私は気ままにデュエルがしたい   作:紙吹雪

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今回のあらすじ

新たなる不審者、東堂遊佐!




40話

 

 

 ——東堂遊佐。私のかつての友人が目の前に佇んでいた。

 

 最後に会ったのは大学卒業した頃だったから会うのは数年振りで、私にとっては唯一友人と言っていい存在だ。少なくとも、私には他に名前と顔を覚えている同級生はいない。

 

 就職してから一切会っておらずメールのやり取りも全く無かった。だから、とっくに縁が切れたのかなって思って……ずっと心残りだった。

 

 だから正直に言うと……今、ちょっと気不味いや。

 

「なんで、こんなところで……」

 

 さっき口にしたことと似たようなことを繰り返す。柄にもなく緊張しているのかもしれない。

 

「うーん、話すと長くなるんだけどね。取り敢えず、立ち話も何だしちょっと私の住んでるところまで来てよ」

 

「あっはい」

 

 一方遊佐は自然体で話している。そもそも、私は遊佐が焦ったところなんて……一回しか見たことがないけど。

 

 でも遊佐の言うことももっともだ。たしかについ先程までデュエルして疲れたし、正直もう足が動かない。立っているだけでも辛い。明日は筋肉痛で更にキツくなるでしょうね。でも、今からバイク運転するのも気が引けるな……

 

「バイクなら後で業者さんに回収させるから私の車乗ると良いよ。その様子だと疲れてるんでしょ?」

 

「うん、よろしくお願いします」

 

 その提案に私はノータイムで返事した。相変わらずよく気が回るな、遊佐は。でも私、卒業後メールを何回も送ったのに返信がなかったこと、気にしてるから。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 遊佐の自宅は超が付く高層マンションだった。ここに住むのに幾ら掛かるのか、小市民な私には想像しただけで辟易してしまいそうだ。

 

 遊佐の住んでる部屋はマンションの一番上の階だった。本格的に家賃が気になって来たが我慢する。

 

「ほら、ここなら誰の目も届かないから」

 

「……え、薄い本展開?」

 

「ちょっともう〜。私は友達にそう言うことしません!」

 

「……」

 

 それは友達じゃない相手……例えば幼い子供にはやるのか、と聞きたくなったがやめておこう。

 

 玄関を通り、リビングに入る。中にはダンベルとかランニングマシーンとか、名前は知らないけどジムに設置されてそうなトレーニング器具がわんさか置いてあった。身体を鍛えるのが趣味なのは変わっていないようだ。

 

「そんで、まずはお風呂入って来たらどうかな。ちょっと匂うよ?」

 

「……ラブホ?」

 

 色々と突っ込みたいことが多かったが、遊佐の発言を聞いて私は反射的にそんなことを口走ってしまった。

 

「あのさぁ……自分でもちょっと考えちゃったから辞めなさい」

 

「はーい」

 

 遊佐は別に同い年の女性……それも私なんかに手を出すような人間ではない……筈だ多分。遊佐の趣味はよく知ってるから分かる……おそらく。彼女のストライクゾーンは中学生くらいだ……少なくとも昔は。

 

 ……なんか考えているとどんどん不安になってきちゃうな。もうとっととお風呂入って来よう。

 

 私が感じたそんな不安は杞憂だったようで特にお風呂に入っている間浴室に睡眠ガスが散布されたりとか湯舟が実は液状スライムだったとか着替えがマイクロビキニやバニーガールのコス衣装しか用意されてないだとかは無かった。広い浴室は初見はちょっと緊張してしまったが、特に変なことは起こらなかった。

 

 私は金持ちが使っていそうな着心地の良いバスローブを着用してリビングに戻ると、テーブルの上にティーカップが2つ置かれていた。テーブルを挟んだ位置にあるソファーに遊佐は腰掛けていた。

 

「次、遊佐も入る?」

 

「いや、私は後で良いよ。この後トレーニングの予定があるから」

 

「……そう」

 

 そう言えば高校時代はあらゆる運動部に引っ張りだこだったっけ。まあ、あの腹筋見せられたらねぇ。

 

 私は遊佐と向かい合う形でソファーに座った。

 

「……それで、何から説明しよっか」

 

 遊佐は悩むようにしながらティーカップを手に取る。中身はどうやら紅茶のようだ。匂いからして恐らくアップルティーだろう。遊佐がよく飲んでいた。

 

「まず、いつからこの世界にいるの?」

 

「数年前からだね。明美は?」

 

「……大体1、2ヶ月前」

 

「ふぅん、なるほどね」

 

 遊佐がメールに返事をしてくれなかったのって、もしかしてこの世界に来ていたから……?

 

「遊佐はどうやってここに来たの?」

 

「うん、あれは1人で居酒屋で飲んで駅に着くと終電時間だったあの日……我慢できなくて電車の中で寝ちゃってたらいつの間にかこの街に来てたの」

 

 私と同じじゃん。

 

 どの駅なのか聞いてみたが、私が乗ったのとは全く知らない名前だった。

 

「その反応からして明美も同じみたいだね……ところで、もしかしてこの街には次元を超えて来てたりするの?」

 

「うん」

 

「あちゃ〜……もうそんな時期かぁ」

 

 遊佐はたしか遊戯王アニメは視聴している筈だ。だから私が次元を超えて来たと分かったのだろう。

 

「ちなみにどの次元から……って、スタンダードに決まってるか。他の次元だと色々と説明が付かないし」

 

「うん、多分合ってる。原作だとこの後何が起こるの?」

 

 一応私は今後起きる出来事を聞いておく。この後の顛末を知っておいた方が危険なことに巻き込まれるリスクは減らせるだろうし。

 

 私の質問に遊佐は人を煽るような表情になって妙に腹が立ちそうな口調で喋り出す。

 

「明美はたしかアニメ未視聴だったよね……やっぱ気になるぅ?」

 

「……やっぱいいや」

 

「気になるよねぇ?」

 

「……いや、別に」

 

「よし、そんなに気になるなら教えてあげよう!」

 

「はぁ……まあいいけど」

 

 うん、下手に取り合うと更に面倒臭いからしばらく自由に喋らせておこう。遊佐は無駄話することも多いから。

 

「あ、でもその前に……」

 

 突然、遊佐は真面目な顔になって私を真っ直ぐに見つめた。

 

「……明美、なんかちょっと怒ってる?」

 

「……いいえ、とは言えない、かな」

 

 遊佐へのメッセージが既読もされず反応もなく、ずっと嫌われたのかなって思っていた。

 

 仕事を始めたばかりで不安も多く愚痴を聞いて欲しかった。そんな時に友達だと思っていたのに、遊佐は何もしてくれなかった。多分、その時にはもう既にこの世界に来ていたのだろう。それでも、私はあの時に受けた心の傷が私にはとても忘れられない。

 

 本当はまた会えて良かったって言いたいのに。どうしても素直にそう口に出せない自分が……情けなかった。

 

「……明美の気持ちは分かるだなんて、私にはとても言えないよ。ごめんなさいって謝って済むなら、私は幾らでも謝る」

 

「謝られても、私は多分許せる気がしない……かな」

 

「うふふ。私は明美の素直なところ、好きだよ」

 

 遊佐はいつの間にか私の隣にまで来て座っていた。い、いつ動いたんだ……?

 

 と言うか。言い方! そんなんだから女にモテるだな生まれてくる性別を間違えたとか言われたんだろうに!

 

「でも、謝らないとまず私の気が済まないの。私、この世界に来てからずっと明美のこと心配してたから」

 

 真剣な表情でそう言う遊佐に、私は思わず見惚れてしまいそうだった。最後に会った時よりも更に魅力的になったな……

 

 横に腰掛けた遊佐は私の右手を握った。遊佐の手は少し硬いけど、初めて出会った時と同じで凄く暖かい。

 

「ごめんね。私が居なくて辛かったよね。寂しかったよね……1人にしちゃって、ごめんね」

 

 悲しそうに……本当に後悔しているのだろう。遊佐は私の眼を見ながらそう話した。

 

「……遊佐はずるいよ。そんな風に言われたら、許したくなっちゃう」

 

 私は遊佐に体重を預ける。すると遊佐も身体を傾けてお互いに身体を預け合う形になった。かつての友人同士とは言え少し照れ臭い。

 

「明美……」

 

「別に、そこまで怒ってる訳じゃないよ。ここ最近は遊矢くん達と一緒だったから寂しくはなかったし」

 

「あ、やっぱり知り合いなんだね……向こうで何してたの?」

 

「遊勝塾の教師」

 

「え、先生やってるの? まあ明美勝負強いもんねぇ……悪運はもっと強いけど」

 

「うるさいよ」

 

 たしかに私が悪運強いのは事実だけど。

 

「あはは、ごめんごめん。でも、本当に平気だった? 明美、身体弱いのに……」

 

「……大学卒業した後は、快復に向かったからね。現在はそこまで病弱じゃないよ」

 

「……そっか」

 

 思えば、そのことを報告すらできなかったんだったな……

 

「私達、また友達になれるかな。また明美と友達になってもいいのかな……」

 

「そんな……」

 

 私は……そうか、心の奥底では、まだ遊佐と友達のつもりだったんだ。もう割り切ったつもりだったのに、未練たっぷりだったりしい自分が恥ずかしくて仕方がない。

 

「わ、私は……今でも、友達のつもり……」

 

「え、ちょっと怒ってたのに? んもう、これでも感情の機微の敏感さには定評がある東堂さんと呼ばれてるのに明美はちょっと分かり難いよ」

 

「ご、ごめんなさ……」

 

「いやいや、明美謝らなくてもいいよ全然!」

 

 そう言い、遊佐はもう片方の手も握って身体を捻って私と向かい合う。だから、距離が近いってば……もう……

 

「私、また明美に会えて嬉しいよ!」

 

「……うん、私も」

 

「よし、それじゃ……久々にやろうか?」

 

 そう言うと遊佐はソファーから立ち上がって棚の上に置いてあったデュエルディスクを手に取った。ああ、そう言う……

 

「……広いとは言え、流石に室内は不味い。他の住人にも迷惑だろうし普通にやるべきだよ」

 

「変なところで冷静なのは変わってないね。って、変わりないのはお互い様かな。うん、いいよ!」

 

 デュエルディスクからデッキを取り出した遊佐は、私の対面に座る。私も置いていた鞄からデッキを取り出してテーブルの上に置く。

 

「ははっ、明美とデュエルするのは久し振りだね。腕、鈍ってないよね?」

 

「まさか」

 

 遊佐もやる気充分のようだ。あの頃と遊佐は殆ど変わっておらず、まるで昔に戻ったかのような気分になった。

 

 

「「デュエル!」」

 

 

 この後滅茶苦茶デュエルした。

 

 






※三十路手前の独身女性同士です

2人のデュエルの一部抜粋


明美の初期手札

灰流うらら
灰流うらら
無限泡影
墓穴の指名者
墓穴の指名者

明美「……」

遊佐の初期手札

ハーピィの羽箒
無限泡影
無限泡影
増殖するG
無限泡影

遊佐「……」


「「…………」」


明美「ツーペア!」
遊佐「スリーカード!」
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