夜。月の光が綺麗な空を一隻の飛行船が進んでいく。その船の形状はどことなくアインホルンに酷似している。全長はアインホルンと比べると若干大きく、船首の鋭角部も一本ではなく二本であったりと違いがある。
《ビゴルヌ》―――パルトナーの再現を目指して作り上げられた、ファーレンガルド製の飛行船。新たな鋼材も惜しみ無く使い、既存の飛行船の性能を大きく凌駕した、最新鋭の船だ。見た目がアインホルンと酷似している理由は、クレアーレが設計図を職人達に渡したからだ。あくまで外見のみで、肝心の中身は一切渡していないが。
「まさか、ビゴルヌで向かう事になるなんて……確かにこの船が一番早く共和国へ向かえるけど」
「仕方ないだろ。若頭の婚約者と公爵家の令嬢……その二人の要望を無下に出来ないし」
艦橋で船の操縦をしている、二名の操舵主はやれやれと言いたげに肩を竦める。ビゴルヌは新技術と新素材を注ぎ込んだ試験運用の意味合いが強い飛行船だ。アインホルンとは別ベクトルで機密の塊となっており、技術漏洩の危険性を考慮すれば、国内で運用するのが最善手ではあるだろう。
それを加味してもビゴルヌを持ち出したのは、この船が一番速いかつ内装も充実しているからであるが……一番の理由は二人に逆らうのが怖かったからだ。
それはもう怖かった。ビゴルヌの船長だけでなく、技術責任者のシオンもその迫力に震えて了承したのだから。勿論、王国側もアンジェリカが事前に許可を取っているので問題はない。むしろローランドが満面の笑みで許可したくらいだ。リオンとエドワードへの嫌がらせ目的で。
そのビゴルヌの船内を、一機の小型の端末がフヨフヨと宙を漂って移動している。普通であれば船員が何かしらの反応をするだろうが、その端末は自身を透明化している上にセンサーの類からも逃れている。ビゴルヌに搭乗している、護衛二名も気付いていない。
『フム……この船の性能は高水準だな。あくまでこの世界の技術水準においてはだが』
その端末―――ラプラスはビゴルヌに対してそう評価を下すと、壁をすり抜けるように通過しながら進んでいく。ラプラスは偵察船という特性から、複数の端末を同時に動かすことができる。メイン端末と比べたら工作行為はできないが、今回のような潜入に接触、情報の共有等はメイン端末同様の性能で動くことができる。
ちなみにどうやって端末をビゴルヌに潜り込ませたのかと言うと、ステルスモードの本体がビゴルヌに近づいたからだ。隠密に特化した偵察船なので、現在進行形で隣で航行していても気付かれていない。
『正面でやり合う分にはアインホルン同様に面倒だが、不意討ちで墜とす事は可能だな。仮に正面で戦おうとも負けないが』
これは誇張ではなく、純粋な事実だ。ラプラスは偵察船の括りの中ではという前提はつくが、かなり高性能な船だ。それこそ、既存の軍艦に正面からの撃ち合いで勝てるくらいには。
『最も、あのクソマスターは率先して戦おうとしないがな。私を発見したのも、いざという時の逃亡手段としてだからな。それすらも崩れ去っているが』
ラプラスは短い付き合いながらも、ティアの性格を概ね把握している。身近な親しい人を切り捨てられない、自分より他人の安全を優先する、この世界で生きる上で損をする性格であることを。
『……業腹ではあるが、奴らとの本格的な協力も視野に入れておくか。ノエルが《巫女》となれば、マスターにも危害が及ぶ可能性が濃厚だからな』
紛いなりにも自身のマスターであるティアの身を考えつつ、ラプラスは目的の部屋へと到着する。すんなり侵入した部屋には、目的の人物達―――オリヴィアとアンジェリカ、そして人工知能の端末と魔装の端末らしき黄色い結晶がいた。
『マスター達、外でお食事したみたいね。高級なレストランで奢ったそうよ』
『俗に言う、ダブルデートと言うやつだな。その後は賭け事で遊んだと上司は言っていた』
……相も変わらず、意図的に要所を黒く塗り潰した、偏った報告をしていたが。
「フフ……本当に二人には一度、しっかりと話を聞かなければならないな」
「全くです。本当に浮気していたら、
人工知能の端末と魔装の端末―――クレアーレとソウルの報告に、アンジェリカとオリヴィアは怒りのオーラを強く放っている。
『食事の方も貴族の御用達もあって、美味だったみたいね』
『牛の頭を丸々使った料理、が付きますがね』
クレアーレの報告に注釈を付けるように、ラプラスは言葉を発した。突然の第三者の声にアンジェリカとオリヴィアは驚くと同時に周囲を見渡し、クレアーレとソウルも剣呑な雰囲気を放ち始めていく。
『……不遜な侵入者がいたわね』
『警戒を疎かにしてはおらぬが……感知に一向に引っ掛からん』
アンジェリカとオリヴィアの傍に移動したクレアーレとソウル。そんな彼女らと対面するように、ラプラスはステルスモードを解除して姿を現す。滲み出るように現れたラプラスに、アンジェリカとオリヴィアは驚きを露に目を丸くする。
『一応自己紹介しておきましょう。私はラプラス。ルクシオンと、そこのクレアーレと同じ分類に属するロストアイテムです』
「……ルクくんとアーレちゃんと同族?」
「確かにルクシオンとクレアーレと同じ見た目だが……何が目的だ?」
『情報の正確な共有ですよ。間違った認識で対面されると面倒なので』
ラプラスはアンジェリカの質問にそう返すと、二人の目の前で映像を展開する。
『なぁ~、ノエルちゃん。ノエルちゃんはどう思う?俺のモテ期って本当に凄くない?王国では婚約者……留学先では俺を取り合う女子が二人もいてさ~』
大型犬にだらしない顔で戯れている、リオンの映像を。
「「…………」」
『これが貴女方が受け取った手紙にあった【ノエル】です。手紙の正確な内容までは存じ上げませんが、だらしなくイチャイチャしていたノエルはこの犬の事です。その犬のノエルは天寿を全うされました』
『貴方、この映像をどうやって手に入れたの?』
『ルクシオンの記録からコピーしました。重要度の低い記録故に、入手も容易でしたよ』
『あのひねくれ者……簡単にデータを抜かれているんじゃないわよ』
クレアーレが問い詰めたことでこの映像が真実だと分かり、アンジェリカとオリヴィアは安堵の息を吐く。
「そうか……リオンは裏切っていなかったのか……」
「良かったです……お二人が浮気に走っていなくて……」
『その二人からアプローチがないのは事実ですが、恋愛の意味で好意を寄せられているのは事実ですよ』
和やかになりかけた空気が、ラプラスが放った爆弾によって一瞬で冷えきった。
「……ラプラスと言ったな。それはどういう意味だ?」
『言葉通りの意味です。私のマスターはエドワードに、実在する人間のノエルはリオンに惚れているのですから』
ラプラスはそう言って、別の映像を表示する。表示されたのは、ティアがエドワードに抱きついている映像だ。
『なら、側室でもオーケーっす!第二夫人でも全然構わないっす!』
『ちなみにエドはもう一人言い寄られて、返答は保留してる』
『じゃあ第三夫人っす!側室は何人いても問題ないっすから!』
「…………」
ティアの側室宣言を目の当たりにし、オリヴィアの表情が一瞬で消える。ベタ惚れの側室狙い……それが嘘偽りのない事実だったのだから。
ラプラスは二人の映像を消すと、次はノエルとルイーゼがリオンを取り合っている映像を流していく。
『ちょっと!?何考えているのよルイーゼ!?あんた、ラウルト家のお嬢様でしょ!?そそそ、それに両親に合わせるって……』
『ば……馬鹿!勘違いしてんじゃないわよ!ちょっと用事があるだけよ!』
『用事なら、私もリオンにあるんだけど!?』
「…………」
その映像にアンジェリカも無言。心無しか、背後から炎が燃え上がっているようにも見える。
『オリヴィア殿。こやつは今すぐ排除すべきであるぞ。某に殲滅の―――』
「ダメですよ、ソウくん。ラプくんには、詳しく話を聞く必要がありますからね」
『しょ、承知した……』
ソウルの進言に対し、オリヴィアは有無を言わさぬ迫力で駄目だと告げる。その迫力に圧されたソウルは、あっさりと引き下がってしまう。ちなみにクレアーレもその迫力に圧され、ソウルに対して嫌味の一つも飛ばせなかった。
『ラプくん?何故人類は略称で名前を呼ぶのでしょうか?私のマスターも“ラプっち”とふざけた名称で呼びますし……本当に理解不能です』
相変わらず略称や愛称で呼ばれることに不服そうなラプラスに、怒気を放っているアンジェリカが口を開く。
「……ラプラス。金髪のサイドテールの女が“ノエル”か?」
『ハイ。ノエルは現在、彼等の屋敷で暮らしています。付きまといの被害から逃れる為に』
「付きまといだと?」
『ええ。付きまといの相手は六大貴族の子息です。監禁に走ってもおかしくない危険人物ですし、彼等が現場に鉢合わせしたのもあって、身の安全を優先させて住まわせています』
ラプラスが明かした事実に、アンジェリカとオリヴィアは何とも言えない、複雑な表情になる。リオンとエドワードなら、その現場に鉢合わせして見て見ぬフリはしないだろうと理解しているからだ。心情はかなり複雑ではあるが。
「……その状況で、お前のマスターは何をしていた?」
『ノエルを連れてとにかく避けていました。マスターは没落貴族ですし、国の体制から力によるごり押しも不可能ですしね。件の人物がノエル用に首輪を用意したので、例の騒動もあって身を寄せる事にしました』
ラプラスのその説明に、共和国の内情をある程度知っているアンジェリカは納得の意を態度で示す。オリヴィアも共和国の内情を知らないが、首輪というワードからノエルを取り巻く状況が危険なものであると察して哀しげな表情となる。
「……その人はどうして、そんな事を」
『独占欲が悪化した結果ですね。ご自身の一方的な要求ばかりで、ノエルの意見は一貫して耳を傾けていなかったので。マスターもやんわりと指摘して取り持とうとしましたが、失敗に終わりました』
『それで鉢合わせしないように逃げ回っていたの?』
『ハイ。そちらと違って地位と力、ツテと金もありませんので』
クレアーレの問い掛けにラプラスはそう答える。
リオンとエドワードは有力な実績と十分な資金、要望を押し通せる権力者のアテがあったがティアは違う。共和国は聖樹を神聖視し、加護に最も重きを置いている。加えて、《加護無し》に対しての対応も冷たい。
事実、防衛戦においては負け無しだが平民への被害は大きく、その辺りが考慮される事がないのだから。
「……ノエルも助けてもらったのが切っ掛けで、リオンに惚れたと?」
『一因である事は否定しません。それと、ノエルはリオンの婚約者―――貴女の存在を知って思い悩んでいます。結論はまだ出ていませんので、その事実を当人は存じ上げていませんが』
「ハァ……」
ラプラスの言葉にアンジェリカは深い溜め息を吐く。ノエルの真摯さや、リオンの鈍感さに対しての溜め息であることは雰囲気から察せられる。この分であればノエルに対する矛先は幾ばくか和らぐだろう。
『もっとも、私のマスターは側室なら可能性はあると焚き付けていましたが。それで悟られずに一度は身を引こうとしたノエルは、どうしたいのかを悩んでいます』
「……お前のマスターとは、一度しっかりと話を聞く必要があるな」
「そうですね、アンジェ。ラプくんのマスターさんには、色々と聞く必要がありますからね」
ラプラスによって、アンジェリカとオリヴィアの怒りの矛先はティアへと向けられた。もちろん、リオンとエドワードにも怒りの矛先は向けられているが。
『……貴方、自分のマスターを危険に晒してない?』
『当然だ。クソマスターへの嫌がらせは、私の楽しみであるからな』
『やはり、今すぐ破壊するべきか……?』
あっさりティアへの嫌がらせを白状したラプラスに、クレアーレとソウルは難しげな反応を取る。しかし、すぐに真上へと意識を向ける。
『共和国の船が上から迫ってきているわね。この船と宝石擬きが雑に扱われるのは別にいいけど、アンジェ達に対して失礼ね』
『汝等が格下扱いは別に構わぬが、この対応は遺憾の極みだな』
「共和国の臨検か。かなり横柄だと聞いているが……」
『どうせすぐに引き返しますよ。アインホルンに痛い目を見せられた事が、相当に堪えていますから』
アンジェリカの呟きにラプラスがそう告げた直後、船外の様子を確認していたクレアーレとソウルの視界に捉えた飛行船は慌てたように立ち去っていった。
『……本当に立ち去ったわね』
『彼等もアインホルン級の飛行船の量産は不可能ではないと口にしていましたからね。一隻に完封なきまでにやられた上、最悪の枷を嵌めらました。なので、同じ目に合いたくないと弱腰です』
『さすが頭領だ。ここまで畏れられるとはな』
――――――
ハーツの報告を受けた次の日。
オレとリオンは早々に二人を迎える為に港に来ていた。
「……なあ、エド。あの船、アインホルンに似てないか?」
「確かにアインホルンに似ているな……共同開発の話はあったけど、アインホルンそっくりに造るだなんてオレは聞いてない」
リオンが指摘した通り、二人が乗ってきた船はアインホルンの外観とよく似ている。船首の鋭角部が二本だったりと明確な違いがあり、中身はおそらく別物……見た目だけ似せた、本家の足下にも及ばない劣化コピーだろうけど。
『船の中にはオリヴィアとアンジェリカだけでなく、多数の船員もいるな』
『外観だけ似せた粗悪品ですか。私のパルトナーの再現を目指した船という設定が裏目に出ましたね』
「粗悪品と言わないでやってくれ。職人達の努力の結晶なんだし」
オーバーテクノロジーで作られたアインホルンと、現代技術で作られたこの船と比べるのは確かにおこがましいだろうけど、量産を目指しているからそこは堪えてほしい。そもそも、動力源からして違うんだし。
『……まあ、別にいいでしょう。作りはとても丁寧ですし、アインホルンの量産タイプとしては及第点です』
良かったー。ルクシオンが不承不承ながらも認めてくれて。
でも、共和国への圧になってないかが心配かな。アインホルンの量産……その匂わせが現実味を帯びてしまったし。
『それと、私は少しの間席を外します。クレアーレに聞くべきことがありますので』
ルクシオンはそう言って、船の方へと向かっていく。ルクシオンと入れ違うタイミングで、リビアとアンジェ嬢が降りてきた。
「ひ、久しぶり。元気そうでなりよりだよ」
「本当に急に来て驚いたよ。向こうで何か―――」
オレとリオンは少しドキドキしながらも二人に話し掛けるも、リビアとアンジェ嬢は笑顔のまま腕に抱きついた。
……逃がさないと言わんばかりの雰囲気で。
「エドさん、今すぐお屋敷に行きますよ?」
「逃げられると思わないことだ、リオン」
え?あの、リビア?何でそんなに怒っているの?オレ、何か怒らせるような事をしたのか?
手紙にはちゃんと正直に共和国の日々について書いていたし……ティアに関しては誤解を招きそうだから伏せたけど。
「もちろん、お話はエドさんとリオンさんだけじゃないですよ?」
「ああ。ノエルにティア……特にティアにはじっくり話を聞く必要があるからな」
へ?何で二人の事も知ってるの?リオンも同じように疑問符を頭に浮かべて……
いや、まさか!?
「ハーツ!お前、ひょっとして!?」
『もちろん伝えていたぞ。彼女が第三夫人狙いであることもな』
おおおおおいっ!?本当に何で伝えたんだよ!?まさか、ルクシオンも一枚噛んでいたのか!?
「ルクシオンの野郎!俺をハメやがったな!?」
リオンもルクシオンの関与に気付いて叫ぶも、そのルクシオンはこの場にいない。
いや、それよりも誤解を解かないと!
「待つんだ二人とも!完全に誤解してる!」
「エドの言う通りだ!俺ら、浮気なんて全然してないよ!?したらアンジェパパ達に殺されるんだよ!?そんな命知らずな真似なんて出来ないよ!」
全く持ってその通りだ!ヴィンスさんにバーナードさん……不貞と浮気は絶対許さない父親二人を敵に回す勇気は欠片もないんだ!
え?クラリス先輩と婚約してないだろだって?そんなの関係ないんだよ!とにかく、浮気なんてしたら逆鱗に触れるって話だから!!
『諦めろ、キャプテン』
『大人しく裁きを受けよ。心配せずとも死にはしない』
「精神はゴリゴリ削られるだろ!」
絶対楽しんでいるだろ!性格最悪の魔石コンビ!後で覚悟しておけよ!?
あ、ちょ、引っ張らないで!あの時も思ったけど、どこにそんな力があるの!?全然抵抗できないんだけど!?
本当にどうしてこうなったぁあああああああああっ!?
――――――
リオンとエドワードが怒り心頭の二人に連行される状況を、ルクシオンは遠くから観察していた。
『既に二人はノエルとティアの事をご存知でしたか。クレアーレ、貴女が喋ったのですか?』
『違うわよ。貴方が報告していた、例の偵察船が喋ったのよ』
ルクシオンの問い掛けに、近くにいたクレアーレはやんわりと否定する。誰が喋ったのかも明かしつつ。
『……ラプラスですか。侵入と接近を許すとは情けないですね』
『貴方だって強く言えないわよ。ソイツにマスターと犬が戯れている記録データをコピーされているんだから』
『本当に油断も隙もない偵察船ですね。勝手にデータを抜かれていたのが、実に遺憾です』
セキュリティの低い記録サーバーに保存していたとはいえ、気付かれる事なく情報を抜かれた事実にルクシオンは不快感を露にする。
『それで?ラプラスとそのマスターは信用できるの?』
『マスターに関しては問題はないですが、ラプラスの方は判断に悩みますね。隙あらば自身のマスターを排除しようとしていますので』
『ふーん……そっちのマスターの方は大丈夫なのね』
ラプラスのマスター―――ティアに関しては敵対する可能性は皆無に近いとルクシオンは判断している。エドワードがリオンの敵に回らない限りではあるが。
『でも、その排除を指摘したらすぐに白状しているのよね?少なくとも、今の時点では本気ではないみたいね』
『私もそう判断しています。楽観視は出来ませんがね。後……』
ルクシオンはズイッ、とクレアーレに近寄って本題へと切り出す。
『クレアーレ。アインホルンの設計図を横流ししましたね?私は許可を出していませんよ?何が狙いなのです?』
『そんな怖い声を出さないでよ。量産計画の信憑性を持たせただけよ』
『だとしても、事前の許可は欲しいですね。あの害悪側に戦力を与えるのは……』
そこまで呟いたルクシオンは、ふと気付く。アインホルンの予備のパーツ……それは一体どうしたのかと。
『……クレアーレ。今、私のアインホルンの予備パーツはどうなってます?』
『……必要なことに使ったわ』
『勝手に二番船を造りましたね?その言い訳に使う目的で、アインホルンの設計図を横流ししましたね?』
完全に独断で飛行船を造ったことに、ルクシオンはクレアーレを威圧していく。
『私だって本体となる船が欲しかったのよ!それに二番船なら一番船より強くできるし、アンジェを守るのにも必要だし!』
クレアーレはだだっ子のように言い訳をする。
そこからルクシオンの嫌味は数時間続き、解放されたクレアーレは疲弊したように冷たい床を転がるのであった。
「王国の船か。さっさと―――」
「ひぃいいいいいいいいいいいいっ!?」
「ど、どうしたんですか急に!?」
「急いで立ち去るぞ!下手につついて痛い目を見るのはゴメンだ!!」
「いや、仕事―――」
「だったらお前達だけでやれ!フェーヴェル家の二の舞になりたくないからな!」
「フェーヴェル家って確か、理不尽な誓いで……」
「「「「…………」」」」
「あの王国の船は調べる必要はないな」
「そうだな。決して報復が怖いんじゃない。これは信用の証だ」
急いで立ち去ることを決めた飛行船の軍人たちの図。