よし、投稿間隔を短めにしたいと言う目標が叶いそうだ!
だがしかし、デュエル有りですが大変短いです……申し訳ない!
これも全部ドンサウザンドって奴の仕業なんだ!
目を覚ますと知っている空が広がっていた。
最悪な気持ちの時、見上げるといつだってある色。
青くない……暗い色の空。
私はたしか、柚子との試合になったけど意識を失って……
それで、目が覚めたら遊佐が居て……
「……遊佐が、居ない」
また、捨てられちゃったのかな……
柚子に謝る為に彼女の元へ向かったけれど……結局、謝る事ができなかったみたい。
私の所為で迷惑がかかっただけで、物事は悪い方へと転んだだけ。
私の意思には何の意味もなかった。
「……謝ったとしても、過去は無くならないし変えられない」
そう思い込もう。
私が謝りたかったのは、きっと私が楽になりたいからだろうから。
罪悪感から解放されたいだけで、柚子の事を本当に心配していた訳でもない。
せめて自分を良い人だと……外面を繕いたかったのかもしれない。
そんなことに意味なんて無いのを知っていた癖に。
そもそも、本当に罪悪感なんて私にあったのだろうか。
分からない。
何も、分からない。
こんな奴が、先生を名乗っていたのか……
馬鹿馬鹿しい茶番劇だ。
何もできない。
私の胸を無力感が支配した。
何者にもなれなかった私には当然の結末なのだろう。
仮にも先生と言われていたのにその期待を裏切ってしまった。
何もできない私がその任を軽々しく受けたのが間違いだったのだろうか。
いくら考えても答えは浮き上がらず、無駄な時間が過ぎて行くのみ。
「……」
周りを良く見ると、廃墟のような街並みだった。
私の心象風景だと言われても納得できる。
本当に何処なんだか。
「……別に、何処でもいいか」
私にとって、生きる場所も生き方も所詮は移り変わって行く物でしかない故に。
信条も生きる目的もない私にはどうでも良い。
ただ、生きるだけで……それで良いんだ。
どうせ、誰も私の事なんか気にしないだろうから。
所詮私は時間が経てば忘れ去られる塵芥に過ぎない。
そうなればきっと……罪悪感も、何もかもから解放されるだろう。
私は楽に生きたかったんだ。
何をするにも一々考える事もなく、面倒な物からは目を背けて。
私の行動で生じる全てを鑑みず、見て見ぬ振りをした。
それが私の犯した最も重い罪なのだ。
「……」
その場に座る。
下手に動いたって悪くなるだけだから。
どうせ、なるようになるだろう。
私が自ら動かなくても、この世には「流れ」がある。
目には見えないけど確かに在る物。
そして、触れ得ずに抗えぬ物でもある。
運命とも言い換えられるそれは、人の手では変えられない。
少なくとも、私は一度も抗った事はない。
引き取られた時も、仕事を決めた時も、遊佐に誘われて遊戯王を始めた時もそうだ。
私自身が決めた事なんて何一つとして無いのだ。
そんな私が先生だなどと……今にして思えば馬鹿馬鹿しい。
身の程を弁えない自分が嫌いだ。
誰かの真似しかできない癖に。
自分と言うものがない癖に。
どうして、私は生まれて来たんだろう……
私は、生まれたいと願っていないのに。
自発的に私が何かを思うなんて、あり得ないのに……
死にたい。
誰かの皮を被っても、ちっぽけな私の本質だけは変えようがない。
人間ですらない……尊厳すらも捨て去ったゴミはゴミだ。
たとえ生まれ変わろうが、その見窄らしい性根だけは変えようがない。
そもそも、変わりたいとすら願えないのだから。
「……」
再び空を見上げる。
いつもと何ら変わらない空。
おそらく、ここはシンクロ次元ではないのだろう。
何となくだけど分かる。
事情はよく分からないが、また次元を移動してしまったのか。
ずっと眠っていた感覚がある。
その間に何かがあったか。
……でも、空は変わらない。
私と同じだ。
何処に行こうと私は私。
どれだけ巧みに皮を被っても根本は変わらない。
魔女の魔法が十二時に解けてしまうように、いつか化けの皮は剥がれてしまう。
ずっと仮面を付けたままでは居られないのは分かっていた筈なのに……
もう、人の皮を被るのはやめだ。
殻を失ったありのままの私は醜悪で見るに耐えない姿だろうけど。
でも、私はそれで構わないと悟った。
何者にもなれない絶望と苦痛を見て見ぬフリをした結末。
全ては虚無へと消える儚い夢でしかないのだから……
私の歩みは緩慢に終わりへと向かうだろう。
真っ直ぐに、寄り道もせずに。
人間に一度は憧れたような気はするけれど。
人間にすらなれなかった哀れな存在。
いずれ水泡に帰る、取るに足らない一滴なのだから。
⬛︎ ⬛︎ ⬛︎
「……ん」
いつの間にか寝てしまっていたらしい。
寝違えたのか身体のあちこちが痛い。
それでもまあ……耐えられなくはない。
苦痛には慣れている。
いつのまにか夜になっていたようで全く周りが見渡せない。
壊れた電灯は夜の暗がりを照らしてくれないからだろうか。
本当に目を開けているのか分からなりそうなくらいだ。
「……」
二度寝でもしようかと再び私は目を閉じようとしたけれど、そこに邪魔者が乱入して来た。
見た事のない格好だけど……私を見る目がまるで獲物を見つけた狩人のようだ。
まだ眠いのに厄介事らしい。
私は思わずため息が溢れた。
「……は、見つけたぞ」
そう言ってそいつはデュエルディスクを構えた。
きっと逃げられはしないだろう。
いっそ、このまま手放してしまえば楽になれるんだろうけど……
「さぁ、ハンティングの時間だ!」
「……」
アカデミア兵 LP 4000
藤野 明美 LP 4000
「先攻は譲ってやる。精々足掻いてみせろ……ははは!」
生きる為に足掻くのはやめてはいけない。
笑って前を向いていればきっと何とかなる、と。
遊佐はたしかに昔私に向かってそう言った。
今の私にとっては呪いか祝福か、最早分からないけれど……
結構な時間飲まず食わずだった所為でふらつく。
元々虚弱な私にとっては致命的な程に。
しかし……別段問題はない。
寧ろ、死が間近に迫る程に頭が冴え渡るくらいだ。
「魔法カードデス・メテオ発動。相手に1000のダメージを与える」
「……は?」
デス・メテオ
通常魔法
相手ライフに1000ポイントダメージを与える。
相手ライフが3000ポイント以下の場合このカードは発動できない。
「ぐはっ!?」
アカデミア兵 LP 4000 → 3000
火炎の球が相手に命中する。
私の目には、何処までがソリッドヴィジョンなのか分からない。
あの炎はそんなに熱いのだろうか。
何処も焦げてもいないのに。
「魔法カード火炎地獄発動。相手に1000、自分に500ダメージを与える。チェーンしてご隠居の猛毒薬発動。相手に800ダメージ与える効果を選択。さらにチェーンして連鎖爆撃を発動。チェーンの積まれた数一つにつき400ダメージを相手に与える」
火炎地獄
通常魔法
相手ライフに1000ポイントダメージを与え、
自分は500ポイントダメージを受ける。
ご隠居の猛毒薬
速攻魔法
(1):以下の効果から1つを選択して発動できる。
●自分は1200LP回復する。
●相手に800ダメージを与える。
連鎖爆撃
速攻魔法
チェーン2以降に発動できる。
このカードの発動時に積まれているチェーンの数×400ポイントダメージを相手ライフに与える。
同一チェーン上に複数回同名カードの効果が発動している場合、
このカードは発動できない。
「ま、待っ……ぐわあぁぁぁぁぁぁ!!」
アカデミア兵 LP 3000 → 1800 → 1000 → 0
藤野 明美 LP 4000 → 3500
「……」
暗い夜、明るい炎が私の視界を彩った。
色褪せた私の心には何もできない癖に、一丁前に綺麗な火だった。
明るくなったのは視界だけで、私の心は変わらない。
相手に何の抵抗も許さず私はただ勝利を手にした。
当たり前だが、達成感の類は一切無かった。
これはデュエルじゃない。
……ただの作業だ。
私の心に響いた……関心を持つ事ができた唯一の趣味。
それが遊戯王、デュエルモンスターズだった。
他にも娯楽なんて腐る程あったけど、殆ど続かなかった。
なのに、今は果てしない程にくだらない気分だ。
……デュエルでくらい、現実から目を背けさせてくれ。
自分が何者でもないゴミ屑である事を忘れさせてくれたのに。
何故、今私はこんなにも虚無感が心を支配しているのか。
答えは簡単。
遊戯王を知らなかった頃の私に戻っただけだ。
この世界におけるデュエルはリアルに強く影響がある程重要なものだ。
それはつまり、良くも悪くも様々な干渉があると言う事。
ただ遊戯に興じるものでは無くなった。
私は気の赴くまま、ただデュエルがしたかったのだ。
デュエルしている間だけは楽になれた気がして。
だから、この世界に来てからの私はひたすら皮を被っていた。
耐えられないんだ……デュエルに余計な物が混ざるのが。
それすらも奪われたら私には何も残らないのに。
どうして私の数少ない手を伸ばした物はすり抜けて行くのだろうか。
「貴様、この、覚えておけ……な、何っ!?」
負け犬の遠吠えをしていたそいつの身体が光を発した。
次の瞬間には彼の姿はカードに変わっていた。
何故だろう?
……少し驚いたけど、すぐに気にしなくても良いって事に気が付いた。
襲いかかったのは向こうからだし、私は知らなかった。
別に罪悪感を覚える必要もないだろう。
この反応が普通の人のそれじゃないのは理解している。
でも、私は元より感情が乏しかった。
誰かの皮を被って喜怒哀楽の模倣はできても、心の奥底では冷え切ったまま。
人間らしさなんて最初から生まれ持っていない。
私は中身のないがらんどうの人形でしかなかった故に。
寧ろ……これが自然な反応なのだろう。
「……?」
ふと、何か私の胸に込み上げてくるものがあるのに気が付いた。
自分の心の機微に疎い私には、その正体までは分からなかった。
存在に気付けたのは仮にも人の真似事をしていたお陰だろうか。
「……」
何か、忌避感を感じた。
あの時の水底に落ちる感覚は受け入れられたのに。
今はどういう訳か、全てを否定したかった。
「……貴様は何者だ?」
ふと気が付くと、今度はまったく知らない人物がいた。
黒いコートを着た顔の造形が良い人物だ。
雰囲気はやや黒咲に似ているかもしれない。
誰だろうか?
何となくアカデミアの人間ではなさそうだけど。
……敵意は感じるような気がする。
私は再びその場に座った。
「一つ訊く、そのカードは……っ」
アカデミア兵のカードを私はその男に投げてよこした。
キャッチしたカードを確認すると、その男は変わらず鋭い視線で再び私を見つめる。
未だに完全に敵意が消えてはいない。
この反応から察するにどうやらアカデミア側の人間ではなさそうだ。
もしそうならもっと食ってかかる筈だ。
なら、もう興味は失せた。
今は冷たい水の底へ沈んでいたい。
そのまま死神の腕に抱かれたらどれほど楽になれるだろうか。
そんな事ばかりを考えていたい気分だったから。
私が生まれたのは正確には私の誕生日ではない。
あの大晦日の夜だ。
肌を直接剥がしているかのような鋭い痛みを与えてくる容赦のない冷たさ。
魂が深淵の底を彷徨っている錯覚さえ感じさせる不気味な静けさ。
そして……差し出された手の温かさ。
その三つだけは鮮明に覚えている。
意識がハッキリすると病院のベッドで私は寝ていた。
それが私の記憶にある最初の風景だ。
自力で起き上がる事ができない様子は、側から見れば赤子も同然だっただろう。
いずれリハビリ……って言い方も私にはよく分からなかったけれど。
とにかく、運動機能の改善を終えて私達は同じ学校に通うようになった。
すると嫌でも分かってしまうんだ、周囲と私の違いが。
私を見る目は、誰もが皆可哀想な者を見る目だった。
遊佐だけは例外だったけれど……
どんな目で見られても私は構わないけれど、別に何とも思わなかった。
自分が可哀想だとか、特別な存在だとか……考えもしなかったから。
私を一番苦しめたのは……人間らしい感情を、私の意志を求められる事。
悪い事をしたらごめんなさい、良い事をしたらえらいね。
困っているのを助けたらありがとう、今日は何が食べたい?
おはよう元気かな、将来の夢はなぁに?
……私に何を求めているのだろう?
何もない私にこれ以上何を差し出せと言うの?
どうして私へ干渉しようとするの?
そんな疑問をある日私は遊佐に投げかけた。
すると、遊佐は苦笑いでこう返してくれた。
「私はね、明美。生きているだけで、目に見える全てを愛おしいと感じるんだ。こうして私が存在するのが素晴らしい事だって、奇跡だって思える」
愛おしい? 奇跡?
その時も今も、私には全く理解できなくて。
「貴方もきっとそう感じられるようになれるよ。私が保証してあげる」
遊佐はそう言ってくれたけど……到底信じ難かった。
生きている意味すら考えられない私には、遊佐が眩しくて仕方がなかった。
暗闇の中でしか生きられない生き物には日光が毒であるように。
後に……私が大人になってから入水自殺の話を聞いた時。
以前の私はそこで死んだ、そう考えるようになった。
あの冷たい水の流れる川が私にとっての母胎。
へその緒は遊佐の手かな?
私を産んだのは……死神なのかもしれない。
誰にせよ、私と人間の類似点は限りなく少なくて。
バケモノとでも呼べばいいのだろうか。
私は孤独感に支配されていた。
何も物を知らない私と遊佐はずっと接してくれた。
それも、なるべく対等に近い目線で……
日陰しか居場所のなかった私に光から現れて歩み寄ってくれた。
遊佐は昔から……いつも、私に生きる楽しさを教えようとしてくれていた。
何もない空っぽの私に曲がりなりにも生きる意志を与えてくれた。
私が辛うじて人形の体裁から抜け出したのは、遊佐が私の手を引っ張ってくれたから。
大晦日の夜と同じように……ずっと私の手を握ってくれていた。
しかし、手先で感じていた温もりは消えた。
再びこうして巡り会えたけど……喪失の痛みは私を今も変わらず蝕んでいる。
一度離されたのに、どうして二度目が無いと言えようか。
不信はどんなに足掻こうと私から決して離れはしない。
最初からずっと……
それは……苦痛にとても良く似ている。
◆◆◆
苦痛よ、お前は私から離れられない故に、ついにお前を尊敬するに至る。
私はやっとお前を知ることができた。
お前は存在するだけで美しいということを。
貧しい心の火鉢に寄り添ってくれた人。
しかし天使は私から去って行ってしまった。
次回、明美VS弟の名前を大声で叫んでそうな人
明美ちゃんの使用デッキは闇属性になるでしょう
なお、今回のようなクソみたいな手抜きデュエルは今後ありませんのでご安心を
途中から描写したり中断されたり……みたいなのはあるかもしれません
年内にもう1話投稿する予定です。