俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?   作:紫睡

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ちょっと説明チックなところが多かったかも?


(4)

「それじゃあ……本当に、キャンディと……お別れって事なの……」

 

 みゆきの声には堪えきれない悲痛さが込められていた。

 

「うぅ……みゆきぃ……!」

 

 キャンディも限界なのか、みゆきに抱きつきその胸の中で声をあげて泣き出してしまう。

 

『キャンディ……』

 

 片手を誰かにギュッと握られる。

 

 視線を向ければ、れいかが悲しげに俯きながら、なにかに縋るように俺の手を握りしめていた。

 

「そんな……せっかくピエーロを倒してこれからって時やのに……」

 

「……なにか、他に方法はないの?」

 

「……ピエーロを倒すためには全ての力を一つにするしか方法がなかったのでござる……だから、今の拙者とキャンディには、メルヘンランドとこの世界を繋げて置くための力は……もう何も残ってないのでござる」

 

 ゆっくりと首を振るポップとみゆきに泣き付くキャンディの姿が光に包まれ始めた。

 

「ちょっとポップ!これって……」

 

「うむ、どうやら時間が来てしまったようでござる」

 

「キャンディ……ポップさん……」

 

 れいかが頬を涙で濡らしながら、キャンディの頭を優しく撫で、ポップの小さな手と握手を交わす。

 

「キャンディ!」

 

 ポップもこぼれた涙を拭うと声を張り、キャンディを呼ぶ。

 

「これは拙者達が選んだ事でござる!皆に安心してもらえるように……わかっているでござるな」

 

「……っグル!」

 

「キャンディ……」

 

 涙で歪んだ返事を返し、ゆっくりとみゆきから離れるキャンディ。

 

「みゆぎ……ズビ、あかね、やよい、なお、れいが、きょうか、はじまん!ずっとずっとありがとうクル!!」

 

『…………っキャンディ!!』

 

 キャンディの言葉を待っていたかの様にキャンディ達を包む光が増し、二人の体がなにかに引っ張られる様に宙に浮き始める。

 

「みんな!バイバイする時は……スマイル!クル」

 

 自分も泣いているのに頬を引っ張って、無理やり笑顔を作るキャンディ。

 

「……うん!スマイルーぅぅ!」

 

 みゆきも、あかねもやよいも、なおもれいかも涙を流しながら頬を引っ張り、笑顔を作る。

 

 グイッ

 

「……いひゃい」

 

 こんな場面ですらも、どうにも気恥しくて笑顔を作れなかった俺の頬を左右から伸びて来た手が引っ張り無理やり笑顔を作らされる。

 

 キャンディとポップはどんどんと高度あげていく。

 

「キャンディ!!」

 

 みゆきが最後に声を張り上げる。

 

『またね!!』

 

 自然と俺達の声は揃っていた。

 

 出会いがあれば別れもある。だが、それが永遠とは限らない。……だから俺達の別れの言葉は再会の約束なのだ。

 

「……っ!またねクル!また!絶対にみんなとぁぇ……………」

 

 言葉の途中でキャンディ達は光の中に消えてしまった。

 

 だがキャンディの言いたかった事は俺達にはわかっていた。

 

 キャンディも再会を願っているのだ。

 

 風に吹かれるようにキャンディ達が消えた光も消え去った。

 

 公園に残されたのは俺達六人だけだ。

 

「うっ……うう……うわぁぁぁぁぁん!……あぁぁぉぁっ!」

 

「ふぐぅ……うう」

 

「あぁぁぉぁ!うぅ……」

 

 

 

 

 あの後、俺達は互いを抱きしめ合いながら泣いた。小町に考え方が擦れていると言われるが、俺だって所詮は中学二年のガキだ。辛い、悲しい事があれば大泣きすることだってある。

 

 互いに涙が枯れそうになるまで泣いたら、その場で解散となった。泣き疲れたのもあるが、家族の事が心配になったのだ。

 

 世界が砂漠に変わった時、俺達以外の人はどうなっていたのだろうか……それは分からないが、急いで帰ると不思議そうな顔の小町に出迎えられた。

 

 後で聞いた話によるとみんな必死な顔をして帰った事を家族に逆に心配されたらしい。ジョーカーや、ピエーロがした事が無かったかのように、いつも通りな家族に安堵すると共に、あれが夢だったんじゃないかと不思議な感覚に陥る。

 

 

 

 だが、ジョーカーは確かにいたし、ピエーロが世界を滅ぼそうとしたのも現実なのだ。それは今も俺達の手の中にあるスマイルパクトが証明している。

 

 スマイルパクトが五つならあの絶望に呑み込まれた世界は幻だったのかもしれない。だが、今、スマイルパクトは俺の手にあるのも含めても六つあるのだ。……つまり、ピエーロを倒す為に、奇跡の力によって俺も変身した事は確実なのだ。

 

 

 

 

 

 

「そう、そんな事があったのね……力になれなくてごめんなさい」

 

 後日、ラビリンスから帰ってきたせつなにこの世界であった事を伝えた。

 

「いえ、せつなも別の場所に居て気付かなかった訳ですし、それを責めている訳でもありませんので……」

 

『ですです!むしろせつなは無事で良かったと言いますか」

 

「ああ、流石にせつなだけ何も知らないってのはあれだと思って伝えただけだからさ」

 

 俺達が大変な時に何も出来なかったと知ってしゅんとしてしまったせつなをれいか達とと三人で慰める。

 

「……ありがとう。でも、さっきの話を聞いてあなた達が喜びそうな事が一つだけ言えるわよ」

 

『……………?』

 

 俺達の喜びそうな事?

 

「ふふっそんな不思議そうな顔をしないの……もう可愛いわね」

 

 そう言いながら俺達二人を纏めて抱きしめるせつな。

 

「実は世界って言うのはね無数のしゃぼん玉みたいなものなの」

 

『しゃぼん玉……ですか?」

 

「ええ、そしてそのしゃぼん玉は他のしゃぼん玉と良く一部が重なったり、離れたりしているのよ。私の世界、ラビリンスだって、たまたまこの世界と重なった時にその重なりを固定して今も行き来が出来るようになっているの」

 

 そういえばポップも言っていたな、メルヘンランドとこの世界を繋ぐ楔の役目をミラクルジュエルが担っていたって。

 

「……っ!それはつまり……」

 

「そう、きっとまたいつか、メルヘンランドとこの世界が重なる時が来るわ。それは直ぐかも知れないし、ずっと先の事かもしれない。でもいつか会えるって分かれば気持ちもだいぶ違うでしょう?」

 

『えぇ!えぇ!急いで皆さんに伝えないと!!」

 

「ちょ、ちょっときょうか!?そんな慌てないでっ!?」

 

 慌てて駆けて行く背中を見送る。

 

「……せつな」

 

「うん?」

 

「……ありがとう」

 

「……ふふっ、ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時は流れ、俺達は三年生になった。

 

 今日は進級祝いにみんなでお花見をしようと近くの公園に集まっている。

 

「みゆき……おっそいなぁ」

 

「さっきメールで今起きたって……」

 

「もう……みゆきちゃんはしょうがないなぁ」

 

「ふふっ、でもなぜだが許してしまうんですよね」

 

「まぁなぁ……」

 

 あいつはなんだが不思議な魅力があるよな……

 

「しょうがねぇ、場所を取っとかないといけないほど人がいる訳でもないし、みんなで迎えに行ってやるか」

 

「せやな〜」

 

「うん!」

 

 みんなで公園からみゆきのいえまで向かう。途中で合流出来ればいいんだがな……

 

 

 

 

「あっ、本が飛んでる」

 

『……はっ?』

 

 みんなで雑談しながらみゆきの家への道を進んでいるとやよいが突拍子もないことを空を指差しながら呟いた。

 

 直ぐさまやよいの指差す方を見れば確かに本らしきものが羽ばたいていた。

 

「あれって……!」

 

「もしかして!!」

 

 俺達がその考えに至った時には既にあかねとなおは走り出していた。

 

「俺達も行こう!」

 

『うん!』

 

 それに遅れて俺達も駆け出す。

 

 

 

「あー!!キャンディやん!!」

 

「やっぱりキャンディだ!!」

 

 少し前から二人の声が聞こえてくる。

 

 その声に先程まで倒れそうな表情で走っていたやよいも、表情を引き締め、スピードをあげる。

 

 俺とれいかも頷き合い、やよいのスピードに合わせて走る。

 

 

 そして直ぐに見えて来たのはキャンディとそれを抱き締めるように固まって座り込んでいる三人の姿だった。

 

「はひっ……キャン、ディ!」

 

 倒れ込むように抱きつくやよいにキャンディも俺達に気付いた。

 

「やよい!れいか!きょうか!はちまん!みんな会いたかったクル!!」

 

「キャンディ!!」

 

「私達も……」

 

『会いたかったです!」

 

「……よく帰って来たな」

 

 飛び付いたやよいと違い俺達は少し遅れたのでみんなの隙間から手を入れキャンディの頭を撫でる。

 

「クル!!」

 

 

 

「ねぇねぇ、キャンディはこれからもこっちの世界に居られるの?」

 

 みんなが一番聞きたかったが、なかなか聞けなかった事をみゆきが口にした。

 

「もちろんクル!みんなに会いたいってキャンディお星様にたっくさんお願いしてたクル!そしたら、またこの世界に来れるようになったクル!!」

 

「なんやんそれ……」

 

「そんなのありなの?」

 

「ありクル!!」

 

 デタラメな様な話だが、何となくわかった。キャンディはメルヘンランドの新しい女王だ。そしてロイヤルクイーン様もそうだったがキャンディも凄まじい力を持っているのだ。

 

 そのキャンディがまたこの世界に来たいと願い続けていたのだ。メルヘンランドとこの世界が重なった時、その願いがきっと新たな楔になったのだろう。……そんな気がする。

 

「そんなのなんだっていいよ!今はキャンディがまた一緒に居られる事が一番だもん!」

 

「せやな!」

 

「うん!」

 

「そうだね!」

 

「ええ!」

 

「……おう!」

 

「クル!!ずっとずっと!一緒クル!」

 

 嬉しそうに口にするキャンディの笑顔は、別れた時の作った笑顔とは違う本当の笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、それでは僭越ながらお花見の乾杯の音頭を取らせていただきます」

 

「みゆきーそんなんええからはよ〜!」

 

「もー!あかねちゃん!さっき一生懸命考えたのに〜!それじゃあこれからもキャンディとずっと一緒に居られることを祝って!」

 

 みんなが一斉にみゆきの音頭で紙コップを掲げる。

 

「ウルトラハッピー!!」

 

『ウルトラハッピー!!』

 

 

 

 ああ、俺は今、心から笑えている。

 

                    おわり




俺の青春にスマイルなどあるのだろうか?

これにて完結です!!

 八幡くんは心から笑える場所(スマイル)を手に入れたのです!!

いやぁ長かったですねぇ。初投稿からほぼ4年ですよ?まさか自分でもこんなにピッタリ終わるとは思ってもいませんでした。まぁそんなことはさておき……

長い間、拙作にお付き合いいただきありがとうございました。この作品がここまで続けられたのは一重に拙作を読んでくださる読者の方々がいたからです。この後も後日談等も書く予定ですが、それは決まった投稿日程などはございませんのでご了承くださいませ。

 これにて改めて感謝の気持ちをお伝えすると共に締めさせていただこうと思います。

 ここまで拙作を読んで頂き本当にありがとうございました。

 出来れば感想や高評価等を付与していただけると飛び上がって喜びます。よろしくお願いしますm(_ _)m

                       紫睡
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