再び転生した元神は魔法科高校へ   作:さすらいの旅人

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二度目の夏休み編 手合わせ前の練習

「まさか君が前田校長に前以て頼んでいたとは思わなかったぞ。しかも自分の得意競技で俺と相手したいなんて、な」

 

「折角貴方が三高へ来てくれたのだから、是非ともお相手願おうと思ってね」

 

 前田校長に了承をした後、俺は将輝の案内で武道場へ行くと、そこには準備万端と言わんばかりにユニフォーム姿の一色がいた。彼女の友人である十七夜や(若干不服そうな)沓子だけでなく、部員も含めた多くの三高生徒達が集まっている。

 

 他校生と手合わせするだけで沢山の観客(ギャラリー)がいるなぁと思いながらも、俺は控え室で運動着に着替え、必要最低限のプロテクターと競技用のエペーを装備して相対する。

 

 端から見れば俺が初心者(ビギナー)で、一色は経験者(ベテラン)と言う光景だろう。普通なら間違いなく彼女の勝利は揺るぎなく見るまでもないと思うかもしれないが、観客達からそんな雰囲気は全く感じられない。寧ろ、俺に勝てるのかと不安且つ緊張した表情になっている。

 

 加えて一色も緊張の色を見せていた。彼女は俺と相対してから想子(サイオン)に若干乱れが生じているが、それを悟られないように話し掛けられても平静を装っている。

 

「手合わせするのは承諾したけど、俺はリーブル・エペーの初心者だから、出来れば手加減して欲しいな」

 

「まさか。生憎だけど、そんな手心を加える余裕なんか無いわ」

 

「随分手厳しい事で」

 

「とは言え、ルールありきの試合になると私が有利で事に変わりはない。だから今回は実戦形式でやるわ」

 

 これなら文句は無いでしょう、と付け加えながら言ってくる一色。

 

 ふむ、実戦形式か。それなら俺でも対応出来るから問題無い。

 

 だけど一色がそう言って来たって事は、もしかしたら初めからそのつもりだったかもしれない。

 

 俺に勝ちたいのであれば試合形式でやれば良いのだが、そんな有利な条件で勝利したところで高が知れてる。誇り高い彼女はそれを充分に理解してるから、実戦形式をやろうと言い出したに違いない。

 

「それは助かる。けど、君と手合わせする前に、ちょっと練習時間を貰ってもいいか? エペーを使うのは初めてだから、出来れば慣れておきたいんだが」

 

「ええ、勿論よ。私もウォーミングアップをしておきたいから、一時間後で良いかしら?」

 

「充分だ」

 

 手合わせを行う前に俺はエペーの軽い練習、一色は身体を温める為の準備をするのであった。

 

 

 

 

 

「愛梨、本当に兵藤君と戦って大丈夫なの?」

 

「当然よ。彼が三高に来てくれたのだから、この機会を逃す訳には行かないわ」

 

 練習時間を設けた事で、隆誠と愛梨はそれぞれ離れた場所で準備をしていた。

 

 愛梨は先ほど言った通り準備運動をしようと、相方である十七夜栞と一緒に柔軟(ストレッチ)をやっている。

 

 隆誠も一通りの準備運動をしてから、片手に持つエペーの基本的な突きの練習に切り替え、それを将輝や沓子が傍で見守っている。

 

 練習時間にも拘わらず、部員以外の生徒達は立ち去る様子が一切なく、殆どが隆誠の方へ視線を固定していた。まるで一挙一動を見逃さないみたいな感じで。

 

 彼等がそうするのは正直言って無理もない。隆誠は十師族でないにも拘わらず、三高が誇る十師族直系の一条将輝に勝利する実力を持ち、途轍もない剣技を披露した事で、魔法科高校の中でも五本の指に入る有名人となっているのだから。

 

 そんな有名人が三高に来ているのであれば、絶好の機会として是が非でも見ておこうと観察に徹しているのだ。今やっている練習や、この後に行われる一色愛梨の手合わせで、必ずまた自分達の度肝を抜かすような凄い事をするかもしれないと。

 

(本当なら手合わせじゃなく、私も兵藤君に色々教えて貰いたかったんだけど)

 

 ストレッチをしている愛梨はチラリと彼を見ながら、心の中で本音を漏らしている。

 

 一色家の令嬢である彼女が一般家系の魔法師に教えを乞うなど絶対有り得ないのだが、今年の九校戦を観た事で一気に考えが変わっていた。参加した天城修哉と佐伯紫苑が優勝した事で。

 

 去年まで大して実力が無い二科生だった筈なのに、それが今では優秀な一科生となっている。更には自分を超えたと思われる実力者にもなり、九校戦では他校だけでなく自校の選手達ですら仰天する技や魔法も披露していた。

 

 あの二人を鍛え上げたのは言うまでもなく隆誠なのだが、一体どうやって強くさせたのだと愛梨は非常に気になった。いくら地道に特訓したとは言っても、たった一年足らずであそこまで強くなるのはおかしいのだ。最早あれは成長を通り越して飛躍と言っても過言ではないと突っ込みたいほどに。

 

 故に愛梨は彼の事が非常に気になっている。沓子と違って恋心ではなく、自分も彼に指導して貰えば今まで以上に強くなるのではないかと考えているだけに過ぎない。

 

(もし彼が三高に来ていたら、状況が物凄く変わっていたかもしれないわね)

 

 兵藤隆誠が三高の生徒であったら、入学した頃の自分は隆誠に打ちのめされていただろう。その時期は家柄や実力を過信していたから、大敗した事実を受け入れられず見苦しい言い訳をしてる光景を愛梨は容易に想像出来たのだ。

 

 そんなIFの展開を考えている最中、突如周囲がガヤガヤとざわめいていた。

 

 愛梨だけでなく付き合っている栞も何事かと思って視線を向けると、その先には練習している筈の隆誠が何故か将輝と対峙している。

 

「おいリューセー、本当に大丈夫なのか?」

 

「問題無い。将輝が微動だにしてなければの話だが、な」

 

 エペーを手にしている隆誠とは別に、将輝は何の武器も持たず立っているだけだった。

 

 彼は一体何をするつもりなのかと愛梨と栞も気になり、一旦ストレッチを止めて視線を固定している。

 

 因みにあの二人がいつの間にか名前で呼び合ってる事に気付くも、今は非常にどうでも良かった。

 

「突然だが将輝、去年に俺達と戦ったモノリス・コードは憶えてるか?」

 

「……忘れる訳無いだろう」

 

 隆誠の問いに将輝は苦々しい表情をしながらもしっかり憶えていると答えた。

 

 去年の新人戦モノリス・コードの決勝戦は彼だけでなく、観戦していた愛梨達も鮮明に記憶している。

 

 あの試合は一高の奇策によって三高側は完全に翻弄されてしまい、その所為で敗北を味わわされてしまった。そうなる原因は隆誠でなのは言うまでもない。

 

 加えて隆誠は将輝を確実に仕留めようと、観客達の度肝を抜かすほどの凄い技を使った。『九頭龍撃』と呼ばれる、九つほぼ同時に斬撃を行う技を。

 

「あの時のお前は眼が眩んでいた所為でまともに見えないままやられたから、もう一度似た技を披露しようと思ってるんだが、どうする?」

 

「良いのか? 俺だけじゃなく、他の生徒達の目もあるんだが」

 

「別に構わない。見られたところで簡単に攻略出来る技じゃないから、な」

 

 隆誠の発言に(愛梨と栞も含めた)周囲が思わずムッとした。

 

 しかし去年彼が見せた剣技は、この場に居ない吉祥寺真紅郎や他の生徒達は対策を練っても、糸口が全く見つからなく手詰まりとなって断念している。その所為で誰も言い返す事が出来ないのだ。

 

「……お前がそこまで言うなら、是非とも見せて貰おうじゃないか」

 

 将輝も若干眉を顰めていたが、向こうが態々見せてくれるなら乗ってやろうと承諾した。後で絶対攻略してやると決意しながら。

 

「そうか、なら――」

 

「隆誠殿、良かったらワシが技を受けてもよいのじゃが」

 

「――君は見学に集中するように」

 

 突如沓子が割って入るも、隆誠は苦笑しながら彼女にそう言い返した。

 

 少々変な空気になりかけたが、気を取り直そうと空気が変わろうとする。

 

 手にするエペーを構える隆誠と、微動だにせず佇む将輝。

 

 二人に合わせるように、周囲も静かになって見守っている。

 

「行くぞ」

 

「!」

 

 隆誠が片手で構えながら神速で突進していき、将輝の眼は大きく見開く。

 

 直後、まるで風が通り過ぎたかのように、将輝から少し離れた位置で止まって隆誠は着地する。

 

 言うまでもなく単にすり抜けた訳ではなく、突進中にエペーで(かなり加減した)九つの刺突を同時に打ち込んでいた。これは当たった本人にしか分からない。

 

『……………………』

 

 将輝だけでなく愛梨や栞、その他の生徒達も言葉を失って呆然となっていた。

 

「どうだ、将輝。以前とは少々違うが、九つの刺突を同時に打ち込んだ神速技――『九頭(くず)(りゅう)(とつ)』の感想は?」

 

「………ッ! はぁっ、はぁっ……!」

 

 隆誠が振り向きながら言った直後、将輝は途端に息が上がっていた。

 

「お、俺は、去年にこんな凄い技を、受けたのか……!」

 

 まるで信じられない物を体験したかのように言っている将輝に、何処かで見た光景だなと思い出している隆誠。

 

 直後、周囲の生徒達もハッとして騒ぎ始める。

 

「……ねぇ愛梨、本当に彼と手合わせしても大丈夫なの?」

 

「…………………」

 

 栞が心配そうに訊ねるも、とんでもない物を見たかのように未だ呆然としている愛梨だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、今の映像はしっかり撮ったな!?」

 

「は、はい。しかし前田校長、本当に良いのですか?」

 

「三高の極秘資料として保管すれば問題無い。それにあんな凄い技を記憶だけに留めるなど勿体無いだろうが!」

 

「はぁ……」

 

 前田校長の指示とは言え、無断で武道館を撮影して本当に大丈夫かと不安な気持ちになるスタッフだった。




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