私は気ままにデュエルがしたい   作:紙吹雪

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※先生は半日以上飲まず食わずでフラフラです。良い子のデュエリスト諸君はそんな人を見かけたら素直に119を呼んであげようね!

今回からカード名に『』を付けてみました。
最初に出て来る時とか一部だけに付けるなら手間も皆無に等しいし、如何でしょうか?




52話

 

 

「——い、おい!」

 

「……?」

 

 頭がぼーっとする。

 流石にそろそろ限界が近いかもしれない。

 一度スイッチが入れば割と平気なんだけど……

 さっきの短いデュエルですらも体力を削られていたらしい。

 

「なに?」

 

「……どうやら貴様はアカデミアの連中ではなさそうだ。だが、怪しい人物であるのは変わらん」

 

 それはそうだね。

 私はその場に座り込もうとして、ふらついて壁にもたれ掛かってしまった。

 いや、壁じゃなくて建物の残骸か。

 

「……まず、素性を明かせ。名前は、出身は?」

「藤野明美。出身は……この街ではない、遠くて無名な場所。多分、君が名前を聞いても分からないくらいの」

「随分と素直に話すものだ」

「騙したところで無意味だからね」

 

 少なくとも、今ここで私が嘘を付く理由はない。

 本当のことを言う理由もないけど。

 

「何故、ここに来た?」

「分からない。前後の記憶がない」

「……」

 

 少しだけ考えるように俯いた彼は、やがて私に向き直ってこう言った。

 

「怪しい人物だな」

「そう」

 

 はあ、ここで死ぬのも悪くないかな。

 これ以上生きたって良くなる兆しはまるで見えないのだ。

 楽しみよりも苦痛の方がいつだって強い私の人生が終わるのなら……快く受け入れられる。

 ずっと、私はそう思いながら生きて来た。

 

「私を殺すと言うのなら苦痛が無いように、せめて一撃で決めて欲しいな」

「……貴様、何故抵抗しない?」

「だって、ねぇ?」

 

 私は周りを見渡す。

 崩れ落ちた廃墟ばかりで、殆ど滅んでしまったも同然な街並みを。

 まともに暮らして行けるようにはとても見えない。

 

「この街の風景は今の私と似ているんだ。どうせ再興なんてできる訳がないし、抵抗しようがしまいが結果が変わるとも思えないね」

「貴様……俺を馬鹿にしているのか?」

 

 彼は私を血眼で見つめる。

 明らかに先程よりも怒りに満ちている視線だ。

 

 ……ああ、そっか。

 

 彼はこの次元で、この街で、アカデミアに対抗しようと抗っているんだ。

 確かに彼からしたら今の私の発言は見過ごせないだろう。

 自分の行いなんて全て無駄だ。

 そう言われたのだから当然か。

 

「でもね、私は謝らないよ。人生に何かしらの意味を見出すのを悪い事とは思わないけど、全てが虚しいと感じるのも事実だからね。私の意見を変えたいと言うのなら……言葉よりももっと良い方法があるんじゃないかな」

「……良いだろう。貴様の望み通り、腑抜けた考え方諸共葬り去ってくれる!」

 

 彼はデュエルディスクを構える。

 本気の眼だ。

 戦う人間の眼。

 

 これにわざと負ければ、私は晴れて彼岸へと旅立てる。

 何もかも捨て去ってようやく楽になれるだろう。

 だけど……

 

「……ふふ」

 

 もう放っておけばすぐに死にそうな私の身体が疼いている。

 戦いを見据えて勝手に備えようとしている。

 どうやら、私がデュエルで手加減だなんて出来ないみたいだ。

 

 だから、私もデュエルディスクをしっかり構える。

 どうか……どうか、この瞬間だけは生きていると感じられる事を祈りつつ。

 刹那のような時間しか生きていない私の人生に華を添えられるよう。

 

 さっきのようなつまらないデュエルはもう二度としない。

 

「懺悔の用意はできているか!」

「懺悔するとしても……その相手は君じゃないだろうね」

 

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

明美 LP 4000

カイト LP 4000

 

 

 あ、彼はカイトって名前だったんだ。

 そう言えば遊佐が口にしていたような気がする……

 まあ、今はどうでもいいか。

 

「先攻は私か……」

 

 私は手札を見る。

 あまり良いとは言えないけれど、最悪ではない。

 デュエリストなら配られたカードで最善を尽くすだけだろうし。

 

「私は手札から『悪王アフリマ』の効果を発動。このカードを手札から捨て、デッキから『闇黒世界-シャドウ・ディストピア-』を手札に加える。そして、そのまま発動。このカードがフィールドに存在する限り、フィールドの表側表示モンスターは全て闇属性となる」

「属性を変えるフィールド魔法だと……?」

 

 スターヴヴェノムは何故か手に入らなかったから入っていない。

 超融合はあるけど……まあ、そんな事はどうでもいいか。

 

 周囲の風景が変わる。

 ただでさえ灯りのない暗闇だった世界が闇色に染まる。

 闇に包まれた私達はを見守る者は——

 

「カードを1枚伏せる。ターンエンド」

 

 手札が割と腐り気味だった為、これ以上動く事が出来ない。

 まあ、完全に事故ってないだけマシだ。

 そもそもガチガチに展開するタイプのデッキでもないし。

 

「ここでシャドウディストピアの強制効果。このターンにリリースされたモンスターの数だけ、ターンプレイヤーのフィールドにシャドウトークンを特殊召喚するけど……リリースされたモンスターはいない。よって、トークンは特殊召喚されない」

「……俺のターンだ」

 

 カイトは油断はしていない様子でカードを引いた。

 相手が何を使って来るのかは知らないけど……

 まあ、どうにでもなるか。

 

「俺は『光波翼機』を召喚。さらに、手札のもう1体の『光波翼機』は自分フィールドにサイファーモンスターがいる場合、手札から特殊召喚できる!」

 

 

光波翼機 ATK 1400

 

光波翼機 ATK 1400

 

 

 なるほど、【サイファー】か。

 たしか攻撃力を2倍にする永続魔法があったっけ。

 相手モンスターの攻撃力は1400だから、もし使われたら攻撃力の合計は4200。

 ワンショットキルになる。

 

「永続魔法、『光波干渉』発動!」

 

 あらら、使われちゃったよ。

 今の思考はフラグだったかもしれない。

 私が伏せているカードは防御系の罠でもなければ除去する効果を持ってもいない。

 手札誘発を握っていなければ、私はここで負けるだろう。

 

「同名のモンスターが存在するサイファーモンスターがバトルをする時、バトルフェイズ終了時まで攻撃力を倍にできる。ただし、1体だけだがな」

 

 やはり、初期ライフが4000だとあっさり決められてしまう可能性が高くなる。

 一応これまでもある程度の対策は講じていたけど、これからは気を付けなくては。

 

 ……これから、か。

 何故私はそんな事を考えるんだろうね。

 死にたがっている癖に。

 

「行け、『光波翼機』、ダイレクトアタック! この瞬間——」

「この瞬間、リバースカードオープン」

 

 私は彼の言葉を遮り発動を宣言した。

 ダメ計時じゃあ私の罠は使えないからね。

 

 私が発動したカードは——

 

「『闇霊術-「欲」』だと……?」

 

 思ってもみなかったカードだったのか、動揺しているようだった。

 

「何故だ、そのカードは闇属性のモンスター1体をリリースしなければ発動できない筈……」

「ああ、たしかにそうだ。その後、私はカードを2枚ドローするが、相手が手札の魔法カードを公開すればドローは封じられる」

「……ディスクに異常はない、どう言う事だ?」

「こう言う事だよ」

 

 フィールドに漂う闇が『光波翼機』を包み込む。

 闇に飲まれたモンスターは……その姿を消した。

 代わりに嘲笑するかのような影のケタケタと笑う不気味な声が辺りに響き渡った。

 ……変な演出。

 

「シャドウディストピアが存在する限り、1ターンに1度だけ私は自分フィールドのモンスターをリリースする際、代わりに相手フィールドのモンスター1体をリリースできる」

「……っ、そう言う事か!」

 

 

 

『闇黒世界-シャドウ・ディストピア-』

フィールド魔法

(1):フィールドの表側表示モンスターは闇属性になる。

(2):1ターンに1度、自分がカードの効果を発動するために自分フィールドのモンスターをリリースする場合、

自分フィールドのモンスター1体の代わりに相手フィールドの闇属性モンスター1体をリリースできる。

(3):自分・相手のエンドフェイズに発動する。

このターンにこのカードが表側表示で存在する状態でリリースされたモンスターの数まで、

ターンプレイヤーのフィールドに「シャドウトークン」(悪魔族・闇・星3・攻/守1000)を可能な限り守備表示で特殊召喚する。

 

 

 

 これは非常に防ぎ難い除去だ。

 効果を受けない、またはリリースできないモンスター以外ならばあらゆるモンスターを葬れる。

 無敵とまでは行かないが……それでも非常に強力である。

 

「だが、貴様にドローはさせない。俺は手札の『二重露光』を公開する」

 

 魔法カードを握っていたか。

 まあいいか……と言いたいけど、今の手札だとドローできないのはややキツいか。

 だが、このターンは生き残れた。

 

「俺はもう1体の『光波翼機』でダイレクトアタック!」

「……」

 

 

明美 LP 4000 → 2600

 

 

 ……あまり痛くない。

 或いは痛みに慣れてきた所為で感覚が鈍ったのかもしれない。

 もしくは……身体の限界が近いのが原因か、だ。

 

 

 

 私の身体は昔、入水自殺未遂の時に完全には癒せない程の障害を負った。

 真冬の川の水に全身を晒したのだ……それなのに平気な顔して走ったりできるのは遊佐くらいだ。

 友人ながら本当に人間なのか怪しいと思う時がある。

 当然、障害の所為で私は心肺機能や純粋な体力が女児よりも劣っている。

 

 

 

 気にした事なんてなかったけれど、身体を動かすデュエルが必要ならもう少し鍛えておきたかったかな。

 私には土台無理な話だろうけど。

 日常生活にも支障が出かねない程度には虚弱だし。

 

「……俺はカードを1枚伏せる。ターンエンドだ」

「この瞬間、シャドウディストピアのもう一つの効果が起動する。お互いのエンドフェイズ時に、このターンの間にリリースされたモンスターの数だけ、ターンプレイヤーのフィールドに可能な限りシャドウトークンを守備表示で特殊召喚する」

 

 

シャドウトークン DEF 1000

 

 

「……俺のフィールドにトークンを出すか」

「私のターン、カードドロー」

 

 引いたカードを見て顔を顰める。

 

 

 『混源龍レヴィオニア』

 

 

 ……最序盤来られても困るのに。

 まだ墓地も肥えてないのに、はぁ。

 

 不幸中の幸いだけど、有効活用する手段が丁度手札にある。

 

「魔法カード『トレード・イン』を発動。手札のレベル8モンスターを捨て、カードを2枚ドローする」

 

 おお、今度は良いカードを引けた。

 これなら何とかなる。

 相手の伏せが気にかかるけど……

 

 よし、動こうか。

 

「手札の『邪悪龍エビルナイト・ドラゴン』の効果を発動。自分の手札またはフィールドのモンスター1体をリリースし、自身を特殊召喚する……私はシャドウディストピアの効果を使用し、相手の『光波翼機』をリリースして特殊召喚する」

「……」

 

 

邪悪龍エビルナイト・ドラゴン ATK 2350

 

 

「更に私は『ヘル・ドラゴン』を召喚」

 

 

ヘル・ドラゴン ATK 2000

 

 

 ……ミラフォとか考慮すると面倒だから攻撃しちゃおうか。

 ここは攻めてみよう。

 最悪、ミラフォだろうがどうにかなる引きだ。

 

「バトル、『ヘル・ドラゴン』でシャドウトークンを攻撃」

 

 ……伏せは発動しない。

 気にする素振りもないのを見るに、攻撃反応系では無さそうだ。

 

「『邪悪龍エビルナイト・ドラゴン』でダイレクトアタック」

「……」

 

 

カイト LP 4000 → 1650

 

 

 ミラフォではない。

 そして今、僅かにだが発動するか迷っていた。

 となるあり得るカードは……ふむ。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンド。そして、シャドウディストピアの効果発動。私のフィールドにシャドウトークンを1体守備表示で特殊召喚する」

 

 

シャドウトークン DEF 1000

 

 

「『ヘル・ドラゴン』の効果。このカードが攻撃を行ったターンのエンドフェイズにこのカードは破壊される」

「デメリット持ちのモンスターか」

「……だが、もう一つ効果がある。こいつは破壊された時、自分フィールドのモンスター1体をリリースすることで墓地から特殊召喚できる。私はシャドウトークンをリリースして『ヘル・ドラゴン』を特殊召喚」

 

 私のフィールドにはシャドウディストピアとモンスターが2体に伏せが1枚、手札もたった1枚。

 カイトは永続魔法と伏せが1枚、モンスターは存在せず手札には『二重露光』を含んだ2枚。

 お互いのライフは2600と1650。

 

 ライフ・ボード・情報アドバンテージ……その三つを得た私が微有利ってところか。

 

 でも、私の勘が正しければ次のターンであのエクシーズモンスターを出してくる。

 ランク8の中ではそこそこ強力なあいつが。

 あの効果を使われたら一気に状況が引っくり返るかもしれない。

 

 だが、カイトがあいつを召喚するその時。

 

 

 

 刹那の一瞬、僅かな攻防の差で勝敗が着く事になるだろう。

 

 

 

「……俺の、ターン!」

 

 






明美の使用デッキに関しては特にコメントないです。
強いて言うなら、ドラゴン族に寄せた構築であるくらいかな。
悪魔嬢軸と悩んだんですが、そっちはいつかまたの機会に。

2025年最後の投稿になります。
良いお年を。

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