サブタイ思いつかない、思いつかない……。
「えっと、ただいま?」
アジトに帰る。帰る場所である。そう云っていいのか、照れくさく、ただいまと素直に云えない。
「おかえり、ウルちゃん!」
後ろからザクウが、肩にぽんと手を置きながら迎えてくれる。袖なしのパーカーだから、普段は人肌に触れない二の腕に手のひらが触れる。すこし皮の厚い、筋ばった感触。ぬくもりがあたたかく、じんわり広がる。
くう。
緊張が取れ、腹が
「え、えーと、きひひ」
「おなか空いちゃった?」
ザクウが、いたずらっぽい顔で聞いてくる。
「……はい」
「まあ、今日はウルちゃん初めてのことばっかりだったから、大変だったでしょ。どうする? なにかおなかに入れちゃう? それともみんなが帰ってくるまでひと休みする?」
「いや、もうすぐみんな帰ってくるだろ? 待ってるよ」
「そう?」
ザクウは小首を
「あ! それなんだけど」
ごそごそとカバンをあさり、真っ赤なリンゴをひとつ取り出す。
「えっと、これ、果物屋でおいしそうだったから、つい買っちゃって、これ食べちゃわない、か?」
ほんとうは。オレのこと拾ってくれてありがとうって、今日、オレのこと追いかけてくれて、いないとさみしいって云ってくれてうれしかったって、そう云いたくて。それで買ったもの。
だけど、オレのために使いなと色をつけてくれたのを使って、贈り物を買うのは、いいのか悪いのかわからずに、そこで何か自分のために買って好意に
「あっ」
半端に1コだけ買ったせいで、分けられない。
切ればいいんだけど、刃物は
おろおろ、おろおろ。
「リーダー。これいっこしかないから、食っていいよ」
分けるのを諦め、手渡す。
ザクウは「んー? え、ウルちゃんのぶんは?」
「いやー、なんとなく買ったからいっこしかなくって」
「そーお? じゃあ」
と、受け取ったザクウ、おもむろにリンゴを両手持ちして、親指をヘタに突っ込んだ。
まさか、と思う間もなく、乾いた音とともに、ザクウの手でリンゴがまっぷたつ。
「お、おー……」
まさかそんな光景を見る日がくるなんて、と思わず声が出る。
「あ、すごい! このリンゴ、いっぱい蜜があるよ!」
はしゃぐザクウ。ついさっきリンゴを素手で割ったとは思えない、かわいらしいはしゃぎかた。
「はい、ウルちゃん!」
「ん。ありがとな」
「たっだいまー! っス!」
「ただいま」
リコリスたちが元気よくアジトに帰ると、中にいたウルがぱっとイスから立って「おかえり」と返してくる。
ウルの表情には、今朝のような
元気になったみたいで、よかったっス。
朝なんとなくしょんぼりしてたから、なんか気にした視線を向けてたリーダーを問い詰めて、今朝の事情は聞き出していた。
秘密にしておいてほしい、というのも聞いてたから、表立って心配できずに、不自然にならない程度にしか元気づけられなかったけど、すっかりいつも通りになってて、よかった、よかった。
むしろ、いまリーダーと2人で流してた雰囲気の
ここをおうちだと思ってくれたら、いいっスね。
それに。
「ウルちゃん、いい服選んだっスね! かわいいな」
ノースリーブのパーカーに、フリルのティアードスカート。淡いパステルカラーでまとまってて、センスもいい。露出こそちょっと多いけど、そのぶんムダ毛処理とか、そういうのも教えやすそうで、またかまえる。
「あ、ありがとう、きへへ」
なんか歯切れが悪いなーと思ったら、「……じつは、シュユに選んでもらいまして」と服をつまんで自白した。
「わかるっス。シュユさんは選ぶのじょうずっスからね。勧められるとつい買っちゃうっス」
本当。と同時に、ウルに、今日は成功だったと思ってほしいのもあった。
その考えが通じたのか、スイも乗ってくる。
「私も。シュユに選んでもらった服、いっぱい」
「そ、そーなのかー。きひひ」とウルはもういちど、照れくさそうに服をつまむ。ほんのりとだけど、自信を持ったみたい。あんしん。
「ウル、シュユからの、これは?」
スイが異次元バッグから、大きな袋をいくつか取り出した。帰る途中で会ったシュユから預かったものだ。
「あ。それも、シュユに選んでもらった服、とか」
「おー!」
なんだかんだ、ウルはあまり服は買ってこないだろうと思ってたから、いっぱいでうれしい。
「どんなの買ったっスかー? ……あれ、これって」
手近なひとつを開けてみると、シュユの店で塩漬けになっていた、ロリコン領主の置き土産。
「それは、オレが選んだんだ! どう、かな?」
「いいと思うっス! 好きな服着るのがいちばんっス!」ととっさに云えた自分を
着てる服も肌が出てるなとは思っていたけど、ウルちゃん、肌の出る服が好みだったっスか? いや、でもこの服はさすがに。いや、うん。
「これ、どこで、着るの?」スイの声も戸惑いが満ちている。
「シュユにもリーダーにも云われちゃって。アジトの中だけってことで……」
あ、そこはよかった。さすがにっスね。
けっきょく、袋のうちほとんどは、その置き土産で、ウルの私服はひと袋だけ。でも、そのパーカーやTシャツ、ミニスカートにショートパンツをウルの身体にあてて、簡易的な着せ替えを楽しんだ。ほんとうは一着一着着てほしかったけど、遅い時間だし、疲れてるようにも見えたから、それはいざ着た時のお楽しみ。
「あれ、もう一着、ある」
全部出して遊んでから、みんなで畳んで袋にしまおうとしたとき。スイが気がついて取り出した。袋がくたっとしていたせいで、折り目の奥に隠れていたらしい。
取り出してみると、それもまたパーカーで、まっしろな生地にパキッとした黄色や水色の
あれ? こんな服、シュユの店で見たことないっスよね。
「リコリス。これ」
スイがちらっと例の置き土産を見せてくる。それにも☆があしらわれているのを見て、
「シュユ、きっと」「仕立てた、っスね」
ウルちゃんの様子から、きっと勝手にやったのだろう。素直じゃない、シュユさんらしいっス。
「ウル、この服、好き?」
「んー? お、いいねこれ」
「なら、よかった」
ウルのために