もし、ベル君の抱いていた少し邪までいかにも青臭い考えが早い段階で叶っていたら
もしかしたら少しだけ、変わっていたのかもしれない
そんな【眷属の物語(ファミリア・ミィス)


短編なのでいわゆる1発ネタみたいなものです
続かないと思うというか、続けられない気がする


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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか?結論。僕は間違っていなかったかもしれない

数多の階層に分かれる無限の迷宮。凶悪なモンスターの坩堝。

富と名声を求め自分も命知らずの冒険者達に仲間入り。ギルドに名前を登録していざ出陣。

手に持つ剣一本でのし上がり、末に到来するのはモンスターに襲われる美少女との出会い。

怪物は倒れ、残るのは地面に座り込む可愛い女の子と、クールにたたずむ格好の良い自分。

ほんのりと染まる頬、自分の姿を映す潤んだ綺麗な瞳

 

 

時には酒場の可愛い店員にその日の冒険を語り、仲を育んでみたり

時には野蛮な同業者からエルフの少女の身を守ってみたり等々

そんな英雄の冒険譚に憧れた僕はダンジョンに出会いを、訂正、ハーレム求めた結果、ミノタウロス(理不尽)の洗礼を受け、自分の安易な青臭い考えをズタボロに打ちのめされてから数日がたった後も僕はいつも通りダンジョンにもぐっていた、そんなある日の事だった

 

 

「よし、今日はこれくらいかな。」

 

 

最後に向かってきたゴブリンにナイフを突き立て粉砕する

バックパックの空きはまだあるけどこういった『油断』が命取りだって身をもって知っている以上、欲は出さない

 

 

「忘れ物は・・・なし!」

 

 

エイナさんからダンジョンに潜る時の注意点は身に染みて覚えてる

特にモンスターからドロップする『魔石』はひとつでも残しちゃいけない

1度周囲を確認した後に、地上に戻る道を歩いていく

10分ほど歩いた頃だろうか、そんな時

 

 

『『『ギシャアアア!!』』』

 

 

「いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

目の前の方から1人の少女が全速力で僕の横を通り過ぎていく

 

 

「え?ちょ、待ってぇぇえええ!!!??」

 

 

その後ろを5匹のコボルドが追いかけてきていた

 

 

「(も、もしかしてこれってエイナさんが言っていた怪物進呈(パス・パレード)!?)」

 

 

常に死の可能性と隣合わせのダンジョンで生き残るための戦術であり、ダンジョン攻略の上で気をつけるべきトラブルのひとつが怪物進呈(パス・パレード)だった

 

 

先に次パーティーが遭遇したモンスターを、退却などに際して、任意の方法で別のパーティーへ押し付ける強引な緊急回避だってエイナさんは言ってた

迷宮にはいくつか暗黙の了解があって他者に対しての基本不干渉が一つあるんだけど、時に背に腹はかえられない状況に陥った時にダンジョンでは頻繁にやり取りされる常套手段なんだそうだ

 

 

ただ、押し付けた側は1人だけだし、彼女が走っていったのは退路ではなく下の階層に進むための進路

更には確かこの先は行き止まりじゃなかったっけ!?

 

 

「と、とにかく逃げなきゃ!?」

 

 

初めて起こる騒動に冷静に対応も出来ず、一緒になって逃げる羽目に

先を走っていた彼女だが、元より敏捷に長けたベルの方が早く追いつく形になった

 

 

「す、すみません!私のせいで巻き込んでしまって!」

 

 

「と、とりあえずその事については後で話しましょう!とにかく今はコボルドをどうにかしないと!」

 

 

「で、でも私さっき怖くなっちゃって逃げっちゃったし・・・」

 

 

何となく話が読めてきた

彼女はいつかの僕と似た境遇に陥ってしまっているのだと

 

 

「僕が迎え撃ちます!貴方はなるべく僕から離れないで!」

 

 

八匹を相手にして勝てたんだ、五匹なら問題ないはず!

さして広い訳でもない退路のない1本道

幸いにも挟み撃ちになることは無い

問題なのは囲まれる前になるべく多く倒すこと

焦らずに1匹ずつ迅速に倒せば大丈夫、これなら彼女も守りきれる

 

 

「どりゃぁぁぁあ!!!!」

 

 

拝啓、おじいちゃん

僕がダンジョンに求めたものは間違っていなかった・・・多分

 

 

「行くぞぉぉぉぉ!!!!」

 

 

まずは1番距離の近かったゴブリンをナイフで魔石を砕く

灰と化していくコボルドを見届ける間もなく、一度距離を離した上で次のゴブリンを捌いていく

モンスターの『核』にあたる魔石を砕く事が何より早くモンスターを倒せるだけでなく残りのモンスターに魔石を取られる心配もなくなる

 

 

僕は冒険者になってから半月も経っていない言ってしまえば駆出し者に過ぎない

それでも、目の前の少女を見捨てるほど男を捨てた覚えはない

『英雄』になりたいんだろ!だったら目の前の困っている女性くらい救って見せろ!

 

 

「うあああああああああああああっ!!!」

 

 

漢を見せろベル・クラネル

 

 

・・・・

 

 

「はぁっ、はぁっ。何とか勝てたぁ・・・」

 

 

最後の一匹が灰になる所を見納めると、途端今までの疲れが湧いて出てきたように足腰から力が抜けていく

結果としては軽い傷を負っただけで済んだ

僕はもちろん彼女の方も問題なさそうだ

 

 

「ほんっとぉに申し訳ございません!」

 

 

「大丈夫。お互いに無事生き残れたんだしまずは喜ぼうよ。」

 

 

改めて彼女と正面から対峙する

傷こそ付いているものの、新しめの軽装備から考えても僕と同じくらいに冒険者になったと考えられる

それならさっきの騒動にも説明は着く

 

 

「そ、そうですね!」

 

 

「そういえば自己紹介がまだだったっけ。僕は【ベル・クラネル】。【ヘスティア・ファミリア】の団員だけど、知らないよね。ハハハ・・・」

 

 

自分で卑下しておいて悲しくなってしまう

これからもっと増えていく!多分!

そういえば、ドタバタ気づかなかったけど彼女が1人だった

エイナさんが言うには本来ファミリアに入ると先輩方とパーティーを組んで潜るのが基本なのだとか

僕は1人だけだけだし貧乏だからパーティーも組めないんだけどね・・トホホ

 

 

「私は【アニー・マリエル】です。今はちょっと手持ちが無いのでまた後日必ずお礼に上がらせて頂きますので!」

 

 

「い、いいいいよ!こうやって無事だったし!」

 

 

「そ、そういう訳にもいきません!貴方は命の恩人ですから!」

 

 

命の恩人・・・かぁ

そんなこと言っちゃったら僕はアイズさんに何も返せないばかりかお礼もできないまま2回も逃げてしまった

 

 

「それじゃあ・・・数日だけでいいからパーティーを組んで欲しいんだけど・・・ダメかな?」

 

 

「まっまさか!私一人だけだったのですごく助かるんです!でも・・・」

 

 

「そ、そうだよね。僕みたいな非力そうな見た目じゃ頼りないよね・・・」

 

 

「そ、そうじゃないんです!助けてもらった身上でその上でパーティーまで組ませて貰うなんて図々しいと言いますか・・・でも、私。もっと強くなりたいです!」

 

 

「こ、こちらこそよろしくお願いします!」

 

 

どこか彼女に自分の姿を重ねていた

 

 

「それじゃあ戻りましょう。」

 

 

・・・・

 

 

「じゃあ、いつものように服を脱いで寝っ転がって〜」

 

 

「分かりました」

 

 

あの後無事地上に出て僕たちのホームに戻ってきた

ホームと言っても立派なものじゃなくて廃れた教会なんだけどね・・・

それでも僕と神様の2人だけで過ごす分には十分だった

 

 

「ところでベル君、今日はいつも以上にご機嫌だったじゃないか。何かあったのかい?」

 

 

「あっ!そうなんですよ神様!実は僕にもパーティーメンバーが増えたんですよ!」

 

 

「パーティーメンバーかい?確かにソロで潜るよりはベル君に危険が及ぶ可能性も下がるし願ったり叶ったりだけどさ。も、もしかしてだけど相手は女の子かい!?」

 

 

「よく分かりましたね。」

 

 

「全く・・・君はヴァレン某君の件と言い、女の子とつくづく縁があるというかなんというか・・・そういえばその彼女が見当たらないけど他ファミリアなのかい?」

 

 

「あっ、ファミリアの名前聞くの忘れちゃいました・・・で、でも!僕たちと同じで小さいファミリアらしくて放っておけなくて・・・・」

 

 

「全く・・・でもボクは君のそんな所が好きだぜ!」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「ささっ!更新の続きをしようじゃないか!」

 

 

神様の血が僕の背中に落とされ、落ちた場所を中心になぞり始めて左端からゆっくりと刻印を施していく

今、僕の背中に刻まれているのが【ステイタス】

神様達が扱う【神聖文字】を神血を媒介にしえ刻むことで僕たちの能力を引き上げられる

 

 

「はいっ、終わり!」

 

 

僕が脱いでいた服を着替え直している際に神様は準備している用紙に更新した【ステイタス】を書き写してる

僕じゃ【神聖文字】なんて読めないから、神様が下界で用いられている共通語(コイネー)に書き換えて【ステイタス】の詳細を教えてくれる

 

 

「ほら、君の新しい【ステイタス】」

 

 

神様から受け取ったようしに書かれていた

 

 

ベル・クラネル

Lv.1

力:I 82→H 140

耐久:I13→I 45

器用:I 96→H 150

敏捷:H172→G 250

魔力:I 0

《魔法》

【 】

《スキル》

【 】

 

【 】

 

 

「・・・え?」

 

 

僕は自分の目を疑った

神様から受け取った更新【ステイタス】の用紙、その中に記される熟練度の成長幅が半端ではなかったからだ

 

 

「か、神様、これ、書き写すの間違ったりしていませんか・・・?」

 

 

「・・・君はボクが簡単な読み書きもできないなんて、そう思っているのかい?」

 

 

「い、いえっ!そういうとじゃなくて・・・ただ・・・」

 

 

今日は確かに色んなことがあった

アニーと出会う前までも昨日までとは違う奮闘ぶりをした自信が確かにあるし、出会う際に一悶着あった

でも、この数字はさすがに・・・熟練度上昇トータル200オーバーって何なの?

 

 

「・・・」

 

 

「か、神様・・・?」

 

 

おかしい

神様の機嫌がすこぶる悪い。というか怖い

幼い顔つきがむっつりとしていて、半眼で僕のことを見据えている

 

 

「な、何で僕、こんないきなり成長したのかなー、なんて・・・」

 

 

「知るもんかっ」

 

 

神様は僕に背を見せて無言で部屋の奥にあるクローゼットへ向かった

扉を開けてプルプル震えながらがんばって背伸びをして神様用に採寸された特注の外套(コート)を取り出して羽織ると僕の目の前を通り過ぎていく

 

 

「ボクはバイト先の打ち上げがあるから、それに行ってくる。君もたまには一人で羽を伸ばして寂しく豪華な食事でもしてくればいいさっ」

 

 

バタンッ!と音を立ててドアが閉められた

 

 

・・・・

 

 

「はぁぁぁぁ・・・」

 

 

打ち上げ先のお店までの道路をボクは歩きながら物思いに耽っていた

 

 

「なんだいなんだい!ベル君たらボクがいながら!」

 

 

ボクがここまで不機嫌なのはボクの唯一の眷属のベル君に関係ある

つい先日、ヴァレン某君に助けられたことで発言したレアスキル【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)

『変質』こそ、彼等下界の住人の本質とは考えては見たものの、他人の手で、ベル君が変わってしまったという事実を認めたくなかったというのに

今日になってまた【スキル】が発言してるじゃないか!

今日の更新の異常すぎる基本アビリティの上昇

 

 

「どうやら僕は少しだけ甘く見すぎていた様だよ・・・」

 

 

【憧憬一途】、このスキルは言わば成長促進スキルだ

ベル君がヴァレン某君に想いを寄せる限り彼の成長スピードが減ることは無い

 

 

それだけでもこの圧倒的伸び代の説明は着くんだけど極めつけはもう1つのスキルだ

 

 

《スキル》

英雄の加護(アルゴノクタス)

・一定範囲内に存在する対象の昇華

・対象の数により効果低下

・願いが続く限り効果持続

 

 

1つ目のスキルと違って促進とまではいかないものの、間違いなくこのスキルが関わっているとしか考えられなかった

 

 

「だぁぁぁぁ!!もうっ!ベル君めぇぇぇ!!!」



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