デュエル楽しすぎて時間ががが。
次の投稿が遅れたらそういうことだと思ってください……。
それと、前回のアンケ答えてくれた兄貴姉貴ありがとナス!
文字数はあんまり気にせず行くことにしました!
みんなの帰りを出迎えたウルに、スイが駆け寄って中庭へ手を引いて連れていく。
スイは前々から、酔えば「妹欲しい、かわいがりたい」と
今も、中庭まで行ったスイは、ウルに狩りの成果を見せてドヤ顔している。
一足先に帰っていたザクウは、ほほえましい光景を見ながら考えた。
ウルちゃんは、不思議な子。
正直、ハウスキーパーなんてウルちゃんを引き取る口実だったし、今思えばスラムの子という色眼鏡もあって、アジトの掃除もそこそこきれいになればいいな、程度にしか期待していなかった。傭兵としては汚いところで過ごすのには慣れっこだったし。
それが蓋を開けたらどうだろう。毎日アジトはぴかぴか。ホコリひとつない。酒ビンのそびえていたテーブルも片づけられて拭かれていて、その上には畳んだ服が並べられている。
文句のつけようのない、満点の仕事。とってもとってもありがたい。
でも。だからこそ、の心配もある。
初めて会った時こそ、ボクたちを
それが、傭兵団の一員として迎え入れてからは、その性格の上に
ウルを見れば、
それを聞いてほっとしたボクに、ルティアは続けて、むしろ――
「よ。どうした?
「ケイオス。……ちょっと、ウルちゃんのことを考えてて」
ケイオスがぴしりと一瞬固まった。
きょろきょろ周囲を見回すと、声をひそめて「嬢ちゃんの風呂、想像してたのか……?」
え、とあわてて視線を中庭に向ければ、ウルちゃんたちはとっくにいなくなってて、
「ち、ちがうよ?」
「だよな。冗談だ」
「も~……」
「ははは、悪い悪い」ケイオスは軽く笑うと、「嬢ちゃんのこたぁ、最初はどうかと思ったけどよ。まあ、丁寧でいい仕事する、なかなかの拾いものだったんじゃないか?」
むしろ、と彼は真面目な顔つきになって「むしろ、
そう。
ルティアも同じことを云っていた。
ウルちゃんは、勘所のわかっている掃除をしていた、と。
調度品にはハタキ、床にはホウキのち
それにルティアによれば、ウルちゃんはテーブルマナーや日常のしぐさも、一定の
「姉御が云うなら確かなんだろうな。……つーことは、だ。嬢ちゃんもなにか訳アリってことか?」
訳アリ。つまり、なにか隠してる経歴があるんじゃないか。
もちろん、ルティアの話を聞いてまっさきに疑ったのはそこだった。
でも。
「そういうわけでもなさそう、なんだよね」これもルティアが云ってたんだけど、と受け売りばかり話しているけど「ウルちゃん、魔力とか、魔道具の話になると、ぽかん、ってするじゃない」
洗濯魔道具。プルルティア姫という名前は知らなくても、ドワーフ王国のお姫様が発明した、今のドワーフ王国の主力輸出品だというのは有名な話だ。それをウルちゃんは、ルティアが発明したと云っても、すごいんですね。と素直すぎる褒め方をした。
異次元バッグ。スイが見せてドヤ顔をしていたあれも、大型魔獣の
「それなりのマナーは身につくまで教えても、魔力とかについてあそこまで教えてないのは不自然、って。それに」とひと呼吸おいて、「それに、ほら、"イタダキマス"」
彼女が食事のたびに云う"イタダキマス"。誰に云うでもなく呟くことから、なにかの儀礼だってことはわかるけど、ボクたちの知らない異文化の作法。
「もしかしたら、魔力が一般的じゃなくて、"イタダキマス"が一般的な地域があるかもしれない。でも、この辺りは大体依頼で行ったことあるボクたちでも、その場所を知らない。それより遠くは考えづらいし、そうだったとしたら正直打つ手はない、かも」
「……つまり、だ。嬢ちゃんの
「うん。……それに、売られたって話がほんとうなら、ただ帰らせるのがいいとは思わない。むしろ、あんなに素直に育てたスラムの人たちのもとのほうがいいと思う」
「そっちも手掛かりはないけど、な」
沈痛な雰囲気になってしまった。
それを消すように、ケイオスがわざとらしく広間のすみっこを指差す。
「お。嬢ちゃんの手柄、今日もあるじゃねーか」
すみっこに積んであるお酒のビン。何種類かの
「俺のぶん、姉御のぶん。せっかくなんだから嬢ちゃんも呑みゃいいのにな」
「え?」
ボクの漏らした声で失言に気づいたらしく、ケイオスも「あ」と目を反らす。
「あー、なんだ。前、呑み残しを呑みに行った時、なんだけどよ。嬢ちゃんがビン洗ってる音がしてたから、吞み切って持ってったんだよ。そしたらちょうど嬢ちゃんが吞み残しを、こう、」そこで真上を向いて呑むフリをして「豪快に滝呑みしててよ。溺れるみたいにガブガブ呑んでたぜ」
「そっか。ウルちゃん、お酒吞むんだ」
そりゃあ、こんなにお酒に囲まれてれば吞んじゃうよね。*1でも、それならそうと、みんなと一緒に呑めば、スイやルティア、もちろんボクだって大歓迎。なのに、みんなが吞んでいる時は給仕に
吞み残しをひとりで吞んでいる姿を想像して、また少しさみしくなった。
「やっぱり、ウルちゃんがそんな風に気を遣わなくていいようにしたいなぁ……」
「ま、それは時間かけてゆっくり、だな。スイとかが
また話が沈痛に戻りそうになったからか、ケイオスは続けて、
「でも嬢ちゃんも、吞み残し吞むくらいなら新しいの開けて、はやらないか。自分用に買っちまえばいいのにな。マイクに云や持ってきてくれるだろうに」
たしかに。ウルちゃんが自分のお酒買っちゃえば。……あ。
「ウルちゃん、お金、持ってない、かも」
「……おい」
「ご、ごめん! 忘れてた!」
ケイオスはあきれの
うう。しょげて、小さくなる。
「お金は準備して、明日の朝一番に渡します……」
「だな」
ちょうどそこで、お風呂帰りの女性陣の声が近づいてくる。区切りもよかったから、そこで話は終わった。
終わってしまった。
――今思えば、ボクたちは忘れていることが、もうひとつあった。
ウルちゃんを幸せにしたいとか云っておいて、なんというていたらく。
云い訳にもならないけど、きっとまだボクはウルちゃんがいることを、毎日掃除されたきれいな家に帰って、おかえりと云ってもらえることを、非日常だと思っていたのだろう。
事件は、翌日に起こった。
翌朝、リコリスとスイが朝早くから立ち話をしていた。
「おはよう。どうしたの? こんなところで」
「はよー、っス。実は今日は依頼が少なめなんで、私ら休みにしようとしてたんスよ」
「うん」
「で、せっかくスしウルちゃんも誘って服見に行こうって話をしてたんス」
「前、仕事って、断られたから、リベンジ」
「いいね。いってらっしゃい」
ふっと、思ったことが口から出る。「でも、ウルちゃんもおさそい断れるんだね」
ウルちゃんは誘われたら最後、イヤイヤだろうとついていくような気がしてたんだけど。もしかして、それほど2人とは打ち解けてたのかな。……まさか、お金渡してなかったから断るハメにさせてた、とか。ありそうで申し訳なさが。
ウルちゃんに渡すためのお金を持っていることをしっかりと確認して、2人の後をついていく。広間で「おはよー」とタリスマンがあいさつしてきた。
「はよっス。ウルちゃん起きてるっスか?」
「うんー。中庭に行ってるよー」
「りょうかいっス!」
そのままリコリスは「ウルちゃんウルちゃん!」と中庭の扉に突撃。扉を開けると、ウルちゃんが洗濯魔道具にもたれてぐったりと目を閉じていた。扉を開けた格好で固まるリコリスとは対照的に、ウルちゃんはびくりとひとつ震えるとむっくり起き上がり、頭を押さえてぶるぶる振った。
そこでボクたちはようやく動き出して、ウルちゃんのもとに。
「ウル。だいじょうぶ?」
「あー……
疲れた表情だったウルちゃんは、ぱっと表情をつくろった。「あ! 洗濯物
きっと心配かけまいとしているんだろうけれど、意外とボロを出しやすい彼女は、さらに寝起きのせいか、元気そうな雰囲気を出しても目を真っ赤に充血させてその周りを
スイが彼女に近づいて、「ウル。『スリープ』」と魔法を唱えると、彼女は即座に寝てしまった。『スリープ』はせいぜい
くったりとスイに覆いかぶさるように寝ているウルちゃんを剥がして、横抱きにする。あどけなく寝てはいるけれど、やっぱり少し顔色が悪いままだ。
どうして、と思ったところで。ようやく思い至った。
ウルちゃんは、もしかして休みたいとすら云えなかったんじゃないだろうか。
毎日一緒に住んでいて、毎日掃除されていることにボクは疑問を持つべきだったんだ。いつ休んでいるのか、って。
ウルちゃんを部屋のベッドに寝かせてから、広間でさっき思い至ったことを話す。
「ウルちゃんの休み、っスか……。たしかに、どっかのタイミングで休んでるんだろうって思ってたっス」
「私たち、仕事の日、あんまり会えない、から、そのどこかだと」
「うん……」
3人で落ち込んでいると、タリスマンがふわふわした口調で「どうしたのー?」と聞いてくる。
「ウルちゃんが休まず働いてたの、気づけなかったっス……これじゃ先輩失格っスよ……」
「あー、ウルちゃん毎日働いてたもんねー。どうしたの?」
「……タリスマン? あんた気づいてたっスか?」
「うん。僕と同じで、休まず働ける種族なのかなーって」
「タリスマン。あんたとおなじのがそうそういるわけないっスよ~!!」
「うー! ごめんよーリコリスー!」
「とりあえず、ボクは洗濯物干してくるよ。ウルちゃんが起きたときに気にしちゃいそうだし」
そう云って席を立つ。
「あ、私もやるっス!」
リコリスもタリスマンから手を離して、3人とも中庭に行く。
洗濯物を干すのはひさびさだったけど、やっぱり量が多くて、これを毎日ひとりでやらせていたウルちゃんへの罪悪感がますますつのった。
夕方。顔つなぎやあいさつを最低限で切り上げ、アジトまで急いで帰る。
ほんとうはウルちゃんを看病したほうがいいんじゃないかっても思ったけれど、ダンライに診てもらった結果、単なる過労だから下手に構わず寝かせておけ、という診断。もどかしいけど、目覚めるまで待ってるしかない。家事も、スイがふんすふんすと鼻息荒く「今日は、ウルの代わりに、掃除とか、家事、する」と宣言していたのに任せて、ボクはいつも通りの仕事。はがゆい。
アジトに帰ると、スイとリコリスが机に突っ伏してとろけていた。
「ただいま。ウルちゃんは?」
「まだ、寝てる」
「そっか……」
昼間まるまる寝てるほど。ずいぶんと、無理をさせていた。
「しょーじき、きょうウルちゃんがやってた仕事をやってみて、大変さがわかったっス。傭兵って体力仕事の私らでもこんなきついんスもん、身体できてないウルちゃんが毎日やってたなんて、尊敬のレベルっスよ……」
ざっと見ても、ふたりがかりでやっとウルちゃんのと同じくらいのキレイさ。毎日、ほんとうに大変だったんだろう。
「お疲れさま、スイ、リコリス」
いたわりの言葉をかけたその時。2階から物音が聞こえた。
彼女にしては珍しく、どたばたと足音を立てて階段を降り、窓から夕焼けを見て
「あ、その……今日の、仕事は……」とウルちゃんが口ごもりながらおろおろ言葉を紡ぐ。
「ウル」
顔面蒼白のまま必死で、何か云おう、何か云おう、としていた彼女の頭を、スイが胸に掻き
「ウル。無理は、しなくていい。休みたいなら、休んでいい。疲れたら、疲れたって云ってほしい。いつだって、聞いてあげる。いつだって、代わってあげる。朝、ゆっくり、寝ててもいい。だから……頼って、ほしい」
さすが、『お姉ちゃん』。云いたいこと云われちゃったな。
ぎゅっと抱きしめられてるウルちゃんの頭を軽く撫でる。
「ウルちゃん。ボクは人を
その言葉を聞いて、ウルちゃんは、なぜか、さみしそうに笑った。
――ここで終わっても、またボクの反省すべき失敗談。
みんなで元気になった姿を見てほっとして、また夕食の場で彼女が働こうとするのをやんわり止めて。
今度、マイクくんとかに雇用について聞いて、ウルちゃん、きっと遠慮するだろうから聞いてもらえるよう作戦を立てて。
計画しながら、眠りについた。
事件は、さらにまた、翌日。
早起きをした。
ウルちゃんは昨日はぐっすり寝かせたとはいえ、病み上がりと云っても過言じゃない。気づかれないようにちょっと覗いて、疲れが残ってるようなら手伝ったり、最悪また寝かせたりするんだ。
こっそりと中庭の扉を開ける。
「え……? なんで……?」
思わず、声が漏れた。
「なんで、洗濯がもう
中庭には、すでに大量の洗濯物が吊るされている。いくらなんでも、まだ夜明け前。洗濯が終わるなんて早すぎる。
驚愕の目で見つめていると、洗濯物の中に異彩を放っているものを見つけた。
シーツだ。
ウルちゃんひとりで運ぶには大きいシーツ。そして何より、みんな寝てる時間のシーツなんて、ウルちゃんの以外ありえない。
まさか、早起きしてシーツを洗濯してたの?
さすがに昨日の今日でこんな無茶するなんて、とむくれながらウルちゃんの部屋に行く。
不思議なことにすこし開いていたドアを開ける。
もぬけの殻。
「……。!!!」
昨日の部屋にあったはずの生活臭がすっかり消された、掃除された空き部屋。
夜逃げ。
どうして、と頭をよぎる。
ウルちゃん。
どこに行っちゃったんだろう。
「あっ!」
思いつき、あわてて中庭に戻る。手近な洗濯物に触ると、まだじっとりと濡れていた。
まだ。まだだ。
追いかけなきゃ!
ルティアに教わった、ウルちゃんの首輪の場所を探知する魔術を起動する。首輪は着けて出て行ってくれたようで、屋外のポイントが示された。
「ウルちゃん……。お願い、間に合って!」