彼女を作りたい   作:入力速度を考慮して

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これでプロローグ終了です

次話からはこの学校に適応した主人公が書けると思います


8.

 実力とは何か。

 彼を見て、たまに考えることがある。

 

 恵まれた体格。優れた頭脳。例外はあるがコミュニケーション能力も問題ない。

 現代日本で生活するとなれば、これ以上ない才能の持ち主だと断言できる。

 

 けれど、この試験を受けての評価は最上だとは言い難い。

 

「今回は私の勝ちのようですね」

『結果を見ればわかるだろ』

 

 電話越しに彼に語りかける。久しぶりに聞く声は、普段より幾分か覇気がないように思える。

 

「敗因は分かっていますね?」

『……』

「沈黙は肯定とみなしますよ」

 

 なぜ彼ほど才能溢れる人間が、舞台にも上がっていない人間に出し抜かれてしまうのか。

 それは、ただひたすらに単純で。

 

「晴輝くん、貴方は世界を知らな過ぎます」

『……』

「一人で世界を変えられるとでも思っていましたか?」

 

 私ですら周りの()協力して(動いて)もらう必要がある。

 どんなに才ある人間でも、多くの凡人には敵わない場面もある。

 それほどまでに数の力は凄まじいのだ。

 

「貴方の能力は私も認めています。ですがそれは個の力への評価です」

『俺だってお前らを認め、信頼している』

「それでこの結果ですか」

『……っ』

 

 私対葛城くん。クラスの大半を巻き込んでの闘争に、たった一人で立ち向かったことを考慮すれば素晴らしい結果だ。なんせクラス単位では首位だったのだから。

 だけど、それだけだ。

 

「本来ならば圧倒的に勝てるはずの戦い。それをこんなちっぽけな勝利にしてしまったのは、貴方が周りを信じていないからに他なりません」

『信じてない……か』

 

 やれば出来る。出来ないことはない。

 そんな風に、下手に何でも出来てしまったのが運の尽き。

 

「自分だけで大丈夫、こんなものはどうとでもなる。そんな慢心がこの結果に繋がったのです」

『そのようだな』

 

 肥大化した全能感は思考を鈍らせる。それは彼も理解しているようだからとやかくは言わない。それに、まだ重要なことを伝えていない。

 

「晴輝くん。貴方は先程、私たちを信頼していると言いましたね?」

『ああ、事実だ』

「そうですね、貴方は私たちを信頼しているでしょう。いや、信頼し過ぎています」

『なに?』

 

 彼はまだ、この学校における「実力」の意味を理解していない。

 

「仲間への無垢なる信頼、それは大変素晴らしいことです。人としてなら花丸満点をあげちゃいます」

 

 だがそれがどうした。

 結果に繋がらないのであればそんな信頼も意味がない。

 

「クラスみんなが仲間だとでも?甘い、甘いですよ、晴輝くん。貴方は私が葛城くんと対立している事を知っているのです。ならば私が彼の不利益になるように動くのは当たり前ではないですか」

『それが龍園との協力か』

「そうです。貴方と正面から戦うには橋本くん達には荷が重いですからね」

 

 彼は小細工なしではこの学校でもトップを争う才能だ。そんな者と真面目に争う方がおかしい。

 

 例えどんなものを利用しようが、自分の求めた最善を手にした者が勝者だ。それを実行出来る力を「実力」と呼ぶ。

 

「晴輝くん。これが、実力です。この学校で最も重要視されるものです」

『どんなものを利用しようが構わない、か』

「その事を分かっていないのであれば、貴方がどんな才能を持っていようが脅威には思いません」

 

 これから先も彼の個の力は輝くだろう。

 しかし、この学校で勝利する為にはそれだけでは足りない。

 周囲を利用し、全てを思いのままにする必要がある。

 

「今回の試験は敵対したグループを抑え、広大な舞台を完全に把握する事が勝利の条件でした。であれば貴方はクラスを率いれば何も問題なかったのですよ」

『なに?』

「私の指示はこうです。『葛城くんが指示を執るなら全力で妨害し、天笠くんがやるなら従いなさい』」

『随分と俺のことを買っているんだな』

「ふふふっ。ええ、どんな試験であろうと貴方なら問題はないと()()していたのですよ」

 

 驚いたように声を出す彼だが、何もおかしいことはない。彼ほどの才能があれば人を従える事に疑問はないだろう。

 彼は決定的に経験が足りないだけだ。

 でもそれは恥ずべき事でもない。一般的な義務教育内ではそのような経験をする方が難しいのだから。

 

 だからこれからだ。

 

 この敗北を経て彼は何処まで飛翔出来るか。

 彼が私を超えた時、それは私たちのクラスがこの学校の覇者になる事と同義である。

 

 それが何時になるかは分からないが、恐らくは。

 

『……』

「これで答え合わせは終わりです」

『坂柳、聞きたいことがある』

「何でしょう」

『お前の指示はこの旅行中は継続か?』

 

(そうです。彼がこのまま終わるわけがありませんよね)

 

 負けたまま終わるのであれば彼を私が飼う。

 しかしそんな簡単にはいかないのは自明だ。

 

「ええ、そのように判断してもらって構いません」

『もう一つある』

「それは?」

『お前はどうしたら俺の下に付く?』

「……そうですね。今は未定です」

『そうか、分かった。橋本と話すことが出来たからもう切るぞ』

「では、よい船旅を」

 

 笑い出すのを堪え彼との通話を切る。

 喉を潤すために机の上にあった紅茶を一口飲む。

 冷めきってしまったと思っていたそれは、まだほんのり温かい。

 

 最後の質問。

 彼には未定だと応えたが、もしかすれば直ぐに実現するかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◆◇◆◇◆◇

 

「どうだった?」

「お前と葛城と話すことが出来た」

「おやおや、それは大変だ」

 

 坂柳との通話を終えると近くにいた橋本が声をかけてくる。

 こいつにも一杯食わされたからな。いつか仕返ししてやる。

 それに無人島の試験は実に有難かった。自分の矮小さを理解出来る良い機会であった。

 

 次だ。この敗北を忘れずにこの次に活かす。無駄にする事は有り得ない。

 

 葛城に連絡を取りながら移動する。その際に橋本に聞きたいことがあったことを思い出した。

 

「橋本。俺がクラスを率いると言ったら、お前は着いてくるか?」

「もちろんだよ、親友くん」

 

 言質は取った。その時は存分に働いてもらおう。

 

「やっぱ信じられんな。お前さっきの試験で裏切ってたし」

「待て待て!それはほら、今は坂柳の下にいるからさ」

「どうだかな」

 

 足早に葛城との集合場所へ向かう中、改めて決意を新たにする。

 

 ——次は負けない。絶対にだ。

 

 

 

 

 

 

 

 あと、坂柳はいつか泣かす。




坂柳「ざぁこ♡小細工によわよわ♡もっと周りを頼れ♡応援してるよ♡」


以下主人公について

こいつ本当に賢いのか?って疑問に思う方は大正解です。
主人公は今のところただの勉強が出来るだけの良い子ちゃんです。
裏で動こうとかアイツと手を組んだ方がコイツを御しやすいなとかは思いつきません。

なぜなら、今まではそんな事する必要もなく勝って来たからです。
そんな経験があるから自分を信じ過ぎて適切な判断をくだせませんでした。

でも思春期の子どもならそれも当たり前かなって思います。そもそも客観視出来ていればこんなに思春期拗らせてないと思うの。

逆に綾小路や有栖はその年齢でそんな事考えてんの?っていう例外だと思います。または経験の違い。


そんな感じでこれから先は大人になっていく過程でどれほど成長出来るかにかかってます
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