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小田原城陥落によって発生した戦果を処理すると言う名目で江戸に左遷させられた徳川家。
それは、徳川家にダメージヘアー星人と言う新たなる敵との戦いを強いる事を意味していた。
そこで、徳川家は母島に秘密の祭壇を作り、ダメージヘアー星人が送り込む怪獣に対抗できる人間を生み出そうと考えていた。
そして、時は流れて……
2人の現代人がその祭壇を中心に対談する。
「何故邪魔をする?あと少しで姉さんは復活できるんだぞ!」
それを聞いた強田が首を横に振った。
「やめな。その女が完全にアウトになる前に」
だが、青年は強田の助言に耳を傾けない。
「何を言っている!俺はアウトをセーフに戻す為にここまで来たんだ!姉さんの復活の邪魔はさせねぇ!」
青年がポケットからナイフを取り出すと、強田が悲し気な表情を浮かべた。
「お前……誰かに騙されてるんだろ?」
青年は強田の台詞の意味が解らなかった。
「騙されてる?何の事だ?俺は、姉さんから奪ってしまった物を全部姉さんに返そうとしているだけだ!」
青年が強田を攻撃するが、れっきとしたヤンキー男子だった頃から既に喧嘩慣れしている強田の敵ではなかった。
「お前……筋が良過ぎるな?それ以上進歩したら、本当に人を殺しちゃうぞ?」
悠々と捌きながらアドバイスを送る余裕さえあった強田に対し、青年の方は必死だ。
「ほざくな!」
で、結局場数の差に押されて強田に取り押さえられる青年。
「くそ!離せ!放せ!」
そして、強田が青年に訊ねた。
「お前は、この地に眠る失敗作の廃棄理由をどこまで聞いてる?」
その途端、青年は無言で仰天した。
「やはりな……やはりお前は騙されてるわ。作り方しか聞かされてなかったんだろ?」
図星だった。
兵器推進善業が魔法少女管理委員会施設に対してクーデターを行った日に姉がウサギとチンパンジーを同時に兼ね備える巨大怪獣に殺された事を後悔していた青年は、姉がウサギとチンパンジーを同時に兼ね備える巨大怪獣に殺された現場で出会った少年に死者を復活させる方法を教わった。
それが、青年が母島に隠された地下祭壇にやって来た理由であった。
強田が青年の記憶を盗み視るが、出てくるのは中国風の衣装を身に纏う8歳くらいの少年だけであった。
今回の祭壇侵入に関する黒幕の慎重さに背筋が寒くなる強田だが、青年に対して他に言わなければいけない事が有った。
「そんな事をしてる暇が有ったら、その女が死んだ理由に怒りをぶつけてみたらどうだ?あの日に大遅刻した俺達と、俺達の大遅刻の原因となった軍隊によ」
だが、青年は恨みに身をゆだねる気にはなれなかった。
「そんな事をして何の意味がある?あの叩とか言う糞野郎を殺すだけで姉さんが復活するとでも言うのか!」
強田は悲しくなった。
本来なら青年の言い分の方が正しい。流石の強田だってそれくらいは理解出来る。
だが、今回はそれが逆に仇になってしまったのだ。母島に眠る失敗作を利用しようとした黒幕の悪意によって。
夏芽が強田を発見するや否や、いきなり強田を平手打ちした。
「強田さん!こんな忙しい時になにサボってるんですか!?」
あっけにとられた強田があっけらかんと返答した。
「ピンチなのか?」
怒った夏芽がまた平手打ちをした。
「ピンチどころの騒ぎじゃありません!」
「そんなにヤバいのか?」
夏芽から聞かされた状況は最悪だった。
兵器推進善業が行った通常兵器による猛攻によりミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人が劇的に成長してしまい、ミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人のこれ以上のパワーアップを未然に防ぐ為に行った行為を兵器推進善業に盗撮され、それを兵器推進善業(と兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人)の都合が良い様に加工されて全世界に拡散され、その結果、ライラ達が率いる情報管理室が無数の苦情でパンク状態に陥ったのだ。
「正に大炎上。これで逆転したら、歴史の教科書に掲載出来るな?」
夏芽が3度目の平手打ちをしようとしたが、さっきまで強田と口論していた青年が妨害した。
「そこの女、この俺に恨みに現を抜かさせる気か?」
すると、青年が何かを我慢する様にしゃがみ込みながら力んだ。
「考えない様にしようとしたのに……姉さんの復活に全集中しようとしたのに……叩め……俺に姉さんの見殺しをさせるだけでは……飽き足らんかぁー!」
これを見せられては、夏芽も怒りに身を任せる事は出来なかった。
「見殺し?どう言う意味ですかそれは!?」
「そいつの姉貴、俺達が妙な軍隊のせいで大遅刻した日に巨大怪獣に殺されたんだと」
「そんな!」
「で、誰かさんに騙されて、例の失敗作を使ってその姉貴を復活させる気だったんだと」
「騙された!?じゃあ、この方は怨人の正体を知らずにここに?」
その途端、青年が夏芽の襟首を掴んだ。
「嘘だ!姉さんは、怨人に成れれば復活する筈だ!」
強田が残念そうに首を横に振った。
「違うな……その時点で、お前の姉貴は人間ではない」
「それは……人間を超越したからだろ?」
青年は「そうだ」と言って欲しかった。
だが、強田の口から出た言葉は、青年の期待とはほとんど逆方向だった。
「怨人の力は人間を超えた力じゃない。人間を……捨てた力だ」
怨人。
当時は例の隕石の力が無かった徳川家が魔法少女の代用品として開発した強化人間……の筈だった。
被験者に生霊と悪霊を注入する事で、被験者の内に秘めた超能力を飛躍的に向上させようとしたのだが、完成した怨人には致命的な欠点があった。
それは、知能低下と光拒絶反応。
怨人は強い光を浴びると悶絶してしまうと言うとんでもない弱点を秘めており、その段階で既に実用化不可能と診なされていたが、知能低下の方がもっとひどかった。
一応、宿主や生霊の記憶や性格を色濃く残しているものの、人間的知性は低下して宿主や生霊の日課や行動を繰り返すだけ。
しかも、元がどれほど慈愛ある人格者であっても好きな食べ物が生肉と血液に変更され、近くにいる人間を襲ってしまう可能性まであるのだ。
青年は、怨人の正体を知って愕然とした。
「そんなの……そんなの俺が知ってる姉さんじゃない!」
そして、青年は姉の復活がふりだしに戻った事に気付いて怒り狂った。
「じゃあなんだ!?俺にどうしろと言うんだ!」
返す言葉が無いのでどうする事も出来ない強田と夏芽。
その時、怨人を生み出す為に造られた祭壇が勝手に動き出した。
「しまった!怨人共が復活する!」
慌てて青年の姉の死体に駆け寄る強田だったが、青年の姉の身体に生霊や悪霊が注入される事は無く、寧ろ、青年の姉の死体から半透明な女性が抜け出た。
「姉さん!」
だが、半透明な女性が語り掛けたのは強田の方だった。
「彼らを……救ってあげて」
「彼ら?」
強田が半透明な女性が指差した所を視ると、叩を散々苦しめた謎の夢達が絶望に打ちのめされた状態で棒立ちになっていた。
そして、祭壇の動きが更に活発になると、半透明な女性と謎の夢達が強田に注入された。
「うっ!」
「強田さん!?」
「姉さん!」
(これは……さっきの『助けて』は、そう言う意味だったのか?)
「……強田……さん?」
「姉……さん……?」
青年の姉と言う悪霊と叩を散々苦しめた謎の夢達を注入され、魔法少女と怨人を同時に兼ね備える男性となった強田は、何を成すべきかを悟ったかの様に瞬間移動した。
「ちょっと!?強田さん!?」
「どこへ行く!?姉さんを返せ!」
兵器推進善業の猛攻のせいでどんどんパワーアップするミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人との戦いは、叩と兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人が意図的に流した動画による魔法少女管理委員会の支持率急低下により、更に混迷を極めた。
と言うより、既にほとんどの魔法少女達の心が完全に折れていた。
それを察した叩が、通常兵器によるダメージヘアー星人及び巨大怪獣の真の完全討伐と、戦争による人類の真の進化と発展を確信していた。
「これでぇー、我々人類の戦争による進化を止める者はいなくなったぁーーーーー!そしてぇー、ダメージヘアー星人と巨大怪獣はぁー、我々軍隊の手によって正しく滅びぃー、地球はぁー、戦争と言う善の力でぇー、正しい方向へと向かうのだぁーーーーー!」
一方の兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人は、嬉しい誤算的な意味で苦しんでいた。叩の真実とは真逆の見当違いな台詞のせいで笑いをこらえるのに必死だからだ。
だが……
「まだ、諦めるのは早いぜガキ共」
強田の声が響き渡った途端、無数の白い羽が舞い降りた。
心身共に疲れ果てた魔法少女達の心を癒し、ミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人の本体が無数の白い羽を煙たそうにはねのける。
「もう偽装を脱ぎ捨てるとは……お前はもう……アウトだな」
皆が声のする方を見ると、いつもとは違う強田が神々しく浮遊していた。背中には白鳥の翼に似たエネルギー翼を発生させ、純白のドレスに身を包んでいた。
あまりの美しさと神々しさに、魔法少女達もライラ達も自分達が既に致命的な状況に墜ちた事をすっかり忘れてしまった。そして、兵器推進善業も攻撃を忘れて見惚れてしまった。
その反面、ダメージヘアー星人は強田の真っ白な肌を見て嫌な予感がした。
「まさか……取り入れたと言うのか……怨人を生み出す技術を!?」
ただし、叩だけは違った。
「こらぁーーーーー!何をサボってるぅーーーーー!早く目の前の巨大怪獣を撃破しろぉーーーーー!」
叩の一喝に慌てた艦隊が、Mk.41からSM-3ABMを一斉発射する。
だが、強田が左手をヒラヒラすると、まるでビデオの巻き戻しの様にSM-3ABMがMk.41内に戻った。
「……何が……起こった?」
更に、強田が指を鳴らすと、ミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人が生み出した無数の幻が全て消滅し、透明に変えられていた松本達を元の姿に戻した。
それを見ていた魔法少女達は驚いた。
「時間を操ったと言うのか?正に桁違いだ」
ミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人が止まったら敗けと判断したのか捕らえていた松本達を投げ捨てたが、強田が右手を突き出した途端、松本達が光に包まれて浮遊し、松本達の怪我が完治していく。
ミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人が両鋏の形状を接近戦用に変形させながら強田に飛び掛かるが、強田は楽々かつ悠々と攻撃を捌いて蹴り飛ばし、ミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人を海面に叩き付けた。
が、ミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人が両鋏の形状を遠距離戦用に変形させ、両鋏を前に突き出し、パチン!という大きな破裂音と共に強力な衝撃波を放った。しかし、強田の身体に全て弾かれた挙句、強田は全くの無傷であった。
これには、流石のフケ曹長も兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人も、顔が完全に蒼褪めて背筋が氷の様に冷たくなった。
「強過ぎる……やはり一気にあの島を徹底破壊するべきだったのだぁー!」
更に強田が手を盛大に叩くと、海中からあの青白くて細長い炎が放たれ、兵器推進善業の艦隊に多大なダメージを与えた。
「あの炎は!?まさか……」
そのまさかである。
「本当なら、アンタはこの母島決戦に間に合わない筈だったんだよねー」
そう、強田が長距離転送と時間操作の合わせ技を使って、母島列島に急行していたRisquemaximumを母島近くの海に呼び寄せたのだ。
ようやく母島に到着したRisquemaximumがミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人に向かって歩き出し、それを見たミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人が両鋏を前に突き出し、パチン!という大きな破裂音と共に強力な衝撃波を放った。
それを見た強田は、なすべき事を行う為に一旦戦いの場から離れた。
「Risquemaximumさんよ、後は頼んだぜ」
叩達がいるブリッジに瞬間移動した強田。
「な!?何をしに来た!?」
強田が呆れながら訊ねた。
「お前は最近、変な夢を観続けているそうだな?」
だが、叩は強田の質問には耳を傾けず、逆に強田の敗北感を煽った。
「だが無駄だぁーーーーー!世界は既にぃー、お前達が撒き散らし続けた嘘から解放されたぁーーーーー!それにより―――」
強田が本格的に呆れた。
「本当にアウトだなお前は?この期に及んでまだあの夢の正体を知らないとはねぇ」
その言葉に兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人が嫌な予感がした。
「おい!叩務!その様な話を何故隠した!?」
叩は悪びれる事も無く答えた。
「所詮はぁー、魔法少女どもが我々人類に必要不可欠な戦争を奪う為に―――」
もう叩の言い分を聞いても無駄だと判断した強田。
「あいつら……本当に無駄足だったな。こんな馬鹿に俺達の未来に関わる情報を託すなんてよ」
が、今の叩には何を言っても無駄だった。
「あの夢は確かに無駄だったさ……既に地球はぁー、戦争が生み出す明るくて輝かしい未来に向かって―――」
「本当にそうなら、あの夢がこの時代に姿を現す事はねぇんだよ!」
艦長が代わりに質問した。
「では、君は叩くんが観た夢が何か解っているのか?」
強田が真面目な顔で答えた。
「未来から来た生霊さ。今回の戦いの結果を変えて、散々過ぎる未来を回避する為にな」
強田が完全に蒼褪めた兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人を発見して皮肉を言った。
「あれれぇー?何でそんなに青くなるのかなぁ?もしかして、罪悪感以外の何かを感じての事かなぁー?」
兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人が慌てて言い訳をしようとする。
「罪悪感?何の事かな?我々は―――」
だが、既に全てを見抜いている強田には通用しなかった。
「じゃあ……さっきの動画のアイデア、誰が言い出しっぺだ?」
兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人の背筋が急速に冷え、滝の様な汗を流した。
「おいおい!どうしたどうした!あの動画を世界に拡散しようって言った奴が誰かを言えば良いだけの話だろ!」
すると、叩以外のブリッジにいるメンバーが、兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人の方を恐る恐る見た。
「何だ……何故俺を疑う……俺がお前達に何をしたって言うんだ!」
強田が怒った様に答えた。
「これからするんだよ!お前達……ダメージヘアー星人が!」
兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人が慌てて釈明する。
「何を言ってる!お前達が巨大怪獣を庇ったから悪いのだろ!地球の敵である筈の―――」
流石に鈍感な兵器推進善業の一員でも、兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人の慌てる姿に不信感を懐いた。
「ちょっとあんた!言いがかりにしちゃ慌て過ぎなんじゃないの!?」
だが、自己の思想に酔っている叩は、兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人に不信感を懐いたメンバーを一喝した。
「馬鹿者ぉーーーーー!敵の前で仲間割れするとはぁー、何事だぁーーーーー!」
強田が頭を抱えながら溜息を吐いた。
「……アホかアンタ?」
そして、強田がポケットから何かを取り出した。
「こいつを借りパクしておいて正解だった様だな」
強田が兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人に隕石の欠片を近づけた途端、兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人が突然苦しみだし、口からオレンジ色の炭酸血液を吐いた。
それにより、叩の異様過ぎる興奮は一気に醒めた。
「……オレンジ色の吐血だと……馬鹿な……そんな馬鹿な!?ダメージヘアー星人の天敵である筈の我々の中にだなんて……そんな馬鹿な事が在り得ようか!?」
大慌ての叩に対し、強田は冷静そのものであった。
「解るだろ普通。俺達が敗けて最も得をするのは誰か?それさえ判れば……」
強田が隕石の破片を近づける度に兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人がもがき苦しみ、肌色を緑に変えた。
「やめてくれぇ……本当にやめてくえぇ……」
「おのずと黒幕が誰か解る」
「あぐぐぐっ……ぐっ!……」
そして、ダメージヘアー星人は死んでしまった。
「あー、言い忘れてたけど……こいつのくたばり方、既に世界に拡散したから」
一方の兵器推進善業本部では、
「先程のダメージヘアー星人の死亡シーンに関する苦情によって大炎上しました!早急に対策を施さないと、我々の再起は不可能になります!」
本部からの連絡を受けた叩が愕然とした。
「世界は……もう直ぐ救われる……筈だったのに……」
強田の意見は逆だった。
「いや、救われたさ。少なくとも、あの夢に出て来た連中と違って、頭髪の水洗いはおろかシャンプーもリンスも……許されてるぜ?」
叩が強田に文句を垂れた。
「夢だと!?あの夢は、俺を苦しめる為に仕組んだ、お前達魔法少女管理委員会の罠だろ!」
強田が残念そうに首を横に振った。
「違うな……お前は、虐げられた者の苦しみを知らないからそんな事を言えるんだ」
「嘘を吐くな!」
「ま、俺はちょっと前まで虐げる側だったから、虐げられた連中の恨みに満ちた目くらいしか知らないがな」
そうこう言っている内に、海に沈んだミンミンゼミとテッポウエビを同時に兼ね備える巨人がうんともすんとも言わなくなった。
「おっ、Risquemaximumも役目を果たしたらしいな?」
全てを終えた強田の表情は晴れやかだったのに対し、兵器推進善業の理想とする未来がまたまた遠ざかった事に愕然とする叩。
戦いを終えて佇むRisquemaximumを警戒する魔法少女達の前に瞬間移動する強田。
「大丈夫だよ。もうこいつは味方だよ。少なくとも……」
だが、強田の言い分に反し、Risquemaximumが口から青白くて細長い炎を吐いた。
「ダメージヘアー星人の味方じゃない!」
Risquemaximumが吐いた細長い炎は、冷静沈着に見守る強田の背後を素通りし、フケ曹長が乗る円盤型宇宙船に命中した。
「あーーーーー!?」
フケ曹長が乗る円盤型宇宙船が爆散・炎上した。
「Risquemaximumがダメージヘアー星人の円盤を撃ち墜とした!?」
母島決戦の元凶の死を看取ったRisquemaximumは、強田の予想通り、魔法少女達には何もせずに海底へと帰って往った。
「あばよ。そして、お疲れさーん」
ダメージヘアー星人が怨人の存在を思い出した事が端を発した母島決戦を終え、魔法少女達が改めて母島に上陸した。
先ずは、松本が叩が拡散させた動画の事で謝罪した。
「すまない!まさかあんな事になるとは思えず、皆に誤解を招く様な―――」
が、強田が優しく遮った。
「あんたのどこがアウトだよ?アウトなのは……」
そこへ、出頭を決意した艦長達がやって来た。
「例のエイリアンに騙されて良からぬ事をした、鈍感すぎる連中の方さ」
艦長が謝罪するかの様に頭を下げた。
一方、翔太は強田の今の姿の方が気になった。
「何か……随分見ない内に、随分ご立派になられて……」
「あー、これ?俺はどうやら……怨人に変えられたらしい」
その途端、魔法少女達が慌てて臨戦態勢をとった。
「あー、やっぱりそうなるか?」
「なるよー!怨人って確か!?」
だが、強田の表情に殺意は無かった。
「何だけどねー、例の隕石のお陰かな?どうも、思った程凶暴に成れないんだ」
「信じられるのか?その言葉?」
「確かにな。ま、その点に関してはあいつらが詳しく調べるだろうよ。ただ、徳川家の怨人製作で大きな間違いをしていた事だけは確かだぜ」
強田の意味深な台詞に首を傾げる一同。
「どう言う意味だ?」
だが、強田の言い分は単純だった。
「徳川家は、被験者に生霊と悪霊を注入する事で怨人を製作しようとした。けどな、徳川家は怨人製作の際に生霊や悪霊の了解を得ていたのかって事だよ」
最初に強田の言い分を理解したのはライラであった。
「つまり、怨人の知能低下と凶暴化は、強引に怪獣討伐に利用された悪霊の反乱だと言うのか?」
「だろうな」
だが、これだけでは、魔法少女と怨人を同時に兼ね備える男に成った強田が凶暴化しない理由としては不十分だった。
その疑問に対して、強田が艦長達の方をチラっと見た。
「幸い……俺達には共通の敵がいたのさ」
「ん?一見辻褄が合ってる様で合って無いぞ?それって結局、巨大怪獣を倒す為に悪霊の力を悪用したって事じゃないの?」
強田がまた艦長達の方をチラっと見た。
「いや、巨大怪獣もダメージヘアー星人も、俺達の敵が悪さするきっかけを作っただけさ」
ますます謎めいた言い回しをする強田に少しイラっとする魔法少女達。
「いい加減にしてよ。そろそろ本当の事を言ってよ」
それを聞いた強田が真顔で冗談(?)を言った。
「いただろ?俺達に大遅刻と言う大恥を掻かせ、あのデカブツ共の悪さを手助けし、大量の文句を全て無視したアウト野郎が」
それを聞いた艦長がハッとする。
「それってまさか!?あの男の事か!?」
強田達の敵、それは正に艦長の予想通りであった。
「叩務。自分の綺麗事と兵器推進善業の甘い誘惑に完全に溺れて酔っているアウト野郎さ」
だが、一部の魔法少女が首を傾げた。
「ん?一見辻褄が合ってる様で合って無いぞ?叩務は既に無期懲役で、しかも50年間の―――」
とここで、艦長がとんでもない白状をする。
「あの男なら……既に脱獄した。ダメージヘアー星人の手引きでな」
「脱獄した!?マジで!?」
艦長が残念そうに言葉を続けた。
「我々は踊らされたのだ。ダメージヘアー星人にな。だが、あの男は最もその事実に気付いていない。利用価値が膨大過ぎるかませ犬だったのだよ我々は」
呆れ果てる魔法少女達。
「……もはや……叩務がどっちの味方か解らんな……」
強田があっけらかんと答えた。
「アイツは……地球の発展と俺達人間の進化の為に、戦争と兵器を存続させようと努力してる心算なのさ……」
そして、直ぐに真顔になる強田。
「だが、“今”があいつを否定したのさ。あいつはアウトだとな」
そう考えると、叩は悲しい男である。が、だからと言って許されるの範疇を既に超えているのも事実。その証拠に、叩が兵器推進善業の一員に変装したダメージヘアー星人に誑かされて拡散させた動画が、魔法少女管理委員会を解散寸前まで追い詰めたのは事実だ。それに……
(あのアウト野郎が観た変な夢の正体は、未来からやって来た生霊で、あいつらはリンスやシャンプーはおろか、頭髪の水洗いすらさせて貰えない哀れな存在だが、これ以上は更にみんなを混乱させそうだから黙ってよ)
江戸時代の怪獣対策技術争奪戦だった母島決戦もいよいよ完全決着。
第5話(https://syosetu.org/novel/266019/6.html)(https://syosetu.org/novel/266019/7.html)の内容にも繋がる戦いだけあって、3部作で収まるのかって感じで長くなってしまいました。
で、叩や兵器推進善業は相変わらずの邪魔者(地球側にとって)ですね(汗)。全く、何がしたいのやら……