に反応し、美琴の上着の中へ潜り込んでいく。
「い...やっ!くっ、ふうっ...!」
尚も抵抗を試みる美琴。それを嘲笑うかのように、触手は美琴の上着の裾を、徐々に捲り上げていく。
やがて抵抗のなくなった美琴の服の中から現れたのは、薄く白いお腹だった。腹筋もなく、柔らかなお腹をしげしげと眺めながら、
「あなたの身体...少し調べさせてもらうわね」
と、大蛇丸は不敵な笑みを浮かべていたー。
「やっ...一体、何、を...」
美琴が消え入りそうな声で喘ぐ。それを聞いて
「あなたの能力は素晴らしいわ...あなたはもう、私のもの...」
と、大蛇丸も囁くように返す。
自分の存在価値だった電撃が、触手によって封じられる。絶望的な事実だったが、美琴は大蛇丸の行動から目を離そうとはしなかった。私に何をしようとしているのか、それを確認しなければならない。
見ると大蛇丸は、手先を組み合わせて様々な型を作っていた。それが終わると、手が抜き手の形になり、指先には火・水・木・金・土の文字とともに、青白い炎が浮かび上がっていた。
「それ…は…」
「フフフ…あなたの身体に封印術を施すのよ。その電撃も使えなくなるようにねぇ…」
身体に、封印?
一体何のことなのか、美琴はこの状況において、いやこの状況だからこそ、少し冷静になっていた。しかし、何をされるのか皆目見当がつかない。
「分からなければいいわ...じゃあ、行くわね」
「ま…待って!私の身体に封印とか何とかって言ったけど…どういう意味なの?私の身体に、何かするつもりなの...?」
「その通りよ...あなたの能力を抑えるための封印をするわ」
大蛇丸は不敵な笑みを崩さない。そして、大蛇丸が言った次の一言を、美琴ははっきりと聞いていた。
五行封印ー。
その言葉が聞こえたとき、美琴のお腹に大蛇丸の抜き手が押し当てられていた。
「うっ」
決して強く押し当てられたわけではない。むしろ、美琴のお腹に合わせて軽く指先がめり込む程度である。
しかし、美琴はこの攻撃に抗うことができなかった。
大蛇丸の指先を受け入れるしかなく、封印が美琴のお腹に刻み込まれていく。
「はっ...ああっ…」
少しずつ美琴の呼吸が乱れて、意識がとろんとしてくる。
「これで貴方はもう動けない...」
美琴の身体が動かなくなったのを確認して、お腹に押し当てられた指先を引き抜く。
「んっ」
美琴が喘いだ。身体はもう全く動かないが、意識はある。
「どう?封印を施された気分は…」
「…最悪」
美琴が答えた。当然である。女の子がお腹に抜き手をされて、何もない方がおかしい。現に、身体に全く力が入らず、息も乱れている。しかし、ただお腹を軽く触られただけなら、ここまで身体が動かなくなることはない。美琴が自分のお腹の異変に気づいたのは、そんなことを思ったときだった。
「この模様…は…?」
美琴の白く美しいお腹には、黒く妖しげな模様が浮かび上がっていた。それは美琴のおへそを中心として、抜き手の指先の部分が渦巻状に、それを繋ぐように細かな模様が現れた。
「まさか…封印って、この模様のこと...?」
「その通りよ。五行封印によってあなたの能力はしっかり乱されているわ」
「五行…封印...?」
先刻、この男が言っていた言葉だ。原理は全く分からない。科学では解明できないかもしれない。しかし、それによって実際に身体の力は抜け、お腹に模様を刻み込まれている。そして、超電磁砲(レールガン)の力も、出せなくなっている。
「能力を乱したと言っても、なくなった訳じゃないわ。その身体にしっかりと残っている...それを抜き取るのよ」
フフフ、と大蛇丸が笑う。そして、封印の模様を確認するように、美琴のお腹を撫でて行く。
「あっ…」
女の子らしい、美琴の可愛らしい声だった。だが、声の可愛さとは裏腹に、目には涙を浮かべている。
「続きは私のアジトでね...」
それが美琴が聞いた最後の言葉だったー。